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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

あまりてなどか人の恋しき・31

 有川からの電話は、「大貴と門脇がホテルのスイーツバイキングでデートする」という許し難い内容だった。

携帯と財布を掴んでリビングを飛び出し、玄関で慌てて靴を履く俺を母が追ってきた。

「彰彦!そんなに慌ててどこに行くの?」

「ルーデンスのカフェ!行って来ます!」

それだけ言い置いて出掛けようとした俺に、母は首を捻りながら「いってらっしゃい」と声を掛けた。そしてついでのように、「ルーデンスの部屋、今日は誰も使ってないわよ」と、言った。

「あ、ありがとう・・・?」

俺は母の言葉の意味がわからないまま外に飛び出し、駅に向かって走りだした。家から駅まで全速力で走って約3分。

走りながらルーデンスGホテルの最寄り駅を頭の中で模索する。電車を上手く乗り継ぐ事が出来れば約50分でホテルに一番近い駅まで着くはずだ。駅から走って5分。

という事は俺がルーデンスGホテルに着くまでに、最短一時間は掛かる計算になる。


有川は「今から行く」と、言った。ということは、信吾さんの車で送るということだろう。車なら《銀香》から40分というところか。それならば大貴は俺よりも20分も早く到着してしまうじゃないか!

クソッ!

漸く見えてきた駅。中に走り込み、券売機の前で路線を確認して、切符を買う為に財布を開けて気が付いた。今月の小遣いがほぼ手付かずで残っているじゃないか。

そうだ。いつもなら放課後は大貴と買い食いしたり、タクシーを使ったり。二人で出掛けると、当然のように俺が全部支払っていたのだ。その出費がなかった分、余裕の中身。

タクシー乗り場にはうちがいつも使っているタクシー会社のタクシーが並んでいた。よし!金が足りなければ、ツケだ。

 待機しているタクシーの窓を叩き、「すみません!寺田病院の寺田です」と声を掛けた。運良く、運転手さんは俺を覚えていた。

「ああ、上の坊ちゃんですね」、と言いながら後部座席を開けてくれた。

「すみません、ルーデンスGホテルまでお願いします」

一刻も早くルーデンスに着きたい。今月の小遣いとはお別れだ。大貴を取り戻す為にはそんな事は瑣末だ。

 土曜日の午後という事もあり、道路は渋滞していたが意外とスムーズに車は進んだ。運転手さんは、「土曜日のわりには車が少ない」と教えてくれた。

 ボーッと、車の外を眺めながら大貴に何を言おうか、どんなふうに気持ちを伝えようか考えていた。

もしも「門脇を選んだ」と言われたら俺はどうするのだろう。どうしたらいいのだろう。「良かったな」と祝福して、「いいお友だちごっこ」の延長戦か?

そんなのは、嫌だ。


「あと20分も掛かりませんよ」と声を掛けられた時、携帯が鳴り出した。今度は「滝山信吾」。信吾さんからだ。

「はい」

『彰彦くん?滝山です、今どこにいるんだい?』

「今、ルーデンスGホテルに向かっています」

電話の向こうで微かに、溜息なのか信吾さんが息を吐き出す。「ふうっ」という音が聞こえた。

『怜二くんから電話が掛かってきたね?』

「はい」

『電話させたの、俺。彰彦くんの気持ちを知りたいんだ。大貴の事をどう思っているんだい?』

今度は、俺が息を吐き出す番だった。一息置いて、気持ちを落ち着かせた。

「好きです。もちろん恋愛感情で、です」

『そうか・・・。じゃあ、気持ちを伝えようと思うのか?それとも・・・友人関係を継続する?』

「自分の気持ちを伝えたいです」

『大貴がさ。あの元気で朗らかな子が、君と上手くいかないと言ってしょんぼりしてるんだよ。話が噛み合わない、君の考えている事がわからないと言うんだ。君が一生、大貴の傍にいられないのなら、大貴の事はそっとしておいてくれないか?大貴が苦しむ姿を俺は見たくないんだよ。大貴は他の大学に進学させる』

「両親には大貴に対する気持ちを話しました。もし大貴が俺を受け入れてくれるのであれば・・・一生大切にします。一生、離れないと誓います」

信吾さんは、「はははっ」と笑った。

『俺に誓うなよ。俺も昔、誓ったよ。でも・・・ダメだった。誓いは無駄になる事もあるし、それに縛られるからな。それよりも、少しでも自分の決心に自信がないのなら、大貴には手を出すなよ』

「はい」

『どういう形であれ、大貴の傍にいられるように考えてくれないか?もし親友としての立場を選ぶのなら、それを一生貫いてくれ。毎日、調子悪そうにしている大貴を見ているのが辛いんだよ。大貴に気持ちを伝える事だけは許そう。チャンスは、二度はやらないからな』

「はい、わかっています」

『チャンスの神さまは前髪しかないそうだ。だから、擦れ違ったら前髪を掴まないと捉まえられないんだってさ。あとは大貴の気持ち次第だから・・・まあ、頑張れよ』

「ありがとうございます!」

「じゃあ」、と電話は切れた。

信吾さんは高校時代に付き合っていた人との仲を無理に引き裂かれて、辛い思いをした。だから『誓うな』と言ったんだ。だけど、やっぱり『誓い』は大切なものだ。

想いを込めて大貴に誓おう。一生傍にいる。いや違う。一生傍にいてください、かけがえのない人。

滑り込みセーフでチャンスの神さまの前髪を掴んだ俺を乗せたタクシーは、ルーデンスGホテルの車寄せに滑り込んだ。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

信ちゃんの「頑張れよ」はどこに掛かる「頑張れよ」でしょうか?(笑)「チャンスの神さま」は日高宅にはチョイチョイ出てきますね(笑)これって、ここ始まり?

あと10話~♪と喜んでいた日高。番外編が残ってて、疲れが増しましたwww

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