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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・23

 部屋に戻り、考えた。

まず、ひろ子とは別れる。

これは決定事項だ。ひろ子の事は好きだが、「別れろ」と言われれば「はい、そうします」と言える。愛情ではない、友情でもない。「姉」のような存在に近かった。

だが、大貴に対してそれはない。彼が他の男と話しをしているだけで、俺は嫉妬してしまう。だが彼が女性と結婚したとしても、俺は家族ぐるみのお付き合いをして、大貴との結び付きを解こうとはしないだろう。

大貴をいつも近くで見ていたいのだ。

 それから、父の言った「大貴の幸せ」。

これって難しくないか?「幸せ」は各々感じ方が違うものだろう?飢えた人がおにぎりを与えられれば「幸せ」だと思うし、飽食の金持ちにおにぎりは要らない。

俺は親父から与えられた難題に悩み続けた。

 そして母との事。母とはいつからおかしくなったのかな?

母はいつも父方の祖父母の言動を気にしている。俺には幼い頃から、「お父さんのような、立派なお医者さまになってね。あなたは跡取りなんだから」と、繰り返し言っていた。

着飾って出掛けては、家にご友人を招き何時間もおしゃべりタイムを楽しむ。思春期を迎えた俺は、そんな母の姿に反抗を覚えた。それに意味を見い出せなかったのだ。

俺は外面良く『優等生の長男』を演じ、母には冷ややかな視線を送るようになった。そうすれば母の面子を保てる、と思ったからだ。母は、俺が「優等生」であればそれで満足なのだと思っていた。

母との仲を決定付けたのは、ひろ子と関係を持っている事がバレた時だ。

「あなたは騙されてるのよ」、「財産目当ての女」と、ひろ子を罵った母に俺は全てをぶちまけた。大貴の事が好きなんだ、と。ひろ子はそれを知った上で関係を続けてくれているのだ、と。

母は男の大貴の事を好きだと言う俺を、理解出来なかったのだ。「優等生」の息子が惚れたのが、幼馴染みの可愛い男子だった事にショックを受けた母は、真っ青になって泣き出した。

その時俺は、「母さんは星望じゃないからわからないんだ!」と母のコンプレックスを指摘して母を泣かせた。

 母はひろ子の事を「中学生の息子を誘惑した悪い女」としか見ていない。俺はそう思っている。

母の持ち物だったマンションを、ひろ子に提供していた?だから何だ。『優等生の長男』の評判を守る為にそうしていたのだ。だが、父は母を擁護した。

母との関係も、難しい宿題になった。


 考えあぐねて、行き詰った俺の救世主になるかもしれない「親友」の番号を呼び出した。

『おう』

「すまん。ちょっといいかな?」

電話とはいえ、恋愛の相談は言い難いな。

『どうぞ。デートも終わったしな』

「お前、彼女いたんだ?」

知らなかったな。

『彼女じゃないけどな』

『彼女じゃない』なんて、あっさり言ってくれるよな。

「セフレ?」

『まさか!俺は一筋ですよ』

「じゃあ、相手は男なのか?」

『ああ』

「知らなかった」

『言わなかった』

「あははっ」

井上らしい答えに笑った。

井上は面倒見の良い委員長タイプだ。同じテニス部だし、何より口が堅く、信頼出来る男。何より頭が切れる。

俺も井上もクラス替えの度にクラス委員を引き受けるし、生徒会には必ず二人の名前が並んでいる。成績も2、3点違いで1位と2位を争うのだ。

ライバル、とも違うがそれに近いかな。

去年の秋から井上がテニス部の部長を、俺が副部長をしている。今年は同じクラスになり、テニス部の部長を井上が引き受けてくれたので、クラス委員長は俺が引き受けたという経緯もある。

「あのさ・・・もう気が付いてると思うけど・・・俺、大貴の事が好きなんだ」

『ああ、知ってる』

やはり井上は気が付いていた。井上は中学に上がってから、すぐ気が付いていたそうだ。

『お前、わかりやすい反応するだろう?大貴が他のヤツらと絡んでると、不機嫌丸出しで連れ出すし。大貴、お子ちゃまだからな。お前はこのまま『親友』として終わるつもりなのだ、と俺は思ってたよ』

「俺も、そのつもりだったんだよ・・・。だけど・・・さ。どうしていいか、わからなくなったんだよ」

『最近、賑やかだからな、大貴の周辺。言っておくが、有川はないぞ。アイツはただのお友だちだ。有川にキツイ態度を取るのは止せ。ただでさえ孤立してるのに、お前があんな態度を取ったら有川に対する風当たりがますます強くなるだけだ』

そうだった。

俺が有川に冷たくあたった事が周囲に伝われば、有川は更に嫌な目に合うかもしれないのだ。菊地先生から、俺や大貴が構うようになってから「クラスメートたちが話しかけるようになったから良かった」、と報告されたのだった。

「ああ、うん。わかった」

井上は「静観しろ」と言った。

『今、門脇の事を色々聞いているから、待ってろ。俺の情報を待て。それまで行動するな。門脇の出方を見よう。大貴とも距離をおけ。しばらくは保健室登校だろう?大貴が教室に戻ったら、俺がクッションになるから』

「行動するな」と言ったってな・・・。突発的に現れて、好き勝手言う門脇にはどう対処すればいいんだよ。大貴を連れ去るヤツを笑顔で見送れ、と言うのか?

「だが」

『いいか?今は動くな。門脇の周辺を探ってからでも遅くはないから。大貴が初対面同然の門脇に惚れるわけがないだろう?』

「だが、門脇は」

『畑中に聞いたよ。大貴と付き合ってるとか言ったらしいね。それ、ないから』

井上にスッパリと「ないから」と言われて安心した。井上は情報通で、星望学園で起こっているあらゆる事を知っているのだ。

「ありがとう・・・そうするよ」

ここは井上の情報収集能力に乗っかるしかない。俺の為に情報収集を買って出てくれた井上には感謝しかない。

「頼む」

『普段は器用に何でもこなしてソツのない彰彦くんが、大貴の事となると何もわからなくなるんだな?恋は盲目ですか?』

「うるさい」

『はははっ。とにかく有川との連絡は絶やすなよ。大貴は有川には色々と話しているはずだ』

「うん、そうする」

恋愛指南・井上の助言をありがたく頂き、電話を切った。

しかし、井上の『恋人』は誰なんだろう?それを聞き出しそびれてしまった事に多少の後悔の念が過ぎったが、井上が口を割るはずがないからな。


 翌日、大貴は欠席した。出席簿の名前の横に「欠席」の判が押されているのを見て、俺はショックだった。大貴が保健室にいる、と思うだけで一日頑張れるのに。

休み時間に有川の教室に行き、大貴の状態を尋ねた。

「まだ胃が悪いのか?」

「うん・・・。大ちゃんは、あれからずっと吐いてたんだ。滝山さんと一緒に病院に行って点滴してもらったよ。今は落ち着いて勉強もしてるみたい。食欲は・・・ないみたいだけど」

昨日の事を気にしているのか、有川は俯き加減に話をする。

「昨日は、ごめん。あんな言い方をして・・・悪かったよ」

顔を上げた有川はニコリとした。

「いいよ。そんなの・・・。それより、大ちゃんに連絡してみたら?」

今度は俺が俯く番だった。連絡しても無視されるかもしれない。そう思うと、怖くて出来ないのだ。

「ごめんね・・・。今日は《銀香》休みなんだけど、僕は大ちゃんがいるから滝山さんの部屋に行くんだよ」

有川は、暗に大貴との連絡の術を示してくれている。だが、「距離を置け」という井上の助言を思い出した。それに「ごめんね」がどこの掛かるのかわからなかった。それが同情の「ごめんね」に聞こえてしまう。

俺は有川の厚意には気付かなかった事にして、「そうか。ありがとう」とだけ言って教室に戻った。

 ポケットの中の『ありがとう』と書かれたルーズリーフが、無性に愛しかった。

授業中にも取り出して眺め、文字を撫でてみる。ルーズリーフから大貴の温もりを感じられるはずがないのに、そこに温かみを感じてしまう。

もし、大貴が『親友』でもなくなったらどうするのだろう。

俺が大貴の『恋人』にはなれなくてもいい。この際だ、忌々しい『親友』でも構わない。大貴の近くで彼の笑顔を見つめていたいんだ。

*****

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