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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・17

 午前中の授業が終わり、昼休みには大貴とゆっくり話しが出来る。そう思い、いそいそと教科書を机に仕舞っていると、教室に広がるざわめきに気が付いた。

ざわめきの原因が、ドアの所に立っている門脇だと確認して俺の動きは止まる。困ったような顔をした大貴がこちらを見ていたが、俺は目を逸らしてしまった。

門脇の教室とは棟も違うはずなのに、どうしてこんなに早くここに着いたのだろう。

授業が自習になって早く切り上げてきたに違いない。教室内は噂の「門脇」の登場に蜂の巣を突いたような騒ぎだ。俺は門脇を睨み付けたが、門脇は気付きもしない。

門脇は笑顔のままで大貴に近づいた。まるで選挙区を回る候補者のような作り笑顔でね。

「平井さん、一緒に学食に行きませんか?」

爽やかな笑顔で大貴を誘う門脇の言葉に、クラス中がドッと沸きかえった。

ピィーーーーッと指笛が響く。一斉に囃し立てる者もいれば、足踏みして不平を表現する者、あからさまに「二年のクセに生意気だぞ!」と声を上げる者。反応はそれぞれだ。

おしゃべり畑中は俺の元へ飛んで来て「行こう、大貴が連れて行かれるぞ!」と、腕を引っ張った。あまりの騒ぎに、クラス委員長としては無視も出来ない。

俺は立ち上がって「煩いぞ!」と、一喝するが効果は0だ。

 俺はその場から動かずに大貴の動向を見ていた。大貴が「彰彦と食べるから行かない」と、言ってくれると信じていたのだ。

しかし、大貴は俯いたままで門脇に肩を抱かれ、教室から出て行ってしまった。

それは俺に対する裏切りだよ、大貴。

 井上が傍に来たのにも気付けずにいたが、井上は呆然としている俺の腕を引っ張り教室から連れ出してくれた。

「どうしたんだよ、お前らしくないぞ。今からでも遅くない、大貴を取り返しに行け」

「大貴が・・・大貴が、門脇を選んだんだろう?」

俺は井上の手を振り払い、学食とは反対の方向に向かった。途中で有川とすれ違う。俺は困惑している有川の腕を掴み、そのまま学食まで。端から見れば、俺が「有川を迎えに行った」かのように見えたに違いない。

有川は、急に腕を掴まれても声を荒げるわけでもなく、黙って従う。それは彼一流の処世術だ。

「どうしたの?」と声を出せば、俺と一緒だと人に気付かせる事になるからな。有川は人一倍警戒心が強い。だが黙って俺に従うから、きっと俺の事は信用しているんだと思う。

 学食で向かい合わせに座った有川はオムライスを、俺は本日のランチを注文した。有川とは大した会話もない。だが、周囲の視線は「寺田と有川」という珍しいコンビに集中している。目立ちたくない有川としては迷惑だろうな。

時々大貴と門脇のいる方に視線をやりながら、俺たちはお通夜のようなランチタイムを過ごす。

日替わりランチのスープは、生徒たちから「味が薄い」と不評のコンソメスープだった。いつもなら必ずスープが何かを確認するのに、それをせずに注文してしまった事に苛立ちながら、俺はスプーンを投げ出した。

それを見た有川がクスリと笑ったのが気に食わない。

「なんだよ?」

「珍しいな、と思って・・・。彰彦くんって、あまり感情を出さないのに」

有川に気持ちを全て見透かされたような気がした。有川の美しい横顔。彼の視線が大貴と門脇に向けられているのがわかった。

「そうか・・・。有川は、大貴の事を・・・どう思ってるんだ?」

「どうって・・・好きだよ。僕、友だちがいないから、構ってくれて嬉しいよ」

「最近、大貴と放課後、一緒の事が多いからさ」

「・・・気にしてたの?」

案外と、ズバズバ聞くヤツだ。

「気にしてたって言うか。怜が信吾さんの店にいるから、大貴が声を掛けてるだけだって、わかってるよ」

「ふうん・・・。僕が大ちゃんと噂になっているから、彰彦くんが気にしてるのかと思ってた」

「なんだよ!」

つい声を荒げてしまい、周りの視線を感じた。俺は苦い顔をして有川を見る。大きな声にビクッとした有川の瞳には哀れみが浮かぶ。

心の奥底を覗き見られたような気がした。有川は侮れない。

「ごめん」

首を竦める有川の可愛い仕草を見て、信吾さんが夢中になっている理由がわかったような気がした。

何というか、嗜虐心を煽ると言うのかな?有川を苛めたくなる。

その反面、端正に整った顔にぽってりとした紅い唇がなんともアンバランスで色気を感じるのだ。人見知りの激しい猫のようで、余計に構いたくなる。

クラスの連中が家の事情を理由に有川に嫌味を言ったり、彼を爪弾きにするのはわかる気がする。小学生が好きな女の子に意地悪したりするのと同じだ。

それを信吾さんは「守ってあげたい」と思うのだ。


「いや、俺も悪かったよ。休み時間に大貴が、『頼む!』って言ってただろう?あれは何を頼んでいたんだ?」

「ああ、あれ。昼休みになったら急いで来て欲しいって言われたの。教室から連れ出してくれって、頼まれたんだ」

どうしてクラスが違う有川に頼むんだよ。

「遅れちゃったけど」

俺に頼めば良かったんだよ。俺は顔には出さずに「ああ、そういう事」と、何でもないかのように返事をした。

 大貴たちの方を見ていた有川が、小さく「あっ」と声を上げるのにつられて二人を見ると、大貴の背中を撫でる門脇の姿が目に入った。まるで恋人同士のように門脇が大貴の肩を抱き、ゴホゴホとむせる大貴の背を撫でていた。

俺の我慢は限界を迎えていた。有川がトレーを持って立ち上がり「出よう?」と、笑った。有川のこういう所が、大嫌いだ。

 有川に促され学食を出ると、有川は購買部で缶コーヒーを二本買い俺を中庭の東屋に誘った。

ベンチに座ると、有川が徐に口を開いた。

「僕は、大ちゃんが羨ましいよ。いつも笑ってて、明るくて、みんなに囲まれて、好かれてる。でも、彼にも悩みはあるんだよね。悩みは彰彦くんにもあると思う。僕にもある。大ちゃんはそんなものは無いような顔してるけど。大ちゃんはそれを外に出さないんだよ。笑ってるけど、土曜日の事ですごくキズ付いてるんだ。同じような体験したからわかるけど・・・。あんなふうに好きでもない人から身体を触れられるの、本当にイヤなんだよね」

そうだったな。一年生の時だったな、有川が上級生に襲われたのは・・・。

「彰彦くん。近くにいるんだから守ってあげてね。僕にはそんな人いなかったから、いろいろ言われて辛かった。身体に触れられると今でも怖いんだよね」

微妙に食い違う俺と大貴に気が付いていたらしい有川。

複雑な気分のまま頷くと、紅い唇が綺麗に弧を描く。

「じゃ。僕は移動教室だから行くね」

「ああ、ありがとう」

俺の手元には有川の奢りの缶コーヒーが残された。いつもよりもコーヒーがほろ苦く感じるのは、大人の有川の奢りだからだろうか・・・。


 教室に戻ると、大貴は既に席に着いて机に伏していた。前の椅子に座り大貴の髪に触れてみる。いつものシャンプーの香りと、もう一つ違う香りに気が付いた。それが門脇の移り香だと気が付き、感情が抑えきれないまま予鈴が鳴る。

大貴が、ぼうっとした様子で目を覚まして、目の前の俺を見た。

「うわっ!びっくりした」

目を丸くした大貴の顔。有川に忠告された事など、門脇の移り香で吹き飛んだ。

俺の口から出たのは、「なんで、門脇なんだよ」という嫉妬心丸出しの言葉だった。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

彰彦くん、反省も怜ちゃんの忠告も活かされませんでした!

日高の反省も生かされてないなあ・・・。同じような表現が続いたり、主語がなかったりwww修正が多過ぎてUPに時間が掛かる(泣)

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