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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・26

 大貴の容態が気にはなるが、門脇がいるであろう保健室には行きたくない。後で有川にメールして聞けばいい。俺が行ったからって、容態が変わるわけでもない。

保健室の葉山先生は星望学園大学病院から派遣された医師で、信吾さんとは同級生だ。信頼していい先生だ。

 カツレツを放棄した俺は学食から出る事にした。常に大貴との噂のある俺が、ここにいるのは注目されるだけだから。

しかも俺は今、澤村とランチを食っているわけだ。注目されないわけがない。澤村も黙って俺に従い、トレーを持って立ち上がる。皿を返却し学食を出ると、澤村が俺の袖を引いた。

「寺田さん。昨日、美術室に忘れ物したんです。一緒に行ってもらえませんか?」

回りくどい言い方をするヤツだ。「セックスしてみませんか」と、直接聞いてきたクセに。

「ああ、いいよ」

澤村と連れ立って歩く姿を、すれ違う生徒が面白そうに見ている。振り返ってはなにやら友だち同士でワア~~~ッと、盛り上がる。昼休みが終わる頃にはこれが広まって、あっという間に尾鰭が付いているに違いない。

噂話は一人歩きするのだ。放課後には「新カップル誕生」だな。

まあ、いいか。

誰が何と言おうと俺には大貴だけなんだ。俺にとって大貴以上の存在はないのだから、こうなったら長期戦になろうが構いやしない。

澤村も周囲の耳が集中している学食で、俺にふられたくはないだろうからな。


 専門棟は人気がなく、美術室の辺りはシンと静まり返っていた。

「忘れ物、さっさと取って来いよ」

どうせ嘘だろう?

「寺田さん、入りましょうよ」

媚びるような眼差しの澤村に手を引かれて、俺は仕方なく美術室の中に入った。

 澤村は中に入ると後ろ手に鍵を掛け、ソファーに俺を導く。

「僕と、シてみませんか?」

「お前、男とヤッたことがあるのか?」

「ないです。初めてだから、寺田さんとシたい」

「残念だけど・・・その気はないから。ごめん」

澤村は俺の言葉を無視してスルスルと自分のネクタイを引き抜き、シャツのボタンを外し始めた。

「おい」

よく見ると、澤村の手が震えている。もしかして、はすっ葉な感じで誘うのはわざとか?

「澤村?」

「お願いです。僕ではダメですか?平井さんじゃないとダメ?」

澤村も真剣なんだ。さっきまでの媚びるような態度を捨てた澤村は、普通の高校生に戻り真剣な表情で俺の目を見ている。震える手でボタンを外す澤村が哀れに思えてきた。

「お前さ、さっきみたいな言い方せずに、普通に言えばいいんだよ」

そう言うと、澤村の手が止まった。

「寺田さんが好きなんです。中等部に入学した頃から、ずっと。寺田さんは高3だ。一月からは自由登校だから、あと半年しか登校しませんよね?だから。平井さんとも上手くいっていないようだし、今なら僕にもチャンスがあるかも・・・。さっきは変な言い方をしてすみませんでした。慣れた感じで言えば、軽くOKしてくれるかなと・・・思って」

「そうか」

「平井さんに、真剣なんですね」

「さあな」

「この前、キスしてもらえて嬉しかったんです。だから・・・」

こいつも適わぬ恋をしていたのか、俺に。

「ありがとう。でも、ごめん」

「・・・わかりました。でも、昼休みが終わるまでここにいてください。もう少しだけ話しを、したいです」

澤村は外したシャツのボタンを、再び留めている。

「好きなのに」

澤村の声に被さるように予鈴が鳴るが、俺も澤村も立ち上がらずにソファーに並んで座ったままだった。

「好きな人には想われず、どうでもいい人からは言い寄られて・・・」

「・・・」

「上手くいかないなあ・・・」

そうだよな。上手い具合に相思相愛にはなれないよな。

「あっ、自分もだよって、思いましたか?」

「まあ・・・ごめん」

「寺田さんが、イメージと違ってて楽しいです」

イメージか。いつも、これだ。

「優等生の寺田くん」「学年一位の寺田くん」、冷静沈着で頭脳明晰・・・。もう、ウンザリだ。俺は普通の高校生なんだよ。

恋愛は学校じゃ教えてくれないんだよ。授業で学べる事なら上手くやれるさ。だが、恋愛はそうじゃない。

「そのイメージってヤツ、大嫌いですから。努力もせずに学年一位が保てると思っているのか?」

「努力家なんですよね。図書館で寺田さんが借りた本を、僕はずっと追いかけて借りてるんですよ。同じ本を読みたいと思って」

「えっ?」

俺は驚いて澤村の顔を覗き込んだ。

「本当ですよ。今まで借りた本のカードを確かめてみてください」

「ストーカーじゃん」

「はい」

ふふふっ、と澤村は笑った。

「面白いか?自分の好きな本を、読めよ」

授業開始の本鈴が鳴りだした。今から走っても、確実に「遅刻」が付く。俺は本鈴を無視する事にした。

「正直、寺田さんが借りた本を読んで、どこが面白いのかな~と思った事が何度もあります。挫折した本が何冊もある。でも、もう止めます」

「そうだな。自分が読みたい本を読めよ」

「はい」

五時間目に美術の授業はないようだ。授業開始のベルが鳴っても誰も入ってこない。

 ベルが鳴っても立ち上がる気力はなかった。

教室に戻れば、門脇と大貴の噂を聞く事になる。更に、俺と澤村の噂も広まっているだろう。煩いおしゃべり畑中の顔なんて見たくもない。

「授業は?」

「サボります」

「俺も昼寝する」

「僕も」

結局、二人で授業をサボり、美術室で過ごした50分間は至って健全なるサボタージュだった。にも拘らず、俺と澤村の噂はあっという間に学校中に広まっていくのだ。

 五時間目の授業終了のベルが鳴り、俺と澤村は美術室を出た。専門棟の前で別れたが、校舎に戻るとヒソヒソ話しに迎えられた。六時間目が始まるギリギリの時間にクラスに戻ったが、俺は全く授業に集中出来なかった。

六時間目の終鈴と同時に、おしゃべり畑中は本領発揮した。机をガタガタさせながら俺に近付き、「寺田~!」と嬉しそうに声を掛けてきた。俺は机の中の荷物をカバンに詰めながら、ムカつく畑中を無視した。

「ヤッたのか!?どうだった?大貴を門脇に取られて、ヤケクソか?」

と、騒ぎ立てながら俺の周囲をチョロチョロするから教科書の角で一撃を見舞う。

「痛ーーーーいっ!酷いじゃないか、寺田!お前ふざけんな!」

「ふざけんな。畑中」

帰り支度を終えた井上が、畑中を後ろから羽交い絞めにして片腕を首に巻く。

「グエッ・・・苦しいぞ。い、井上!やめろって!」

畑中が井上の腕を叩きながら抵抗するが、井上は手を緩めない。畑中は足をバタバタさせて、「ごめん」と繰り返す。

「ご、ごめん!井上、ごめん!」

クラスメートたちはそれを見ながら面白がって、「畑中、頑張れ!」と声援を送った。

「余計な事を言うんじゃないよ、畑中。お前、駅前のコーヒーショップの千晶ちゃんって子にご執心らしいな。今日の放課後、寺田を連れて行こうかな~?」

畑中は「ダメ!絶対、ダメ!ごめん!」と叫んだ。

「頼む!井上も、寺田も、来るなっ!く、苦しいよ~!寺田、助けろ!」

「知るか」

「行きたいなぁ。コーヒー、奢ってくれよ?」

井上は意地悪な顔をして苦しむ畑中の顔を覗き込んだ。

「ち、違う店なら、いくらでも、奢るから!放してくれ~!」

「考えておく」

井上はやっと腕を放した。ほうほうの体で逃れた畑中は、「チクショー!」と吐き捨て俺たちから離れていく。口だけは懲りていないから、教室から出て行く時に「大貴に言ってやる~!」と叫んでいたけどね。

「帰ろう」

井上と一緒に教室を出た。「後期のクラス委員は畑中で決定だな」と笑う井上と、意見は一致した。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

彰彦、ホントになんにもしてなかったんだあ!←「さしもしらじな燃ゆる思いを・29」をご参照ください♪

大ちゃんにキスは秘密なんだね(笑)恋愛指南・井上は一体、何を掴んだのか!?

ああ、もう修正多過ぎる。今回ほぼほぼ書き直したしwww

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