『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・30

 土曜日の授業は午前中で終了。

いつもならば大貴と渋谷まで足を延ばしたり、信吾さんの店でお昼をご馳走になったり。弁当を買ってお互いの家で食べたり、ゲームセンターに行ったり・・・何をしても楽しいんだけどなあ。

大貴に会えない鬱々とした気持ちは今、全ておしゃべり畑中に向かっている。畑中は帰り支度をする俺の周りをウロウロし、鬱陶しいばかりだ。

「寺田くん!今日は僕が奢りますから、例のコーヒーショップに一緒に行ってくださいませんか?」

「行かない」

「寺田~!なあ、頼むよ!千晶ちゃんがお前と『お話がしてみたい』って言うんだよ!頼むっ!」

両手を合わせて「お願いっ!」とポーズを取るが、大貴以外の「お願い」は俺には通用しないのだよ。

気持ちが悪いからやめろ、畑中。俺は「気持ち悪い」と「ムカつく」を込めたデコピンを畑中の額に食らわせた。

「おわっ・・・痛ってえ・・・やりやがったな!寺田!」

俺はうずくまって痛がる畑中を押し除けて教室を出た。

 正面玄関の前で、ちょうど坂を下る信吾さんの車を見掛けた。それに乗っている大貴も保健室で頑張っていたんだなと、嬉しくなった。

昨日、畑中が投下した大型爆弾の効果など知りもしない能天気な俺は、久々に大貴に会えるんだと思うと心が軽い。何を着て行こうか、などと一人浮かれながら、信吾さんの車のテールランプが見えなくなるまで見送った。

 家に戻り、大貴に貰ったTシャツを取り出した。大切にしまっていたTシャツをベッドの上に置き、上にシャツでも羽織ろうと合う物を探す。綺麗なブルーだったから、シャツはオフホワイトを選びジーンズに穿き替えた。

リビングに行くと、母は昼食にオムライスを用意していた。母が作ったトロトロの半熟卵のオムライスは、大貴が好きなメニューだ。そう思うと無性に大貴に会いたくなった。

母は、オムライスを前にニヤニヤする俺を見て怪訝そうな顔をしている。

「彰彦、どうかしたの?」

ニヤニヤしていた自分が急に恥ずかしくなり、俺は顔を平常に戻す。母の言動の一つ一つにムカついていたが、今日は違う。これが昨日なら「煩いな」で終わりだったよな。

「なんでもない。大貴が胃の調子が悪くて保健室登校してるんだ。今から、信吾さんの店にお見舞いに行く」

「ああ。恭子さんが旅行に出る前に『お世話になると思うけどよろしく』って電話があったのに、大貴くんが遊びに来ないから心配していたのよ。そう、信吾さんの所にいるのね」

母と大貴のことを話すのも久しぶりだった。それも嬉しくて、自然と俺の頬は緩む。今度大貴がうちに遊びに来たら、これを作ってもらおう。

「母さんが作ったオムライス、大貴も好きだからさ。今度、大貴が来たら作ってくれる?」

母はこれまで見せていたような作り物じみた笑顔ではなく、本当に喜んでくれているのだと感じる事の出来る笑顔を見せた。

「いいわよ」

大貴が自分が作るオムライスが好きだ、と聞いてその笑顔になったのか、俺が普通に会話しているのが嬉しくて笑顔になったのか、そのどちらもなのかわからなかった。

どっちにしろ、これまで母とは二言三言しか話さなくなっていたから、普通に話せる事が不思議で、そして嬉しかった。

「ご馳走さまでした」と言って立ち上がり、キッチンのシンクまで皿を運んでいるとポケットの携帯が鳴り出した。液晶画面を確認して珍しい名前に少し驚く。有川怜二だった。

有川から電話なんて、初めてかもしれない。何か嫌な予感がする。

「はい」

『彰彦くん?怜二です、あの・・・』

「うん」

有川に先を急かして、色々言うのは厳禁だ。途端に話がストップしてしまう。それを知っているから、じっと我慢して俺は待った。

『大ちゃんね・・・今からルーデンスGホテルのスイーツバイキングに行くんだけど・・・門脇くんと・・・デートなんだ。あの・・・』

心の中では『何だと!?』と叫んでいたさ。だがここで大声を出すのは得策じゃない。俺はそれをグッと堪えた。

「二人で、か?」

「デート」と言ったよな?「あの」の先を聞かせてくれよ、有川。

『そう。じゃ・・・僕、バイトだから』

「えっ?」

電話は一方的に切られてしまった。有川、もう少し要領良く伝えてくれないか?


 ルーデンスGホテル、と言ったな。

ガーデンウェディングが行われる芝生の庭園が見えるカフェで、「午後だけスイーツバイキングをやっているから行ってみたい」と、大貴が言っていたのを思い出した。

門脇と、だと!?二人で、だと!?

どうして、門脇なんかと・・・ケーキを食べるのは俺じゃダメなのか!?

怒りなのか、哀しみなのか、戸惑いなのか、絶望なのか・・・よくわからないものが湧いてくる。

次第に自分を抑えきれなくなり、俺は携帯と財布を握り締めてリビングを飛び出した。

*****

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