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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・9

 渡部は「大貴のことが本当に好きだったんだ」、と頭を下げて出て行った。未遂だったとは言え、大貴をキズ付けた渡部への怒りが抑えられない。

「勝手なことぬかすんじゃあねよ!」

俺だって、大貴の事が好きなんだ。渡部なんかより、ずっと前から。

ずっと、ずっと大好きで、大切で、『親友』という立場で近くにいるのが苦しくて、満杯の水はとっくに溢れ出してるのだ。

行く当ての無い俺の気持ちは彷徨い続けていた。ロッカーに付いた新しい血の跡が大貴のものだと思うと、自制する間はなかった。

気が付けば俺はロッカーを蹴っていた。思いっきり蹴り上げた金属製のロッカーは、ガンッと派手な音を立てる。それを見た有川から、「騒がないでよ」と注意されて更にへこむ。

 誰にも気付かれずにここから立ち去るべきだ、とみんなの意見は一致した。

信吾さんが大貴を抱き上げた。ドアを開けた有川が慎重に外に他の生徒がいない事を確認し、三人は部室から出て行った。大貴を車に乗せた後、有川が部室に戻ってきた。

「これ、全部大ちゃんの物だよね?」

「ああ」

大貴のロッカーの中に入れてあった荷物が紙袋からはみ出し、床に散らばっていた。有川は荷物を手早く拾い上げ、一纏めにすると周囲を確認した。

「僕、先に行くね。彰彦くんのカバンは車にあるから持ってくるね」

「ああ、ありがとう」

無能の烙印を押された俺は、ロッカーに付いた大貴の血の跡を撫でながら、歯を食いしばった。

渡部の顔を思い出すと拳に力が入る。行き場を無くした怒りを込めて、再び拳をロッカーに叩き付けた。ガンッと音がした瞬間にドアが開き、振り返ると有川ではなく信吾さんがいた。

「彰彦くん」

「信吾さん」

信吾さんは俺のカバンをベンチに置いた。

「彰彦くん、後始末を頼んだよ。ロッカーと床に残ってる血は拭いて、掃除を頼む。ここで起こった事の痕跡は残さないように。終わったら鍵を掛けて。わかるね?出来るか?君が冷静になれないのなら、後始末は怜くんに頼むけど?」

大貴の身に起きた事を、幼馴染みで親友の俺が怒っていると、信吾さんは思っているのだろうか。

「大丈夫です。後始末は俺がします。大貴が小森先生から借りた鍵はそこに掛かってますから、俺が返しておきます。ちゃんと、やれます」

信吾さんは俺のやるべきことを指示し「大貴はしばらく不安定になるかもしれないから、よろしく頼む」と、頭を下げ部室から出て行った。

そうだった。俺には俺がやるべき事があるじゃないか。

渡部の他にもう一人の当番がいたはず。渡部がそいつに何を言ったかわからないから、今にでもそいつがここへ来る可能性だってある。

出来るだけ早く鍵を返さないと、ここに小森先生が来るかもしれない。ぼやぼやしている暇はなかった。ここで起きた事は、「なかった事」にしなければならないのだ。

 俺は、弾かれたように与えられた『仕事』に取り掛かった。

雑巾とバケツを出して、部室に並んでいるロッカーを全て、注意深く拭き上げた。血の跡があるロッカーは特に念入りに拭き、床やベンチも丁寧に拭いた。

ベンチの下には、渡部が持っていた部室の鍵が落ちていた。この鍵は「渡部から預かった」と言って次の当番に渡せばいいんだ。

一つ一つ、自分が吐く『嘘』を確認しながら部室を掃除し、検めていく。何一つ、落ち度のないように・・・。

箒で部室中を掃き、ゴミは纏めて持ち出す。ベンチの付近は特に念入りに点検し、制服のボタンなどが落ちていないかもう一度確認した。

これで今日の掃除当番の渡部は、きちんと掃除をし帰宅した事になる。

 俺は教職員室に戻り、テニス部副顧問の小森先生に鍵を返した。

「遅かったじゃないか?保護者!」

「すみません。平井の荷物が多くて。叔父さんが車で迎えにいらしてましたから、部室まで来てもらってました」

用意した『嘘』がスラスラと口から飛び出ていく。簡略に必要な事だけを言えばいい。大切なのは言い過ぎない事と、言い逃さない事。

「平井もワガママだなあ~!あいつの『叔父さん』と言うと、滝山信吾か!」

「はい」

「俺さ、大学卒業してすぐにここに赴任したんだけど。滝山は高三にいたんだよ。カッコいいだろ?相変わらずか?」

「はい、カッコいいですよ。今でもモテモテです」

「だろうな!同級生の恋人がいてさ、そいつがまた美人で。あっ、男だから美人は可笑しいか!?あはははっ。2組の有川みたいな感じの綺麗な男だったな。普段はギスギスして尖がっている滝山が、そいつの前だとふわっと笑うんだ。あんなふうに微笑まれりゃ、男も女も一撃だと、俺は思ったね」

土曜日の教職員室には、生徒の姿はない。先生方も少なくて、小森先生の口は絶好調だ。

「そうでしょうね。今でそうですよ」

「だろうな。美人とは卒業前に別れたがな。おっと!余計なおしゃべりが過ぎたな。寺田も、自分の当番は終わってるのにご苦労さん!」

「俺、『保護者』ですから」と言うと、小森先生は豪快に笑った。

「学年一位は面倒見も学年一だなあ」 

気安く話せる楽しい先生だけど、秘密の保持は難しいらしい。小森先生には秘密を知られてはならないなと、しみじみ思った。


 高校時代の信吾さんと恋人の事は、大貴からも聞いた事がある。

もし俺の想いが大貴に通じて晴れて恋人同士になったとしてもだ、信吾さんたちみたいに引き裂かれてしまう事になるのだろうか?

そんなのは、イヤだ。

父は俺の想いを認めてくれたけれども、大貴と身体の関係を持つのを「認める」とかではないと思う。

やはり恋愛感情は殺して、大貴の『親友』でいよう。

大学に進学した後も、大貴の事は誰が狙うかわかりゃしないのだ。大貴を守らなくては。二度とこんな事が起きないように・・・。

*****

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どうしてこの作品をさっさと下げなかったのか、後悔していますwww今夜から新作をUPしようかとも思いましたが、あまりにも恥ずかしいのでとにかく修正かけて全話UPしたいと思います。本当にお目汚しでありましたwww

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