『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・15

 存在は知っているが「面識がある」とは言えない程度の下級生・門脇遼平と、「正門前で抱き合っていた」と噂になっている大貴にムカついていた。言い掛かりだと言われればそれまでだが、俺のムシャクシャした気持ちは収まらない。

だいたい門脇も門脇だ。「噂」について聞かれても無視していればいいものを、「渦中の人にしてください」とばかりの発言をしやがって・・・。

「お前はボオ~~~~ッと門脇を見つめていただろう?それは俺も見てたし。門脇はお前となら『付き合ってもいいかな』と、言ってるらしいぜ」

鳩が豆鉄砲食らったような顔で俺を見ている大貴。何だ?その表情は。大貴の言い分など聞く耳持たない俺に対する怒りか?

それとも諦めか?頼りにならない『親友』に呆れているのか?

「あのさ。その噂を鵜呑みにしていたのか、お前」

俺は是も否もなく頷いた。大貴は眉間に皺を寄せ、俺を睨みながら言った。

「俺は確かに門脇を見ていたけどさ。親父はテレビ映えのするイイ男じゃん?奴もなかなかイイ男だなって・・・。ほら、背も高いしさ。別に、他意はないよ!」

門脇の事を「背が高くて、イイ男」と評した大貴が気に食わない。

「わかった、帰る。門脇の事を気に入ってるのならそれでいいんだよ」


多分、俺の声のトーンはいつもの三割減だ。

ああ、俺ってホントにちっちゃい男・・・。

そうだった。今頃思い出したが、大貴は精神的ショックを受けているのだ。もっと優しくしなくては。「今度からは俺がしっかりと守るから、心配するなよ」、くらいの言葉を掛けてやれないのか、俺。

だが言い訳しない大貴に落胆もする。

「明日から、ちゃんと助けろよ。彰彦」って、言えよ。俺を頼れよ。


「何にも言わないんだな」

「・・・」

俺は自分が言って欲しい言葉をくれない大貴に、半ば自棄になっていた。

「門脇と付き合うくらいなら、清香にしとけよ。じゃ」

ダメだ。これ以上大貴の傍にいてはいけない。嫉妬の塊になってしまった俺には、優しい言葉が思い浮かばない。

このままでは更に大貴をキズ付けてしまう。そう判断した俺は立ち上がり、玄関に向かった。靴を履く俺を大貴は黙って見送ってくれているが、目を合わさないし俺も合わせる事が出来なかった。

 閉まりかけのドアの間から顔を出し「水曜日のこと、怜に連絡しておいてくれる?」と言うと、短く「おう」と返事があった。

そうさ、門脇と仲良くしてる大貴なんか見たくない。門脇に抱かれてる大貴を想像しただけで、気が狂いそうだ。

幼稚園の頃から片想いしている大貴が、誰かのものになると考えただけで嫉妬と怒りが込み上げてくるのは当然だろう?

『親友』なんてクソ食らえだ。


 自宅に戻り、玄関を開けると見慣れぬ女性用の靴がズラリと並んでいた。どれも高級ブランドの品で、母が有閑マダムと会合中だとわかった。

今日の議題は亭主の浮気防止策か?子どもの成績向上委員会か?はたまた『幸せな生活』自慢大会か?

どちらにしろ、俺の役目はリビングに陣取った母の友人御一行さまに、最上級の笑顔で「母さん、ただいま。皆さん、いらっしゃいませ」と、行儀の良い自慢の息子を演じる事だった。

リビングのドアを開けると、女性用のフレグランスと化粧の匂いで溢れかえっていた。こいつら鼻がおかしいんじゃないか、と思ったが我慢、我慢。

思ったとおりご友人御一行さまが、リビングの10人掛けの半円形のソファーに並んで座っていた。有閑マダム品評会、ってところだ。

「母さん、ただいま帰りました。皆さん、いらっしゃいませ」

俺は極上の笑顔で、オバサンたちに微笑みかけてやる。

「あら、彰彦さん。お帰りなさい。遅かったのね」

アンタだって、まだ「会合中」だろ?飯の支度もしてないだろうが。

「放課後、林島先生のお嬢さんと駅ビルの書店に行って来ましたから」

俺は大貴の「だ」の字も出さずに、あえて清香の名前を出した。

「そう、清香ちゃんを家にお呼びしたら良かったのに」

「早く帰さないと、おばさんが心配するだろうと思って」

優等生の答えに、マダムたちは「あら~彰彦くんは紳士なのねえ」、「本当に、素敵な息子さん。羨ましいわ~!」「林島さんが羨ましいわ」、「うちの娘も誘って欲しいわ、星望はどうして女子部と男子部を分けるのかしら」、「高校でも彰彦くんと井上さんのご子息がトップなんでしょう?いいわね」「うちの娘は、全然向上心がないのよ」・・・等など。

ああ、始まった。御一行が一斉に口を開き、収拾が付かない。

もう、いいだろう?母さん?ウンザリしながら目で訴えると、母も心得たものだ。

「彰彦さん、暑かったでしょう?シャワーを浴びてきたら?」

「はい」

今日の会合は、星望学園幼稚園からの仲良しマダムだから長くなる。夕食は達彦たちを連れて近くのファミレスにでも行こう、と思った。

優等生は「失礼します」と、優雅な仕草で挨拶をしてリビングを後にした。無駄な螺旋階段を上り部屋のドアを開けると、隣の部屋から達彦が顔を出す。

「あきちゃん、ご飯はどうなるの?お母さんの会合まだ終わらないのか?」

「金は貰ってるから、三人でファミレスに行こう?」

「賛成!」

達彦と麻奈美は気取ったレストランよりファミレスのほうが喜ぶ。もちろん俺もその方が好きな物を好きなだけ食べられて、「優等生の彰彦くん」を演じる必要もないから楽なんだ。

味より「自由」だ。

母の知り合いでファミレスに出入りする人間なんかいやしない。俺たちはご友人御一行さまには見えないように勝手口から出て、三人で近くのファミレスに向かった。


 二時間程して家に戻ると、会合は解散していた。

「おかえりなさい!ごめんなさいね」

「いいよ!ファミレス大好きだもん!」

麻奈美が無邪気に報告するから、母が俺を睨んでいた。

「なんだよ。いいじゃないか。達彦も麻奈美も高級レストランよりファミレスの方が喜ぶんだから」

文句あるのか、とばかりに言うとさっさと二階の自室を目指した。何か言いたげに見送る母を見下しながら。

もう、こんな『理想の家庭ごっこ』うんざりなんですけど・・・。

母がサボッて食事の支度をしなかったんだから、ファミレスに弟たちを連れて行ったからと言って文句を言われる筋合いはない。


内憂外患って、これだな。

家では母との関係に悩み、外では大貴との関係に悩む。

だが、明日からは大貴に普通に接したい。

俺は大貴の笑顔が大好きなんだ。門脇との噂はまだ収束してないのだから、俺が守ってやらなければならない。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

ブログ村には新着記事が一日3件しか表示されません。「あまりてなどか~」の更新は続きますので、ブログの方でご確認ください。修正箇所が多すぎて、UPに時間が掛かっておりますwww

   日高千湖

ランキングに参加しております、良かったらポチッと押してやってください♪
   ↓
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村  
携帯電話の方はこちらを押して頂けると嬉しいです♪
   ↓
ブログ村 BL・GL・TLブログ
ありがとうございました! 
関連記事
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

日高千湖

Author:日高千湖
日高千湖のBL小説ブログへようこそ♪

こちらはオリジナルBL小説ブログです。BLという言葉なんて知らない、嫌悪感を抱くとおっしゃる方は回避願います。

旧ブログ『薄き袂に宿る月影』をご愛顧頂きました皆さまには、ご迷惑をお掛けしております。

旧ブログ内で公開しておりました作品につきましては順次こちらでも公開して参ります。また、旧ブログで公開中の作品は今のところそのまま残しておりますが、こちらへは改稿した上でUP致します。こちらへ移転後は旧ブログでの公開は見合わせたいと思いますのでご了承下さいませ。

左上の【Sitemap】をクリックして頂きますと過去3ヶ月の更新記事がお読みになれます。お久しぶりの方、読み逃がした方はこちらが便利です♪

サイトマップ代わりに【目次と登場人物紹介】というカテゴリを作成しましたので、そちらをご利用下さい。

★拙作ではございますが、著作権は放棄しておりません。お持ち帰りはご遠慮願います。

★大変お手数ではございますが、リンクをご希望の方はコメント欄にてお知らせ頂けると嬉しいです♪よろしくお願い致します。


ランキングに参加しております。良かったら押してやって下さい!
  ↓

にほんブログ村


ありがとうございました!

★尚、拍手コメントくださいました方へのお返事は、コメントを頂いた記事のコメント欄にて書かせて頂いております。ご確認下さいませ★

では、ごゆっくりどうぞ♪

最新記事
カテゴリ
最新コメント
FC2カウンター
リンク
QRコード
QR
フリーエリア