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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・10

 その夜は、ほとんど眠れなかった。眠りは浅く、何度も夢を見て目を覚ます。

夢に見るのは、大貴に圧し掛かる渡部と、泣き叫びながら「彰彦!助けて!」と助けを求める大貴。

大貴を助けようと手を伸ばしても、大貴には届かない。届きそうなのに、あと僅か大貴には手が届かないのだ。あと少し、あと一センチ。届かないその距離が、俺と大貴の距離なのだ。

そうかと思えば、大貴を組み敷いた渡部を引き剥がそうと肩を掴み、俺は怒りを込めて殴り掛かる。だが、振り返ったその顔は欲望に塗れた自分自身だったりする。

泣きながら「彰彦、やめて!」と懇願する大貴を組み伏せた俺。大貴の身体を貪るのが、俺自身の願望なのだ。

そんな悪夢を見ては起きる、を繰り返した。まんじりともせずに朝を迎えたが、寝汗でベタベタの身体は重かった。寝なければよかったと、後悔するくらいの虚脱感と疲労感を感じた俺は、日曜日だったのを良い事に、もう会わないと決めたはずのひろ子の部屋へと向かった。


 それでも気分は晴れない。俺は残された僅かな絆のようなものを手繰り寄せるべく、大貴にメールを送るのだった。

しつこいと思われようが、大貴に「心配している」と伝えたくて、何度も電話を掛けメールを送信し続ける。「身体、大丈夫か?」、「学校来れるのか?」、「月曜日は家まで迎えに来ようか?」。

メールには返事がなく、電話の呼び出し音は空しく響いた。電源が切られてないだけ、マシか。

 夕刻、思い余って信吾さんに電話した。

病院に行って傷を確認した事。あちらこちらに擦り傷や鬱血痕が残っているから、隠す為に包帯を巻く事になったそうだ。階段から足を滑らせた事にするという。

信吾さんからは「月曜日から登校するからよろしく」と言われた。

「今は、怜二くんが一緒にいるから心配はないよ。ずっと二人で話したりしてる。時々、教科書を出して勉強もしてるし。かなり無理してると思うから、頼んだよ」

「任せてください」とは言ったものの果たして俺は、大貴に今までどおりに接する事が出来るのだろうか。

いや、そうしなくてはならないのだ。俺たちの関係は何があっても変わらないのだと、大貴に伝わらなければならないのだ。


 鳴らない役立たず携帯を開けたり閉めたりしながら夕飯を食べていると、電話が鳴り出した。

大貴に違いない。喜び勇んで携帯を開き、ディスプレイを見てガックリと肩を落とした。

『あきちゃん!こんばんは!』

林島清香だった。

「なんだよ?」

『あら、ご機嫌ナナメなのね。あきちゃんがお勧めしてくれた参考書を買いに行きたいの。明日、付き合って?』

「イヤだね」

『ケチ!お願い!』

大貴の『お願い』攻撃は俺には効果抜群だが、清香の『お願い』は、全く効果がない。

『大貴くんに会いたいし、正門で待ってるから』

正門で、だと?大貴は今、精神的ショックを受けてるのに、清香になんか会わせたくない。もしかしたら清香を見て、さっさと彼女を作ってしまおう、なんて考えるかもしれない。清香は10人並みの美少女だからな。

だが、何度「ダメだ」と言っても清香は引こうとはしなかった。食事中に電話に出たから、母は嫌な顔をしている。俺が困っているのを、弟たちは楽しそうに聞いている。

「わかったよ。でも、正門はダメだ。駅ビルのコーヒーショップで待ってろ」

『え~っ、正門がいいのに。イケメンがたくさん通るし!』

「イヤだね。じゃあ、参考書は俺が買ってくるから。お前は家で待ってろ」

『わかったわよ。そこで待ってる』

やっぱり役立たずだ、この携帯。

俺は携帯電話をテーブルに投げ出した。この無駄話の間に大貴が電話してくれたかもしれないのに。余計な電話をしてきた清香が憎らしい。

通話の間にメールが着たかも、と確認してガックリした。

隣で俺の百面相を見ていた弟の達彦が「あきちゃん、楽しいの?悲しいの?」と、顔を覗き込んだ。

 「ガキには関係ないの!」

俺は達彦が大嫌いな椎茸の肉詰めを素手で掴み、マヌケな顔をした弟の口に突っ込んだ。達彦は、ウゲーッと言いながら椎茸の肉詰めを吐き出す。

「ちゃんと食えよ。汚いだろ?ごちそうさま」

「彰彦。保護者会のお知らせのプリントなんだけど」

「はあ?」

「出してちょうだい」

「持ってくる」


そんなに保護者会が好きなのか?

一体、誰に聞いたんだよ。保護者会なんか年に何度もあるんだから、一回くらい行かなくったっていいじゃないか?

ああ、そうだったな。

俺は「ご自慢の息子」だからな。忘れていたけれど、母には『理想の息子を持つ羨ましい母親』を演じさせて、満足させなくてやらなくてはならなかったのだ。

 成績でしか人を判断しない母にウンザリしながら、部屋のゴミ箱から丸めて捨てた『保護者会のお知らせ』と書かれたプリントを引っ張り出した。

皺を手で伸ばし、黙って母に渡した。

目を合わせずに背を向ける俺に、母も声を掛ける事はない。俺が差し出したプリントを受け取って溜息を吐いた。

俺にはその溜息の意味がわからない。


「あきちゃん、酷いよ!椎茸、嫌いなのに」

達彦が涙目で訴えるが、弟に試練は付き物だ。

「中三にもなって椎茸が食べられないなんて!修行が足りないぞ、達彦」

俺は用がなくなったリビングを出て行った。


明日、大貴に会うのが怖い。会いたいけれど、俺はどんな顔したらいいのだろう?大貴とは、今までと変わらずに接しよう。特別扱いなんて、あいつは嫌がるに決まっている。

返事の来ないメールと掛かってこない電話の意味は、と考えていると今夜も眠れそうになかった。
 
*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

彰彦くん、難しいお年頃です(><)

ちなみに、彰彦(高三)達彦(中三)麻奈美(中一)の三兄妹の設定です。もちろん三人揃って星望学園です。

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