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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・29

 家に帰ると家族は食事中だった。リビングに近付くと、ドアの向こうから達彦の笑い声が聞こえてくる。自然な家族の団欒を感じて、緊張していた俺の気持ちも落ち着いてきた。

ここにいるのは俺の家族なのだ。家族と同じくらい、大貴の事が大切だった。大きく深呼吸して、俺はドアを開けた。

「ただいま」

「おかえり!あきちゃん!」

「おかえりなさい」

一度家に帰り、行き先を告げずに出て行った俺に、母の態度は冷たい。だが、いつもは帰りが遅い父もいてちょうど良かった。

「食事の後、ちょっと話があるんだけど・・・。父さんと母さんに」

「父さんと母さんに」と聞き、母は驚いたような表情で父を見た。父は「わかった」と言い、俺に「食べなさい」と促した。俺が帰って来て「話しがある」と言った為か、食卓は妙な雰囲気になってしまった。


 三人で父の書斎に入り、並んで座った両親を前にどう話しを切り出したら良いのか迷ったが、まずはひろ子の事を報告する。

「今まで色々と心配掛けたけど・・・今日、ひろ子ちゃんと別れました。ひろ子ちゃんが住んでるマンションは母さんの名義だったと父さんから聞きました。俺の名義にしてくれてありがとうございました。ひろ子ちゃんの名義にして下さい、お願いします」

俺は両親に頭を下げた。母は、素直に感謝の言葉を述べる俺の態度に驚いていた。だが、強張った表情のまま冷ややかな声で言った。

「わかったわ。彼女、いい子だったのにね」

「そうだね。明るくて患者さんや職員にも好かれていたよ。だが、彼女は若い。彰彦よりも素晴らしい人が現れるさ」

「彼女は彰彦には似合わないわよ」

今の一言も、以前ならば「寺田病院の跡取りである彰彦には」と前置きがあると思っただろうな。ひろ子の話しを聞いた後では、少し印象が違う。

「似つかわしくはない」ではなく「似合わない」だ。

「うん。母さん、毎月ひろ子ちゃんと電話で話してたんだね。ひろ子ちゃんから聞いたよ。ありがとう」

「・・・私はただ、あなたの事が心配で」

戸惑う母の真意はわからないが、少なくともひろ子ちゃんは感謝していたし。

「ありがとう」

母はムスッとして、視線を落とした。

「それだけかい?他にも話しがあるんだろう?」

父に宿題の提出を求められているような気分だった。俺は大きく息を吸って、吐いた。

「うん、大貴の事なんだけど・・・。やっぱり、諦められそうにないんだ・・・それで」

言葉に詰まる俺を、父は待ってくれた。母は俯いたままで何も言わない。

「大貴には自分の気持ちを伝えようと思っている。もし大貴も俺を好きなら、大貴と付き合いたいと思う。もし、俺の事を『親友』としか見ていないのなら、大学は他の大学へ行こうと思ってるんだ」

「そうか。私たちは星望に進学して欲しいが、彰彦が決めたのなら仕方がないな。今から他大の受験準備は大変だぞ」

「はい」

「うん。それで、大貴くんもお前の事を好きだと言ったら、お前はどうするんだ?」

一番、考えなくてはいけない事だ。

そうなんだ。大貴の家族とは林島家以上の付き合いだ。俺たちはお互いの家族旅行にも便乗して付いて行くし、父親たちは星望の同級生だ。母親同士も交流がある。

こうしたら万事解決、という100点の解決策はないが、自分なりに考えていた事を話してみる。

「俺は・・・大貴に俺の事を『大好きなあきちゃん』ではなくて『恋人』として見て欲しいんだよ。だから、大貴の事を自分のものにしたいと思ってる。それが許せないんだったら言って下さい。大学は奨学金で行ける所を探すし、この家からも出て行きます」

親の援助は受けずに、一人で何とか医大を卒業する。国公立の医大は授業料も星望のようには高くない。幸い成績は良いから奨学生になれるかもしれない。「甘い」と言われるかもしれないが、俺はそれが不可能ではないと思っている。

「達彦がいるから、跡取りには困らないだろう?」

「そういう問題じゃないわ」

母の言葉の調子がきつくなる。父が、母の手を握った。

「大貴くんのご両親には、何と言って報告するんだ?」

「それは・・・大貴が『言いたくない』と言うかもしれない。親には知られたくないかもしれない。大貴だって、そうなってみないとわからないだろう?だから、それは、その時二人で考えるよ」

父は、俺が自分なりに考えて出した答えに頷いた。

「いいだろう。お母さんは?」

母は膝の上で握った手をじっと見ていたが、顔を上げた。

「私は・・・ちゃんと女性と結婚してこの家を継いで欲しいと思ってるの。でもね。そんな事よりも、彰彦に私を見て欲しかった。作り物のお人形みたいな彰彦と付き合っていくの・・・辛いの」

「えっ・・・?」

それが良かったんじゃないのか?母が望む「理想の息子」が欲しかったんじゃないのか?

「ひろ子さんの事も、大貴くんの事を諦められるんだったら、いいと思ったわ。このままひろ子さんと結婚してもいいとも思っていたの。最初に反対したのは・・・私自身が周囲から色々言われて大変だったから、ひろ子さんも辛い思いをすると思ったのよ。酷い事を言って、ごめんなさい」

母は手に視線を移し、頭を下げた。

「彰彦にこの家を継いで欲しい。出て行くなんて言わないで」

震える声でそう言うと、母は泣き出した。父が母の肩を優しく抱いて撫でている。

「彰彦が、大貴くんの事を好きで、大切だと思っているように、私も、彰彦の事、大切なの・・・。家を出るなんて、言わないで」

父が母にハンカチを渡し肩を抱く。

「母さん・・・ごめん」

「母さんも悩んでいたんだよ。彰彦が目を合わせてもくれない、話しをしてくれない、とね。『自分が悪いんだ』と責めていた」

母さんは、そんな素振りは見せなかったじゃないか?冷たく接する俺には、溜息しか見せなかっただろう?

「母さんが、おじいちゃんたちの目を気にして小さくなっているのは知ってるよ。世間体を気にしてると思っていた。俺が『いい子の彰彦』である事で、母さんは満足してるんだと思っていたよ。自分を守る為だったんだろう?」

母はハンカチで涙を拭いた。そして顔を上げて俺を見る。

「お義父さんたちからはいつも、私の家柄が、と言われるわ。それはもう諦めたの。言わせておけばいいんだと、やっとわかったから。でもね、彰彦たちの成績が悪ければ私の子どもだから、と言われるのよ。私の事を悪く言われてもいいのよ。『私の子どもだから』という理由で、頑張ってる彰彦たちが悪く言われるの、嫌じゃない?だから、勉強もお習い事も部活も、頑張って欲しかった」

そうか・・・。まだワダカマリは残るけれど、母にも母の事情があるのだという事はわかった。

「彰彦が、大貴くんを好きだとわかって・・・ショックだったの。このままでは彰彦が何と言われるかわからない。罵られるかもしれない、そう思うと不安だった。でも、それは・・・お母さんがお父さんの事が好きで結婚したいと思った気持ちと同じなのよね?少しずつ理解しているつもりなのよ。だから、大丈夫。男同士で恋愛だなんて、と思っていたけれど、人を好きになるのは理屈じゃないのよね?」

母も時間を掛けて俺の事を理解しようとしてくれたのか。

「うん。ありがとう」

両親も俺の事で悩んでくれていたのだとわかって、胸の痞えが下りた感じ。俺も母を理解してやらなくてはならないのだ。大嫌いな母だったが、遠い昔の大好きな母と今の母は同じ人なのだ。

「世の中は、全て丸く収まるという事はないのだよ。あちらを立てればこちらが立たず、という状況は何事にも起こりうる。笑う者の陰で泣く者がいるという事も忘れるな。それは大切な事だからな」

全ての事象で、光と影は対となっているのだ。ひろ子の泣き声が、脳裏に浮かんだ。


 部屋に戻り携帯をチェックすると、有川からメールの返事が来ていた。

『大ちゃんは保健室で最後までプリントをしました。夕食はいっぱい食べていました。明日も保健室です。おやすみなさい』

知りたい事は全て書かれていた。

今まで大貴の傍に居たんだから、もう少し情報はないのかな。まあ、有川のメールなんてこんなものだ。律儀に尋ねた事を知らせてくれるだけでもありがたいと思おう。

大貴に会いたい、大貴に触れたい、大貴と一つになりたい。身勝手な俺の欲求は留まる所を知らない。

大貴は《銀香》の営業中は店の奥の事務所に居るらしい。明日は学校の帰りに《銀香》に行って大貴と話をさせてもらおうと決めた。

 翌日、登校するとすぐにおしゃべり畑中がやって来た。

「昨日の放課後、偶然大貴に会ったんだけど。俺、ちゃんと報告しといたぜ!」

畑中は偉そうに胸を張った。

「何を報告したんだ?」

「お前と澤村の事だ!へへへっ」

絶対に偶然じゃないな。このお調子者め。余計な事を報告しやがって・・・。

「ふうん。じゃあ、俺も今日の放課後、千晶ちゃんに報告しないとな」

「なっ、何を!?」

血相変えて畑中が俺の腕を掴んだ。

「畑中くんとはお友だちでもなんでもありません、ってさ。昨日も言ったが、俺たちはクラスメートだが、仲が良いわけじゃないよな?」

「寺田くん~~~っ!」と情けない声を出す畑中。井上がその肩を叩きながら「ご愁傷さま」と声を掛けた。

「千晶ちゃんには、俺とお前は無関係でお友だちではない、ときちんと説明してくるからな?」

「口は災いの元だよ。畑中くん」

井上と二人で畑中の脇や腹をくすぐって、「ギブ!」と言わせた。畑中は「ごめんなさい」「もうしません」と泣き笑いしながら言い、クラスの笑いを誘った。

だが、畑中の言葉で大貴のご機嫌が180度曲がっているなど、思いもよらない俺だった。

*****

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彰彦くんの家庭内事情のお話でしたが、次から・・・さくさくと!←修正に飽きてきたwww

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