★皆さま、こんばんは~~!!
さあ、今年も信ちゃんが全力でポッキーを否定する日がやって参りました!!今年はちょっと目線を変えて、なんと~あの、三木店長語りとなります♪
『11月11日はポッキーの日!』
「じゃない」
テレビCMが流れると信吾さんが、即時に否定した。断固とした意思を感じるが、怜二くんの誕生日は全国共通ではないのですよ。だが、毎年この時期になると流れるCMと信吾さんの言葉。聞く度にからかいたくなる。同じ事の繰り返しなんだけどね。
年中行事の一つ、って事でご了承を。
「チンアナゴの日」
「違う」
「いい男の日」
「それは俺の事か?」
顎に手を置き、ポーズを決めた信吾さん。カッコいいんですけどね。
「あははっ」
「何だよ、その笑い」
「そう言えば、お客さんが言ってましたよ。『S-five』の日ですね、って」
満足そうに頷く信吾さんは、手元の書類を整理し始めた。ふんふんと鼻歌を歌い、超が付くほどの上機嫌だ。
「大体、『チンアナゴの日』ってなんだよ?」
「チンアナゴ、知りません?」
砂の中から身体を出し、水中でゆらゆら揺れるチンアナゴは水族館の人気者だ。それを知らないわけではないだろうが、信吾さんは俺を睨む。ああ、"あんただけの"人気者・怜二くんはチンアナゴとは似ても似付きませんがね。
「そんなもんはどうだっていいんだよ。とにかく俺にとって、11月11日は神聖な日なのだよ、三木くん」
「わかってます。"あの"怜二くんが生まれた日、ですね」
「そのとおりです。じゃあ、後はよろしく頼んだよ」
「了解です」
「了解です」と俺が言ったのに、ドアを閉める直前には「頼むからね!」と更に念を押す。
「任せてくださいよ、信吾さん」
「うん、わかった!じゃあ!」
笑顔で出て行く信吾さんを見送って、俺もコートとマフラーを手に立ち上がった。
11月11日は、信吾さんの最愛の怜二くんの誕生日だ。この日に休みを取る為に、『S-five』の社長・滝山信吾はなんだってやるわけだ。今年も10日から3日間休みを取り香港に飛ぶ予定だったが中止になった。
怜二くんが勤務している建築設計事務所は、現在大きな仕事を抱えている。
怜二くんは、そのプロジェクトのサブチーフを任されているのだ。入社2年目での大抜擢だ。それを知った時は「さすが、怜二」と自慢してたっけ。圭介くんが「じいちゃんか」とツッコミ入れるほどのデレデレだったな。
信吾さんが旅行の計画を立てて、予約したのは1年前の事。だが、1年の間に彼を取り巻く状況は刻々と変化する。それは仕方のない事だ。
信吾さんと怜二くんの間で、「行こう」、「行けません」のやり取りが続き、とうとう旅行はキャンセルとなった。それが余程悔しかったのか、信吾さんは猛然とバースデーパーティーの計画を立て始めたのだ。当然のように俺を巻き込んでね。
準備された真っ赤な薔薇は100本。彼の頭の中には、これをベッドに散らして裸の怜二くんを横たえて・・・って、ロマンチックな場面が広がっているに違いない。
羨ましいね、信吾さん。
踊るような足取りで事務所に戻ってきた信吾さんは、2着のコートを持っている。
「三木くん!」
「はい」
「どっちのコートがいいと思う?」
「うーん」
彼はチャコールグレーのスーツと淡いグレーのシャツ、紫色のネクタイに着替えていた。2着のコートは比べろという方が無理、ってくらいどちらもオーソドックスな型だ。色目は黒と、ほぼ黒と言っていいレベルのチャコールグレー。どちらも上質なカシミヤのコートだ。
「どっちもいいですけど」
「こっちは怜二とお揃いなんだ」と、信吾さんは黒いコートを前に出した。知ってるし。
「じゃあ、そっち」
「でも、こっちは怜二が初めてのボーナスでプレゼントしてくれたんだ!無理しなくてもいいのにさ、俺の為に。なんて優しい子なんだ。三木くんもそう思うだろ?」
ええ、怜二くんが清らかな心の持ち主だ、と百も承知ですとも。ついでに、コートをプレゼントしてくれたという話しは耳にタコが出来るほど聞いた。
怜二くんは派手な色目の物は好まないからなあ。信吾さんが黒は持ってるけどこれくらいのグレーは持ってない、って感じで選んだのかな?
初めてのボーナスだから、好きな物を買えば良いのにね。彼は実家のご両親、祖父。そして滝山家の養父母にもプレゼントを準備していた。
「2着とも着れば?」
「三木くん、俺は真剣なんだよ」
ええ、わかってますよ。
「あははっ。じゃあ、今日の怜二くんのコートは?」
「俺とお揃い」
「じゃ、黒で」
「わかった」
ニコリと笑った彼、幸せそうだ。
信吾さんが黒いコートを腕に掛け、颯爽と会社を出たのは午後4時30分。怜二くんの終業時間ピッタリに、彼を会社から強奪する予定だ。
プロジェクトは佳境に入り、現在、怜二くんは土、日関係なく出勤している。しかも、今夜のパーティーはサプライズだ。但し、怜二くんのボスには「予定していた旅行をキャンセルしたんだから、11日は17時に退社させてくれ」と、嫌みったらしく事情を話して許可を得ている。
俺は準備を整える為に先回りする。今夜は、怜二くんの為にクルーズ船を貸切だ。
一足先に桟橋に到着した俺は、今夜の参加者と共に信吾さんと怜二くんの到着を待つ。
今夜の参加者は清川薫くんと花岡真樹くん。それから信吾さんの甥っ子の平井大貴くんと彼氏の寺田彰彦くん。大貴くんの兄・和貴くんは一人で参加。井上辰弥くんと大北飛鳥くん。
輝也やベニちゃんたちは仕事だから不参加。何せ、今日は土曜日だ。『S-five』も稼ぎ時だからね。
バースデーパーティーは、洒落た洋館を思わせる白いクルーザーを貸し切っての隅田川クルージングだ。
例によって信吾さんは「2人っきりが良かった」と不満を漏らしたが、計画をまあちゃんに聞かれてはね。
「うわあ~僕も乗ってみたいなあ!」の一言で、『2人で過ごすロマンチックなクルージング』は頓挫した。まあちゃんには「怜二くんにはサプライズ」という主旨を理解させたが、キラキラした瞳に負けた。
まあちゃんが皆に声を掛けたわけだが、怜二くんは幼少の頃から友人を呼んでの「楽しいお誕生会」とは無縁だったようだからね。結果的には「2人よりも大勢の方が怜二が喜ぶんじゃないか?」、という所で落ち着いた。まあ俺が、信吾さんに懇々と言い聞かせた、って言うのが正解かな。
桟橋に到着すると、クルージング会社のスタッフがすでに準備を進めていた。白いクルーザーのデッキには、色とりどりのハート型の風船が飾り付けてある。40人ほどが乗船出来るクルーザーだが、頼んでおいたバイオリンの生演奏とジャズバンドが、すでにリハーサルを終えてスタンバイしている。
リムジンが到着する予定の場所から、桟橋までは深紅の絨毯を敷く。ハリウッドじゃあるまいし。だが、これはうちのバカ社長たっての希望だ。まあ、怜二くんには似合うから許す。
食事はフレンチと寿司にバーベキュー。フレンチのシェフと寿司職人が同行のプランだ。可愛い子たちの為にケーキバイキングは必須だね。ドリンクは黒川セレクトのワインとシャンパン。
後々、クルーザー会社には『タチバナ』との取引を持ち掛ける予定だ。
「三木店長!」
「やあ!まあちゃん。今日も可愛いね」
華やかな装いのまあちゃんはすでに主役級だ。白いスーツにひらひらフリルのブラウスはリボンタイ。ドット柄のカマーバンド。肩に掛けているのはグレーのミンクのコート。俺を見つけて軽やかに抱き付いたのを見たクルージング会社のスタッフがギョッとしている。
「ありがと!三木店長もいつもカッコいいよ。これなの?凄い船だね!」
まあちゃんは大きな瞳を更に大きくしてクルーザーを見ている。
「ああ」
「僕、感激しちゃう!楽しみだなあ」
まるで「自分のお誕生会」、って感じで喜んでいるまあちゃん。ああ、彼も可哀相な幼少期を過ごしたんだったな。
「それでね、これは・・・」と紙袋の中の物を説明し始めた彼を、薫くんが止めた。
「まあちゃん、三木店長は忙しいから」
「ああ!そうだったね。僕は何をしたら良いの?」
「そうだな・・・」
「まあちゃんは先にクルーザーに乗ってていいよ。後は俺たちがやるから。怜二くんが着いたらみんなでクラッカー鳴らすんだよ。他の人が来たら、クラッカーを鳴らすタイミングを教えておいてね?いいね?」
「うん!クラッカーは怜二くんがクルーザーに乗ってきたら、パン!だったね?じゃあ、僕は中で待機だね?」
「最初は皆で隠れてるんだよ?皆にも伝えてよ?いいね?」
「任せてよ!」
まあちゃんは胸を張った。ここに来るまでに、しっかりと予習させてきたらしいな。
「よろしくね」
「うん!」
まあちゃんは堂々とした態度でクルーザーに乗り込んだ。
「さすがは薫だな」
「そうですか?まあちゃんに手を出されると、逆に仕事が増えるでしょう?」
ご尤もです。
「助かるよ」
「まあ、まあちゃんとは付き合い長いですから」
しれっと言ってのけた薫くんは、黒いスーツにグレーのネクタイ。地味だが品物も品も良い。清々しい印象の彼には、シンプルな物の方が似合うのだ。
彼はすでに自分の仕事は"俺の手伝い"だと悟っているらしい。ジャケットを脱ぐと、俺が作った進行表を見ながら細かい所をチェックし始めた。
何も言わなくてもさっさと始めちゃう薫くん、大好きだよ。
そうこうしている間に、大貴くんと彰彦くんが揃ってやって来た。今日はケンカはしていないようだ。
「三木店長~お疲れ!」
「やあ、いらっしゃい」
「お招きにあずかりまして」と、紋切り型の挨拶をする彰彦くんは、大ちゃんをハグした俺を睨む。おいおい、ハグだけだろうが。
「彰彦くん、いらっしゃい」
「何かお手伝いしましょうか?」
「ありがとう。今、薫がチェックしてくれてるんだ。君たちは先に乗船してもらおうかな?怜二くんが着く直前に隠れてもらう事になってるからね」
「クラッカーを鳴らすタイミングとか、まあちゃんに聞いてね。それでもわからなければ、俺に聞いて?」
「わかりました」
彰彦くんは俺から大ちゃんを引っ剥がして、抱えるようにしてクルーザーに消えた。直後に井上くんと大北くんがやって来て、2人も中でスタンバイだ。
西の空が茜色に染まり海が赤くなる頃、信吾さんと怜二くんを乗せたリムジンが深紅の絨毯の手前に到着した。
*****
ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!
今年も11月11日になってしまいましたwww1年が終わろうとしておりますねえ・・・。
日高千湖
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そうなんです~土曜日なんです!!あちゃーーーっ!店長・福原としては休めませんよぉ!
こうなったら、怜二くんの少ないお友だちを総動員して・・・。あれ?少ない(笑)
まあ、こんなもんでしょう。と三木くん、納得です。
まあちゃん、主役級の派手さです。怜二くんは逆に仕事帰りなので超地味、かもwwwまあ、そこは信ちゃんが抜かりなく準備してると思いますけどな!
薫ちゃんはこういう仕切りが似合うと思うんです。本人はもう慣れっこかな?
怜二くんにおめでとうメッセージありがとうございます!!
急に寒くなり、縮み上がってる日高ですwww aさまも、おかぜなど召されませんようにね~ご自愛くださいませ!
拍手&コメントありがとうございました!
ポッキーの日、改めプリッツの日、じゃなかった・・・
怜ちゃんの生誕記念日が♪
それにしても豪華なパーティーですねぇ。
愛されてますね(^▽^)
まあちゃんも相変わらずで、ほほえましいですねぇ・・・
苦労した子たちがこうしてどんどん成長して頼もしくなっていく。
なんか、母親のような気持ちで見てしまいますわw
みんな頑張れ~
おばちゃんは柱の陰から応援してるぞっ♪
> 今年もついにやってきましたね!
> ポッキーの日、改めプリッツの日、じゃなかった・・・
> 怜ちゃんの生誕記念日が♪
そうなんですよ~ポッキーの日なんて言ったら信ちゃんに叱られますよ?
> それにしても豪華なパーティーですねぇ。
> 愛されてますね(^▽^)
でも、香港行きがキャンセルになってるんで(笑)毎年、大変なんです。信吾さんwww
> まあちゃんも相変わらずで、ほほえましいですねぇ・・・
> 苦労した子たちがこうしてどんどん成長して頼もしくなっていく。
> なんか、母親のような気持ちで見てしまいますわw
>
> みんな頑張れ~
> おばちゃんは柱の陰から応援してるぞっ♪
ありがとうございます!!皆さんもそういうお気持ちの方が多いようです。
怜二くんは特に始まりのお話のメインでしたので。まあちゃんも相変わらずなんですが、彼はもう一生このままで!
寒くなりましたねwwにゃあさまもお風邪等召されませんように!!コメントありがとうございました!
11月11日は「●●の日」がやたらと多いんですよ!いい買い物の日、でしたね!ふふふっ
> それにしても…少ない友達(^-^)
そうなんです。彼の活動範囲は広いようですが、「お友だち」は少ないの(笑)彼が自分から話しかけたりはしないからですかね?
薫くんは三木店長2世ですかね~!和貴くんはとりあえず、パパ上の跡取りですね。
まあちゃんが怜二くんの唇を、ですか?ええーーっ?まあちゃんは「僕の唇はヒロオミさんのものなんだからね!怜二くんともしないの!」と申しております。
怜二くんの反抗期は来ないですよ~(笑)反抗というか、勤務先に口を出されると怒るようですよ。今回はサプライズですからね。香港の替わりのクルーズパーティーなので、怜二くんの会社の社長さんもOKなのです。っていうか、煩いから「はい、はい!どうぞ連れて帰ってくださいよ」って感じ?
レスが遅くなり、申し訳ございませんでした!!また、お気軽にお顔出してくださいませね!コメントありがとうございました!