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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

恋文・81

 今日は奥さまと洋子さんは、観劇。旦那さまは取引先の創立記念パーティーに出席。夕飯は僕一人分だけを準備してあった。

国府田さんと2人で正門と裏門の施錠を確認して、お屋敷の中を一通り見て回り今日の仕事が終わった。

 一日中外出していて申し訳なかったが、今日の分は明日頑張ろう。そう思いながら、準備して頂いていた食事を電子レンジで温めて食べた。

一人だけの食事は味気ない。

食事は洋子さんが作っただけあって抜群に美味しいんだけど、やはり奥さまや洋子さんと一緒に食べる方が味も3割増しだ。食事は誰かと一緒の方が美味しい。それが恭悟だったら・・・。そう考える僕は、やはり恭悟を好きなのだ。

 自分が恭悟の気持ちに応える事が出来るのか、と自問自答しながら、花子とリビングで旦那さまと奥さまのお帰りを待った。

「なんか、想像出来ないんだけど」

恭悟とキスしたり、セックスしたり?《SWAN》での事を思い出すと、そういうのはパスしたいなあ・・・。

「ニャーッ」

「花子・・・どう思う?」

「・・・ニャ」

「わかんないか」

花子は尻尾を振るだけで、僕の悩みなんかどうでもよさそうだ。

 旦那さまの方が先に帰宅され、お風呂に入られている間に奥さまと洋子さんがお帰りになった。その直後、僕はセキュリティシステムのスイッチを入れ、システムが正常に作動しているのを確認した。

奥さまからお土産を頂き、ついでに「鮫島紫朗の舞台のチケットを手配していますから」とお伝えするととてもお喜びになった。「紫朗祭りは賑やかで楽しかったわね。楽しみだわ」とおっしゃったので、強引な柴田さんに負けてお願いしたチケットだったけど良かったと思う。

お出掛けされていた奥さまたちは、「疲れたわ」とおっしゃって早めに部屋にお入りになった。僕は寝る前にもう一度家中の施錠と、廊下や玄関などのライトが点いているか確認してから自室に戻った。


 初めての路線に乗り、初めての土地に行き、一日中緊張していた僕は花子を抱き締めたまま眠ってしまっていた。

目が覚めたのは、部屋の電気が点けっぱなしだったから。僕が寝返りを打つと、隣で寝ていた花子もモゾモゾと向きを変えた。

「電気、点けっぱなしだった」

枕元のリモコンに手を伸ばして電気を消し、ついでにスマホを手繰り寄せた。

「23時20分、か」

花子がグーンと伸びをしてから僕の胸元に入る。いつもならまだ起きている時間だが、目を開けていられなかった。

「おやすみ」

部屋は小さなフットライトだけになった。


 昼間の疲れもあってか、僕は夢も見ずに眠っていた。

「・・・ん?」

23時20分に目が覚めた時には僕の胸元で寝ていた花子は、足元に移動して丸くなっていた。いつもなら何度も目が覚める事はないのに、今夜はなぜか目が覚める。

きっと恭悟の所為だ。まだ1時40分。

今、恭悟は何をしているだろうか。恭悟の事は飯坂さんが「預かる」と言ってくれたから心配は要らない。でも、恭悟がそれを拒否したら?

それは嫌だ。困る。飯坂さんが何とか言い包めてくれるかな?

 ふと気が付いた。僕は「お友だち」が欲しかったんじゃなくて、敬ちゃんにとっての若のような、そんな存在が欲しかったんじゃないのかな?

「恭悟」

名前を口にすると、恋しさが募る。

会たくて堪らなくなる。

明日、飯坂さんに電話しよう。そして恭悟の居場所を確認して、会いに行けるなら行く。

「そうしよう」

そう決めたら何となく目が冴えてしまった。もし恭悟に会えるなら、お弁当を作ろう。玉子焼きを作ろう。管理人さんの玉子焼きよりも僕の玉子焼きの方が美味しいのだ。

「うん」

玉子焼きと鶏のから揚げ。冷蔵庫の残り物で何か出来るかな?洋子さんに相談しよう。ワクワクしてきた僕は、布団の中で足をバタバタと動かした。花子がいるのを忘れていて、寝ていた花子に足があたり迷惑そうに睨まれる。

「ごめん!」

花子は迷惑そうに僕を見て、顔をまた自分のお腹の辺りに潜り込ませて丸くなる。そっと足を花子から離し、どこにドライブに行こうかとか考え始めるときりがない。

やっぱり僕は恭悟の事が好きなんだ、と自覚して恥ずかしくなった。布団を頭から被って恥ずかしさを堪えている僕。バカみたいだ。

「眠れない」

あれから10分経ってる。花子は静かに眠っているというのに、僕は眠れなくなってしまった。本でも読もうか。

「ダメだ。ミステリーなんか読んだら、朝までだ」

目を瞑って眠気がくるのを待つしかない、か。

「はあっ」

それでもワクワクした気持ちは治まらなくて、時間だけが過ぎていく。


 外の微かな物音に気が付いた。

滝山家の敷地は広い。木も多いし、樹齢200年を越える木もある。風の強い日に根元が腐っていた大木が倒れたこともある。庭木の間やガレージ、納屋に野良猫が隠れていてもわからないから、それがウロウロしているのだろう。最初はそれくらいに考えていた。

カサ、カサ、と落ち葉を踏むような音。

「猫かな?」

猫ではない。もっと大きな「人」が歩いているような感じだ。

「・・・?」

僕は寝惚けてはいない。おかしい。耳を澄ましていると確かに音がする。続いてカチャと金属のなる音。変だ。今日は風もなかったはず。

ゆっくりと手を伸ばして、枕元に置いた特殊警棒を掴んだ。ベッドが軋まないように身体をスライドさせ、花子を起こさないようにそっとベッドから降りる。

パジャマのままでそっと窓の方に移動し、窓の傍で聞き耳を立てる。音は遠くなった。遠くなったが、確かに外には何者かの気配がする。

変だ。人が侵入したのなら警報装置が作動するはず。でも警報音が鳴らない。おかしい。やはり、人ではなく野良猫かな?

「よし」

常備している懐中電灯と特殊警棒を持ち、セキュリティシステムのスイッチが入っているか確認する為に、僕はリビングを目指した。

これは僕の仕事だ。

 そっとドアを開けると、廊下は静かだった。フットライトが点いているから廊下の電気を点けなくても明るい。

僕の部屋は西側エリアの一番奥だ。窓から見える外灯の明かりに照らされた木の影でさえも怪しく見える。僕は警棒をギュッと握り、足音を忍ばせた。

古いお屋敷だから床の軋む音がしないようにゆっくりと歩いてリビングを目指す。念の為に廊下の窓の施錠を一つ一つ確認する。

大丈夫、大丈夫。自分に言い聞かせながら廊下を歩き、リビングのドアに手を掛けた時だ。

外からカチャーンと高い音がした。

今の音。猫じゃない。

僕は迷わずにリビングのドアを開けた。リビングにはフットライトだけが点灯していた。セキュリティシステムのある所まで走り、システムが正常に作動しているかランプを確認した。

「あっ」

裏門のロックが解除してある。それからサンルームとリビング、キッチンの周辺のシステムが作動していない。

「どうして?」

確かに確認したはず。伊戸さんが帰宅した後、裏門はすぐに施錠した。それは国府田さんと共に確認したから間違いない。

 昨日の事を思い出しながら、僕は裏門のシステムのスイッチをオンにした。だが、スイッチが壊れているのかランプの色が変わらない。

「どうして?」

迷っている暇はない。国府田さんに電話してすぐに来てもらわないと。そうだ。その前にセキュリティ会社だ。ドキドキしながらモニターの横にある受話器を上げ、コールセンターを呼び出した。

その時だ。今まで点いていたはずのフットライトが消えて真っ暗になった。

「えっ」

ガシャーンとガラスが割れた。音はそれ程大きくはない。

「わあっ!」

落ち着け、落ち着け。左手に持っていた懐中電灯を点け、音のした方を照らすと人がサンルームの鍵を開けようと腕を突っ込んでいるのが見えた。

「誰だ!」

僕は握っていた受話器を放り投げて、特殊警棒を構えた。

*****

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