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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

パパの一番長い日~三木昌人の華麗なる一日

《11月某日・・・トラブルは社長と共にやってくる》

《午前8時》 

「じゃあ、行って来ます」

愛する奥さんを抱き締めてお出掛け前のキス。それを見ていた今年5歳の長男が「ママ、僕も!」とママの頬にキスをする。

これが三木家の毎朝の恒例行事だ。

奥さんに見送られて息子と手を繋ぎ、駐車場へと急ぐ。後部座席のチャイルドシートに息子を載せて、これから幼稚園へと向かう。車の中では「必ず聞かせてね!」と奥さんに頼まれている『ドラ○もんの九九の歌』をBGMに、約5分で幼稚園に到着だ。

「おはようございます!よろしくお願いします!」

今日も笑顔の先生に息子を引き渡していると、「三木さん、おはようございます!」と、早速お声が掛かる。

「先日は《イゾルデ》素敵でした!」

この幼稚園のお母様方のボス的存在、綾香ちゃんママだ。

「ありがとうございます!綾香ちゃんママ」

「今度は保護者会の昼食会を20名で予約したいの、またお願い出来るかしら?」

「もちろんですよ」

『幼稚園の保護者会懇親会20名さまご予約』を頂いた。

「今回も《イゾルデ》でよろしいですか?それとも他の店に致しますか?」

「そうねえ・・・。《イゾルデ》だとランチのメニューは同じ物になるのかしら?」

「メニューは違うものをご準備させて頂きますよ」

「うわあ!楽しみだわ!じゃあ《イゾルデ》で、再来週の金曜日だけど大丈夫かしら?」

「少々、お待ちください」

その場で予約状況を確認。何とかなりそうだ。

「大丈夫ですよ。ご予算は?」

「お飲み物も込みで一人5千円で」

「ありがとうございます、早速準備させて頂きます」

《午前9時》

出社後、スケジュールボードを確認。

社長の信吾さんは、朝から加藤建設の会議に出ていて不在。午後から《花宴》で合流予定。パーティーに出席予定(三木、同行)

橋本圭介専務・・・箱根へ出張中(「半分遊び」と、書き足す)

高田博臣専務・・・定時出勤予定。午後本社に出社(「もっと働け」と書き足す)

山下明利常務・・・定時出勤予定。(怜二くんが午後から来るから帰りは送ってね。とメールする)

木下章太郎常務・・・午前中出張。午後から出勤(三木店長!お願いします!)

なんだこりゃ?午前中出張?聞いてないぞ!?

「おはよう、章太郎。今日遅れるの?どうして?」

『すみません、薫の入試の下見に・・・』

「下見っていうのは家から公共の交通機関で行って初めて役に立つんだよ。受験は電車・バスを使うのが鉄則です!出張取り消し。即、出勤しなさい。俺のいない間に書き込むんじゃないよ!全く!」

『薫の事、心配じゃないんですか?』

「信吾さんみたいなこと言ってるとフラれるよ?早く来い。今日まで圭介くんが箱根だから、俺は忙しいの!」

過保護過ぎる章太郎に呆れながら、黒川に今朝の予約の件を連絡しメニューの変更を指示した。

《午前10時》

「じゃあ、あとはよろしく!」と言い残して、まずは最近サボリ癖の付いた章太郎の元へ。可愛い薫ちゃんがゴタゴタしてたから、章太郎を甘やかし過ぎたかな?と、ちょっと反省しながら《花宴》へと向かった。

「忙しいのに来てくれたんですか?良かった!」

「違うよ!お前がサボらないように見に来たんだよ。ちゃんと、仕事しろよ」

章太郎に釘を刺してから《イゾルデ》に回り、黒川と今日のランチとディナーの予約状況を確認し、午前11時。ランチのお客さまをお出迎えだ。

「いらっしゃいませ」

ここは黒川の肌理細やかな仕事が効を奏して、山下・章太郎の「爽やか組」がいた時と変わらない売り上げを誇っている。

「二枚看板が一気に抜けた後、心配だったが、さすがは嘉美ちゃんだね」

「ありがとうございます。でも、褒めてもなにも出ませんからね」

「ははっ!じゃ、例の予約の件はメニューが出来たら知らせてくれ」

「わかりました」

ここは黒川に任せて大丈夫だな。

《午前12時》

《シェーナ》に到着。今日は午後から、信吾さんと一緒にパーティーに出席。その前に、山下くんと打ち合わせだ。《シェーナ》にはもうそろそろ怜二くんが来る予定になっているから、煩い保護者から電話があるはずだ。

「お疲れさまです」

「三木くん!今夜の予約、6名さまキャンセルが出てるよ」

「そう!待ってて、すぐに埋めるから」

開けておくのも勿体無い。放っておいても予約は入るが、こんな時こそ上客候補に営業しないとな。一週間ほど前に紹介された某社長が家族で食事会をしたいと言ってたな。

突然の電話だったが、社長には5名さま3万円のコースをご予約頂いた。

「じゃあ、山下くん、後はお願いします。ワインは俺からサービスで付けといてね」

「OK!」

と、話しをしている間に裏から怜二くん登場だ。

「おはようございます」

「おはよう、怜二くん!これ、おやつにどうぞ」

《イゾルデ》からの移動中に買ったマカロンの袋を差し出すと、怜二くんの極上の笑顔が返ってくる。ああ、癒されるなあ・・・。ガサゴソと包みを開ける怜二くんを眺めていると、早速電話が鳴る。絶対に社長だ。

「はい、怜二くんは到着しましたよ」

『そう!良かった!じゃあ、13時《花宴》で。軽く食べたいからおにぎり作っといてくれる?』

「はい、はい」

『三木くん、「はい」は一回だよ!』

「はーい!」


「怜二くんも大変だね!じゃあ、俺は《花宴》からパーティーで直帰します。怜二くん、帰りは山下くんが送るからね。アルバイト、頑張って!」

怜二くんにハグして頬にチュッとキスしてから出発だ。怜二くんへのキスとハグは信吾さんがいたら阻止されるから、いないうちにみんなやってる。しかも俺のは甘い物のお礼だから、いいのだ。

《午後1時》

《花宴》に再び顔を出し、章太郎がフラフラと可愛い薫ちゃんの所へ行ってしまわないように『滝山不動産』の決済印を押させる。自分と信吾さんのおにぎりを握りながら章太郎に指示を出す。

「これに目を通して、判を押して・・・。あとはこっちの資料に目を通しておいて。この店が不景気だからって賃貸料の値下げを要望してきてるから、必要なら見に行って話を付けて来い。売り上げとか確認して、違う店舗を紹介してやってもいい」

「これ全部ですか!?俺、一人で!?」

「そう!苦情処理も仕事のうちだろ?木下常務」

甘やかすとろくな事はない。今のうちに鍛えないとな。圭介くんみたいにサボりを覚える前にしっかり仕事を叩き込んでやる。そうこうするうちに「お疲れさま!」と社長の登場だ。加藤建設の会議の後、ここで着替えてパーティーに出席だ。

「おにぎりは!?」

「はい、ここ!」

「俺の鮭は?」

「これ!」

「章太郎!お茶!」

パーティーでは食べてる暇なんてないから、おにぎりを2個ずつ腹に入れておく。スーツは社長の着ている物に合わせて選び直した。今日の信吾さんはダークグレーのスーツに薄いピンクのシャツとネクタイも抑え目のストライプだ。俺も控え目に黒のスーツに着替えて、ちょっと出来る秘書っぽくしてみる。

午後2時出発だ。

「午後3時からパーティー、午後6時終了。午後7時から滝山会長と義道社長と会食・・・。あれ、これは場所変更なんだ」

「ああ、本家に行くよ」

「まだ、ゴタゴタしてるんですか?」

「ああ、ちょっとね」

「じゃあ、俺は《花宴》から直帰していいですか?」

「いいよ」

信吾さんと怜二くんが一緒に住み始めて半年。未だに滝山家はゴタゴタしている。まあ、要するにお金のある所では、なにかと問題も多いって事。

「ところでさあ・・・。三木くん、ものは相談なんだけど・・・」

なんだか嫌な予感。

「今年のクリスマスなんだけど・・・」

「ああ、店の予約はほぼ埋まってますよ!キャンセル待ちも取ってる状態です。最近はもっといい所が取れたらそっちにってパターンがあるから、各店5組までキャンセル待ちを受けてます」

社長は非常に言い難そうだ。

「あれ?クリスマスの予約の件じゃないんですか?」

「それが・・・俺、怜二を連れて・・・」

「連れて?」

「ちょっと」

「ちょっと?」

「ニューヨークに・・・」

「はい?」

「ニューヨークに・・・・行かせて下さい!お願いします!」

耳を疑ったけど本気みたいだ。後部座席で深々と頭を下げてやがる・・・。でも、聞かなかった事にしよう。それがいい。

「・・・」

「お願い!」

「・・・家でチキンでも食べて下さい」

「いや、ほら、海外なんて行った事ないんだよ、怜二は。なっ!良いと言ってくれ!頼む!なんとかして!」

「・・・俺も、奥さん連れてハワイに行きたいなあ・・・」

「行っていいから!行っちゃって!3人目作って来い!」

「もしかしてロックフェラーのクリスマスツリーの前で、プロポーズしちゃおうなんて思ってるんでしょう!?」

「バレた!?」

「・・・来週の圭介くんは、箱根行きはなしですね」

「ありがとう!」

俺が「NO」とは言わないと確信していたらしい。

「はあっ」と、わざと大きな溜息を吐きバックミラー越しに能天気な社長を睨んだ。

《午後3時》

 某ホテルのパーティー会場入りして、名刺を配りまくる。今日は不動産会社や賃貸業の集まりだ。信吾さんはどこに行っても星望の卒業生に捉まり、滝山産業の関係者や関連会社の人たちに囲まれるから、上手く抜け出させるのも同行者の仕事となる。

そろそろ章太郎にこの仕事を覚えさせて、コキ使ってやる!いや黒川の方がこういうのは上手そうだな。

《午後5時》

 ホテルを出て再び《花宴》へ。

「ところで、信吾さん。ニューヨークの件ですが、飛行機もホテルも手配済みなんですよね?」

「当然だろ!?」

やっぱりね・・・。そうだと思った。

「ホテルはプラザホテルなんだ!」と後部座席で新婚旅行への夢を語る社長は可愛いもんだ。

「でさ!この件に関しては、怜二には内緒だからね!」

「はい、はい」

「三木くん『はい』は一回だよ!」

わかってますってば!!

《午後6時》

《花宴》から信吾さんは滝山本家に向かった。

「ごめん!今日は遅くなるよ!」と奥さんに電話を入れて、まずはクリスマスディナーの予約状況から確認。各店とも好調な滑り出し・・・どころじゃなくて、キャンセル待ちも打ち切りになってるじゃないか!?

「章ちゃん!12月のシフト表出して!それと、他の店にもシフト表をFAXさせて!」

「三木店長、本社に戻って仕事してくれませんか?俺、ここでやられると迷惑なんですけど」

「この、愚か者め!お前も仕事を覚えろよ!いいから!さっさとやる!」

「はい、はい」

「章太郎!『はい』は一回だ!」

お前が一番忙しい時間帯に突入してるのはわかってるけどさ、本社に帰れば、これ全部俺が一人でやることになるんだよ。

巻き添えだ、巻き添え!

《午後8時》

 俺は頭を抱えた。

《イゾルデ》《シェーナ》《白夜》《SUZAKU》のクリスマスツリーを頼んでいた業者がサイズを間違えて発注した為に、もみの木の手配が遅れてるという。毎年同じサイズを頼んでるのに、どうやったら間違えるんだよ!

「とにかく4店とも12月1日の深夜に設置が終わらなきゃ、お宅とは今年までのお付き合いとさせて頂きますから!善処して下さい」と、電話を切りここがダメならどこに依頼するかと思案中。

「章ちゃん、ここはツリーは要らないね!?」

「外にたいまつ欲しいです」

「それ・・・来年でもいい?」

「ダメです!」

「あっそ」

美弥子さんに連絡して、どこか業者を紹介してもらうか。

《午後10時》

《花宴》閉店。閉店30分前に章太郎が「三木店長、薫を迎えに行きたいんですけど・・・」と、遠慮がちに聞いてきたから特別に許してやった。もうそろそろ、薫ちゃんを連れて戻ってくる頃かな。

戸締りと火の元の点検、会計カウンター前の有川健次郎作「紅葉賀」の前にシャッターを下ろし鍵を掛ける。

30分経過。章太郎は戻らない。スタッフを先に帰して、俺だけ残って残業だ。

 来月の《シェーナ》の怜二くんのシフトの穴を埋めるのに、《花宴》から人を回して欲しいな。あとは高田くんが出してない先月の《白夜》の売り上げ報告をもらって、新年会に発表する社長賞だの、なんだの・・・。

ああっ!もう!章太郎はまだか!?

10分後、頬を赤く染めた薫ちゃんを連れて戻って来た章太郎に「早かったね!」と嫌味を言い、薫にはわざと熱烈キスとハグしてやる。

車の中でイチャイチャしてやがったな!

「じゃあ、今から《白夜》に行くから。薫ちゃん、送るよ!」

「はい」

「薫は俺が!」

「お前は残業。判を押しなさい」

強引に薫ちゃんを奪ってマンションまで送り、《白夜》に着いたのは午後11時30分。今夜も午前様決定だ。

「お疲れさま!高田くん、頼んでたもの出来た?」

「ごめん!まだだ。明日で良いか?」

「絶対にダメです!今すぐ、やりなさい!」

ちょっとお酒が入ってご機嫌な高田くんを叱咤激励しながら報告書を出させて、「三木店長!こんばんは!」とハグしてくる花ちゃん改めまあちゃんをギュッと抱き締めて「癒して、まあちゃん」と頬摺りすれば・・・ああ、癒される。

「ふふっ、三木店長。お疲れだね」

「うん!まあちゃんだけだよ。俺をわかってくれるのは」

「ふふっ、頑張ってね、お父さん!」

「真樹、三木くんとハグすると妊娠するぞ。最近溜まってるから」

誰の所為で溜まってるんですか!?

「はあ・・・。もう帰りたい。奥さんを抱き締めたい」

出来上がった報告書を受け取ってここで入力すれば、明日は早く帰れるぞ!というわけで、高田くんの机で再びパソコンに向かう。

「三木くん、税金の事なんだけど」

「ああ、早めに領収書纏めて出してよね。先月分整理したの?」

「まだ」

「出して!」

そんなこんなで《白夜》を出て、帰宅したのは午前1時30分。

まずは子ども部屋のドアをそっと開けて、子どもたちの寝顔にキス。風呂に入って奥さんを起こさないようにベッドに潜り込み長い一日が終わる。

明日も頑張ろう!

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

《もろびとこぞりて》~朧月夜にしくものぞなき番外編の一ヶ月ほど前のある日という設定です。ちなみに「空行く月のめぐり逢うまで」は《もろびとこぞりて・11話》の直後から話は始まります。

   日高千湖

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ありがとうございました! 
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ヒロとアキ

★緩いけどR18的表現有りです!年齢に達しない方は回れ右して下さいね!あっ!それから、苦情は受付けませんよ~三木店長も忙しいんで!



《彼氏と彼氏の事情~ヒロとアキ》

 アキが《八番館》の黒服見習いになって2ヶ月。18歳未満の俺たちはまあ、コソコソ働いてるわけだ。黒いスーツで灰皿を替えたり出来るのも時間が限られてて、あとは厨房で洗い物したり掃除が主になる。給料は安いけど、羽振りの良いホストたちは食事をご馳走してくれたり、服をくれたりと面倒見が良い人が多くて、不自由は感じない。

今のところ空き部屋がなく、アキは俺の部屋に居候中だ。公園でウリをするほど生活に困窮していたアキは、ここに来てからはそんな必要もなくなり、肉付きも良くなった。

アキは黒いスーツが良く似合う。彼には凛とした色気がある。なんと言うのか・・・冷たい印象を受けかねない綺麗な顔立ちだが、笑うと花が綻ぶようだ。

「なに?顔になにか付いてる?」

「いや・・・綺麗だなあと思って」

「はあ?ヒロってさ、時々恥ずかしくなるような事、平気で言うよね?タラシ?ホストは天職だね」

「あ~あ、早く18になんねえかなあ」

「・・・そこ、どいて」

「ああ、ごめん」

アキの箒は容赦なく俺を打ち、床の塵を綺麗に掃いていく。事務所の電話が鳴り「俺が取るよ」と、受話器を耳にあてた。

「《八番館》事務所です」

『アキをお願いします』

「はい、少々お待ち下さい」

誰だ?

「アキ、電話だよ。名前言わないからわからない」

「ふうん、ありがとう」

受話器を受け取ったアキが、受話器を耳にあてる。

「はい・・・はい」

受話器の向こうのオトコに向かって「はい」と返事をしながら、チラチラと俺を見るアキ。様子が変だとは気が付いた。

「わかりました・・・はい・・・はい」

通話を切ったアキは、箒を掃除道具入れに片付けると「ちょっと、出掛けるから」と後ろ向きのまま言った。

「電話は誰だ?どこに行く?」

「・・・昔の友だち、1時間で戻るから」

制服である黒いスーツのジャケットを脱ぎ、鷹矢のお下がりの紺色のカーディガンを羽織ったアキは音がしないようにゆっくりとロッカーを閉めた。

「アキ」

顔を引き攣らせて「昔の友だち」に会うのか?

「アキ」

「・・・行って来る」

俺の声を無視して出て行ったアキは、その日閉店まで戻らなかった。


「どこに行ったんだよ、アキのヤツ!」

「どうした?」

ナンバーワンホストの鷹矢が俺の頭をポンポン叩きながら聞いた。

「アキが・・・その・・・10時頃出て行って、戻らないんです」

「へえ・・・そういえば《インカローズ》のリクが『アキって子がどこにいるか知らないか?』って聞かれたって言ってたなあ」

「俺、リクさんに聞いてきます!」

向かいにある《インカローズ》のリクは「50歳くらいのおっさんに『アキ』って子を探している」と、聞かれたそうだ。リクは「知りませんよ」と答えたが、その時ちょうどゴミを出しにアキが裏口から出てきたらしい。

「アキがいる事に気付いたかもな?」

「ありがとうございます」


嫌な感じ・・・。

結局、アキはその日店に戻る事もなく、寮にも戻らなかった。アキが戻って来たのは翌日の午前11時。俺は眠らずに玄関に座って待っていた。

アキが外から鍵を差し込んでガチャガチャするが、空回り。俺が鍵を掛けていなかったからだ。安アパートのドアがキイッと音をたてて開いた。


「おかえり」

「・・・ただいま・・・あの、昨日はごめん。その・・・クビになるかな?」

「ちょっと、来い!」


アキの腕を引き奥の部屋に押し込んだ。寮は10室ほどのアパートを借り上げてあるから《八番館》の従業員しか住んでいない。ここには下っ端のホストや黒服ばかりが住んでいる。ホストも黒服も稼ぎが良くなればここから出て行くから、見習いや売れないヤツは、引越し業者を見る度に「次こそは俺が」と決意を新たにするのだ。

この時間はみんな夢の中だ。


「どうして戻らなかった?」

「ごめん」

「理由を言ってみろ」

「・・・昨日はすみませんでした。聞かないで、ごめん」

アキは目を逸らす。俺とアキは知り合ってまだ2ヶ月。だが、悟史の「お告げ」は俺とアキはずっと離れるな、だったはずだ。

「アキ・・・俺はな」

「ごめん!」

「言え!」

アキは疲れているのか床に座り込んだ。力なく崩れたアキの身体からは石鹸の香り・・・。

「どこで風呂に入った?」

「・・・」

「アキを失いたくない」

「悟史の代わりだろ?俺は・・・悟史じゃないよ」

「アキだよ。アキを失いたくないんだ。困ったことがあるんなら言ってくれ。《インカローズ》のリクさんに聞いたんだ。オッサンが『アキを探してた』って」

アキはハッとした顔で俺を見ると項垂れて、小さな小さな声で「父だ・・・義理の」と吐き出すように言った。

「義理の、父?」

アキから家族の事を聞いたのは初めてだった。

「実の父は5年前に亡くなって、俺は母と一緒に母の実家に身を寄せたんだ。母の実家は資産家で・・・生活も安定してた。あのオトコが来るまでは」


資産家の娘であるアキの母親に近付いたオトコは、家に入り込みいつの間にか母親はオトコと再婚していた。祖父母は老人ホームに追いやられ、オトコは酒と博打に明け暮れ、暴れるようになっていた。

中学を卒業して逃げるように家を飛び出したアキは、この街に身を隠した。


「そいつに呼び出されて、会ったんだな?」

「うん・・・俺の名義になってる土地があって、それを母の名義に変えたくて、探してたみたい」

「で?どうして風呂に入った?」

「聞かないで・・・」

「前から、関係を持ってたのか?」

「・・・」

「答えろ!」


泣きながら頷いたアキは「中学生になってからずっと・・・」とだけ言うと泣き出した。

卒業式の後、逃げるように着の身着のまま東京を目指したアキの手元には、祖父母や親戚からもらったお年玉や小遣いが貯まった貯金通帳と印鑑一つ。働く場所なんてなくて、なんとか《ルナ》で雇ってもらえたが、ガキ1人安穏と生活できる土地ではない。アキの生活は半年で困窮を極めて、公園で・・・。

アキは膝を抱えて身体を丸めて小さな子どものように「ごめん」と繰り返す。


「あんなヤツにおもちゃにされるより、金もらったほうがマシだった」

「アキ・・・」

「こんなヤツ、ヤダよね・・・出て行くから」

「ダメだ」

アキの全部を抱き締めて「出て行くな」と言うと、アキは「そんな事したら、ヒロの事好きになっちゃう」と顔を上げずに言った。

「いいよ」

「ダメ・・・ヒロには『大事な人』が現われる」

「じゃあ、それまで・・・繋げとく」

無理矢理顔を上向かせて、アキの赤い唇を奪う。アキは驚いて俺の胸を叩き抵抗したが、押し倒してアキを暴いていく。

「ヒ・・・ロ、ダメ・・・やめて!」

「やめない・・・アキとは離れない。それが悟史の『お告げ』だから・・・アキが幸せになるまで、俺がそばにいる。一度だけだ・・・これで、アキは俺と離れられなくなる」

「でも」

アキの肌は白くて、しっとりしてて・・・剥きたての白桃みたいで甘かった。義父に抱かれて来た彼の身体からは甘い果実の匂いがする。それは甘くて、酸っぱくて・・・俺を惑わせるには十分な若い実だった。

「一緒に、住んで・・るのに、ああっ」

「もう、二度と手を出さない、触れない・・・でも、離れない」

アキの緩んだソコは俺を悦んで迎え入れる。一気に奥まで進めると、アキは艶やかな声を俺の耳に届けた。

「これからは、絶対にソイツに一人で会うなよ。河野さんに連絡して、近付けないようにしてやるから」

「迷惑、かけ、る」

「掛からない」

「ああっ・・・あっ・・んっ・・うっ」

「俺に抱かれるのは、イヤか?」

頭を振ったアキは、諦めとも踏ん切りとも付かない「好き」を赤い唇から発した。

「や・・あっ!」

アキのイイトコロを擦ってやると、声に艶が増す。

「でも・・・ああっ、ヒロッ!」

艶かしいアキの声に煽られて、キュッと締め付ける心地良い淫らなアキの中に何度も欲を吐き出した。

アキは一度だけ「ヒロが好き」と言ったが、この時以来この言葉は二度と口にしない。

少女とも違う、成熟した女とも違う・・・なんとも不思議な色気のあるアキ。中性的というわけではない、『艶やかなオトコ』と言えばいいのかな・・・?


 俺のアキに対する『好き』は「友人への好意」と「愛してる」の中間。兄弟愛とは違うな・・・アキには今でも欲情出来る俺と、俺が望めば必ず「いいよ」と言うだろうアキの間にはいつも微妙な空気が漂っている。

それは華恵が時々「イヤラシイ」と言い、真樹が「なんか妬ける」と言う部分だ。

あれ以来、俺がアキに触れることはない。アキも「抱いて」とは言わない。

お互いにわかってるんだ・・・これ以上触れてはならない存在だって事。悟史は「アキはヒロといたら運勢が上向く」と言ったが、俺には『大事な人』が現われると言ったからだ。

アキが『大事な人』だとは言わなかった。


 その後、俺はホストになり、アキは黒服になった。アキは隣のキャバクラの常連客だったアイツに口説き落とされて関係を持つようになったが・・・それが『恋愛感情』だったのか、俺には未だにわからない。

アキの心の『隙』に入り込んだアイツは『好き』という言葉で、アキを虜囚にした。アキの卑屈な部分に入り込んだアイツは、アキの『セックスする親友』という居心地の良い立場を手に入れたクセに、隣の店のキャバ嬢と結婚。

その反面アキを『好き』という言葉で縛り続けた。

もしかしたら、アイツとの事はアキの気持ちに応えなかった俺に対するあてつけだったのか?こんなに長くアイツとの関係が続くなんて思いもしなかった。

俺の存在がアイツとの関係を続けさせているようで・・・。

そんな事考えてもしょうがないってわかってる。だけど・・・俺はアキにも『大事な人』が現われると思ってるんだ。その日まで、俺はアキに対する邪な気持ちを忘れずに、彼を縛り付ける。

・・・結局は嫉妬かな。

アキを手に入れられなかった俺のささやかな抵抗なんだ。どうしてアキを自分のものにしなかったんだ、って?そりゃあ、悟史の『お告げ』は絶対だからだ。

*****


***オマケ***


へえ~~~そういう関係だったのか!!ふんふん・・・(`・ω・´)(´・ω・`)

大貴「おい!まあちゃん、これは精神的浮気じゃないか!!」

真樹「・・・僕もそう思う」

薫「過去の事だろ?もういいじゃん」

大貴「良くない!!浮気だ!浮気!」

真樹「浮気だ!」

薫「過去だ」

真樹「薫がそういうなら・・・過去・・・」

大貴「絶対に、浮気だ~~~!」


過去だと思います(笑)


   日高千湖

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ありがとうございました!

《彼氏と彼氏の事情》~服部くんの場合

 『S-five』本社ビルの1階にある《銀香》はカフェとしてオープンしたが、店を開くはずの信吾さんと三木店長が多忙を極め、臨時休業を繰り返していたらしい。

俺は学生時代に移転前の《銀香》でアルバイトをしていた。

大学卒業後、就職したはいいが職場に馴染めずに会社を辞めた。興味があった飲食業に再就職を目指していたが、思うような所を見つけられず悩んでいたのだ。

そんな時、偶然見つけた『S-five』本社ビル。ここへ学生時代にアルバイトしていた《銀香》が移転していたのだ。住んでいるマンションから自転車で約2分、これは顔を出しておいて損はないはずだ。

そう思って、俺は三木店長がいる時に《銀香》を 訪ねた。

「再就職先を探してるんですが、なかなか見つからないんです。バイトでいいですから、しばらくの間雇ってもらえませんか?」と相談すると、三木店長は「任せて!」と一言。社長の信吾さんに連絡すると、すぐに信吾さんがやって来た。

「相変わらず、可愛いなあ!服部くん!」

久しぶりの信吾さんのハグ。

「おひさしぶりです!」

「なに?仕事探してるの?じゃ、ここを任せてもいいかな?」

「へっ!?」

「俺たち忙しすぎてここは閉めようか、って話してるんだよ。服部くんがここをやってくれたら、万々歳なんだけど!」

「・・・わかりました」

信吾さんと三木店長は、その日から俺の研修を始めた。一週間後には俺が《銀香》の店長となった。

「メニューも好きに増やして良いから」と言われて、リサーチを開始。

客から「モーニングサービスはないのか?」、と聞かれる事が多いのがわかった。幹線道路沿いにはラーメン屋やファミレスはあるが、サラリーマンが落ち着いてちょっと一服していく店がないのだ。

 朝7時半に出勤して8時からモーニングサービスを始めたところ、朝から大盛況。

「改装も好きにしろ」と言われたので、10人ほどが座れるカウンターにインターネットが使える環境を整えてもらった。11時くらいまでは入れ替わり立ち代り客がやって来るようになり、三木店長なんか「増床しようか?」なんて言い出すし・・・。

カウンターだけの小さな店なら1人でも充分回せるが、これ以上になるとバイトを雇わなければならなくなる。

逆に昼飯時は暇だが、午後になると犬の散歩中の主婦やウォーキング中の老夫婦が立ち寄ってくれる。売り上げも結構伸びて、夜も19時くらいまでは客があるから開けて頑張っているのだ。

 そんな俺が注目しているのは、最近、社長秘書になった綱本さん・・・いいなあ。

彼は毎朝社長を迎えにやって来る。信吾さんは時間ピッタリに自宅から降りてくるが、秘書の綱本さんは15分ほど早くやって来て信吾さんの車と自分の車を入れ替える。

その時、《銀香》のドアを開けて「服部くん、おはよう」と、俺に笑顔をくれるのだ。そして自分専用のタンブラーを差し出すのだが、彼の指先と触れるその瞬間がなんとも言えず好きだった。

メタルフレームの眼鏡の奥には、知的な輝きを放つ眼差し。ピシッとスーツを着こなして、車を磨く彼は子どものような表情を浮かべている。

「車がお好きなんですね?」

「ええ・・・実は欲しかった車に買い替えて、今は納車待ちなんですよ」

「へえ、なにを買ったんですか?」

「スカイラインGT-Rです」

うわあ・・・カッコいいなあ。

「わあ!乗ってみたいなあ!」

「いいよ、ドライブにでも行くかい?」

「是非!」

約束したのにな・・・。


 綱本さんの事を密かに思い続けたある日、珍しく朝早くから《白夜》の高田店長がやって来た。

「コーヒーを頼む」

そう言って携帯を弄り始めた高田店長は超不機嫌。イライラした様子でタバコに火を点けて、仏頂面で電話を持ち低い声で話し始めた。

「昨日、山下とはどこで別れた?」

怒りを込めた威圧するような声。『山下』は山下店長だ・・・。じゃあ、電話の相手は誰だ?俺は注文されたコーヒーを準備しながら耳は最大限に大きく広げて、会話を聞き逃すまいとした。

「なにやってんだよ!」と、怒鳴り声が店の中に響いた。思わず他の客に「すみません!」と謝って、高田店長には目配せした。

「何度も電話したんだぞ!」

流石に自分でもバツの悪そうな顔で、高田店長はそのまま外に出て行った。

「とぼけるな!」

店を出ても聞こえる・・・。困った顔して常連客を見ると、笑ってくれた。良かった!

 店の中はしばらくおかしな空気が漂い、高田店長は会話を続けていたが通話が終わるとドアから顔を覗かせて「すみませんでした!」と客に謝罪した。2人とも常連客だから「いいえ」と言ってくれて、高田店長は出来上がったコーヒーを持つと「上の会議室にいるから、山下が来たら伝えてくれ」と言った。


 本社の駐車場に山下店長の車が入って来たのは、それから10分くらいしてからだったかな?運転しているのは綱本さんだ。

じゃあ、山下店長と一緒にいたのは綱本さん?

箱根に行った社長の代わりに中心になって動いてるのは山下店長で、秘書の綱本さんと動いている事は知っていた。じゃあ、2人は昨日からずっと一緒だったって事?

車の中の2人は仲良さそうに話をしていたが揃って降りてくると、わかった事が一つある。山下店長の服装、昨日と同じだ。ここの幹部が同じ服を着て出勤はありえない。山下店長はここに着替えに来たんだ。


そうだよなあ・・・山下店長には適わないよなあ・・・。


 山下店長は「おはよう、服部くん」と笑顔で挨拶すると、隣の不動産のドアも開けて「おはようございます」と挨拶して軽快に階段を上って行った。綱本さんはノートPCを持ってカウンターに座る。

「おはようございます」

「おはようございます。これ、お願いします」と、いつものタンブラーを差し出す指先。

「そういえば、そろそろ家の豆が切れるな。服部くん、山下店長が好きな豆は知っているかい?」

「ええ、いつもキリマンですが」

「じゃあ、キリマンを準備してくれる?いつもと同じ量で良いですから」

「はい」

なんだかいつもと雰囲気が違う・・・色っぽい。

機嫌良さそうにパソコンを開いて頬杖付いた横顔が綺麗だ。タンブラーに入れるコーヒーと、彼が今から飲むコーヒーを準備しながら表情を盗み見る。

いつもと変わらないクールな眼差し。キーボードを打つ指先が綺麗だ。いいなあ、好きだなあ。

 内線が鳴り高田店長の声で「コーヒーを持って来てくれ」と、言われた。

「上に持っていくのかい?俺が行こう。キリマン淹れてくれる」

「はい」

山下店長の分とわかって言ってるんだ。綱本さんの指定どおりにキリマンジャロを淹れ、トレーに乗せて手渡した。

「ありがとう」

彼は嬉々として階段を上って行く・・・。俺の仄かな恋心はカラカラと音を立てながら転がっていった。

軽ーく失恋した俺は、それでもずっと綱本さんを見ていた。でも、三木店長が「2人は付き合っているんじゃないの?綱本さんがベタ惚れだからね!」と笑った。


 そんなある日、朝からご機嫌斜めなご様子の山下店長とご機嫌な綱本さんが揃ってやって来た。

つい先日納車されたスカイラインGT-Rの助手席には山下店長。真っ赤な薔薇の花束を持った綱本さんが降りてきて《銀香》のドアを開けた。その一連の動作が、映画の中のワンシーンのようにカッコいい。

うっとりしながら「おはようございます」と言うと、綱本さんは花束を差し出した。

「おはようございます。服部くん、これどうぞ」

「あ、ありがとうございます!」

これ、綱本さんからの個人的な贈り物なのかな!俺の声、上擦ってなかったか?

後ろから顔を覗かせ冷ややかな声で、「カウンターにでも飾ってくれる?」と山下店長 が言った。

「・・・綺麗ですね!カウンターに飾りますね」

山下店長・・・俺の気持ちに気が付いたんだな、きっと。勘が良いもんな・・・。

ちょっと、ガッカリだ・・・。

「綱本さん、行きますよ」

冷たい声でそう言うと、山下店長は背を向けた。

「明利、コーヒーは?」

「いりません。常務と呼べ」

山下店長の言葉に首を竦めると「今日はコーヒーはお預けだね。じゃあ、服部くん、またね」と言い、追い掛けて行く綱本さんの背中から目が離せなかった・・・ラブラブじゃん。

「明利」だなんて、いいなあ。

 
 数日後、2人揃って休みを取った翌日、いつもよりも若干早く出勤した綱本さんの手には大きなバッグ。

「おはようございます」

「服部くん、おはようございます」

「そのバッグはどうしたんですか?」

なにかが、動いてる。

「実はね、子猫なんだ」

「子猫?」

小さな窓から見てみると中から小さな手が伸びてきて、透明の覗き窓越しに俺の顔をガシガシと攻撃した。

「にゃあにゃあ」

「可愛い!抱っこして良いですか!?」

「ダメだよ」

「えっ?」

「飲食店だ。君のエプロンは黒いから毛が着いてしまうだろう?」

「はあ・・・」

「猫は好きかい?」

「ええ!大好きです!」

「今日から本社の北島さんに昼間は預けるんだ。休憩時間に相手してやってくれよ」

「はい!」

暇な時間には勝手に閉めて休憩時間を取って良い事になっている俺は、客足が途切れると北島さんの所へ行き、子猫を抱き上げた。

「わあ!可愛い!」

「トラちゃんですって」

「トラちゃん!トラちゃん!」

ちょっぴりヒゲが切れたりしてるけど、茶虎の子猫からは綱本さんの香りがする。顔にスリスリしてトラちゃんに染み付いた綱本さんの匂いを吸い込んだ。

「痛い!」

トラちゃんが鼻に噛み付いた。

「大丈夫!?昨日まで野良だったから、今から私が躾けるのよ」

「だ、大丈夫です!」

可愛いトラちゃんが山下店長に見えてきた・・・。


 北島さんの勤務は基本的に17時まで。休憩時間には山下店長が顔を出し「トラ」を連れて会議室に行く。

俺がコーヒーを持って行くと山下店長の膝の上で「にゃあ、にゃあ」と大騒ぎして甘えるトラちゃんがいた。俺にはあんなに凶暴だったのに・・・。

次第に、仕事を終えた北島さんが帰るまでに綱本さんがトラを連れに来なければ、俺が帰宅のついでに《シェーナ》に届ける。

そういう図式が出来上がって、夕方は《銀香》の裏でトラはキャリーバッグをガシガシ攻撃し続け、俺が顔を出すと「にゃあ、にゃあ」と甘えるのだ。

「トラちゃん!可愛いねえ・・・綱本さんの匂いがする」

甘えるトラちゃんの首筋に鼻を押し付けて大きく息を吸い込む。片想いしてる俺のささやかな愉しみだ。それなのに、ガリッ・・・爪で鼻先を引っ掻かれた。

「痛いっ・・・もうっ!」

悔し紛れに山下店長じゃなかった、トラをキャリーバッグに突っ込んだ・・・あ~あ。

帰宅時間になり、にゃあにゃあと煩いトラを自転車の前籠に載せて《シェーナ》に到着。事務所のベルを鳴らすと待ち構えたように怜二くんがドアを開けた。

「トラちゃん!あれ?服部さん・・・鼻の上、怪我してる」

「なんでもないよ!」

事務所には綱本さんもいて、山下店長と並んでパソコンを弄っていた。

「もしかして、それトラがやったのか?悪かったね!明利、消毒を」

「大丈夫ですから!」

俺の顔を覗き込む綱本さん。顔、近い・・・ドキドキする。赤くなった頬に気が付かないのか、綱本さんはお構いなしに俺の鼻を撫でる。山下店長が救急箱を持って来てくれた。

「野良ちゃんだったから、時々凶暴なんだよね」

「ごめんね」と言いながら綱本さんが消毒してくれる。

なんだか幸せ・・・。

目の前に綱本さんの整った顔があって、口から心臓が飛び出しそうだ。トラに染み付いた匂いではなく、本人だ。消毒して、キズ薬を塗ってもらって目立たない絆創膏を貼ってくれて・・・。

俺はその間、綱本さんの香りを思う存分愉しんだ。

「ありがとうございました!」

山下店長が、気の毒そうに俺の顔を覗き込みながら言った。

「服部くんにはトラの事で世話を掛けてるんだ。お礼とお詫びを込めて食事にでも連れて行ったら?綱本さん」

「・・・それは、出来ないな」

「どうしてですか?」

「明利以外と食事なんて、浮気だ」

「・・・バカ」

山下店長は微かに顔を赤らめて、トラが入ったバッグを持つと事務所の外に出て行った。可笑しそうに綱本さんは「テレ屋さんなんだ」と頬を緩めて、彼を追い掛けた。


「仲が良いなあ」と笑う怜二くん。

「そうだね」と、羨ましそうにドアを見つめる俺。食事もドライブも消えたね。


俺の淡い恋心は春風に舞散った。


*****
 
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《彼氏と彼氏の事情》~蜂谷駿一の小さな幸せ

こちらは『空行く月のめぐり逢うまで』に出て参りました蜂谷さんのお話です。彼はタチバナグループのケータリング会社『タチバナ』のスタッフです。


 突然降って湧いた買収話。

 俺が勤務するケータリング専門会社『タチバナ』は、業績が著しく伸びるという訳でもないが、急激に悪くなったという事もない。正直に言えば、隣のフロアで毎月意気揚々と「今月新オープンする店舗は・・・」と大々的に発表しする業績右肩上がりの『タチバナウドン』とは、雰囲気も社内の扱いも大きく違ってきたなあ、とは感じていた。

しかし、橘グループの一角を成す『タチバナ』が切り離されるとは思いもしないじゃないか。もちろん親会社に守られた安心感の上に胡坐を掻いていたのは認めよう。

しかし買収とはね。こんな事なら「いっその事、クビにして下さい!」と橘社長に詰め寄った。

だがこの不況が続く世の中で、そう簡単に離職なんて出来やしないさ。社長に言い包められて、買収先に他の社員諸共丸抱えされる事を決心したのは、当然だろう?

それに、買収先も申し分ない条件を提示してきた。

俺のキャリアを充分に考慮した上で、給与も待遇も満足出来た。これまで一緒に頑張ってきた仲間を1人も切り捨てない、という約束も取り付けた。もっとも、彼らの欲するものは我々のスキルとノウハウだから容易に合意に至った。

春からは『S-five』という会社の傘下に入る事になり、新社長としてやって来たのは三木昌人と専務の木下章太郎。2人とも年下だけどね。

 買収締結まで、2人は「研修」という名目でやって来て、私の元でケータリングパーティーの企画・運営を学ぶ事になった。この2人、若いけど仕事は出来る。ついでに目を瞠るほどのイイ男だ。

『タチバナ』の女性スタッフも、『タチバナウドン』の女性スタッフも、彼らが現れると空気が変わる。

急に化粧直しに立ち上がったり、彼らに出すお茶を準備する為に女性たちが我先にと駆け込むから、給湯室はすぐに満員。誰がお茶を出すかを決めるじゃんけん大会が始まり、終いにはお局さまがシフト表を作成して冷蔵庫に貼った。

 俺たちが営業から戻っても「お茶をお願いします」と言わなければ出て来た事がなかったが、今ではそんな言葉など必要ない。彼らの求めに応じて飲み物はコーヒー、紅茶、緑茶と自在に変化し、美味そうなおやつまで付いていたりする。ついでのように俺にもそれが供されるから、気分が良いといえば良いし、悪いといえば悪い。複雑だ。

2人は微笑み一つで、お茶汲みやコピーに批判的だった社内の雰囲気をガラリと変えた。「何かご用はございませんか?」なんて、聞いた事もないような台詞が耳に届く日が来るなんて。

はあ・・・っ。どうしてこんなイイ男ばかりが生息する会社があるんだよ。


 『S-five』には否定的だった俺だが、最近はちょっとした楽しみも手に入れた。『Sーfive』 が経営する《シェーナ》というイタリアンレストランだ。

「ここで昼飯を食べましょう」と木下くんに言われて、彼の後から《シェーナ》の事務所に入った俺はそこに居た人を見て息を飲んだ。

なんと綺麗な男なんだ。

目の前で「木下がお世話になります」と挨拶をした男性は、山下明利。《シェーナ》の店長で『Sーfive』 の幹部だった。

一目惚れだ、一目惚れ。こんな出会いがあるだろうか。運命だ、絶対に運命だ。


 その日から俺は、木下くんを見習って、勇気を出して山下店長をハグだ。

なんといい香り。薔薇か?芍薬か?それとも百合か?フローラルな香りは彼にピッタリだ。身長は177、8くらいはあるようだ。女性的というわけではない。中性的というわけでもない。

凛とした佇まい、理知的な瞳の輝き。これまで出会った人間の中で一番冷ややかで、激しく秘めたものを感じる存在。同性にこんな感情を抱くのは初めてだったが確かに恋心だった。

氷の中で炎が燃えているような。うん、そんな感じだ山下店長は。

俺は元々女性にしか興味はなかったが、『S-five』にいると同性だから、とか、そんな括りはどこかへ吹き飛ぶ。いや、吹き飛ばしたのは山下店長だ。

木下くんに「昼飯は《シェーナ》に行こう!」と誘って、山下店長が作るまかない飯を食べるのが至福の時。少々迷惑そうな顔をされたって構うものか。何度も「飲みに行きましょう!」と誘い、俺の気持ちは充分に山下店長に伝わっているはずだった。

おかしなオトコに付き纏われていたが、俺が守ってみせる!なんて思っていたのに、俺の恋路を邪魔する人物が登場した。社長秘書の綱本だ。

 告白するべきか、せざるべきか、悩みに悩んだ挙句、決心した俺は真っ赤な薔薇の花束を買った。

愛の告白とまではいかなくとも、これで俺の「本気」は伝わるはずだ。そう思って準備した花束をカッコ良く渡す予定が綱本によって阻止された。そしてその薔薇は、なぜだか『S-five』の本社ビル1階の《銀香》のカウンターに飾られていた。

綱本のヤツの仕業に違いない。

「はあっ」

俺は《銀香》のカウンターを見て、大きな溜息を吐いた。俺が山下店長に贈った薔薇が、《銀香》の白大理石のカウンターの上で鮮やかに咲き誇る。

「どうしたんですか!?」

子猫と遊んでいた服部くんが声を掛けてきた。

「あの花、どうしたんですか?」

「これ・・・綱本さんが」

頬を赤らめた服部くん。

「そうか」

彼は綱本に惚れているらしい。

店が暇な時間になると、店の外で山下店長が飼っているという「トラ」という名の子猫とジャレる服部くんは可愛らしい。鼻の頭や腕に絆創膏が増えているのは、時々トラにガリッとやられるからだ、と聞いた。

「ちょっと、貸してくれないか?」

「トラちゃんをですか!?」

「ああ」

服部くんの隣に座って、「にゃあ」と可愛い声で鳴くトラちゃんを抱き上げた。せめて山下店長の子猫でも抱いて、傷付いた心を癒そうと思っただけだったのに・・・。

「気を付けて下さいよ!」

「大丈夫だよ、可愛いなあ!・・・痛いっ!」

抱き上げた途端に凶暴なトラに指をガシガシと噛まれた。後ろ足で強力なキックの応酬。

「大丈夫ですか!?この子ついこの間まで野良猫だったから、凄く凶暴になる時があるんですよね」

「そうか」

茶虎の愛らしい子猫が綱本に見えてきた。首根っこを捉まえて攻撃を阻止し、憎らしい綱本の鼻先を指で弾く。

「にゃあ!」

トラは前足、後ろ足を駆使して俺の手から逃れようとして暴れる。

 服部くんは慌てて救急箱を持ってきて、俺の指を消毒してくれた。可愛らしい横顔、24,5かな?

「服部くんはいくつなんだ?」

「俺、童顔で若く見えるかもしれないけど、もう27です。木下章太郎と同じ年ですよ」

「そうか」

話をしながら《銀香》の前で2人でしゃがみ込み、ねこじゃらしでトラと遊んでいると滝山社長と怜二くんが戻って来た。

「こんばんは、蜂谷さん、服部さん」

「こんばんは、怜二くん」

怜二くんを見つけたトラは大暴れした。

「トラちゃん!」と呼ぶ怜二くんの元へ行こうと、齧る、蹴る、猫パンチの総攻撃だ。攻撃に耐えかねて手を緩めた隙にトラは、ピョンと俺の膝の上から飛び降りて、ちょこまかと怜二くんに走り寄る。

「にゃあ!」

「トラちゃん!」

屈み込んでトラを抱き上げる怜二くん。トラは「にゃあ、にゃあ」と目を細めて鳴きながら怜二くんに抱き締められている。俺たちに対する態度と、余りにも違いすぎないか!?

「怜!今日はトラは泊めないぞ!」

社長が不機嫌そうにトラを睨んでいた。どうやら彼もトラの被害者らしいな。

「はあい、じゃあね」

置いていかれたトラは、怜二くんを後追いし「にゃあにゃあ」と鳴きながら服部くんを攻撃。

憎らしいくらい可愛い顔で大きな口を開け、尖った牙を剥き出しにして服部くんの手にガブッと噛み付き、とうとうキャリーバッグの中に放り込まれたトラ。

「はあ・・・っ。なかなか俺には懐かなくて」

「どうして?君が毎日、面倒を見てるのに?」

「はあ・・・。俺だけならすごく懐いてて、甘えるんですよ?でも怜二くんや山下店長の姿が見えると、ダメなんです」

ションボリした服部くん、可愛い・・・。

「どう?服部くん。今晩、暇なら食事でも一緒にどうですか?トラの被害者の会という事で」

「ええっ!?」

「《シェーナ》に寄るんだろう?だったら、《シェーナ》の前で待っているから、ねっ!?席は山下店長がなんとかしてくれると思うし!ダメなら、余所に行こうよ!ねっ!?」

「・・・じゃあ、はい!お願いします!」

こうして俺は、新しい恋を拾った。

*****

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born to be my baby

「見て!これ、僕の宝物なんだ」

真樹が見せたのは、キラキラ光る小さなクマのキーホルダー。

「おっ、いいな!」

「薫にもらったんだ」

自慢げにクマを俺に見せる真樹。

「そうか、良かったな」

キラキラのクマを日光を当てると、その反射を見ている真樹の顔にも光が映る。ミラーボールのような輝きに真樹は夢中だ。

「綺麗だな」

「欲しい?」

「いいよ。宝物なんだろ?」

「あーげない」

真樹はクマのキーホルダーを背後に隠した。

「やっぱり、欲しい」

ちょっとだけ意地悪したくなる。困ったような顔をしながら、考え込んでいた真樹は「いいよ」と返事をした。手を差し出すと、真樹は困った顔をしている。

「ありがとう」

俺が「要らないよ」と言うと思っていた真樹は、ションボリとクマを差し出して「大事にしてよね、クマちゃん」と、少し恨めしげだ。

「もし要らなくなったら返してよ」

「ああ」

「失くしちゃダメだからね」

「失くさないよ」

「ホントに欲しいの?」

「ああ」

ちょっと意地悪が過ぎたかな。真樹は困ったなあを顔中に滲ませて、名残惜しそうにクマを見ている。構わずに自分のキーホルダーから部屋の鍵を外し付けていると、その口はポッカリと開いて「返して」と言いたげだ。

「ホントに失くさないでよ、僕の宝物なんだから」

「失くさないよ」

クマのキーホルダーを付けた鍵を差し出して「失くすなよ」と言うと、キョトンとした。

「へっ?」

「俺の部屋の鍵」

「いいの?」

「ああ」

「うん」

胸に飛び込んで来た真樹が俺の宝物だ。


*****


ヒロオミさんの部屋の鍵もらっちゃった!これは、ホントにホントに一番の宝物。だって薫がくれたキーホルダーに付いてるんだもん!

・・・ん?

違う!鍵もクマちゃんも大切だけど・・・これをくれたヒロオミさんが僕の宝物だ。


*****


 薫が届いたメールを繁々と見ていた。

「なに?」

花ちゃんから薫に届いたのはハートマークがいっぱいのメール、タイトルは「僕の宝物」。

「花ちゃんの宝物だって」

クマのキーホルダーに鍵が付いてて、それを持った高田店長の写メ付きだ。これ全部が宝物ということらしい。

「薫の宝物は?」

「俺は・・・別にない」

「ふうん・・・。俺は薫が宝物なんだけどな、薫は?」

そう言いながら、軽く頬にキス。

「別に」

なぜか真っ赤になって立ち上がり、ハンディタイプのモップを持つとテレビの画面を拭く薫。そこはさっき君が掃除したばかりだからもう埃なんてないよ。

「薫?」

「埃が、あった」

「そう?もう綺麗になったよ?」

「あっ、ここも」

テレビの下のブルーレイやスピーカーの棚・・・埃はドンドン増えているらしい。

「薫?もう、掃除は十分だよ?」

なにが恥ずかしいのか真っ赤になって掃除を続ける薫が、ふと手を止めて言った。

「宝物、あった」

「なに?」

「章太郎さん・・・とか」

壁に向かって、小さな声でそう言った薫の持つモップは再び動き出した。拭き掃除を始めた薫は真っ赤になって、困ったような表情でモップを振り回す。

後ろから抱き締めて「宝物なんだから、大事にしてよね」と言うと、首筋まで赤くして「花ちゃんみたいに見せびらかしたりしないけど」と観念したように呟いた。


*****


「花ちゃんから、メールだ」

メールを開いて写メをみている輝也が、「宝物って、どれかな?」と呟いた。

「宝物?」

「うん。キーホルダーかな?高田店長かな?」と、メールの画面を俺に見せた。幸せそうな高田くんの笑顔。

「・・・さあ?」

輝也は携帯をパチンと閉じて、「全部か」と笑った。

なるほど・・・。

「テルの宝物は?」

「宝物・・・?ない」

「言えよ。なにかあるだろ?」

「あるけど・・・言わない」


輝也の大事なものってなんだろう?

車?まさか、俺とか?

それ、いいなあ・・・。

俺と出会う為に生まれてきてくれてありがとう、テル。


*****


俺の宝物は圭介さんだよ。

言わないけどね。

我儘で、強引だけど優しくて、時々俺を振り回す・・・。そんなあなたが傍にいてくれる時間が「宝物」なんてね。そこで笑っていてくれることが、一番なんだよ、圭介さん。

だから、以前撮った圭介さんの写真を花ちゃんに送り返した。


タイトルは「俺の唯一の宝物」


*****

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かなり昔のSSですね~書いた本人が忘れるくらい(笑)カテゴリはどこか?管理人にもわからんなあ・・・。短編に放り込んでおきます♪

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会議は踊る・1

「じゃあ、あとはよろしく」

笑って、恋人の福原輝也へのプレゼントに買った新車に乗り込む圭介の背中は浮き立つようで、信吾が「気を付けて行けよ」と声を掛けると、「慣れない車だし、わかってます」と手を振った。

「圭介さん嬉しそうだね」

「そうだね。やっと決断してくれて良かったよ。これというのも章太郎が宅建の資格を取ってくれたおかげだよ」

圭介が箱根の仕事を火曜日と水曜日を担当しても良いと言い出したのは、《花宴》の店長・木下章太郎の宅地建物取引主任資格試験の合否がわかった翌日だった。

「ふうん、輝也くんはすごく愛されてて羨ましいなあ」

「なに言ってんだよ、怜二!俺だって、圭介に負けないくらい、いいや、もっと怜の事を愛してるよ?」

「ふうん・・・でも、もし僕が記憶を取り戻さなかったら・・・美弥子さんと結婚してたかもしれないんでしょう?」

「う・・・っ」

痛い所を突かれて言葉も出ない。最近の怜二は以前よりも自分の意見や疑念を言葉にしてくれる。それは嬉しい事だったが、そこを突かれると言葉が無くなる。

「ごめんなさい、ふふっ」

「もう!」

後ろからキュッと抱き付く怜二の体温が伝わり、こんな温もりのある幸せを圭介も手に入れることが出来て良かったと、心底、輝也の存在に感謝した。



 今日はS-fiveの定例会議の日。

定休日の店が多く、各店長もスーツではなくリラックスした様子で服装も自由に会議に出席する。『滝山産業』の本社会議室で会議を行っていた頃は、全員スーツで揃っていたが『S-five』本社ビル落成後は各自自由に、と決まった。


信吾 「おはようございます」

全員 「おはようございます」


信吾 「では、早速・・・みんな知ってると思うけど、今週から火曜と水曜は箱根の担当が橋本専務になりました。代わりに《SUZAKU》からは副店長の天川健司くんが来ますから、よろしく」

天川 「よろしくお願いします!」(テンちゃんです)

信吾 「テンちゃんにはそのうちヒガシと組んで店を任せる予定です。『滝山クリーン』と『滝山不動産』の仕事は、営業所は橋本専務、本社の方は木下新常務に任せる事になりますので、みんなも章太郎に協力お願いします」

章太郎 「よろしくお願い致します」

高田 「とうとう、章太郎も常務か!おめでとう!コキ使われるぞ!」

三木 「ホント、良かった!・・・圭介くんが箱根に顔を出さないから、輝也が可哀相でさあ。《天つ空》に応援に来て俺の顔見てガッカリするんだよ」

黒川 「俺なんか『黒川店長か・・・』だぞ!アイツは考えてる事がすぐ顔に出るからなあ」(ちょっと、ムカつく)

信吾 「でもさあ、三木くん、よく圭介を説得出来たね!」

三木 「リゾートマンションを探してたら良い物件を見つけてさ!資金が足りないから銀行に相談しようと思ってたけど、閃いたんだよ。まずは4部屋あるから半分どう?って圭介くんに声を掛けて、最初は『ふうん』で終わったんだけど、隼人がこっちに帰って来た時にわざわざ《SUZAKU》の事務所でパンフレット広げて、資金がどうのって話してさ。圭介くんが話しに乗ってきた時に、一気に印鑑押させちゃった!」

山下 「俺には『隼人じゃ、半分は出せないだろうと思ってさ!』って言ってたけど?」

高田 「俺には『三木くんには人口を増やしてもらわないと、困るからね』って」

章太郎 「俺には『お前、昇格したいだろ!?後進に道を開かないとなあ』って」

黒川 「俺には『三木くんが過労死したら、奥さんが可哀相だから仕方ない』って」

河崎 「要するに半年間、箱根に行く為の言い訳を考えてたんですかね!?」

高田 「当たり前だろ!あの、素直じゃない圭介が理由もなく『テルに会いたいから、やっぱり箱根は俺がやる!』なんて言うと思う?」

全員 「思わない!言うわけがない!」

三木 「最初に箱根は担当しないと、言い切ったから、引っ込みが付かなくなったんじゃないの?」

信吾 「素直じゃないからなあ・・・まあ、テンちゃんが大変だけど、頑張ってくれよ」

天川 「はい、頑張ります。でも一昨日の夜なんか、大騒ぎでしたよ」

三木 「なにを、騒いでたの?」

天川 「常連さんのたにこちゃんが『ベンツのAクラスは横風に弱いよ』って言ったもんだから・・・車を買い替えようかなとか言い出したんです」

高田 「はあ!?もう登記も終わってるんだろ?」

天川 「はい。山道だし、テルが事故ったらどうしようって、大騒ぎ」

信吾 「バカだな」

高田 「うん、バカだね」

天川 「で、常連さんたちから散々『バカな事を言うな』って言われて凹んでました」

信吾 「でも、車は悩むよなあ。俺も怜二の車をどれにするか悩んでるんだよ。誕生日に間に合わせたいんだけど。ぶつかっても、怜二が怪我しないヤツ、知らない?」

高田 「ここにも、バカがいた」

信吾 「高田くん、なにか言った?」

高田 「いいえ、なにも!(そんな車ねえよ!)」

三木 「運転手付きのリムジンにしたら?(免許を取らせるからだよ!)」

信吾 「ソッコーで拒否された(しょんぼり)」

山下 「当たり前だろ」

河崎 「免許取った意味ないじゃん(ホントのバカ?)」

章太郎 「ここにも、バカがいた(この際はっきり言っとこ)」

信吾 「章太郎、なにか?」

章太郎 「いいえ!怜二くんが心配だなあ~!(この会社が心配だよ!)」

信吾 「だろ!?ハマーなんか、どうだ?」

三木 「誰が運転するんですか!?(いい加減にせんか!コラッ!)」

信吾 「・・・運転手とか・・・」

山下 「絶対に離婚されますよ(捨てられてしまえ!)」

信吾 「うっ・・・」

三木 「まあ、車は置いといて、マンションはみんなも使っていいからね!(話の方向転換のしどころだね!)」

章太郎 「わあ、今度、薫を連れて行きたいなあ。貸して下さい!(くふふっ)」

高田 「そういえば、章太郎、薫とはどうなの?」

章太郎 「・・・(ここで言うわけないだろ!)」

山下 「白状しろよ!(絶対に吐かせてやる!)」

章太郎 「なにもないですよ!俺は勉強を見てやってるだけですから(時々、ぐふふっ)」

高田 「恋のレッスン?(疑いの眼差し)」

三木 「イヤラシイ(薫の事狙ってるもんなあ!)」

山下 「キスの仕方からか?薫ちゃんは純情派か?(もう、頂いちゃったのかな?!)」

信吾 「開発し甲斐がありそうだな!(おっと!口が滑った!)」

三木 「怜二くんに言い付けよう」

信吾 「三木くん!オフレコ!(拙いよ!!)」

章太郎 「これだから・・・大人は・・・(言えない、絶対に言えない!)」

黒川 「ところで、俺の教育的指導用の定規がなくなったんだけど!」

三木 「ああ、あれ!ごめん!俺が借りてた!はい、返すね」

黒川 「三木店長!こんなものどうして(もしかして目覚めたとか!!)」

三木 「それがさ・・・輝也に火傷させた板前がいて、ソイツを教育するのに使ったの!役に立つね、その定規!サンキュー!」

黒川 「はあ!?」

三木 「圭介くんに恨まれてさ・・・『テルの身体にキズ付けやがって!』って怒ってたから、ちょっとやり返しておいたんだよ。そうじゃないと、圭介くんが箱根でなにするかわからないだろ?」

全員 (やっぱり、三木店長を怒らせると怖いぞ!)

高田 「最初、圭介が輝也にちょっかい出した時は、輝也の事を可哀相になんて思ってたけど(これは本音)」

三木 「ホント!輝也の粘り勝ち?」

信吾 「俺も輝也がいつまで持つかなあ・・・なんて考えてたけどな!最初は俺に裸で特攻させたんだぞ、アイツ」

高田 「そうなんだ!?」

信吾 「輝也に『抱いて下さい』なんて言わせてさ!(ああ、据え膳だったのに~)」

河崎 「よく我慢したなあ・・・(ホントかな!?)」

黒川 「ホント!?(嘘率80%だな!)」

信吾 「そこ!なに言ってんの!怜二には言うなよ!」

章太郎 「アヤシイ」

信吾 「圭介が輝也にここまで惚れ込むとは思わなかったけどね!」

黒川 「ホント!可愛い子だから《SUZAKU》の事務所に引きずり込んで、飽きたらポイかと思ってたのに」

天川 「そうでしょ!?俺も、気の毒な子がまた一人増えたなあと思ってた」

高田 「最初は可愛い子犬を手に入れたって、感じだったけどね」

三木 「やっぱり!?子どもが子犬をプレゼントされたみたいな?」

全員 「ああ!なるほど!」

山下 「輝也くんが箱根に行ってから、ずっと圭介くんの機嫌が悪かったから助かるよ!章太郎様々だな!」

章太郎 「宅建に合格したらお祝いしてやるからすぐに知らせろよって、言われたんですよ。そしたら毎日、毎日電話が掛かって来ましたからね」

天川 「発表はいつだろうって、毎日言ってたよ。あの人(ウザかったよ、マジで!)」

章太郎 「でも、お祝いしてもらってないなあ」

三木 「まあまあ、いいじゃん、常務に昇格だし!(ああ、これで章太郎を思う存分コキ使える!!)」

黒川 「俺より先に出世しやがって!(あ~良かった。死ぬほど働かせられるぞ、こいつは)」

章太郎 「すみません」

黒川 「定規も戻ったし、章太郎の手をピシッとやって憂さを晴らすか!」

章太郎 「ええっ!やだなあ」

三木 「黒川が定規で輝也を打ったって、圭介くんからのクレームが凄まじかったんだぞ!(ああ、いい迷惑!)」

黒川 「ははっ、社長命令だし!(どうせなら可愛いお尻をひん剥いてピシッと、やりたかったなあ・・・ぐふふっ)」

信吾 「まあ、輝也と薫には感謝だな!野良猫圭介は子犬に懐かれて、いまじゃ尻に敷かれてるしな!(このまま章太郎と薫がくっ付けば、章太郎も実家に帰るなんて言わなくなるぞ、ひひひっ)」

高田 「今じゃ、輝也に骨抜きだよな(野良猫圭介・・・ピッタリ!)」

信吾 「では、みんな忙しいだろうから、これで定例会議を終わります!以上、解散!」

全員 「お疲れ様でした!(この会社、大丈夫かなあ?!)」

*****

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セリフの後のカッコ内は彼らの心の叫びです(笑)

あっと!たにこさま~勝手に友情出演させてしまいました!すみません!(だって、たにこさまがコメントで書いて下さってたんだもん!)

パパの一番長い日~三木昌人の華麗なる一日・その2

 今日は水曜日。『S-five』定例会議の真っ最中だ。

「だから!明利とは呼ぶな、常務と呼べ」

「良いじゃないか、部外者がいるわけじゃなし」

「ケジメを付けろ、と言ってる」

あ~あ、もう。またやってる・・・。

山下くんの性格上、仕事中は「恋人面すんな」って気持ちもわからないではない。でも、定例会議だしねえ?店長クラスは来てないんだし。

社長だって他の幹部だって、普通にタメ語で会話してるのに綱本さんにだけ「常務と呼べ」なんて。

無理、無理。

「あのさ!提案と質問なんですけど」

「はい、三木くん。どうぞ」

「ありがとうございます。では、質問から綱本さんが大変そうだから秘書を増やす、って信吾さんが言ってましたよね?どうなりました?」

「はい」

綱本秀人のメタルフレームの奥の瞳が仕事モードに切り替わる。さっきまで恋人に甘い視線を送っていた彼がスイッチを入れるとますますカッコいいねえ~。さすが敏腕秘書さま。

「私の知人を中心にあたりましたところ、現在5名の候補者がございます。資料は今から皆さまのパソコンへ送らせて頂きますので、ご確認下さい」

さすが、仕事が早い。

秘書は俺と、圭介くん、山下くんに付く予定。高田くんは「大した仕事はしてないからいらない」と言うし、圭介くんは仕事をサボり過ぎるから、手綱を握る人が必要だ。本人は「いらない」と言うが彼には強制的に付ける。

「わかりました。で、提案なんですが」

「三木くん、どうぞ」

「綱本さんを常務にしたら?」

「はあ?」

一番に反応したのは当然、山下くん。目だけ鬼だ、鬼。

「反対」

「同じく反対です。私はそのような職務にはむいておりませんので」

「良いんじゃないか?」

禁煙中の高田くんが賛成した。彼はさっきからイライラして、机を指でトントン叩いてる。いつもなら会議室の彼の席に準備されてる灰皿がなかった時点でどんよりしていた。

社長はパソコンに届いた資料を見ながら「決定」と一言。「決まりですね」と、章太郎が笑う。

高田くんと圭介くんは2人仲良く禁煙外来の受診をお奨めする。禁煙キャンペーンの度に周囲の人間が迷惑するんだ。早くお医者さまに相談してくれ。

「役立たずの重役ばかりいて、どうするんだよ!要らないだろ!秘書が常務兼任とか聞いた事がないぞ!運転手なんかやらせてるクセに!」

山下くんが食って掛かった。それには高田くんが苦笑いしながらも反論する。

「役立たずとは酷いなあ!アキの口の悪さには慣れてるけど、あまりにも酷いぞ。俺だって一応、仕事してますけど?」

「ヒロはしてない!ぜ~んぶ俺に仕事振ってきてるじゃないか!」

「運転手なら、例のタクシー会社から3人引き抜いたぞ」

と、信吾さんが自慢げに言った。

「はあ!?」

「社用車も準備したし、綱本さんの秘書室長兼常務昇進案に賛成の人」

反対は山下くん1人だけ。綱本さんにはまだ議決権はないから、賛成多数で"決定"だ。山下くん、ご愁傷さま。えっ?睨んでる?俺の事、ものすご~~~く睨んでる。どうして?

ああ、怖い。

綺麗な彼が睨むと凄みがある。触らぬ神に祟りなしだ。会議が終わったら即、退散しよう。

 タクシー会社から信用出来る運転手さんを3人引き抜いた。今までは移動に個人の車を使っていたけど、社用車も購入した。俺は6月から『タチバナ』の社長として就任したが、『S-five』の子会社だから気楽なもんだ。なんて思ってたけどさ、なかなか厳しいものがある。

理由?

そりゃあ、毎回会議は欠席の圭介くんと「《白夜》から絶対に離れません」と宣言した高田くんの所為だ。

山下くんが本社に異動して《シェーナ》は古財くんが店長に昇格したけれど、2人の仕事しない専務の仕事を回されて大変そうだから、見るに見かねて「俺が手伝うよ」と気軽に手伝っていた。

気が付けば、章太郎から「三木社長、あんたどこの社長ですか?」と嫌味を言われる始末。

まあ、仕事大好きだしね!8月には輝也も箱根から戻るから圭介くんもこっちの仕事に専念してくれると思うんだよね。俺って、目測甘過ぎかな?

 《有明の月》はオープン以来大盛況。

ランチは午前11時から開店してるけど、圭介くん目当ての女性客が多くて正午で30分待ちは当たり前。夜はガラリと趣が変わり男性客も多くなるし、ワイルド系テンちゃんのファンがフレアバーティングショーを目当てにやって来る。

ついでに、圭介くんは火曜日と水曜日は箱根に行っちゃっていませんけどね。その代わりに俺か山下くんか章太郎がいるから女性客はやって来る。

章太郎は薫ちゃんと住み始めて私生活が充実しているからかな?仕事も張り合いがあるのだろう。営業も頑張ってくれるからホント助かってる。薫ちゃんは『タチバナ』の事務を手伝ってくれるし、スタッフとして現地に行く事もある。

仲睦まじいというか、時々章太郎が薫ちゃんにビシッと言われてるのが可笑しかったりする。

「あっ、メール」

イライラしていた高田くんの頬が緩む。この着信音はまあちゃんだ。メールを読んでる高田くん、幸せそうだなあ・・・。ニコニコしちゃって。

「三木くん、3日前に真樹にゼリーを渡した?」

顔を上げた彼が微笑みながら聞いた。

「ああ、渡したよ」

「買って来て欲しいってさ!店の名前と場所を教えてくれ」

「ああ、いいよ」

「会議中ですけど?」

山下くんが冷たい声で注意する。

「ああ、悪いな。真樹が待ってるから、これ以上議題がないなら、俺は帰るけど?」

信吾さんは笑いながら「いいよ」と気軽に言い、山下くんはまだ睨んでる。ついでに店のデータを送ってる俺も睨んでる。

「高田くん」

山下くんのキツイ声、おお怖っ!立ち去り掛けた高田くんが、恐る恐る振り返る。

「はい?」

「先月の《白夜》の精勤賞の該当者の名簿」

「あっ!・・・スミマセン。明日」

「今日中って言わなかった?」

「すみません。明日《白夜》に寄ってくれ!」

「来月のアニバーサリーデーの来店プレゼントは決めたのか?」

「まだ!決めてない。ごめん!」

カタログ渡したのは2週間前の会議の時だったな。山下くんのお怒りはまだ収まらない、それを止めたのは綱本さんだった。

「明利、《白夜》には俺が寄るし、カタログがあるんだから適当に君が選べばいいだろう?」

「はあ?」

ドサクサに紛れて「山下常務に一任します!お疲れさま!」と高田くんは会議室から消えた。

「ヒロ!逃げるなっ!」

逃げ足だけは早い。なんて感心してたら、山下くんの怒りは信吾さんへ向かった。

「社長!甘やかし過ぎでしょう!?」

「まあ、いいじゃないか。仕事に穴を開けてるわけじゃないし、店の売り上げが落ちてるわけでもなし。支障はないだろ?」

「大有りなんですけど?」

そりゃそうだ。皺寄せは全部、山下くんと俺にやって来る。

「今は三木くんが手伝ってくれるからなんとかなりますけど、彼を『タチバナ』に集中させないと」

「だから綱本さんがいるんじゃないか?」

「・・・」

トントンと控えめなノックの音がして、薫ちゃんが顔を覗かせた。

「失礼します。木下専務にお電話です。明日のご予約の高梨さまからです」

「はい、すぐに行きます」

後はよろしく、とばかりに俺の肩を叩いて章太郎が立ち上がった。章太郎のヤツ、内線回させずにわざわざ呼びに来させたな?

「じゃあ、俺は業務に戻ります」

逃げたな章太郎め。薫ちゃんの肩を抱いて出ようとするから、バシッと手を叩かれた。

「じゃあ、解散しようか?」

信吾さんはブツブツ言ってる山下くんを放置して、解散を宣言した。よし!夏休みの家族旅行の為に有給休暇の相談だ。

「社長、夏休みに家族旅行に行きたいんですが」

「ああ、良いよ。どこに行くんだい?」

「ディズ○ーシーかな?奥さん妊娠中だから近場ですけど。悪阻で調子が悪ければ中止です。子どもたちの夏休みの後半ですから、よろしくお願いします」

「俺も怜二を連れて行きたいなあ!」

去年、俺がお土産に買って来たミッキーマウスのお耳が付いた帽子を被った怜二くんが、社長の携帯の待ち受け画面だ。

「楽しそうですね!明利も行きたいだろう?」

それは・・・ないと思うよ?綱本さん。ついでに今は言わない方がいいと思うよ?

山下くんは案の定、顔を覗き込んだ綱本さんを睨みながら「俺はあんな所は苦手」とムスッとして答えた。手早く書類を纏めた山下くんは、会議室のコーヒーカップを片付け始めた。

「じゃあ、オーストラリアなんてどうだ?今は冬だし、行って来れば?新婚旅行」

"新婚旅行"と聞いた山下くんの肩がピクッと動く。

「いいなあ!俺も来年はオーストラリアにしようかなあ!子どもたちにコアラを抱っこさせたい」

「コアラと怜二か・・・可愛いだろうなあ」と、社長が良からぬ妄想を始めた。すると、山下くんがバンッと机を叩いた。集めたコーヒーカップがトレーの上でガシャンと音をたてる。

「秀人は俺と一緒にオーロラを見に行くんだよ!もう、予約したから、誰も邪魔すんなよっ!」

真っ赤になってトレーを持って出て行く山下くん。

「えっ?」

「今、なんて言った?三木くん」

山下くんがバンッと力強く閉めたドアを見ながら社長が聞いた。

「オーロラ見物って言いましたよ。オーロラって言うと、カナダですかね?アラスカですかね?」

「綱本さん、知ってた?オーロラ」

「いいえ・・・。オーロラなんて、彼の口から聞いた事はないですよ」

「もしかして、内緒で準備していたとか!?」

「絶対にそうだよ!」

「かっ、可愛いな」

「ところで、いつだろう?」

再びドアがバンッと開いた。怖い顔した山下くんが「はい、これ!」とファイルを放って寄越し、また乱暴にドアを閉める。

「なんだ、これ」

テーブルの上にポンと放られたファイル。怖い。

「旅行の日程表だ・・・。行き先はカナダ、12月20日出発、帰国12月27日・・・嘘だろ!?」

「マジだよ、これ!」

コッソリと準備していたらしい彼は、誰かがクリスマスに休暇を取るなんてフザケタ事を言い出す前に先手を打ってきた。

「参ったなあ・・・」

信吾さんは頭を抱えた。一番忙しい時期じゃないか?クリスマスだよ、クリスマス。だが仕方がない。

「良いじゃないですか、去年は信吾さんが行ったでしょう?」

「そうだな。山下くんにはいつも迷惑を掛けてるしね」

「じゃあ、お言葉に甘えてクリスマスはオーロラ見物でもして来ましょうかねえ」

敏腕秘書が満足気に笑う。


「じゃあ、俺も帰りますよ」

今日は半休だ。チビちゃんたちを迎えに行って、妊娠3ヶ月目の奥さんの代わりにお買い物だ。幼稚園にはたくさんのお迎えのお母さま方が集まっていた。車から降りると、「三木さん!奥さまの体調はいかが?」と数人に囲まれた。

「ええ、悪阻が酷くて」

「お迎えして下さって、良い旦那さまねえ~羨ましいわ!」

「お買い物もなさるし、お弁当も準備なさるんでしょう?良いわね~!」

そうでもないけどね。夜は遅いし、休みは不定期だし。

「夏休み前に保護者会の会合をしますから、どこかお店を紹介して下さいね」

保護者会の会長だ。毎週、なんだかんだと理由を付けてランチに来てくれる役員さんたちはとても良いお客さまなのだ。

「ありがとうございます。今度オープンした《有明の月》などはいかがですか?有機栽培の新鮮野菜に拘った店です。通常ビュッフェ形式ですが人数に合わせてグループごとに大皿でお持ちする事も出来ますし、会席膳でお出しする事も可能です。古民家と蔵を移築した素敵な店ですよ?」

「まあ!素敵!じゃあ、そこをお願いします」

「ありがとうございます」

ここぞとばかりに『タチバナ』のパンフレットを配り、「ご紹介下さい」と一言添える。

「まあ!社長に就任なさったのね!おめでとうございます」

「ありがとうございます!」


こうした俺の地道な営業努力はいずれ実を結ぶわけだ。幼稚園から小学校へ回り、チビちゃんたちを連れて買い物に行き、洗濯物を取り込んで、畳んで、タンスに仕舞って、夕食の支度。

夕飯を食べ、片付けまで終えたのは午後7時だった。チビちゃんを風呂に入れて、ベッドで絵本を読み聞かせながら寝かせ付けた。

「はあっ」

パソコンを開いてメールチェックしていると、河崎店長から電話だ。

トラブル発生に山下くんが対応出来ないらしい。カナダ旅行の所為で綱本さんが発情しちゃったかな?

「ちょっと、行って来るよ」

「行ってらっしゃい」

笑顔で送り出してくれる愛妻にキスして、さあ出発だ。

*****

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パパの一番長い日~三木昌人の華麗なる一日・その3

☆以前「『Sーfive』の皆さんの年末年始休暇争奪戦を読みたいっ!」というリクエストを頂いて書いたらしいです(笑)マイホームパパ・三木店長、今日も頑張ってます!!


(時期的には12月の初旬という設定です)


 もうすぐクリスマスだ。当然、正月もやって来る。

飲食店を経営する我が社にとっては非常に忙しい時期でもある。クリスマスディナーの予約は一杯だし、毎年好評のお節の予約も早々に締め切った。

だが子持ちの俺にとっても非常に大切な日なのだ、クリスマスは。

頑丈なサンタクロースは、可愛い子どもたちの為にプレゼントを準備し枕元に置く。出来れば親子でケーキを囲んで「ジングルベル」なんか歌いたいものである。

しかしこの数年、子どもたちの寝顔を見るのが精一杯だ。今年こそは三角帽子を被って、クリスマスケーキを囲んで、クリスマスソングの2,3曲くらい歌う時間はゲットしたい。

ここは死守する方向でいく。

 そして、正月休み。ここも希望は元日から5日まで。これはなんとかなるだろう。山下くんが休暇から戻ってくるからね。

強敵は、正月は《白夜》が休みだからと、ちゃっかり休みをせしめようとする高田くんだな。「真樹がTDLにパレードを見に行きたいって言ってたんだよなあ」なんて言っていたが、そこは譲らない方向で。

だってさあ、俺はパパだよ?

毎晩子どもたちの寝顔を見るが楽しみで帰宅する、とても良心的なパパなのだ。唯一の家庭持ちとして家庭を大事にしてなにが悪い!


「じゃあ、山下くんと綱本さんは20日から不在という事で。本社の方は三木くんに任せるとして、綱本さんの代わりに俺は怜二と一緒に動くかな?」

ニヤニヤする、社長。ちゃんと働けよ。一石二鳥とばかりに予定表に書き込む社長は、「綱本さんが羨ましいなあ」と呟いて山下くんに睨まれた。

よし、今だ。

「社長、ちょっと良いですか?」

「なに?三木くん」

ここは、先手必勝だ。

「すみません。今年くらいは家族で食事したいんで、24日は午後から半休を頂きます」

去年のクリスマスはニューヨークなんかに行っちゃった社長にはなにも言えないはず。ピタッと社長の手が止まった。

「・・・ああ、そうだね。じゃあ、24日は・・・っと、章太郎、大丈夫だな?」

「えっ?俺も早く帰って、薫と・・・」

章太郎の言葉に被さるように「却下!」と即断したのは圭介くん。

「ええ~っ!」

「悪いな、章太郎。圭介もこう言ってるんで、ケーキは店で食ってくれ」

一番年下の章太郎は反論出来ずに俯いた。

「・・・まあ、仕方がない、ですね」

おっ!すんなりと引いたな。あっ!わかった!弟の拓海くんとベニちゃんの件で圭介くんに睨まれてるから、何も言えないんだな?

よし、よし、今だっ!俺はすかさず手を上げた。

「それから、正月なんですが元日から5日まで休んでもよろしいでしょうか?」

ここはちょっと、控えめに・・・。しかし、俺が社長からOKをもらう前に、高田くんがここぞとばかりに手を上げた。

「あっ!待ってくれ!俺も元日から2泊で真樹を連れてTDLを予約してるから!後は、頼んだぞ。章ちゃん!」

便乗して言いやがったよ。すでに予約済みか、さすがだな。高田くんは章太郎の肩をバンバン叩いて笑っている。

「ええっ!俺、《SUZAKU》で年越しの後は薫と初詣に行こうと・・・」

「初詣?俺も怜二と2人で初詣に行きたいのに、一族総出だよ?神社は逃げないから、後にしろ。それに今年からお前も滝山本家に顔を出せよ」

「・・・俺も、ですか?」

「そうだ。怜二が喜ぶから薫も連れて来い。本家には霊験あらたかなお稲荷さんがあるから、初詣はそこで我慢しろ」

渋々「わかりました」と言う章太郎。面白くなさそうに「いいな~!TDL。薫を連れて行きたいなあ」と言いながら高田くんを睨んでる。

「薫だけなら連れて行ってやっても良いぞ?」

「結構です」

「薫はネズミの王国にはそれ程興味がないと思うぞ!」と適当な圭介くんが高田くんを援護射撃。ベニちゃんの件を根に持っているからな。

「圭介は休みなしでいいんだな?」

「いいよ」

「年始は《SUZAKU》は休みだから《シェーナ》を頼む」

「はい」

今年も社長賞を狙う彼は、クリスマスだの正月休みだの小さな休みは狙わない。彼が狙うのは2月。一番暇な時期に長い休みをぶつける気だ。一週間以上の休みを予定しているに違いない。

「ごめんね、圭介くん」

圭介くんの魂胆には気付いているが、一番忙しい時期に休む山下くんがすまなそうに頭を下げた。

「大丈夫!山下くんにはいつも世話になってるから、新婚旅行くらいはごゆっくり!」

「新婚旅行じゃないし」

ほら、そんな事言うと山下くんのご機嫌が悪くなるから。

「ここにいる全員、土産はなしね」

「ぷっ」

社長の後ろに座っていた綱本さんが吹き出した。それを見て山下くんは更にご機嫌を損ねる。

「土産なんかなくてもいいから、早く帰ってきて下さいよ!」

泣くな、章太郎。お前には圭介くんの予定がわかり次第、1月終わりか2月、それか薫ちゃんの春休みに合わせて連休を取らせてやるから。


 こうしてクリスマスイブの半休と年始の休みを頂いた俺は、意気揚々と引き上げの準備を始めた。

「三木くん・・・ちょっと、相談が」

「信吾さん、なんですか?」

嫌な予感が過ぎる。確か、去年もこんな感じだったな。

「ほら、来年怜二が成人式なんだよ」

「ええ、知ってますよ」

まさか・・・まさか、な?デジャブだ・・・そのまんまだよ、この展開。

「俺、怜二を連れて」

「怜二くんを連れて?」

「その・・・」

言い澱む社長、まさかまたもや海外か!?

「どこに行くんですかっ!?」

「ごめん!怜二が行った事ないって言うから」

やっぱり・・・。クリスマスの「ク」の字も出ないから、怪しいと思ったんだよ。

「『怜二が言うから』どこに行くんですか!?」

「ごめん・・・ルーブルを観に」

国立博物館とかでやってる『ルーブル美術館展』みたいなヤツではない。

「ルーブルっていうのは、もしかしなくてもフランスのルーブル美術館の事ですか!?」

「ごめん!」

90度のお辞儀、マジですか?

「・・・いつ?」

「今度は、一応俺もクリスマスは遠慮して」

当たり前だ、ボケ。

「成人式の時ってわけにもいかないから・・・」

当然だ!その日、『タチバナ』にはホームパーティーの予約が3件も入ってんだよ。

「だからいつですか?」

「3月なんだ。怜二の春休みに合わせて」

章太郎、ごめん。

「いつ出発ですか?」

俺は素早くスケジュール帳を開く。

「3月20日から1週間なんだけど・・・。なんとかなるよね?」

「俺、育休は一ヶ月間、頂く約束ですよね?」

「はい、わかってます。その前に・・・ねっ?」

両手を合わせてお願いのポーズ、可愛いねえって・・・違ーーうっ!!

拝んだって知らないよ!これで俺の育児休暇が微妙になってきたぞ。出産の予定は未定だろうがっ!早まったり遅くなったりするんだぞ?余裕を持ってそこんとこ計画してんのに!

睨んでも、効果なし・・・。もっと早く言えばいいのに。この人ったら、ホントに、もう。

鮮やかな怜二くんの笑顔がちらつく。ああっ、もう!俺、怜二くんに弱いんだよなあ・・・社長の為ではない、あの笑顔の為だ。

「はあっ・・・。後で旅行の計画表を下さい。章太郎も年末年始は休み無しなんですよ?黒川にも休みを取らせないと。労働基準法って知ってます?ブラック企業だ、って噂になったら、あんたの所為ですからね!」

「ありがとう!そんな噂くらい、大丈夫!ねっ!三木くん」

嬉しそうな顔で俺の手を取り、「怜二が喜ぶよ!」と浮かれる社長。

「神さま、仏さま、三木さま、だなあ!」、と嬉しそうに綱本さんを引き連れて出て行く社長の背中を見ながら、山下くんが呟いた。

「来年から、あの人の個人名義の通帳のチェックも欠かせないね。どこに金を振り込んだかチェックしないと」

「ああ、そうだね。うちも以前よりも人が集まってきてるから、なんとかなるか」

山下くんは、申し訳なさそうに残していく仕事のファイルを差し出した。

「じゃあ、俺も20日から休ませて頂きます」

「ごゆっくり」

「ありがとう」


幸せそうに微笑む山下くん、綺麗だなあ。

休みが確定しなかった章太郎を除いてそれぞれ満足したようだし、良しとするか。


さあ、今日も営業に励みますか!

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

この頃はまだ河崎くんがいたなあ~とか、思いながら推敲しました。

   日高千湖

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ありがとうございました! 

飛行機雲

★このお話は滝山信吾・大学4年生、橋本圭介・大学2年生・・・まだ若かりし頃の2人のお話です。「待つ夜ながらの有明の月」で出て参りました圭介の元カレ・長谷部泰隆が渡米直後のお話です。

★今回18禁です。表現がお嫌いな方、年齢に達しない方の閲覧はご遠慮下さいませ!

(注)ちなみに本命以外と絡んでますので、読みたくない方はすっ飛ばして下さい!『大丈夫!読んでやるわよ!』とおっしゃる方だけ・・・どうぞ~~~!!読んだ後のシマッタ!!の苦情はお受け致しませんので、ご了承下さいませ!



「どうして長谷部に付いて行かなかったんだよ?」

「直美の腹の子を始末しろって、言えばよかったのか?」

圭介は缶ビールをグッと呷ると咽喉を鳴らして一気に飲み干した。

「それは・・・」

「言えるわけないじゃん!直美は大嫌いだけど、子どもに罪はないだろ?」

圭介は飲み干したビールの缶をテーブルにカンッと軽い音をさせて叩き付けるようにして置き、酔った身体をフラフラさせている。

「まあな・・・子どもに罪はない。原因は長谷部だしな。忘れろ、あんなヤツ」


 その日、圭介と俺は同じ現場でファッション誌の撮影だった。現場に現れるはずのない圭介の姿を認めて、長谷部と一緒に渡米しなかった事実を知った。

カシャッカシャッとシャッターを切る音に合わせてポーズを決めていくが、圭介はイマイチ乗って来ない。まあ、当然だな・・・今日のカメラマンは気が短いから、下手すると外されるぞ。俺は今日でモデルとして最後の撮影だけど、圭介にとってはモデルの稼ぎは収入の半分にあたるはずだ。

「おい!信吾!お前、集中しろよ!今日で辞めるからって気を抜くなよ!」

「スミマセン」

圭介に気を取られて自分がダメ出し食らって・・・「よし!もう一度お願いします!」と気合を入れ直して再びカメラに向き直った。


大学卒業後はじいさんから相続したマンションと賃貸ビルの賃料を元手に自分で起業するつもりだ。

モデルのバイト代の大半はしっかり貯金してあるし「マンションなどの賃貸料の収入は在学中は使わない」という親父との約束だったから、それらは丸々貯蓄されていた。それらを頭金にして残りは銀行から借り入れて、友人の高田博臣(ヒロ)が勤める《八番館》というホストクラブを居抜きで買い取る交渉中だった。

俺とヒロとヒロが連れて来た黒服の山下明利の3人で、まずはホストクラブの経営に乗り出す。

隣でカメラに向かって微笑む圭介に「今夜、付き合えよ」と誘うと、短く「うん」と返事を寄越した。圭介は『仕事』に没頭しているようだった。


 自分のマンションの部屋にはごく限られた人間しか入れない。恋人の加藤美弥子と友人の清田に山脇、来いと言っても決して来ないが来たらもちろん入れるのは河野。後は、圭介とヒロ、山下・・・それくらいかな。

圭介は所属事務所が同じで大学の後輩ということもあり、何度か飲みに行ったり、遊んでいるうちに彼の性癖に気が付いた。端正な顔立ちの綺麗なオトコだ。いつも縋るような眼差しを俺に寄越すから、俺もつい構ってしまう。

冷蔵庫の中のビールを2人で10本ほどと、美弥子が持って来て置いてあったワイン2本を空にした時だ。グラスの縁を指でなぞりながら、圭介が目も合わさずに吐き捨てるように言った。


「抱いてくれない」

「ああ?」

「抱いて欲しい」

「俺に抱かれても長谷部は消えないぞ」

「消えなくてもいい。ただ、寂しいんだよ。抱いてくれないんだったら、外でオトコ拾うから」

ふらつく身体で立ち上がるのを「待てよ」と、抱き止めた。

「キスして」

「長谷部が、戻ってくるかもしれないぞ?待たなくていいのか?」

「戻ってこないよ・・・泰隆は・・・もう、他人のものだから・・・俺は、捨てられたんだよ」

「違うだろ?お前が、捨てたんだろ?」

そう聞くと圭介は、シャツを脱ぎ捨てた。辛そうに眉を寄せて俺を引き寄せる圭介が儚げで、このまま放り出せば後悔すると思った。

「ここでは美弥子しか抱かないこと・・・知ってる。ごめん」

つと目を逸らす圭介の顔に、失った愛しい人の面影を見付け堪らなくなる。


「ごめん・・・忘れて」

「抱かせてくれるのか?」

「いいの?美弥子は?」

「黙ってりゃ、わからないさ」


唇を重ねると柔らかなソコは人恋しげに戦慄く。性急に舌を絡め合って酒で火照った身体を預ける圭介を見るのは、本当は辛かった。

俺自身が、4年前に別れたっきりの忘れられない『彼』を思い出すからだ。

カメラマンの長谷部は気に入ったオンナもオトコもお構いなしで三つ股、四つ股は当たり前。その上性質が悪い事に、あのオトコ『お前だけを愛しているよ』と誰にでも言ってしまう。これは、病気だ。

同棲していた圭介に生活費全般、小遣いから、遊興費まで頼りきっているクセに、圭介の部屋に女を連れ込んだ。それが直美だ。裕福な家庭に育った直美の部屋と圭介の部屋を行き来するようなヒモ生活だったが、ある日売れないカメラマンの長谷部に道が開けた。

ニューヨーク在住の有名なカメラマンに声を掛けられたのだ。

長谷部は圭介に一緒にニューヨークへ行こうと誘ったが、運が悪かった。直美の妊娠が発覚したのだ。

圭介はすでに準備していた来年の授業料を全て長谷部に渡した。長谷部に付いて行くと聞いて俺も渡米後の当座の資金を工面したのだ。
結局・・・圭介は、長谷部に直美を捨てさせて自分が飛行機に乗ることが出来なかった。圭介は長谷部に渡した金も「返せ」と言えないまま、彼を夢の世界へと飛び立たせた。


「二度と長谷部みたいなオトコに惚れるんじゃないぞ」

「うん」

ベッドに横になった圭介のジーンズを脱がせて、覆い被さり「もう、戻れないからな」と言うと、涙を耐えていたのかポロリと一筋の涙を零した。


「泣くなよ」

「泣いてない」

顔を逸らして子どものように身体を丸めて泣き出した圭介を抱き締めた。

「長谷部は・・・付いて来いって言ったんだ・・・愛してるって、言ったんだ、俺・・・行きたかった」

「行けばよかったじゃん」

「もう忘れるから・・・」

「そうしろ」

「うん、寂しい時は、来てもいい?」

「ああ、いいよ」


圭介の唇は思ったよりも冷たくて、頬も冷たい。首筋から舌を這わせて鎖骨の辺りに赤く印を残していくと時々ブルッと身体を震わせて、そのたびにシーツをキュッと握りこむ。綺麗な眉根を寄せて耐えたような声を漏らしては、視線は遠い空の愛しいオトコを見ているらしい。

胸の尖りを口に含むと、冷たかった皮膚が朱を刷いたように薄っすらと桃色に染まり素直に「ああっ」と声が漏れる。

「ねっ、ソコ噛んで」

軽く歯を当てると、俺の頭を押し付けるようにして刺激を求めるから、反対側は強く摘まみ出すように捏ねる。

「はああっ、あっ、うっ」

「痛くされるの好きなんだ」

「やだ、違う」

「嘘吐き」

好きなオトコに捨てられた悲しみも苦しみも、理解出来る。ずっと苦しい恋をしてきた圭介に、俺は不思議な情を抱いていた。フラフラして、また碌でもないオトコを拾いかねない。

「本当に良いのか?」

「うん」

これは彼にとって、決別の『儀式』のようなものだ。

「イレテ」

うつ伏せて腰を高く上げて、十分に解したソコに猛りを押し当てると一気に貫いた。

「ああっ・・・あぁぁ」

律儀な圭介は、これで長谷部の元には戻らない。戻れない。

適度に鍛えて整った四肢、圭介の背中は特に綺麗だった。背骨に沿って撫でてやると指の動きに合わせるように背中が撓る。

「背中、綺麗だね」

「言うな・・・長谷部と同じ・・事、言うな!あっ、あっ」

「俺は長谷部じゃない。今、誰が抱いてるんだ?」

「・・・んっ、あんっ」

猛りを引き抜き圭介の向きを変えさせて頬を掴んだ。

「誰だ?」

「イレテ、早く!も、早く!」

「言え」

「信吾」

「そうだ、俺だよ。長谷部じゃない。もう、アイツはいないんだよ?直美にくれてやったんだろ?」

「うん」

「泣くな」

「泣いてな、い、ああっ!」

涙の味がする唇を合わせ、そのまま再び挿入して、ゆっくりと注挿を開始した。深く結合した部分から届く淫らな音とベッドの軋む音が響き、部屋中に圭介の嬌声が零れた。圭介が物足りないと感じるくらい、ゆっくりと焦れるくらい・・・ゆっくりと。

「ああっ、ん・・・もっと、欲しい、おね、がい・・・もっと、ねっ、ああん」

焦れた圭介が腰を揺らす。中を掻き回すように動くと、圭介の腰もそれに合わせるかのような動きをする。背中に圭介の指が食い込み、爪を立てたのだろう鈍い痛みを感じた。腰の下に手を入れて浮かせてやると、圭介の腰が扇情的な動きを見せた。二人の体の間にある、圭介のモノを掴んで先端を刺激すると激しく頭を振り、腰を押し付けるようにして快感を追う。

「もっと、感じたい?」

「あああっ!お願い!信吾、信吾・・・もっと!」

「目を開けて、閉じるな。もう、戻れないからな」

「うん、はっ、はあっ!」

欲望に塗れた半開きの瞳から視線を外すことなく、激しく打ち付けて圭介の心にパラサイトする長谷部を駆逐する。

「し、んご、もっ、ダメ」

「イクよ、目を閉じるな」

「ああっ・・・あっ・・あ、あ、あっ!」

一際高く声を上げて、圭介が精を吐き出した。



額や頬に張り付いた髪を掻きやって涙を拭いてやると、俺の手を取って手の平に口付けた。

「ありがと」

「お前、可愛いね」

「やだ」

グッタリとした圭介の身体を拭き、冷たい水を口に含ませると生き返ったように大きく呼吸をして「ごめん」と言った圭介とは、一生付き合うことになるだろうと思った。


「俺、前に自分で店やるって言ってただろ?」

「うん」

「ホストクラブを開店するから」

「うん」

「お前も、付いて来てくれるね?」

「うん」

「最初は給料も出せないかも・・・いい?」

コクコクと頷きながら圭介は泣き出した。

「泣くな。お前がまた変なオトコの食い物にならないように、俺がそばにいるから」

「う・・・ん」

布団の上から抱き締めて、キズを舐め合うような関係は結構居心地がいいと気が付いた。



朝方、玄関の方で音がして・・・人の気配がした。ガチャッと寝室のドアが開き、美弥子が顔を覗かせた。

「信吾?いるの?」

「・・・ああ」

「飲んでたの?」

ドアを開けたのは、加藤美弥子。美弥子は寝室の様子を見て、そこでなにがあったのか、一瞬で理解した。ベッドを指差し「誰?」と聞いた。

半身を起こして「圭介」と言ったと同時に頬に感じた衝撃は、美弥子の思いの全てだと思う。

「帰れ」

「言われなくても、帰るわ。さようなら・・・オトモダチに戻りましょうね」

「ああ」


ベランダに出て外を見ている圭介にコーヒーを手渡すと、タバコの煙を燻らせながら「アメリカってどっち?」と、聞いた。

「さあな。お前には関係ないだろ?」

「ああ、関係ないね」

飛行機雲が長く長く、ジェット機の後ろを付いて行く。圭介はそれを目で追っていた。


「いつかは飛行機に置いていかれる飛行機雲も、なかなか消えないもんだね」

「ああ、そうだね」


それでも、風が吹けば雲は消える。

心に生まれた「愛情」も、簡単には消えないものだ。

それでも月日が経てば人の心も変わっていく・・・いつかお前が他の人に「愛情」を注げる日が来ると良いね。


「飛行機に乗り損ねたお前は、飛行機雲のようだね」と言うと、圭介は寂しげに笑った。


*****

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オーロラよりも奇なるもの有り

★以前から山下と綱本のオーロラ旅行記を!とリクエストを頂いておりましたが・・・本物のオーロラを見た事がないんです(涙)見たという従兄弟のヤツ・・・現在潜水艦に乗って日本の海を守っているらしいです(笑)連絡付きません、今頃日本海かどっかにいると思われます。そこで・・・ちょっと趣向を変えて書いてみました。

大変、申し訳ございませんっ!!!




「ちょっと、メグ」

「なによ」

隣に座ったゆかりが肘で私を突付く。

「ねっ、斜め前の2人組素敵よ。同じツアーかしら?」

「さあね?」

つい最近、周囲から「イケメンを掴まえたじゃない!」と羨ましがられる自慢の彼氏をゲットした私は、他の男にはさして興味もない。

隣に座ったゆかりは彼氏いない歴3年。「そろそろ男掴まえなきゃ、カビ生えるわー!」とタバコを吹かしながら、立呑屋で干からびたサラリーマン相手にビールを呷ってるゆかりと彼氏がいる私とは、違うのよ。

彼に比べればそこらの男なんて、カスだわ。そう思って、ゆかりの指差す方向には見向きもしない。

「ねえ、見てってば!」

「もう!」


 それは旅行会社の説明会の席だった。

ずっと前から約束していたゆかりとの旅行。カナダにオーロラを見に行って神秘の輝きを全身に浴びてそのパワーで彼氏をゲット、寿退社で専業主婦しようと約束したのは2年前。毎月少しずつ貯金して、先月漸く目標額に達したのだった。

すでに彼氏をGETしてオーロラパワーは必要なくなった私は、『ゆかり』とではなく『彼と』オーロラを見たかったりする・・・正直なところ今回の旅行はパスして、クリスマスは彼氏と沖縄とかハワイとか暖かい所で楽しみたいのよ。

でも、ゆかりは頑固で「約束したじゃない!」と言って引かない。だから私は仕方なくこの場にいるわけで、他の男なんてどうだって良いのよ。なんなら、男運のないゆかりとは縁を切って彼と結婚、なんて夢見てるわけよ。


そうなりゃ、オーロラは新婚旅行よねえ?


「ねえってば!」

しつこいゆかりに辟易しながら、彼女のペンが差す先にいる男性たちに渋々視線を遣る。

「ねっ!ちょっとお目に掛かれないくらいのイイ男!素敵だわぁ!でも、結婚してるのよね。残念」

手前の男性の左手の薬指にはプラチナの指輪が光ってる。演壇に立っている旅行会社の人が、「手元のパンフレットをご確認ください」とマイクで話しを始めた。

「既婚者を見てポーーーッとなってるから彼氏が出来ないのよ!」

「酷いわ!だって、あんなにイイ男を見た後じゃ、他の男なんて目に入らないわよ」

失礼しちゃうわ!私の彼が劣るとでも!?

「ほら!始まるわよ!」

ゆかりの言葉を聞いて悔しくなった私は、それまで「どうでも良い」と思って目も遣らなかった2人組をマジマジと見た。

私の彼とどっちが上か、見定めさせて頂くわ!

座っているから良くわからないけれど、2人共身長は高いようね。左側の背が高い方はチャコールグレーのピンストライプのスーツ、顔は・・・綺麗な横顔。その隣の男性は私の位置からは顔まではよく見えないけれど、後ろ姿がシュッとしてて2人とも良い感じ。


「どう?」

「よく見えないわ」

「どうせ、あんたは私と一緒にオーロラを見るより彼氏と温泉の方が良いのになんて考えてるんでしょう?だから、見えないのよ」


見破られてたか・・・っていうか、言い掛かりを付けられた気分よ。


「そんな事は」

「ないわよね!?行くわよね?カナダ!」

ゆかりの必死過ぎる空気に圧されて、「本当は彼氏と温泉の方が良いの」なんて言えなくなってしまった。

「わかってるわよ!」


暗くなった室内、大きな画面に映し出される神秘のオーロラ。それを目の当たりにしたいという気持ちと、どうしてゆかりと一緒に見なきゃならないのか?という気持ちがオーロラと共に揺れる。

旅行代金も結構高額なんだから思い残す事無く・・・とは思うんだけど、「彼氏と行くわ」なんて言えないのよね。本当の気持ちを言えば友情にヒビが入るに違いない。

友情と愛情どちらを選べばいいの?なんて贅沢な悩みに揺れていた私・・・あっ、と思った時は遅かった。真っ暗な床にペンを落としてしまった。

「あっ!」

コロコロとどこかに転げたペン。

「なにやってるのよ!」

「真っ暗だから、後で探すわよ!」

ゴチャゴチャ言ってる間に画面には緑色のオーロラがフレアを起こしてパッと飛び散る様子や、幾重にも出現したオーロラがうねる様が映し出された。会場からは溜息と歓声が漏れる。

「綺麗ねえ」

「本物、見るわよ!」

「わかってるわよ!」


しつこいなあ・・・。

暗さにも目が慣れてきた頃だった・・・何気なく目に入った光景。左側の男性の手が右側の男性の腰に回されている。

えっ?

ちょうど、説明用のDVDが終わって会場の照明が点けられ、左側の男性の手はスッと離れて行った。なんだったの?今の・・・?

なんていうの・・・男2人なのに親密過ぎない?今も、密着してる感じ・・・いいえ、身体が触れてるわけじゃないんだけど、ピッタリくっ付いてる感じ。


「メグ!ペンは?」

「ああ、そうだった」

さっき落としたペンの行方を捜して私は床に目を這わす。そして例の左側の男性の足元に私のペンを発見!立ち上がってペンを拾いに行こうとすると、ゆかりが「なにやってんのよ!?」と声を掛けた。

「ペンを拾って来るのよ」

「ペン、ペン」と煩いわりには、立ち上がれば「なにやってんの?」なんて・・・失礼しちゃうわ。

そして、ペンを拾いに行こうとして見てしまった。左側の男性の指が、当たり前のように右側の男性の耳朶にスッと触れる瞬間を。ビクッとした右側の男性はその手をバシッと叩き落し、睨み付ける。右側の男性も凄くイイ男・・・なんていうのかしら、艶のある美形。

そして立ち上がっていた私には見えてしまった。今度は左側の男性が、右側の男性の手を握ったのを。

「あっ!」

会場中に響く声。しまった・・・私に集中した視線に耐え切れず、「すみません」と小さな声で謝って座った。


なんだったの?今の・・・。


その後も旅行会社の説明は延々と続き、一生懸命にメモを取るゆかりを横目に、私の視線は彼らに集中した。必要な装備や、準備する書類・・・大事な事はゆかりがメモしているはず。


男2人でオーロラ見物・・・?社員旅行?まさかね・・・金額が高過ぎる。グループで行くから、代表で聞きに来てるとか?ああ、それなら納得ね。無理矢理自分を納得させて、説明会を終えたのは20分後。


「はあっ」

2人の親密な様子が気に掛かる。

「なによ、その溜息!」

「なんでもない。ペンを取ってくる」

立ち上がってイイ男の足元に転げたペンを拾おうとした時だ。

「いったあ!」

後ろにしゃがんだ私に気付かずに左側のイイ男が立ち上がり、私の頭に椅子の足が直撃。

「大丈夫ですか!?申し訳ございません!」

メタルフレームのメガネが良く似合う、キリッとした顔立ち。間近で見ると更に男っぷりが上がる。賢そうな顔立ち。お洒落なピンストライプのスーツ、落ち着いたゴールドのドット柄のネクタイ、そして素敵な香り・・・脳震盪を起こしたい気分。


このまま私を抱き上げて保健室に連れてって・・・。


「なにやってんのよ!メグ!」

現実が声を掛けてきた。チャンスとばかりに、ゆかりがシャシャリ出て来る。来るならもっと上品に来なさいよっ!

「痛ったあ・・・」

「すみませんでした、後ろを確認せずに立ち上がってしまって。お怪我はございませんか?」

大きな手が私の頭に添えられた。

昨日使ったシャンプーが安物だった事を後悔する。ゆかりとのお出掛けだったからケチったけど、デート用の高価なシャンプーを使うべきだったわ。

人生どんなハプニングが転がってるかわかりゃしない。

「大丈夫ですか?」

今度は違う声。右側の男性だわ。顔を上げて、心臓が止まるかと思った・・・ここはイケメンコンテスト会場だったかしら?

「だ、だ、だいじょ、ぶ・・・です」

目を白黒させながら、やっとの事で返事をした。

「念の為に、病院に参りましょう」

「け、結構です!だ、大丈夫ですから!」

「秀人、家まで送って差し上げたら?」

「そうだな」


抱き上げて連れてってよ・・・お願いっ!

右側の男性、なんて色気のある人なの!輝く瞳、理知的な顔立ち・・・整った鼻梁、非の打ち所のない美形。頭がボーッとしてるのは、ぶつけたからなの?


「ホント!ドジなんだから!ご心配なく!彼女、石頭で有名なんです。少々殴られたって全然平気ですから。それにもうすぐ彼女は彼氏が迎えに来ますから!あっ、私は彼氏なんていませんがっ!」


なにを言ってるのよ!ゆかりのバカッ!迎えになんて来ないわよ!

部屋を片付けとけば良かったわ。「送って下さったお礼に、お茶でもどうぞ」なんて、展開有りじゃないのよ!

それに人を石頭ですって!?私は、ゆかりを睨み付けた。


「そうですか・・・彼氏が迎えにいらっしゃるのなら送るわけにもいきませんね。では、なにかあった時はご連絡ください」


ゆかりのバカッ!大、大、大チャンスだったのに!

左側の男性が名刺を差し出し、それを見たゆかりはすかさず手を出した。


「わ、私にも、下さい!」


ゆかりのヤツ・・・。

ちゃっかりと名刺をゲットしようとするゆかりにも微笑みながら名刺を指し出す指先の美しさ、惚れ惚れするような優雅な動作・・・私はさっき見た彼らの親密過ぎる様子なんてすっかり忘れていた。


『綱本秀人』さん、素敵な名前。


丁寧に頭を下げて去って行く彼らの後姿を見ながら、ゆかりは「絶対に、行くわ!オーロラ!」と宣言した。

「ちょっと!酷いじゃない!石頭だなんて!」

「そんな事どうでも良いじゃない!私、頑張るから!応援よろしくね!」

だから「送る」と言われて「彼氏が迎えに来る」なんて言ったのね!ズルイわ!痛い思いをしたのは私よ!?

「なにを頑張るのよ!?」

「あーら、彼氏がいる人には関係ないでしょう?」


こうして私たちは彼らと同じ日程のツアーに参加する事に決めた。そのツアーは予算オーバーの上、仕事納めの日に帰国するという超顰蹙な日程だった。

上司の視線が痛い・・・肩身が狭いわ。


でも、後悔しない!

だって、オーロラよりも美しくてオーロラよりも奇なるもの・・・見つけたんですもの。


*****

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前書きにも書きましたが・・・オーロラを表現出来ませんでした(涙)何度書いても嘘っぽくて・・・申し訳ないですm(__)mこれで、許して下され・・・。

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