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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

そなたの空をながむれば~滝山信吾

  思ひあまりそなたの空をながむれば 霞をわけて春雨ぞ降る

            藤原俊成   新古今和歌集




 卒業式に出席して怜二の晴れの門出を見送ったのは10日前のことだった。

《銀香》の事務所の片付けを手伝いにやって来た大貴が、帰り際に「合格祝いのお返し」と言ってくれたものは菓子箱くらいの紙包みだった。難関の星望学園大医学部に合格した時に、かねてよりの約束どおりに医学部近くのマンションを譲ったからそのお礼だという。

明日、そこへ引っ越すと言っていた。

大貴もこの店が名残惜しいようだ。

「学校帰りにいつも遊びに来ていたのに、ここも閉店か。信ちゃんにもあまり会えなくなるしな・・・あ~あ、淋しい独り身の信ちゃんの老後が心配だよ」

手伝いに来たのか小遣いをせびりに来たのか・・・大した働きもせずにあっちこっち弄って「これ欲しい、ちょうだい」とポケットは膨らむばかりじゃないか!?

「老後はお前の老人ホームで左団扇だから良いんだよ!」

大貴は「当てにしないでね~!」と、笑いながら帰って行った。まったく、頼り甲斐のない甥だよ。


 一人になって包装紙を開いてみると、中からフォトフレームが出てきた。

写真には大貴と怜二が写っていた。

さりげなく、後方には大貴と彰彦くんを待っていた俺が車に凭れてタバコを吸う姿が写り込んでいた。帰り際に怜二を呼び止めて彰彦くんにシャッターを押させた一枚だった。

上手い事、俺を写り込ませたものだな・・・。


 写真の中の怜二は、あの日のまま。

無事に卒業を迎え晴れやかな綺麗な笑顔ではにかんだような眼差しを向けていた。以前のような暗い影もない、綺麗な怜二。大貴の天真爛漫な笑顔の隣で、紅い唇を僅かに開き・・・父の元から解放され母と祖父に愛される毎日。

一年半の辛い記憶を全て封印した怜二だった。


大貴も粋な計らいをするものだなと、再び紙に包んだ。

きっと、これから何度も何度も、怜二の将来に幸多からん事を祈るだろう。


彼が記憶を取り戻す事のないように、そして彼が春日井のデートクラブで関係を持った人物が彼を脅かしたりせぬようにと祈るばかりだ。もし、あの一年半の間に怜二と関わった人間が怜二の前に現れたとしても、もう自分には守ってやる事も出来ないのだから。


もう、会う事もない愛しい人の未来を思い、自分は祈り続けるだろう。

不覚にも零れた涙に触れた。


外を見ると、シトシトと雨が降り出していた。

明日は止むと良いのにな・・・大貴の引越しだ。引越し祝いにソファーが欲しいと言い置いて帰った可愛い甥の為に、加藤美弥子に電話を掛けた。


感傷に浸っている場合ではなかった。

今日中に必要な書類を持ち出して、『滝山不動産』と『滝山クリーン』の仮事務所に移動して、その後は自分の引越しが待っていた。


 完成間近な社屋は7階建ての瀟洒な造りで美弥子らしい華やかさも忘れていない。

1階は『滝山不動産』と《銀香》、2、3階は飲食店関係のS-Five、4階は『滝山クリーン』、5階は誰にも言ってはいないが怜二が大学を卒業してインテリアデザイナーとして独立したならばここで仕事をしてもらおうと思っていた。

いずれ使い道も出てくるだろうから5階は空きスペースにして、6、7階を自宅として使用するつもりだ。月末には一斉に引越しの予定だ。


 《銀香》はこのまま残す事になった。

残すと言っても、毎日来ていた車のセールスマンの酒井さんが早期退職して熟年離婚の末、喫茶店をやりたいと相談してきたのだ。俺が《銀香》を閉めると聞き、「ここをやらせて欲しい」と言うから、居抜きの形で譲る事にしたのだ。もちろん福原輝也付きだ。

幸いスタッフルームには風呂も台所もある。離婚した酒井さんは今の家を売って現金を奥さんと分ける。住む所がなくなった酒井さんは「ここに移り住む」と言うので、家具もろとも譲る事になった。

今住んでいるマンションの部屋も、最上階のワンフロアを占有していたが、広すぎるという理由で2つに分けて分譲するつもりだったが、《銀香》の隣の歯科医院の院長から「息子が星望中等部に合格したので現在の自宅を処分して、この近辺に家族で住みたい。広い部屋を探している」と相談された。そこで3月末の入居で良ければと部屋を見せた。トントン拍子に話が進んで歯科医がワンフロアを購入する事に決まった。


この街から自分の痕跡を消し去りたい、それが本音だった。


 美弥子と一緒に大貴の希望に合うソファーを買いに行き、帰りに食事を共にした。

気晴らしにはなるかと思ったが、正直あまり会いたくない人物には間違いない。しかし、ここで美弥子に電話してしまう所が・・・腐れ縁とでも言おうか。


「なあに?元気ないじゃない」

「まあね・・・名残惜しくてさ」

「向こうの《銀香》も素敵でしょ?あなた好みに出来上がってるじゃない?」

「ああ・・・店の名前、やっぱり変えようかな・・・」


 食事をして美弥子を送り、部屋に誘われた。どうしようもなく、人肌恋しい夜だった。

ここらで年貢の納め時か、と観念した。このまま美弥子と結婚もいいのかもしれない。


「寂しいんでしょ?顔に書いてある」

「ああ、寂しいな・・・人に忘れられるって・・・こんなに寂しいものとは、思わなかったよ。虚しいな・・・俺は怜二が好きだった・・・今でも愛してる。このまま、ずっと・・・一生そうかもな」

「多分ね」

「だろ?お前もそう思う?智明の時はまだ若かったからさ・・・どうにもならない状況が受け入れ難くて、暴れてりゃそれで良かったんだけどな、この歳じゃそうもいかないし・・・怜二を失いたくなかった」

「私も、あなたを失いたくなかったわ、だから・・・ずっとそばにいたのよ。あなたが、私のものになるまで」

「こんな抜け殻みたいな男。どうするんだよ」


美弥子は艶然と笑って見せた。女は怖いな・・・狙った獲物は逃しませんって顔してる。どうせなら、事情を知って許してくれる女が良いに決まってる。


「もう、私にしたら?」

「・・・キスして、うんと濃いやつ」


早朝、隣で眠る美弥子に白旗を揚げた。



 ベランダでタバコを手にし、結婚したら俺はホタル族とか言うやつになるのかと思うと、ますます虚しくなった。

怜二がいる辺りはどの辺だろうかと空を見上げる。空は霞んで視界が悪い中、再び雨が降り出しアスファルトを濡らし始めた。大貴の引越しなのに・・・止むといいな、この雨。


ああ、霞んだ空は自分の心のようだと、彷徨いもがいているだけの愚かな存在である自分の退路を自ら絶ち、既に進むべき道は決まってしまった。


想い人のある空は、いつも晴れていて欲しいものだなと、霞んだ景色に昨日貰った写真の怜二の笑顔を重ね合わせてみる。


*****

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そなたの空をながむれば~加藤美弥子

 都心から電車で一時間半、十分通勤圏にあるにも拘らず、駅までのアクセスが悪くて未開発になっていたM市の滝山家の土地は広大だけれど、社内ではお荷物扱いにされていたらしい。

その土地周辺にようやく開発のメスが入れられ、高速道路へのバイパス工事も終わり今や、大手企業が挙って参加する一大プロジェクトとなっていた。

若い世代の憧れの街となるべく、大型ショッピングセンターにスーパーマーケットは言うに及ばず、総合病院にシネコン。電車も普通電車しか停まらなかった駅が特急・急行電車の停車駅になり、生まれ変わりつつある街は地価もうなぎ登り。

叔父が乗り気で勧めていたこの事業は、建売住宅部門を統括する叔父にとってはぜひ成功させて、次期社長の座を狙う足掛かりとなるはずだった。

当然、叔父は自分の娘と信吾の縁談を滝山家に持ち込んだ。

しかし、滝山家の返答はNO。「信吾には美弥子さんを」これは信吾の兄・義道社長の独断だった。

父は元々信吾を気に入り「次男だから婿養子にどうだ?」と、冗談半分で信吾に持ち掛けては即答で断られていた。

私も今年32歳。「そろそろ孫の顔を見たい」と言うのが本音の父はこの際とばかりに、人を立てて正式に申し入れをした。

理由は社長の椅子を虎視眈々と狙っている、叔父の存在だ。

何度も弟に煮え湯を飲まされていた父は「次期社長は美弥子」と明言していたけれど・・・「はい、そうですか」と素直に言う事を聞くような叔父ではない。

父は出来るだけ早く、私を結婚させて次期後継者をもうけさせて磐石の基盤をと考えていた。

白羽の矢が当たったのが「滝山信吾」。滝山家の次男で独立して今や飲食業界では注目の的のこの男、私の元カレだった。次期社長としては申し分なく、親子の思惑は一致して、ほとんど懇願に近い形で再三の申し入れをしているのが現状だった。

加藤家のお家騒動に巻き込まれる形になって信吾には気の毒だけれど・・・父は何としても滝山家の力をバックに私の地位を磐石なものにしたいのだ。


ただ、逆に滝山家に加藤建設が飲み込まれる可能性も皆無ではなかったから、出来れば婿養子で。


 恋人だった有川怜二くんがいなくなってから、信吾は痩せた。以前よりも寡黙になった。仕事に打ち込み周囲を「少し休んだら?」と心配させていた。


大学に入学した頃は若かったから毎晩のように相手が変わり、大学内で女の子が取っ組み合いの大喧嘩になった事もあったっけ・・・入学当時のギスギスしたものが落ち、優しい眼差しの信吾が残ったのはいつの頃だっただろう。


優しい信吾のことがずっと好きだった。それは小学生の頃からずっと。


押し掛けるようにして付き合い始めたけれど、浮気は絶えない。しかも男女お構いなしだった。浮気を咎めれば「じゃ、別れようか?」と、言われる始末。

全く不自由してませんって事。

絶対に別れるものかと、浮気には目を瞑った。つまり私は「理解のある彼女」であり続けた。

なぜだか自分のマンションの部屋には私以外は入れなかったから、それだけはホント、嬉しかった。

なのに・・・あの日、彼のベッドには橋本圭介がいた。それだけは、許せなかった。以来、圭介は天敵だと思っていた。

その頃圭介は、苦しい恋に終止符を打ち信吾に悩みを打ち明けていた。飲んだ勢いでってやつだったらしいけれど私はどうしても許せなかった。


あの目だ。人恋しさを滲ませた縋るような眼差し、あれに信吾は落ちる。まさに有川怜二がそうだった。

新たな天敵・有川怜二は切れ長の大きな瞳に、紅い唇が印象的なピチピチの高校生だった。


初めて会った時から要注意人物だとは思っていたけれど・・・。私が白木智明を忘れさせるべく打った手は「吉」と出たのは間違いない。そして「凶」と出た事も間違いない。


信吾は白木智明の呪縛を解き、有川怜二の呪縛に捉われた。

正直、白木智明の方が都合が良かったかしら・・・?


まさかここまで、信吾があの子にハマるとは思いもよらなかった。

「こんな抜け殻みたいな男。どうするんだよ」と言った彼の言葉は嘘ではなかったらしい。こんな事は初めてだった。


要するに・・・彼は私を抱けなかった。


その気はあったらしいから「キスして」と言ったようだけれど、私を押し倒しゆっくりと肌に触れたくせに「ごめん」と呟き、「帰る」と言い出した。

それでも、この一年近くは、私に警戒を強め部屋に誘ってもドアの前で辞し、靴を脱ごうとしなかった信吾を部屋に入れベッドまで誘い入れたのだから収穫だと思おう。「帰る」と言う信吾を押し留めてそのまま抱き合って寝た。

それでもその気になるどころか、朝まで何度「ごめん」と言ったか・・・。

ただ、誰かと抱き合っていたかったというのが、本音かしら?それでも、その「誰か」に選ばれたのは嬉しかったりする。


事故の後記憶を失くした有川怜二は、必ず信吾の前に現れる。


あの子はどうしようもなく信吾の庇護欲を刺激するらしい。私とは真逆の存在。

女だし、気は強いし、我が儘だし・・・でも、彼はそれも嫌いじゃない。気の強い女を甘やかすのが好きなのだ。


今、彼は雨の降り出した空を見上げて「まるで、自分の心のようだ」と考えているに違いない。とうとう、彼の口から「結婚は考えてるから、もう少し待ってくれ」と、言わせたからだ。


でも・・・結婚しても、怜二くんのようなタイプの男が現れれば、彼はまた夢中になるのだろう。

それよりも遅かれ早かれ、彼は必ず記憶を取り戻して信吾の元へと戻るに決まっている。


彼らの間にくるくると絡んだ運命の糸が、見えた朝だった。


彼の眺める霞んだ空を後ろから眺めながら、いつか彼が晴れ上がった綺麗な空を見上げることが出来るように導くのみだと考えた。


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美弥子は怜二に出会う前は信吾にとっては一番「結婚」に近かった女です。常に「美弥子となら結婚したって良いかな~甘やかしてくれるしな」とも考えていた女性です。そして「結婚するなら美弥子だな」とも考えていました。
美弥子と橋本圭介の因縁はこちらへ⇒飛行機雲

そなたの空をながむれば~有川怜二

 卒業式から10日。


僕の記憶は戻らないまま・・・一生このままだったらどうしよう。


そう考えると、不安で堪らない。寺田彰彦くんから言われたことが現実に起こってるかもしれないんだ。

誰を信じていいのかわからない、それが正直な気持ち。ただ、そういうふうに助言をくれた寺田くんや平井くんは味方なんだと信じている。


どうして自分は事故に遭ったのか、その上一年半もの記憶を失くしたのか・・・理由は未だにわからない。

霞の掛かったような頭の中で、時々、記憶を取り戻すキーワードのようなものが現れては消える。掴み掛けた記憶の断片に手を伸ばし掴もうとすると、もう一人の自分が「ダメだよ!」と制止する。


思い出せないというのは、なかなかキツイものがある。

自分が一年半の間、何をして誰と出会い、誰と交流があったのか皆目わからなかった。母も祖父も「無理に思い出す必要はないじゃないか」と聞いても答てくれない。話はすぐに逸らされてしまう。


でも事故から今月で5ヶ月目になり、自分で集めた情報は様々だ。

僕の集めた情報によれば、僕は駅前通りの《銀香》という喫茶店でアルバイトをしていた。その店は『滝山信吾』さんという人が経営していて、『滝山信吾』さんは平井大貴くんのおじさん。

その縁で、僕は平井くんと寺田くんと親しかったらしい。しかし、彼らは「僕にいろいろ話すことはある人に迷惑が掛かるから話せない」らしい。

『滝山信吾』さんは他にもたくさんお店を経営していて、とても忙しいらしい。彼の経営するお店には僕の記憶の中にある絵が飾られていて、しかも彼は僕が祖父から譲られた絵を父から託されているという。



そして、僕は夢を見る。

誰かに追われている夢。春日井という金貸しに圧し掛かられて、身体を汚される悪夢。一番見たい夢はある男性と抱き合ってる夢。その夢は本当に幸せで彼は、僕の『恋人』だったと思う。

そう確信してから、母たちが僕に隠したがっている事はこの男性の存在ではないか、と思い始めた。世間体を一番に考える祖父が、孫に男性の恋人がいるなんて承知するとは思えない。

顔の見えない『恋人』と、夢の中で睦み合って幸せだと感じるなんて、僕はなんて淫らなんだろう。

これまで自分で処理する事も稀だったのに・・・彼が夢に現れると、目が覚めた僕の右手は自分自身へと伸びるのだ。これまで、こういう行為で感じた事のない高揚感を覚え、ふと思い出したのは卒業式の日に始めて会えた『滝山信吾』さんのフレグランスだった。


もしかして、『恋人』と同じ香りだったのかも・・・。



 今朝、平井大貴くんから郵便小包が届いた。

開いてみると中からフォトフレームが出てきた。セピア色のフォトフレームの右上には両手を頬に付き拗ねたような表情で上目使いで口を尖らせる可愛らしい天使が付いていた。

まるで、平井くんみたいと思わず笑みが零れた。


卓上フォトフレームの中のには、卒業式の帰りに呼び止められて撮影した写真が入っていた。

平井くんらしい明るい笑顔。天真爛漫で周囲の者を巻き込んで笑顔にしてしまうような平井くんの綺麗な笑顔だった。その横には不器用に笑う僕。自分の笑顔なんて嫌いだ。平井くんみたいに綺麗に笑いたいのに・・・。

これを写したのは寺田くんだった。平井くんの笑顔は大好きな寺田くんに向けたものだったのかもしれない。

好きな人に向ける笑顔って素敵だなあ・・・僕も『恋人』にこんな綺麗な笑顔を見せていたのかな?だったらいいなあ。


窓の外を見ると、空はボウッと霞んでいて、周囲も靄に包まれているようだった。雨が降り出すのかなあ。


写真を手に眺めていると、引越しの準備に忙しい母が横から「あら、それはなあに?」と、手元を覗いた。

「これ?平井くんが送ってくれたんだよ。可愛いね、この天使」

母にフォトフレームごと手渡した。母は『平井くん』の名前を聞き一瞬戸惑いを見せたが、平静を装い僕から写真を受け取った。そして、写真をまじまじと見て明らかに動揺した。

この写真の中に、ヒントがあるのか?


「お母さん、僕の記憶はどうして消えちゃったのかなあ?」

「さあ・・・どうしてかしらねえ・・・無理に思い出さなくても良いじゃない・・・あなたには未来があるわ、ねっ?それよりお引越しの準備、頑張ってよ!怜二」


母はフォトフレームを裏返して置くと、そそくさとリビングを出て行った・・・嘘、上手じゃないねお母さん。

思い出そうにも・・・そうだキーワードが足りない。

写真、平井くん、寺田くん、ノートの書き込み、『滝山信吾』、二枚の絵と僕の絵・・・霞んだ頭の向こうで「怜くん」と呼ぶ声が聞こえる。

僕は、明後日大学近くのマンションに引っ越す。

部屋を整理したら・・・まず《濱崎画廊》を訪ねて《花宴》で見た祖父の絵の持ち主を聞き出そう。それから《銀香》に行き『滝山信吾』さんの居場所を教えてもらおう。彼に会って、聞きたいことがたくさんあるんだ。

平井くんにも会わなくちゃ。わざわざ送って来た写真にはヒントがあるんだ。

彼の『急げ』というサインに思えて仕方がない。


外はとうとう雨が降り出した。いずれは雨も上がり晴れる時がくる。

僕の記憶もきっと取り戻すことが出来るはずだ。それがどんなに嫌な記憶であったとしても、そこには僕の大切なものがあるんだ、と確信した。

*****

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そなたの空をながむれば~平井大貴

 滝山のじいちゃん家から戻って来たかあさんが「信吾は、美弥子ちゃんと結婚するつもりかしら?」と、おバカな発言をした。

「バカだろ!?信ちゃんがそんなに独り寝が寂しいのなら俺が一緒に寝てやるぞ!」

そう言うとかあさんは、あははっと可笑しそうに笑った。

「それ、いいわね!絵になるわ~!ほら、最近BLって流行ってるの知ってる!?楽しいわよ~!信ちゃんみたいなのがゾロゾロ出てきて、私の身辺ってネタがゴロゴロ落ちてる感じなのよね!」

きゃはははっと笑いながら、去って行くかあさん。

あの・・・ここにもネタ落ちてますけど・・・っと、これは内緒!


 信ちゃんが「《銀香》を閉める」と言い出した。来月完成予定の社屋の1階に移転するんだ。今の《銀香》は毎日サボリに来ていた酒井さんが、「喫茶店をやりたい」と言い出したから譲るんだって。酒井さんは名前を店名を変えて営業するらしい。


怜との思い出が詰まった《銀香》にいるのが辛いらしい信ちゃんは、最近は午後5時から2時間だけしか店に出ていなかった。

俺だって・・・怜の場所にフクハラテルヤというヤツが立つようになってから、一度も寄ってない。フクハラテルヤってヤツが、これまた信ちゃんが手を出しそうな純ちゃんタイプの可愛い子ちゃんで、なにやら陰謀の臭いがすると思っていたら、案の定犯人は圭ちゃんだった。

「アイツ、今まで信吾さんがちょっかい出してたタイプだろ?試しに置いてみたけど無反応・・・このまま怜二くんに操を立てて、枯れちゃうかもね!」

だと。

とにかく、余計な事はするなと言ったけど、圭ちゃんが聞く耳持ってないのは百も承知の事。

圭ちゃんが信ちゃんの事を大好きで、信ちゃんに早く元気になって欲しいんだという事はわかってるんだけどね・・・。ちょっと、間違ってないか?圭ちゃん!

きっと、信ちゃんは怜が戻ってくるのを待ってるんだ。俺は、そう信じてる。


 卒業式の10日後。

朝から《銀香》の裏の事務所の片付けを手伝い、散々コキ使われて福沢諭吉を2枚ゲットした。

それから、欲しかったタグホイヤーの時計が机の上にポンとあったから貰った。ついでにエルメスの財布がほとんど新品の状態で机の中に入っていたからこれも貰った。

結構迷信とか信じる信ちゃんは「空の財布を貰っちゃいけないんだぞ」と言いながら、気前良く壱万円札を入れてくれた。かあさんが言っていたけど、運が良い人の持ち物を譲ってもらうと、その人の運がお裾分けで付いてくるらしい。

これで俺にも運が開けるかもね!

あっ、悪そうな男運だけは返しておこう!


信ちゃんの机の一番下の引き出しは鍵が掛かっていて、ここだけはとうとう開けてくれなかった。

なにか未成年には見せられない物でも入っているのか!?ますます見たくなるよな?

 明日がマンションに引越しだと言うと「引越し祝いは何が良い?」と聞かれた。大き目のリクライニング機能の付いたソファーが欲しいと言うと信ちゃん、こう言いやがった。

「じゃ、美弥子に付き合ってもらって買って送るよ。部屋は買った時美弥子も中を見てるから、適当に選んでもらうぞ」

また美弥子だよ!シスコンだとは知ってたけど美弥子さんにも依存度高すぎ!

まあ、確かにイイ女だけどな・・・そこは認める。前に「活きの良い鯛」みたいな女だと言った事があるけど、確かにピチピチしてて、勢い良さそうだ。

かあさんがあんな事を言ったのは、信ちゃんのこういうところを指してるんだなあと、納得した。


 怜が事故に遭って以来、会う事すらも適わなくなってしまった2人に、俺がしてやれる事は正直言えば何もなかった。

怜が忘れてしまった一年半を思い出すような事を信ちゃんサイドの人間がしてはならない、これは怜の家族が信ちゃんに突き付けた条件だそうだ。


でも、俺は違う。ただの同級生だ。

ただの同級生が卒業式の日に一緒に写真を撮るなんて、普通の事だしな。


卒業式の日に怜と俺が一緒に写った写真を、信ちゃんに「マンションのお礼」と言って渡した。何も残さなかった信ちゃんに、怜の写真くらい持たせたってバチは当たらないだろ?

これを見て、毎日怜を思い出せばいいんだ、信ちゃん。フクハラテルヤなんかに手を出すんじゃないぞ!?


そして怜には同じ写真を、いつだったか怜が気に入っていた天使のフォトフレームに入れて送った。

駅ビルの雑貨屋で買った3つのフォトフレームはセピア色の可愛らしい天使が付いたシリーズもので、大きく羽を広げた天使が付いてるのは彰彦に、寝そべってる天使が付いてるのは俺、肘を付いて拗ねた顔してる天使が付いてるのは怜に、それぞれ卒業式の日に写した写真を入れて渡そうと思って買った物だった。

これは、俺からの最後のメッセージのつもりだった。

もう、怜にしてやれる事ないんだよ・・・本当は知ってる事を全部、怜に話して聞かせたいんだ。でも、それは俺の考えとかが必ず混じってしまうから、絶対にしちゃいけない事なんだって彰彦が・・・バカ彦!

怜が、自分で思い出すしかないんだ。それはわかってるんだけど、もどかしくて・・・口惜しくて。

自分が気に入った天使を見て、後ろに小さく写り込んだ信ちゃんを見て、思い出せないのなら仕方ないさ。


朝から降りそうだった雨が降ってきた。明日は引越しなのにな・・・。


信ちゃんと怜の未来は土砂降りか!?それともブルースカイか!?


どっちにしろ、俺が大好きな2人が幸せになってくれればそれでいいんだ!もちろん、ハッピーエンドを望んでるに決まってる。

対の置物みたいな2人が仲良く並んでいる姿を、俺はもう一度見たいんだ。

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大ちゃんです!この子ったら、大した働きもせずに3万円もGET・・・。ちなみに、信ちゃんが開けてくれなかった机の引き出しには怜ちゃんへの誕生日のプレゼントが入っていました。大人のおも○ゃなんて入ってませんよ!大ちゃん!

そなたの空をながむれば~三木昌人

 一つ残念だったのは、怜二くんが発する『助けて』のサインに対応してあげられなかった事。


「虫に刺されたみたいです」と言った、彼の手首に貼られた異様に大きな絆創膏を剥いで見ると、爪跡の下には擦れたような跡。これを信吾さんに見られたくなくて掻き毟ったんだなと、ピンと来た。

俺は、信吾さんに報告せずに、怜二くんとの『共犯』の道を選んだんだ。

翌日には肌に色が付くイソジンを買ってきて、怜二くんの肌に塗った。これで、信吾さんが手当てをしても縛られた跡は見えないと・・・。

その後も、ロッカールームで着替える怜二くんの肌に微かに残る情事の痕跡を、見て見ぬフリをし続けた。

全部怜二くんの休みの後の出来事だったんだ。


あの時信吾さんに「虫刺されじゃないんです」と報告していれば、もっと早く解決していたかもしれない。

「あの時こうしていれば良かった、こう言えば良かったなんて『たら・れば』で話したって、なんの解決にもなりゃしないよ」と圭介くんに言われたけれど。


今回の事に関しては・・・出てしまうよな『たら・れば』が。それに気付いていたのに言わなかった事に関しては、信吾さんに責めれても仕方ないと思っている。

しかし彼は、「どうして言ってくれなかったんだ」とは、一言も口にしない。


何度も怜二くんには「信吾さんに言えない事でも、俺に言えるんだったら相談してね」とは言ったけれど・・・言えるわけないよな。父親の借金を返済する為に男に抱かれてます、なんてな。


 怜二くんは『助けて』のシグナルを発してはいたけれど、助けようと差し伸べられた手を掴む事はなかった。それは、彼なりの矜持であったのかもしれない。

バイト代でなにか購入するでもなく、彼は毎月12万円くらいの金額を『春日井ファイナンス』に返済していた。どうやら、母親から貰う生活費も一部それに充てていたようだった。

彼の一生懸命が詰まった貸付台帳を見て俺は、涙を禁じ得なかった。


夕食代は俺たちと一緒に食べていたから特に必要ないし、服も母親が会った時に買い与えていたようだった。信吾さんと付き合うようになってからは、信吾さんが出先で「似合いそうだなと思って」と言っては服を買ってくるから、怜二くんは「こんなにたくさん着ないのに」と頬を赤らめて、嬉しそうに笑っていた。


17歳の高校生が負うには重すぎたんだ。


彼の隠していた事実を知った信吾さんの苦悩は計り知れない。

悔やんで、自分を責めて・・・せめて彼の今後に憂いを残さぬようにと、あらゆる手段を講じた事は、彼の目減りした預金通帳を見ればわかる。

なんに使われたのかも・・・。

あの後、河野さんに依頼して春日井を同行させ、怜二くんを連れて行こうとしていた塩田という男に2000万円を返却した。塩田には更に2000万円を上積みして、今後一切彼には関わらないと念書を取ったと聞いた。もちろん菅谷組へもそれ相応なものが渡されたんだろう。


 あれから信吾さんが時々、ロッカーから怜二くんの仕事着を取り出しては、愛しそうに撫でているのを見掛ける。

苦しそうな顔で再びロッカーに戻しては、ロッカーを撫でるのだ。

怜二くんの私物は全て母親の元に返してしまい、信吾さんの元にはロッカーに置いてあった仕事着のシャツが4枚と誕生日に贈る予定だったネックレス、それに半年間の思い出だけが残された。


彼との関係が怜二くんの母親と祖父に知られてしまい、信吾さんは全て私が悪かったと土下座した。


「愛していたんだ」と搾り出すように呟いた彼の言葉は、家族には届かなかった。届いたとしても、それはただの世迷言でしかない。

信吾さんはもう一生誰とも心を通じ合わせる事などない、と思った。


 今は《シェーナ》の正面玄関に掲げられている『受胎告知』を、事務所で眺めては溜息を付いていた怜二くんの気持ちを思うと、胸が苦しくなる。

「白百合は聖母マリアの純潔を天上から降り注ぐ光は神の祝福を表しているんです」と、教えてくれた怜二くんの心の闇に光を差し込んだのは、他ならぬ信吾さんだったのにな・・・。

偶然《シェーナ》に来店した怜二くんと家族には驚いたが、怜二くんは章太郎や隼人、山下店長のことはわからずじまいだった。

絵が気になるらしくじっと眺めていたから、山下店長はいけないと知りながらもオープンの時に配った絵葉書を「どうぞ」と渡した。それを受け取った怜二くんの笑顔は「今まで見た事がないくらい綺麗だったよ」と、山下店長が言った。


怜二くんの18歳の誕生日を一緒に祝いたい、そんな気持ちで怜二くんがお気に入りだったケーキ屋に無理を言って丸いバースデーケーキを買って来た。

小さな花火に目を輝かせていたらしい。18歳の『無垢な怜二くん』の笑顔だ。


怜二くんはなんでも「お土産」と言って渡されると、それはそれは嬉しそうに微笑んで・・・その極上の笑顔を見たい信吾さんは、外出先から必ず怜二くんの為にチョコレートやケーキ、シュークリームや和菓子を買ってきては、蕩けそうな笑顔で怜二くんを包むのだ。

「父親がお土産なんて買って来たことないから」と恥ずかしそうに俯く様子が愛らしかった。

歳の離れた弟が出来たような気分だったんだ、俺は。

信吾さんはそれさえも警戒して「三木くんを誘惑しちゃダメだよ?」と、こっそり怜二くんに耳打ちしてたっけ。


外は雨になった。

とうとう降り出したか・・・どうか2人が幸せを掴めますようにと、天に祈らずにはいられない。


オープンレセプションの日にスタッフ全員で写した写真には真ん中に立つ信吾さんの左隣で微笑む怜二くんがいる。次の店をオープンする時には、この写真と同じように怜二くんが信吾さんの隣に立っているといいのにな。


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三木くん、お名前決定!!もう、これ以外にはない!まさとさん!

今日一日かかって考えたわりには、またしても検索キーワードに引っ掛かりそうな名前(涙)

だって、名前がないと「三木店長」で副題つけることになってしまう!!これは大変と、昨日購入した東方○起のCDを聞きながら、決定しました(笑)

意外と三木くんが好きだったりします。どうして東方○起で三木くんかというと・・・ヒントは唇です(笑)

そなたの空をながむれば~竹下雪絵

 短大を卒業後、父に勧められるままに有川健次郎画伯の長男・有川隆史と結婚した私は、まだ21歳だった。

就職する事もなく、お嬢様学校を小学校から短大までエスカレーター式に進み、お茶にお花にお料理学校と一通りの花嫁修業は欠かさず「女の子は結婚してこそ幸せになれるんだよ」と呪文のように繰り返し教えられ、周囲の友人たちももちろんそうだった。

自分で働いて収入を得るなんて考えてもみなかった・・・こんな人生、間違いだった。

今更ながらに生活力のない自分は、再び男にパラサイトするしかないのだ。

父が勤める会社で父の後ろ盾を欲する瀬戸という男性を紹介された。何度か会って私は再婚を決めた。彼もバツイチで、子どもはいないから都合が良かったのだ。


 あの日、私は隆史の借金の為に男たちに襲われそうになり、逃げる事に必死だった。怜二は勝手口から私を逃がしてくれて、私は怖くて後ろも見ずにひたすら実家を目指した。実家を目指す事以外考えも及ばず、残った怜二がどうなるかなんて、考える余裕もなくて・・・。


怜二は当然後から来るものとばかり思っていた。

あの時お隣の玄関を叩き、警察に助けを求めていたら・・・後悔ばかりが私を襲う。


だけど、もう遅い。後悔したって『事実』は消えない。怜二の傷付いた心も身体も元には戻らない。怜二が事故に遭って、私が出て行ってから後の記憶がないとわかった時は、本当に幸運だと思った。


自分勝手な私を、怜二に曝したくなかった。


父は「全て隆史が悪い」と言うけれど、そうじゃない。実家暮らしの気楽さに負けて、怜二にはお金さえ与えておけば大丈夫と考えていた私・・・とんでもなかった。私を逃がした後、怜二は男たちに身体を汚され、毎月口にするのも汚らわしい行為を強要されていたのだ。


更には、滝山信吾。父はきっとアルバイトしていたから断りきれなかったのだろうと、言うけれど・・・違う、と思った。


あの携帯電話の写真の怜二は綺麗に微笑み、しかも自分で写真を残していた。


決して、強要された行為なんかじゃない、2人はきっと愛し合っていたのだ。


怜二の悲惨な記憶は生涯封印していて欲しいと願い、記憶が戻らぬようにあらゆるものを遠避けてきた。でも、もう限界なのかもしれない。

私は再婚し、怜二は一人暮らしを始める。記憶が戻れば、怜二は私たちを責めるだろう。私は、それが怖い。怜二の旅立ちが怖いのだ。

怜二の選択は決まっている、怜二は滝山信吾を選ぶ。そしてその日は近いような気がするのだ。


怜二の頭痛は思い出したくない怜二と思い出したい怜二の葛藤が起こしているに違いない。最近頭痛がすると言わない怜二。


私に下される怜二の審判の時は近い、私はそれが怖いのだ。


 怜二が「再婚したら、もう一人弟か妹を産んでね。お母さんはまだ若いんだから」と笑ったけれど、それは怜二の『新しい家族』への拒絶に他ならない。新しい家庭に入る気はありません、と暗に怜二の決意を突き付けられたような気がした。

怜二が記憶を取り戻してあの男の所へ行くと言ったら、私はどうすればいいんだろう・・・。

引越しの準備が進まないのは、このことを考えては手が止まるから。

自分の幸せと怜二の不幸とを引き換えにしたような気がしていたからに他ならない。

あの時世間体なんか考えずに、お隣に助けを求めるべきだった・・・堂々巡りの私の思考は、怜二の手にあった写真で中断された。

受け取った写真には喜色満面な平井くんとどこか虚ろでそれでも綺麗に微笑む怜二が写っていた。

平井大貴くんが怜二に送ってきた写真の後ろに小さく写りこんだ男は、間違いなく滝山信吾だった。いつか、怜二は記憶を取り戻しあの男の元へかえるような気がしてならない。いずれ自分で真実を突き止めるに違いない。全てを思い出す日が来るに決まってる。


あの時の私の判断が、全ての間違いの元だったのだ。

あれさえなければ、怜二の身に起こった災難も、滝山と出会う事もなかった。


私が顔も見たくないと思っている男は怜二が愛する男なのだ。

全ての事は表裏一体で、幸せと不幸せ、愛と憎しみ、失敗と成功・・・私の再婚は隆史との決別、つまりは怜二との別れでもあるのだ。

そして、怜二と滝山を引き合わせたのも元を正せば、私。

祈るものはただ一つ・・・これまで辛い思いをしてきた怜二の幸せを願うのは私も父も、もちろん滝山も同じなはずだ。

怜二の記憶がずっと封印されたままでいますように・・・思い出したあの子が苦しむのは目に見えている。父が聞いてきたのは、滝山信吾と加藤建設のご令嬢との結婚話が進んでいるという噂話だった。

もし怜二が記憶を取り戻して滝山を訪ねた時に、拒絶されたら・・・怜二はどうなるの?

生涯開いてはならない『パンドラの箱』を開こうとしている怜二を止める術を、私は模索している。


あと幾日かで実家ともお別れ。新たな道を歩む怜二の幸せを祈らずにはいられない。


雨が降り出した。

明後日の怜二の引越しの日には、晴れれば良いのだけれど・・・。


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雪絵さんです、非難轟々の怜ちゃんママです。彼女の若い頃は今の世の中じゃ信じられないでしょうが、お見合いして半年後には結婚なんて普通に有りでした!それ以前は紹介されて、2度目には三々九度なんて事も!

雪絵さんの言い訳なんて、どうだっていいんじゃ!!と思われる方もおられましょうが、彼女の主体性のなさをアピールしておこうかなと・・・やっぱり、いらなかったでしょうか・・・?
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