『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・22

 教室に戻り自分の席で、突っ伏して不貞寝を決め込んだ。昼休みはあと15分で終わりだ。

澤村とのキスを思い出し、落ち着きのない自分を反省した。

門脇の所為で俺のペースは乱されて、触れなくてもいいものにまで触れてしまった。

大貴に対してすまないという気持ちが浮かんだが、はっきりと門脇との関係を否定しなかった事に腹が立って、勝手にしやがれと思ってしまう。

門脇の挑発とわかっていて、ヤツとの接触を避ける事もしなかった俺。大貴をキズ付けているのは、他ならぬ俺か。

カッコ悪いなあ・・・。

今すぐ保健室に行けば、大貴に会って話しをしても五時間目の授業に間に合うんじゃないか。

いや、会いたくないと言われるかもしれない。もし大貴が保健室に戻っていなかったら、ショックが大き過ぎてまたキレるかもしれない。

迷い過ぎて、行動に移せない。こんなふうに感情をコントロール出来ない自分は初めてだった。自分で自分の扱いに困っているのだ、俺は。


「彰彦くん」

机に突っ伏して、「絶対に近寄るな」オーラを放出中の俺の肩を叩く勇気のあるヤツは有川だった。俺は恥ずかしさで有川の顔をまともに見る事が出来なかった。少しだけ顔を上げて、眠いフリをした。

「ああ?」

「大ちゃん、早退したよ。彰彦くんを追い掛けて、途中で気分悪くなっちゃって・・・」

えっ?俺を追い掛けて気分が悪くなった?

「そうか・・・ありがとう、有川」

「僕、今日も行くんだけど・・・」

有川は手紙と授業のノートを預かろうか、と言っているのだ。

「手紙はいいよ・・・」

「でも」

大貴が早退したのは、「お前の所為だ」と言われているように感じた。有川にはそんなつもりはなかったんだが・・・。

「いいって、言ってるだろ!」

有川はもちろん、周囲にいたクラスメートも驚いた。一斉に視線が集まってしまう。有川は、ハッとしたような顔をして、唇を噛んだ。

「・・・ごめんね。じゃあ」

すぐに教室から出て行った有川にはすまないと思った。有川は余計な事は言ってないのにな・・・しょんぼりとした後姿。

俺の所為だ。

これからどうすればいいのか、全くわからなかった。


 携帯を取り出し大貴にメールしようと、アドレスを呼び出しながら俺は手を止めた。

「親友」の俺が、何を、どう言い訳するのだろう?「門脇くんの言った事に嫉妬してしまいました」と言うのか?

言えるわけないさ。

大貴の制止を振り切って、あの場から逃げ出したんだからな。しかも、その所為で大貴は早退したんだ。携帯を見つめたままで動けなくなった。

俺が心を込めたメールを送っても、また無視されるに決まってる・・・。


 気が付くと井上が隣に立っていた。

「聞いたか?大貴は叔父さんが迎えに来て帰ったらしいぞ」

「知ってる」

ぶっきらぼうに呟くと、井上は「いい加減に、腹を括れよ」とポツリと呟き、自分の席に戻った。井上は俺の気持ちなんか、すっかりお見通しだ。

「井上、悪い」

井上は「話しくらいは聞くよ」と、後ろ向きのまま手を振った。やはり俺の「親友」は井上だったようだ。


 モヤモヤを抱えたままで帰宅すると、珍しく父が早く帰宅してリビングで雑誌を読んでいた。

「おかえり」

「ただいま。珍しいな。父さんがこんなに早く帰って来るなんて」

「ああ」

父は指で二階を差した。

何か話があって、わざわざ早く帰宅したらしい。父は雑誌をテーブルに置くと、二階にある父の書斎に入って行く。

俺はカバンを自室に置いてから父の部屋に入った。

「ここに座りなさい」

「はい」

父と並んでソファーに座った。

 父に呼ばれたら、ここに並んで座って話をするのは俺たち親子の決まり事だった。俺たち三兄妹は、留守がちの父親とはこうしてコミュニケーションをとる事になっている。大切な話しをする事もあれば、部活の報告で終わる事もある。短い時間だが、父と二人の時間は有益だ。

「お母さんが、彰彦の様子がおかしいというのでね」

「・・・」

「言いたくないなら、言わなくてもいい。彰彦の事をお母さんが心配してるんだという事だけ、いいね?」

「・・・大貴が・・・大貴の事・・・友だちとして考えるのはもう限界だ、って言ったら?」

「大貴くんか・・・。ひろ子くんとはどうなんだ?」

大貴に対する欲を発散させているだけの存在のひろ子に対して、申し訳ないと思っていた。「便利な存在」と割り切っているわりには、ひろ子が重荷になっているのは間違いない。

「ひろ子にはすまないと思う。俺は大貴の事が好きなんだよ。ひろ子もそれは知っている。でも、ひろ子はマンションの家賃も小遣いももらっているんだから、それくらいいいだろう、とか・・・考えるんだ。大貴を大切に思っている。俺の気持ちが伝わらなくてもいいんだよ。だから、ひろ子とは別れる」

「では、別れなさい。ひろ子くんが住んでいるマンションは、元々お母さんの物だったんだ。ひろ子くんが住む前に彰彦の名義に変更している。あそこはひろ子くんに譲ろう。いいな?それから大貴くんの事を、一生大切に出来るのなら私は反対しないよ」


信じられなかった。

俺の、大貴に対する気持ちは知っていても、「それは封印しなさい」と言われるものとばかり思っていたのだ。


「でも・・・母さんは」

「お母さんは彰彦が思っているような冷たい人じゃないよ。お母さんの事を彰彦も考えてごらん。それから大貴くんの事は、何が彼の幸せなのかを考えてごらん。君は若い。時間はたっぷりあるんだから」

不可解な親父の言葉を噛み締めながら、井上の「話くらいなら聞くよ」という、言葉を思い出していた。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

書き直したが多過ぎて、心折れそう・・・。

   日高千湖

ランキングに参加しております、良かったらポチッと押してやってください♪
   ↓
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村  
携帯電話の方はこちらを押して頂けると嬉しいです♪
   ↓
ブログ村 BL・GL・TLブログ
ありがとうございました! 
関連記事
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

日高千湖

Author:日高千湖
日高千湖のBL小説ブログへようこそ♪

こちらはオリジナルBL小説ブログです。BLという言葉なんて知らない、嫌悪感を抱くとおっしゃる方は回避願います。

旧ブログ『薄き袂に宿る月影』をご愛顧頂きました皆さまには、ご迷惑をお掛けしております。

旧ブログ内で公開しておりました作品につきましては順次こちらでも公開して参ります。また、旧ブログで公開中の作品は今のところそのまま残しておりますが、こちらへは改稿した上でUP致します。こちらへ移転後は旧ブログでの公開は見合わせたいと思いますのでご了承下さいませ。

左上の【Sitemap】をクリックして頂きますと過去3ヶ月の更新記事がお読みになれます。お久しぶりの方、読み逃がした方はこちらが便利です♪

サイトマップ代わりに【目次と登場人物紹介】というカテゴリを作成しましたので、そちらをご利用下さい。

★拙作ではございますが、著作権は放棄しておりません。お持ち帰りはご遠慮願います。

★大変お手数ではございますが、リンクをご希望の方はコメント欄にてお知らせ頂けると嬉しいです♪よろしくお願い致します。


ランキングに参加しております。良かったら押してやって下さい!
  ↓

にほんブログ村


ありがとうございました!

★尚、拍手コメントくださいました方へのお返事は、コメントを頂いた記事のコメント欄にて書かせて頂いております。ご確認下さいませ★

では、ごゆっくりどうぞ♪

最新記事
カテゴリ
最新コメント
FC2カウンター
リンク
QRコード
QR
フリーエリア