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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・18

「なんで、門脇なんだよ」


俺の言葉が大貴の心を深く傷付けたなど、思いもしなかった。

ただ大貴に俺の不快感が伝わればいい、そう思っただけだった。

門脇の香りが移るくらいに近くにいたという事だよな?

ありったけの理性と、ありったけの自尊心を振り絞って俺は耐えた。


 自分の席に戻ると、前の席の井上が待ち構えたように話し掛けてきた。

「おい、いいのか?」

「ああ」

大貴の方を見もせずにぶっきらぼうに答える俺に、井上は呆れたように言った。

「ぼやぼやしてたら、下級生に持っていかれるぞ?大切なものは取りにいかないと」

それくらい、俺だってわかってる。だが、俺の立場になってみろ。お前にそれが出来るのか?井上をジッと睨むと、井上は「仕方がないな」と笑いながら俺の肩をバンバン叩いた。

 教室の前方のドアが開き、先生の姿が見えた。それと同時に、教室の後方のドアが大きな音を立て開き、誰かが教室から出て行く。バタバタと廊下を走る足音が遠ざかっていった。

「おい!平井!どうした!」

先生が一度は閉めたドアを再び開け、廊下に顔を出して叫んでいた。

えっ?大貴?

「トイレなら授業前に行けよな」

ドアを閉めた先生の呟きが聞こえた。井上が、振り返って小声で言う。

「おい!大貴は、気分が悪いんじゃないのか!?口を押さえていたぞ」

「えっ?」

躊躇して動けない俺に業を煮やした井上は、「チッ」と舌打ちした。そして、サッと手を上げる。

「先生!寺田くんも食い過ぎてトイレです!」

井上のユーモラスな発言に、みんなはドッと笑った。

ありがとう、井上。そっと背中を押してくれる友人に感謝しながら、俺は大貴を追って教室を飛び出した。

 トイレに行くと、大貴が洗面台にしがみ付き苦しそうに嘔吐していた。鏡の前には誰かに電話しようとしたのか、携帯電話が置いてある。

「大貴?」

いつもは薔薇色に輝く頬が、青白く変わっていた。そして吐瀉物が洗面台を汚していた。

「来るなっ!汚いから、うっ、えっ」

俺は背中を擦った。大貴の不調の原因が自分にあるとは思いもせずに・・・。

「なにを言ってんだよ」

えずく大貴の背中を擦った。大貴は苦しそうに吐き、顔色はますます悪くなる。

「帰りたい」

涙目になって、絞り出すような声でそう言った。

洗面台の前の携帯は信吾さんに連絡するつもりだったのだとわかり、代わりに俺が発信した。電話に出た信吾さんに事情を説明すると、「迎えに行くから、とりあえず保健室で休ませてやってくれ」と言われた。

「保健室で休もう。信吾さんが迎えにきてくれるから」

「洗面台、掃除しなきゃ」

大貴は吐瀉物で汚れた洗面台を気にしていた。

「そんなの、俺がやるからいいんだよ」

 俺は大貴を脇から抱えて保健室に連れて行った。

保健室の先生に大貴を預けて、教室に戻る前にトイレに寄り洗面台に散らばった吐寫物を流した。周りも綺麗に掃除した。大貴は昼に食べた物を全部吐き出したようだった。

大貴がこんなふうになったのは、渡部の所為だ。俺の荒みきった心を支えているのは、大貴の明るい笑顔だったのに・・・。その笑顔を奪う門脇を忌々しく思いながら、俺は有川の言葉を思い出す。

『彼にも、悩みがあるんだよね』

有川の柔らかい声がしつこいくらいに繰り返し俺の耳で再生される。有川が言いたかった事は、『守ってあげてね』だけではなかったのか・・・?

大貴の悩み、とは何だろう。「親友」として近くにいたのに、俺たちは互いの「悩み」を知らない。


 授業中の教室に戻り、先生に大貴を保健室に連れて行った事と、大貴が早退する事を伝えた。

「もうすぐ迎えが来ますから、平井の荷物を持って行きます」

「ああ、わかった。お大事に」

「はい。伝えます」

俺は大貴の机の中の荷物をカバンに詰めて、再び保健室に行った。

 大貴はベッドで眠っていた。白い頬が痛々しくて、抱き締めて「大丈夫だよ」と囁きかけたい。だが、保健室の先生が俺を見ていた。授業中だから「早く戻れ」と言いたげな顔。

肩まで布団を掛けてやり、大貴の荷物を先生に預けて俺は授業に戻った。本当は保健室で大貴を見守りたかったのに。

 休み時間に井上からノートを借り、自分のノートに書き写した。次の授業のノートと二冊を有川に預けた。電話やメールは無視されるかもしれない。頼れるのは古典的な手紙しかない。

『水曜日の合コン、勝手に決めてごめん!清香にはちゃんと断るから行かなくていいよ。体調が良くなったら巨大パフェに怜と三人でチャレンジしような。それから、門脇から守ってあげられなくて、ごめん』

大貴との距離が少しずつ遠くなるような気がして、大貴の元へ向かう有川の後姿を恨めしく見送るのだった。

 星望大学への内部生の推薦入試受験者に指定されるには規定があって、「三年間の欠席日数5日以内」と決められている。

推薦をもらえなくても大貴の実力ならば、来年1月の内部進学者入試で医学部に合格出来るとは思う。

だが9月に合格が決まるのと、来年の1月に合格するのでは精神的にも大きな差がある。

「出来るだけ、早く合格を決めて残りの高校生活を謳歌したい」と、大貴は言っていた。木曜日と金曜日を休んだ大貴は、明日は休まずに登校するはずだ。

大貴の不調の原因は、門脇遼平だ。

門脇から大貴を守る。それが当面の俺の目標となった。

*****

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折角の怜ちゃんの遠回しの助言でしたが、彰彦くんには伝わらなかったようです(笑)恋は盲目。怜ちゃん今度からストレートにお願いします!!←他力本願!

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