『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・21

 下級生の門脇の挑発に乗ってしまった俺。

門脇の、大貴との交際宣言にカッとなり、その場を逃げ出してしまった。もしあの場に残っていたら、怒りの矛先が大貴に向いてしまうような気がして怖かったのだ。

いつもの俺なら冷静に、平常心を保っていられたと思う。だが、今は大貴一人の為に乱れ、折れてしまっている。

 生徒がいない方へ、いない方へと走った俺が行き着いた所は、専門棟と呼ばれる特別教室が集まる建物だった。

ここは以前から生徒が逢引に使っていたらしく、今は授業で使わない時は施錠してある。だが昼休みになると、部活で利用する生徒の為に「鍵爺」と呼ばれている用務員さんが特別教室の鍵を開けて回るのだ。

 俺はソファーが置いてある美術室に入り、昼休みが終わるまでここに籠って頭を冷やす事にした。

ここで不貞寝していれば、昼休みなんかあっという間に終わる。そう思ってソファーに転がっていると、小さくノックが聞こえドアが開いた。

しまった。鍵、閉め忘れた・・・。


「寺田さんパンでも食べませんか?」

微笑みながら両手に持ったパンと缶コーヒーを見せたのは、高等部一年の澤村亮太だった。

澤村は一年生の中でも一番可愛い、と評判だ。身長も170センチはないだろう。小柄な子だ。

毛先がふわっとカールして、目が大きく可愛いらしい容姿。上級生から可愛がられる「ペット」になりそうなタイプだった。頬にはエクボが浮かび、甘ったるいお菓子みたいなヤツ。

「はい」、と差し出されたパン2つと缶コーヒーを受け取り、俺はボソリと礼を言った。

「ありがとう」

「どうぞ。食べてください」

嬉しそうな澤村が何を考えているのかは別として、「隣、いいですか」と聞くから、パンを受け取った俺は仕方なく少しだけ位置をずれて隣を空けた。

 澤村は高等部に入学してすぐに、俺にモーションを掛けてきた。

「一緒に帰りませんか」とか、「ランチを一緒にいかがですか」としつこく何度も誘ってきたっけ。その度に大貴は嫌な顔をするし、機嫌は悪くなるしで、俺は澤村にはかなりきつく「もう声を掛けないで欲しい」と言った覚えがある。

俺は大貴以外の男には興味がないから、澤村など全く眼中になかったのだ。そんなわけで、居心地が悪い。

パンの誘惑に負けた。パンなんかいらないと言えば良かった。

 澤村は俺がパンの袋を開けようとすると、缶コーヒーともう一つのパンを「持ちます」と言って受け取り、ニコニコしていた。ふわふわした感じの澤村だが、目は猟に出たハンターだ。狙った獲物は必ず落としますよ、って感じ。

「寺田さん、平井さんと喧嘩でもしたんですか?」

「関係ないだろ」

睨みながら澤村の持ってきたメロンパンに噛り付いた。澤村は、俺たちの保健室前のいざこざを見ていたのだ。それでパンを買い、俺を探し当ててここに来たのだ。

「僕は寺田さんの事、好きなんですよ。本気です。だから・・・」

澤村は媚びたような笑みを浮かべ、頬を赤くした。

「だから?」

「寺田さん、パンのお礼にキスしてください」

「お前が勝手に持ってきたんだろう?礼なんかいりません、と言うのが普通じゃないのか」

「ふふふっ」

澤村は缶コーヒーの蓋を開けて俺に渡した。

「パンは僕が勝手にした事でしたね。さっき聞こえてましたけど、平井さんと門脇さんは付き合ってるんでしょ?だったら、寺田さんが僕とキスしたっていいじゃないですか?」

今の言い方、まるで俺が「大貴が好きだから、澤村とは付き合えない」と言って断ったようじゃないか?

「よくわからない理論を繰り出すな。大貴とは親友なんだよ。関係ない」

「じゃあ、キスして欲しいです」

面倒臭いな・・・。

パンをムシャムシャ食っている男に「キスして」もないだろう?

こんなデリカシーのないヤツ、願い下げだ。


「あのなあ。俺はパンを食べてんの!キスはしないし、お礼もしない」

「酷いなあ~!寺田さん、ふふふっ」

澤村の頬には、可愛いエクボが浮かぶ。澤村は自分もパンを食べ始めた。

 そういえば大貴にも、小さい頃はエクボがあった。今はないあのエクボはどこに置いてきたのだろう。素直で、可愛らしくて、「あきちゃんのお嫁さんになるっ!」と言って大人たちを笑顔にしていた大貴。

あの頃の大貴にくっ付いて、消えてしまった。

 二個目のパンを食い、缶コーヒーを飲み干した頃には、澤村もパンを食べ終えてオレンジジュースを飲んでいた。

「なあ。お前、ゲイなの?」

澤村は小首を傾げて「う~ん」と、考え込んでいる。自分が「可愛い」とわかっているヤツがやるやつ。あざといな。

「わかりません。でも、寺田さんには抱かれてみたいかな?」

「キス」から「抱かれてみたい」まで飛ぶんだ?

「女の子とヤッたことは?」

「ありますよ。年上のお姉さんに教えてもらいました」

それは俺も同じ。

ゲイではないが、オトコにも興味がある。ちゃっかりと年上のお姉さんに教えてもらうあたり、俺と澤村は共通している。ちょっと可笑しくなった。

「じゃ、女の子でいいじゃん。どうして、男の俺?」

「わかりません・・・。中等部の頃から上級生から誘われたり、無理矢理キスされたりしてましたけど、それは嫌でした。でも寺田さんなら、いいかなって・・・。僕と平井さんって、どっちが可愛いかよく比較されるんですよね。それで平井さんに興味を持ったんです。平井さんを見ていたら、当然寺田さんを見るじゃないですか?それで気になって・・・好きになったんです。それじゃダメですか?」

要するに、比較対象の大貴には負けたくない、って事か?

「ふうん・・・」

澤村の話しには興味がなかった。パンを食ったらさっさとここから出て行って欲しい。俺は澤村を無視して目を瞑り、後頭部で手を組んでソファーに凭れた。


大貴は門脇の事をどう思ってるのかな。学年が違うが、門脇は二年の中では目立つ存在だ。よく話題にも上るし、政治家ジュニアには優等生のイメージしかなかった。

だが、大貴が急に門脇に惚れるわけがない。


 隣の澤村が僅かに動くのを感じて目を開くと、目の前に澤村の顔があった。

「なんだよ」

「キスしたい」

近づく赤い唇に、一瞬大貴の唇が重なった。

澤村のふわふわした唇が俺の口を塞いだ。触れては離れ、触れる。何度も重ねられる柔らかな唇に抵抗することもなく、澤村のなすがままにキスを繰り返した。

澤村は挑戦的な瞳で聞いた。

「怖いんですか?」

「怖い?」

「そう。男とキスするのが、怖いんですか?それとも平井」

澤村の口から「平井」という名前が出た瞬間、大貴を汚されたような気がした。俺は澤村の胸を乱暴に押し返した。澤村の身体は僅かに離れたが、澤村は俺に圧し掛かるようにして離れようとはしない。

「僕は寺田さんが好きです。平井さんは門脇さんに取られちゃったんでしょ?だったら」

ムカつく澤村の一言。止めておけばいいのに、俺は一度は押し返した澤村の腰を掴み引き寄せた。

「大貴は『親友』だって、言ってんだろ?」

澤村の頭を引き寄せ、自ら唇を重ねた。

今度はさっきみたいなお子さま仕様のキスじゃない。舌をねじ込み、乱暴に澤村の口の中を蹂躙した。それを澤村が苦しくなって僅かに抵抗を見せるまで続けた。

瞳が潤んで雰囲気がエロくなった澤村を引き剥がすと、軽い身体をソファーに投げ出した。

「そのうち、痛い目に合うぞ」

そう言い捨てて、俺は廊下側のドアではなく外庭に出るドアを開けた。

自己嫌悪と反省は美術室に置いてきた。

*****

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彰彦、迷走中!

美術室はみんなの忘れ物だらけですwww

とか言ってるけど、ほぼ全面的に書き直した21話でした。←酷過ぎた。

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