『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・6

 井上辰弥が部室掃除に付き合ってくれた。中・高六年間使った部室を掃除するのも最後だなと思うと、感慨深いものがある。いつもなら大貴と二人でやるから楽しいが、相手が井上だしね。

「寺田。余計なお世話かもしれないけどさ」

「なんだ?」

「高等部二年の門脇遼平は知ってるよな?」

井上の口から嫌な名前が飛び出した。昨日の事を思い出した俺はムシャクシャし始める。休み時間に、おしゃべり畑中が「大貴が二年の門脇と付き合ってるって本当か!?」と大騒ぎしていたのだ。

だが、俺はそんな噂など聞いても何ともないフリをするのだ。

「ああ。門脇大臣の息子だろ?」

井上は頷いた。

「門脇と大貴が正門の前で抱き合ってたって噂、聞いたよな?」

その場にいました。それ、見ていました。嘘じゃないです。大貴は、その後もボ~~~ッと門脇に見とれていました。

「噂は畑中から聞いたし、俺はその現場にいたぞ。それがどうしたんだ?」

「門脇がさ・・・。大貴の事を『可愛い先輩だから付き合ってもいいかな』と、発言したらしい」


なんだ!その上から目線は!?俺の大貴にっ!

第一、少々噂になったって無視してりゃそのうちみんな飽きる。二週間も経てば忘れるんだよ!星望では噂が消えるのに75日も待つ必要はない。

大切なのは、噂について聞かれても何も反応しない事なんだよ。何を考えてるんだよ、門脇のヤツ。火に油を注ぐような事をしやがって!

星望の男子たる者。この手の噂は、人気のバロメーターみたいなものじゃないか。大貴はこれまでに、俺、有川を始め、呼び出された教師に教育実習の大学生。

今まで何人と噂になったかわからんぞ!クソッ!!


俺は冷静を装って答えた。

「ふうん。大貴は政治家嫌いだから、無理だな」

「はははっ!そりゃいいや!大貴らしいな。あいつ可愛いからなあ。お前も目が離せないな!」

背中をバンバンと叩く井上の足を箒で叩いた俺は、「さっさとやれよ」と掃除を続けた。

井上が「うわあ!手伝ってるのにゴミ扱いかよ!」と、逃げ回るのを箒で追いかけて溜飲を下げる。井上はおそらく、俺の大貴への気持ちに気が付いているのだ。

友人でも感情を覚られるのは好きじゃない。


 余計な事を言った門脇に対する苛立ちと大貴がいない事の寂しさとを、ゴミと一緒くたにしてビニール袋に詰め、部室に鍵を掛けた。

俺たち三年生は日曜日の試合が高校生活最後の試合だったし、後は進学先が決まった連中が暇つぶしに来るくらいだ。ここに来るのもあと何回だろうか・・・。

大貴とじゃれあって、コートを走り回って、部活も楽しかったな。天真爛漫な大貴の顔が目の前をチラついて、俺の胸は一杯になる。

ロッカーの中に放置していた私物を全て出し、中も綺麗に拭き上げた。大貴のロッカーの鍵を預かってくれば良かったな、と思いながら明日の掃除当番の渡部直正に鍵を渡した。


 渡部直正は幼稚園から星望に通う、『持ち上がり組』ではない。中等部から入学してきた『入試組』だ。

父親が外交官で赴任先次第では一人で日本に残る事もある彼は、寮のある星望を選んだらしい。高校三年間、大貴と同じクラスという幸せ者の渡部は、これまでに二度大貴に告白し、二度ともこっぴどくフられた。

大貴はクラス替えの度に「アイツは学園に物凄ーいコネでもあるのかな?」と呟いていたが、星望学園で一番コネが利くのは滝山一族で間違いない。

時々、舐め回すような目で大貴を見ているし、俺の事は目の敵だった。テニス部の顧問に何度も、「大貴とペアを組ませてくれ」と頼んだりもした。

俺は、何度か「大貴にちょっかいを出すな」と警告した事があるが、渡部は聞く耳を持たない。

この時、渡部に部室の鍵を渡してしまった事を、俺は悔やんでも悔やみきれない。


 土曜日。大貴からメールで「信ちゃんに送ってもらう」と連絡が来て、俺は今日も一人で登校する事になった。帰りも信吾さんが迎えに来る事になっている。

土曜日は、一週間分の授業のプリントを解いて先生が解説する、が繰り返されるという演習授業になる。ちゃんと授業に出ていれば問題はないが、二日休んだ大貴にプリントが解けるか俺は心配していたのだ。

案の定、わからない問題がたくさんあったらしい。ホームルームが終わると、大貴は「教職員室で質問してくる」と言って教室を飛び出していった。

いつもなら、先生より先に俺に聞くのにな・・・。


 俺は大貴の机の荷物を纏め、クラス日誌を書き込んだりしていた。大貴がカバンを取りにくるだろうと思って、教室で待つつもりだったのだ。

クラス委員なんて、引き受けなきゃよかった。

そして、なにか大切な事を忘れている、と感じた。

なんだったかな・・・?

大貴からのメールに、『部室に荷物を取りに行く』と書かれていた事を思い出した。今日の部室の掃除当番は、あの「渡部」だ。


待てよ・・・。非常に拙くないか?

もし、大貴と渡部が部室で鉢合わせになれば・・・。いや、当番は二人一組だから大丈夫だ。


そうは思うが不安だ。落ち着かない。

妙な胸騒ぎを覚えた俺は日誌を閉じた。担任に日誌を提出するついでに、大貴を迎えに行けばいいのだ。

まずは教職員室に行って、大貴の質問が終わるまで待つ。それからと部室に行き、一緒にロッカーを片付ければ良い。荷物を持ってやって、迎えに来た信吾さんに大貴を引き渡せばいいんだから。

俺は自分と大貴の通学カバンを手に、教室を後にした。
 

人生、一寸先は闇。

俺のこの判断は間違っていた、少なくとも、真っ直ぐに部室に向かうべきだった。


*****

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