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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

さよなら三角、また来て四角・46

 長いこと"よき友"であった南出幸成。彼から告白されたからといって、急に"友人"が"恋人候補"に変わるわけではない。

そう思っていたが、実際に南出が他の男と親しげにするのを見れば、どういうわけか心の底には思い掛けなく汚い感情がとぐろを巻いていた。


「待てよ。じゃあ・・・」

南出を追い掛けて廊下に出た久木原に、南出の背中は「あっちへ行け」と語っていた。

「じゃあ、何だよ?続きを言えよ」

「俺は、南出が俺の事を好きだなんて、その、気付かなくて」

南出がこちらを向いた。明らかに久木原に失望しているとわかった。その顔を見ていると久木原は、恥ずかしさのあまりに身の置き所がないような心地になってしまった。

「お前がいつまでも気が付かないから告ったの。わかる?」

「ごめん」

「また言う!ごめん、言ったらぶっ飛ばすって言わなかったか?」

南出は鼻に皺を寄せ、拳を握って見せた。

「そうだった」

「だから何だよ?また同じ話しをするのかよ?俺は自分の気持ちに気付かれないように立ち回ってたんだよ。気付かなくて当たり前だよ。主演男優賞でもくれるって言うのか?何でももらうぜ」

「悪かった」

久木原がそう言うと、南出はまた嫌な顔をした。

「だから!そういうのは聞き飽きた、って言っただろ?マジでぶちのめしたい気分だよ、このアホが」

「すまん」

南出はガッカリした顔をした。

「・・・バカか。もういい。じゃあ、の続きを聞いてやるから。さっさと言え」

「俺は、その、急にお前を恋愛対象として見ろ、と言われても、それは無理なんじゃないかと、思ったんだよ」

「ふうん」

南出は怒りを隠さなかった。だが彼の視線は久木原から離れない。彼は久木原の心を読みたいのだ。

「でもな」

「うん」

「今夜、藤田さんと並んで飯を食っているお前を見れば・・・その、俺の事を好きだとか言いながら、藤田さんと仲良く飯食って、と思っちゃってさ」

「勝手言うな」

「そう言われると思った」

シュンとした久木原を見て、南出は急に笑顔になった。

「だろうな」

不機嫌だったのが、急に頬を緩ませて久木原に笑い掛けている。

「いい傾向じゃないか」

「いい傾向?」

「そうだよ。ただの"友だち"が自分以外の人間と仲良く飯を食ってるからって、嫌な気持ちにはならないじゃないか?」

「まあ。除け者にされてるんなら別だけどさ、ちょっと、その、違う感情が生まれたって言うか」

「それはな、世間一般的には"嫉妬"って言うんだよ」

「嫉妬?」

「そう。藤田さんに嫉妬したんだろ?」

「・・・そう、かも」

「そうかも、じゃないよ」

南出は一歩近付き、久木原の肩をポンと叩いた。

「急がなくてもいいから。ゆっくりと俺の事を意識してくれ」

「お前はそれでいいのか?」

「いいよ。言っただろう?作戦変更を余儀なくされたんだ、俺は」

「じゃあ、藤田さんの事は作戦なのか?」

「どうだろ?今夜の事は成り行きだけど。それが功を為すかもしれないという"計算"はあったさ」

「だが」

「もう・・・。さっきから『だが』とかばっかだな。お前は」

南出の手が久木原の頬に伸びてくる。ピトッと指先が頬に触れた。こういうふうに南出から意味有り気な触られ方をしたのは初めてだった。ピクッと反応すると、南出はしたり顔をする。

「あのさ、俺はお前のそういう不器用な所も、全部纏めて好きでいてやるって」

頬に触れた指先は冷たかった。その冷たさが久木原には救いだった。

「そんなボケたお前に愛想尽かして、俺が出て行くとでも思ったか?」

計算高くこの展開を見越していた、という南出の笑みは妖艶だった。

「その、そこまでは考えなかったけどさ。俺なんかでいいのかな、とか、思う。お前は綺麗でシャンとしている。それに引き換え俺はホント呆れるほどダメダメでさ。自分でも情けないんだけど、中身のない人間で」

「へえ!結構、わかってきたじゃないか」

「・・・まあ。こう、へこむ事ばかり続けば」

「そういう、素直なとこ、好きだぞ」

「南出」

「俺、小さい頃から家族には"ナリちゃん"って呼ばれてんだ。今度からお前もそう呼べよ。ちょっと距離が縮まった感、出るんじゃないか」

"南出"から"ナリ"という愛称に変わると、2人の関係はどう変化するのだろうか。

「ナリ」

「うん。じゃ、風呂、先に入るな」

「おう」

南出の手が頬から離れていく。冷たかった指先が久木原の頬で温まって去って行く。南出の指が当たっていた場所だけがなぜか温かい。久木原はそこに自分の指を乗せた。


 一度は閉まったバスルームのドアが開いた。ドアから南出が顔を出し、ドキリとして頬から指を離した久木原を見た。

「一ヶ月」

南出が人差し指を立てた。

「俺も待つから」

「一ヶ月」

「そう。待ってやるから。お前はゆっくりと俺に落ちろ」

「・・・」

その言葉はまじないのようだった。南出の術中にはまってしまった久木原には、逃れる術はない。

「なーんてね!カッコいいこと言っちゃった」

バンッと大きな音を立てて、久木原の鼻先でドアが閉まる。

「うわっ・・・どうしよ」

すでに胸倉を捉まれて振り回されているような気がしないでもないが、前途多難な一ヶ月はすでに始まっていた。


 翌朝、7時10分前にインターフォンが鳴った。満面の笑みで「おはようございます!」と言うのは藤田だ。

「久木原さん、おはようございます」

「おはようございます。早くからすみません」

わざわざ朝食のパンを持ってきてくれた藤田に、久木原は強張った笑顔しか見せられない。

「南出さんは?」

「いますよ」

「南出さーん!」

藤田は大きな声で南出を呼んだ。シャツとスラックス姿の南出が「はーい」と返事をすると、藤田は久木原を押し退けるようにして中を覗き込んだ。藤田に気付いた南出が居住スペースから顔を出した。

「おはようございます!」

「約束どおり、朝食のパンを焼いてきましたよ」

南出が受け取ったパンは焼き立てだ。袋の上部の封は開けたままだ。

「ありがとうございます。うわっ、焼きたてだ。リキ、見てみろ。まだホカホカだぞ」

焼きたての食パンは見るからに柔らかそうだ。

「どうぞ!散らかってますけど」

南出は自分の家であるかのように、藤田を部屋に招き入れた。久木原は一歩下がって藤田を招き入れる。一晩で胸のモヤモヤが晴れるわけもなく、久木原はどんよりとした気分で「どうぞ」と言うしかない。

「お前、間に合うのか?」

「大丈夫。藤田さん、どうぞ」

「じゃあ、お言葉に甘えて。お邪魔します。へえ!意外と広いんですね」

藤田は中に入ると周囲をキョロキョロと見回した。

「そうなんですよ。使ってないロッカールームもあるんですよね」

「へえ」

「店舗兼自宅、って感じです」

南出は紙袋から取り出した一斤の食パンを、「美味そう」と言いながら手で半分に割った。

「うわ・・・っ!これ、1回でいいからやってみたかったんだ」

まるでテレビのCMのように分けられたパンの香りがふわりと部屋に漂った。

「凄い!ふわふわだ。リキ!コーヒー、淹れてくれ」

「はい、はい」

南出の言うがままにコーヒーを準備する久木原は、除け者にされたような気分でネルにコーヒー粉を入れ湯を回し入れた。
 
*****

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