『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・24

 携帯を睨んでは放り投げ、拾っては着信を確かめてまた投げる。そのうち壊れてしまうだろうな。壁に当たってベッドの転がった携帯電話には気の毒だが、俺はそうせずにはいられなかった。他に八つ当たりするあてがないからだ。

大貴からの着信を告げない携帯なんて、携帯する意味があるのか!?

大貴からのメールの着信を知らせない携帯なんて、携帯する意味があるのか!?

以上の理由を以って、携帯電話はベッドで就寝中だ。もう金輪際、携帯電話に振り回されない。

 大貴とお揃いの携帯電話は、大貴の伯父さんからのプレゼントだった。大貴のおじいさんが会長を務める『滝山産業』は、不動産業を中心に手広く事業展開している。携帯電話販売はその中の一事業で、大貴や和貴さんは最新機種が出るとすぐに「伯父さん、お願いします」と言って新しい携帯電話をゲットする。

俺はそのついでに買い換えるわけだが、いつも代金は取られない。大貴はシャンパンゴールドが良いと言い、俺のは大貴が「黒にしろ」と言うから、黒に決めた。

 携帯は便利なようだが、時には人を縛るのだ。

携帯がなければ、いつ掛かってくるかわからない電話を待つ事もない。放り出したわりには、今、この瞬間に電話が掛かってくるかもしれない、と不安になるのだ。

そして、いつでも電話に出られるようにと手元に置けば、鳴らない事が不安になる。

 父が若い頃は携帯電話は普及していなかったから、待ち合わせするにも前々から「何時にどこ」と決めておかなくてはならなかったらしい。今は場所も、時間も、すぐに変更可能だし、出先から連絡して待ち合わせる事も出来る。

携帯電話を持ってさえいれば遅刻の連絡も出来るし、待ち合わせ場所を間違ったとしてもすぐに合流出来る。親父は女の子と待ち合わせて一時間半待たされた事がある、と言っていた。

便利さと不便さを兼ね備えた携帯電話に、俺の気持ちは持っていかれて振り回されていた。だから放置したわけだが、気になる。

朝は携帯のアラームで起きるし、スケジュール帳も買わなくていい。テレビも、カレンダーも、電話帳も、電卓も、携帯ゲーム機も、デジカメでさえも、携帯があれば代用出来る。

そんな便利な携帯も、俺と大貴を繋ぐという役目を果たさないのであれば、ただの役立たずだった。でも、気になるんだよな、これが・・・。

 翌日、大貴は保健室に登校してきた。有川はそれを律儀にメールで連絡してきた。

一時間目、二時間目と、持ち主のいない机は寂しそうにポツリとそこにあった。教室の入り口の近くに大貴の机があるのを良い事に、俺は教室を出入りの度に机に触れて心を落ち着かせていた。

井上は「静観しろ」と言った。大貴とは「距離を置け」と言った。だが、机を撫でているだけでは俺の気持ちは治まらない。

俺は保健室に向かって走り出していた。階段を駆け下り、角を曲がると保健室が見えてきた。そこに大貴がいると思うだけで心が浮き立つようだった。

何を話そうか、お昼を一緒に食べようと誘おうか、それとも・・・。わくわくしてきた俺の心にブレーキを掛けたのは、保健室から出て行く門脇の姿だった。俺はその場で立ち止まった。

門脇は俺に気付くと、選挙用の笑顔で軽く会釈し背を向けて歩き出す。その背中に飛び掛って、殴りつけたいくらいだ。

 俺は保健室の前で拳を握り、ノックする事を躊躇した。この拳をドアに向けるか、門脇に向けるか。

しかしその一瞬の躊躇の間に、ガラッと豪快にドアが開いたかと思うと中から大貴が飛び出して来た。

「待て!門脇!」

そう叫んだ大貴は目を白黒させて俺を見る。

「彰彦・・・」

俺は動揺を隠しながら、笑顔を作ろうと顔を引き攣らせた。

「大丈夫か?心配したよ。信吾さんに具合悪いって聞いた。怜にも・・・まだ、吐き気がするのか?」

大貴は落ち着かない。門脇の姿を探しているのか、目をキョロキョロさせている。

「中に入ろう?ソファーに座って、少し話しないか?」

俺は門脇は見なかった事にしよう。それがいい。

頷いた大貴の肩に軽く手を当てながら、久しぶりの大貴を感じた。盆と正月が一緒に来たような気分だったが、大貴が門脇を追って出てきたのは明白な事実。

「会えて嬉しい」と言えばいいのに、「元気そうじゃないか?」と言えばいいのに・・・。大貴の気持ちがどこにあるのかわからない俺の口は、心のままに動く。

「大貴、門脇とお前が付き合ってたって、俺たち親友だよな?」


嘘だ。

大貴が門脇のものになるなんて考えられない。しかも、親友であり続けるなんて・・・絶対に無理だ。


大貴は俺を見つめながら絶句し、唇をわなわなと震わせた。そして、涙を溢し始めた。自分の目から零れる涙に気付いていないのか、大貴の涙はポロポロと頬を伝い制服のシャツに落ちてシミを作っていく。

どうして泣くんだよ、大貴。違うのなら「違う!バカじゃないのか?彰彦」と言えよ。いつものお前はどこに行ったんだよ?


「どうしたんだよ、泣くなよ!」

俺は慌てて大貴の涙を指で拭いた。

「も、う、いい、彰彦が、それでいいなら、いい」

大貴の言葉の意味も、涙の意味もわからない。俺はどうしていいかわからなかった。俺が来たのが悪かったのか?

「どこか、痛いのか?先生を呼んで来ようか?」

「大丈夫、だから。ただ、勘違いしないでくれる?門脇とは、付き合ってな、いし、これからも、そ、んな予定ない、から。門脇が、勝手に、一週間限定、とか、言ってただけな、んだ。でも、それも、なしにな、って、ただの、お友だちになった、だけ」

大貴がヒック、としゃくりあげる。それでも一生懸命に話してくれるから、俺は少し嬉しくなる。「一週間限定」が気になったが、とにかく、門脇と付き合ってはいないという事だけでもわかり、ホッとした。

指で大貴の涙を拭き、このまま頬を伝う涙を舐め取ってしまいたいくらいだ。ポケットからハンカチを取り出して大貴に渡した。それを受け取って、涙を拭く大貴が愛おしくて堪らない。

 隣に座った大貴を少し高い位置から見下ろしながら、いつもこのくらいの身長差があったな、と幼い頃の記憶を呼び戻す。

大貴の気持ちはどこにあるのだろう?それがわからないから、俺の位置はこれからも「ここ」なのだと自覚した。

*****

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彰彦くん、グルグルしてるのですが、修正中の日高もグルグルしてしまいます。

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