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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・16

 翌朝、いつものように大貴と駅で待ち合わせて、いつもの電車に乗り、いつものように歩いて登校する事が出来た。

良かった。これが、正直な気持ちだった。大貴がいつものように、隣で笑ってくれる。それだけが無上の喜びだった。


 正門をくぐり、《煩悩の108階段》を上り、真ん中辺りでいつもより早く大貴が音を上げる。

「彰彦~!俺、もうダメ、休んで行こう」

木・金と風邪で寝込んでいたし、土曜日は嫌な目に合ってるんだ。「仕方がないなあ」と言いながらも、心の中では「煩悩階段、万歳!」と、諸手を挙げた俺。

さりげなく手を差し出して、大貴と手を繋いだ。手首に巻かれた包帯が気になったが、見なかった事にする。

「お熱いね~ぇ!」

後方から上って来る連中が茶化してくるのもいつもの事だ。心の中では誇らしく思いながら、ヤツラを無視して階段を上る。本当は、「羨ましいだろ?」と振り返って自慢したい気分だ。

そんな俺の朝のお楽しみタイムを、一瞬にしてぶち壊してくれたのは正面玄関の車寄せに立つ門脇遼平だった。


 繋いだ大貴の手がピクッと、緊張するのがわかった。

寮生の門脇は、寮と校舎を繋ぐ渡り廊下から登校するはずだ。ヤツは正面玄関には用はないはずだ。

わざわざ大貴が登校するを待っていたのか?門脇は口元に微笑を湛えたまま、真っ直ぐに俺たちに近づいて来た。

中・高等部は学年で棟が違うから、学食や教室の移動の時にすれ違うか、部活の時くらいしか他の学年の生徒とは接触しない。近くでマジマジと見た門脇は大貴の言うとおり『政界のプリンス』『流し目の遼さま』と異名をとる父親によく似ていた。父親同様、テレビ映えのする長身のイケメン。

門脇は見事な微笑みで挨拶を始めた。選挙かよ。

「おはようございます、平井さん」

俺を無視して、大貴にだけ爽やかな挨拶をする門脇。大貴の顔が強張り、俺と繋いだ手に力が入るのがわかった。だが、俺はそっと手を離した。

「おはよう」

大貴に続いて、も「おはよう」と挨拶したが、門脇はわざとらしく、たった今、俺の存在に気付いたかのように俺に視線を寄越した。

「寺田さんもご一緒でしたか、おはようございます」

見えてるだろうが。俺は透明人間か?

敬うべき先輩に対して失礼極まりない態度だ。門脇は不機嫌そうな俺を見ても微笑を絶やさない。門脇の態度にイライラしている自分の心を見透かされたような気がした。

このタイプは苦手だ。自分と同じ匂いがする。

おそらく門脇も「仮面」を被って生きているのだ。父親の職業柄そうせざるを得ないのだろうな。だが、こんなにあからさまな『あなたのことはわかってますよ』的な視線には堪えられそうもない。

「じゃ、先に行くから」

俺は守ると決意したにも拘らず、大貴を置き去りにする。

「彰彦!待てよ!」

大貴が俺を止めたが、それに被せるように門脇が言った。

「平井さん、ちょっとお話があります。時間は取らせませんから、いいですか?」

大貴には「ごめん」と心の中で呟いた。振り返らずに教室に向かった俺。後悔しながら下足箱を目指す。


「おはよう、大貴はいいのか?」

「おはよう、井上」

俺は大貴の事に関しては返事をしなかった。「大貴」と聞いただけで、俺の胸はざわつく。振り返って二人がどうしたか確認したいが、それが出来なかった。

「図書館の方に行ったぞ」

さりげない井上の情報を聞き、俺は何でもないと装った。

「そうか」

「大貴と門脇が朝から会っていた」というのが、おしゃべり畑中の耳にも入ったらしい。教室は蜂の巣を突付いたような騒ぎになり騒然としていた。畑中は、教室に入った俺を捉まえて、「寺田!お前が行って大貴を取り返して来いよ」と騒いでいる。

「煩いぞ、畑中」

「寺田!いいのか?門脇だぞ」

「知らないよ。もうすぐホームルームが始まるぞ」

すぐにホームルームが始まるから心配しなくても大丈夫だ。そうタカを括っていたが担任が教室に入って来ても大貴は教室に姿を現さなかった。心配になって何度も入り口を見る。

しばらくして大貴が困惑したような表情で教室に入って来て、俺はホッとした。門脇め、「時間は取らせませんから」と言ったクセに。


 「大貴と門脇の朝からランデブー」の噂はあっという間に広まり、休み時間には有川が教室にやって来た。それがまた憶測を呼び、「嫉妬した有川が大貴に文句を言っていた」と噂になっている。

大貴と有川は教室の隅でなにやらヒソヒソ話をしていた。大貴が「頼むっ!」と、手を合わせて有川に頼んでいるのがわかったが、俺は有川とコソコソ話しをしているのも気に入らなかった。


どうして俺に頼まないんだ?

どうして俺に門脇の事を言い訳しないんだ?

どうして俺の傍にいないんだ?


俺の身勝手な「どうして?」はグルグルしている。大貴の傍にいれば、また大貴に嫌な思いをさせてしまう。二人に近寄る事も出来ずに俺は、自分の席から大貴を見守った。

 授業には集中出来ないし、休み時間は畑中が煩い。最悪だ。

ようやく昼休みだ。大貴を学食に誘おうと、大貴の席の方を見て驚いた。教室の入り口付近からざわめきが細波のように波及してくる。

門脇が、選挙用の笑顔で教室の入り口に立っていたのだ。大貴が困ったように俺を見ていたが、俺には目を逸らす事しか出来なかった。
 
*****

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