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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・20

 井上が教えてくれた情報は少し意外だった。

門脇遼平には婚約者がいた。相手は星望女子部の同級生らしい。代議士の父親の後援会会長の血縁の娘となれば、例えそれが口約束であっても効力のある約束に違いない。

門脇の一族は確か旧華族だ。門脇のご先祖さまの中には、教科書にも載ってる口髭を生やした大物もいる。財閥系の親戚も多い。

そんな門脇が、自分から噂の渦中に飛び込んだ理由が俺にはわからなかった。もし大貴に対する気持ちが真実ならば、秘密裏に事を運ぶはずだ。俺が門脇ならば絶対にそうするだろう。

門脇には何か他の目的があるはず。門脇は何か企んでいるのだ。そうとしか思えない。門脇は自分の企みに、大貴を巻き込んだのだ。

その所為で大貴は体調を崩し、俺との関係もギクシャクしている。

諸悪の根源・門脇に対する怒りが沸々と湧いてきた。


 次の休み時間は20分間。保健室に行って大貴の顔を見たかったが、運悪く前の授業は体育だった。授業中に足を怪我したヤツがいてその対応に手間取り、道具を片付けて着替えると保健室へ行く時間がない。

仕方なく、有川にメールをした。大貴の様子を聞いたが、『手紙、渡したよ。家庭科の調理実習だったから、僕も準備があって行ってません。次は行きます』と、返事が来ただけだ。

三時間目の休み時間も保健室には行けそうもないから、『体調はどうだ?お昼は迎えに来るから、一人で行動しないように』と書いた手紙を準備して、急いで有川の教室に行った。

有川は俺の手紙を受け取り、替わりに大貴から預かった手紙をくれた。

 おしゃべり畑中は油断出来ない。俺が有川と会っているのをしっかりと見ていて、今度は「寺田は大貴から有川に乗り換えたぞ」と言いふらしている。

俺は出席簿の準備と提出物の回収をしながら、教室中を飛び回って忙しくデマを垂れ流す畑中を睨んだ。

後期のクラス委員はおしゃべり畑中で決まりだ。次は井上が引き受けてくれるはずだったが、絶対に畑中に押し付けてやる。覚えてろよ?

 三時間目の授業中に大貴からの手紙をこっそりと開いた。ルーズリーフにたった一言『ありがとう』。その紙切れが俺の宝物に変化したのは言うまでもない。宝物は四時間目も俺の癒しになる。

授業中もポケットに忍ばせた宝物をそっと撫で、俺は幼稚園の時にインフルエンザで休んでいた大貴が早く良くなりますように、と親父の病院の隣の教会でマリアさまに祈った時の事を思い出した。

確かあの時は、大貴が完治して通園し始めたのと同時に俺が発熱し、大貴とは二週間も会えなくなったのだ。大貴からは「寂しい」「あきちゃん、いつ良くなるの?」と毎日のように電話がかかってきたよな。

あの頃の素直で可愛い大貴は、どこに行ったんだろう。ああ、無性に門脇に腹が立ってきた。


 長い長い授業が終わり、教室を出ると有川が階段の昇降口で待っていた。階段を下り角を曲がった所で、反対側から歩いてくる門脇に気が付いた。

隣にいた有川が、俺の袖を引いた。

「ね・・・彰彦くん・・・」

「大丈夫だ」

俺は有川の手を払い退けた。

俺たちも門脇も真っ直ぐに進み、ちょうど保健室の前で行き会う形になる。隣にいた有川が俺の剣呑な雰囲気に飲まれたのか、一歩下がる。

「こんにちは。寺田さんも学食ですか?今日も有川さんとご一緒なんですね。俺は平井さんを誘いに来たところです」

門脇は選挙用スマイルで有川の顔をを覗き込んだ。人見知りする性質の有川は小さくなって俺の後ろに隠れてしまう。

いや、隠れないでこの隙に保健室に入って大貴を守ってくれよ有川。

「俺は有川と大貴と三人で昼飯を食べる約束をしていたんだ。門脇、残念だったな。俺たちが先約だ」

「寺田さんたちこそ、残念ですね。俺と平井さんは、お付き合いしてるんです。先約は俺ですから」

「何だと!」

俺のいつものポーカーフェイスはあっさりと崩れ、門脇に掴みかかっていた。慌てた有川が背後から止めに入った。

「彰彦くん!ダメだよ!」

有川の制止など止めてるうちに入らないが、必死で背中にしがみ付いている有川の感触は俺の自制心を若干働かせた。廊下の壁に門脇を押し付けて、ヤツを睨みつける。

殴らないだけマシだ。

「何を言ってるんだ?ふざけるな」

ガラッと音がして保健室のドアが開いた。

「大ちゃん!」

保健室の方を見ると、大貴が驚いて俺を見ていた。門脇の視線は俺を通り越し、大貴に笑い掛ける。

「平井さん。寺田さんに俺と付き合ってるから、ランチは俺と食べる、と言って下さいよ」

婚約者がいるクセに、何を言ってるんだよ!

振り返って大貴に目をやると、大貴は悲しそうな顔をし無言で首を横に振っている。


クソッ!はっきりと「違う」と言えよ!「お前なんかと付き合うかバーカ!」と、いつもの大貴らしく言ってくれよ?


だが、大貴は口をキュッと一文字に結んだままで視線を廊下に落とした。

哀しみと失望に襲われ、俺の手には力が入らなくなった。門脇から手を離して大貴を睨みつけた俺は、その場を立ち去る事しか出来なかった。

これから彼らが向かうであろう学食とは、反対方向に行くしかない。

「彰彦!待って!」

大貴が叫んで止めたが、俺は逃げるように走りだした。

 学食へ向かう生徒たちの波を掻き分けて人気のない場所を探し続け、辿り着いたのは物理や化学の実験教室が並ぶ専門棟と呼ばれるエリアだった。

俺はソファーのある美術室を選び、ドアを開けた。美術室のソファーで午後の始業ベルが鳴るまで不貞寝してやる。

「クソッ」

罵りの声に応じるように、小さなノックの音が聞こえた。大貴か?それとも俺を追って来た有川か?

大貴ならば、彼の体調など気遣えずに怒鳴ってしまいそうだ。有川なら、八つ当たりしそうだ。今は誰にも会いたくない。

「誰だよ!」

スッとドアが開き、一年の澤村亮太がパンを片手に立っていた。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

澤村くんは『さしもしらじな燃ゆる思いを・25』にも、チラッと名前だけ登場しますwww 
 
澤村くんの名前ですが、初稿では「翔太」でした。その後「岸本翔太」が出現し、「さしも~」を移動させる時に「翔太」が2人になると気が付き「翔太」を『亮太』に改名させたのでしたwwwそれを忘れていたという、間抜けな日高です。失礼しました。

怜ちゃんは白ヤギさんになって、お手紙を配達中ですwww

ちなみに信ちゃんはここで乱闘事件を起こしました。詳しくはwebで!←勧誘中『朧月夜に似るものぞなき~智明の置いてきたもの~前中後編』をお読みください(笑)

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