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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

さしもしらじな萌える思いを・4~『あまりてなどか人の恋しき』番外編

 月曜日までに提出の課題を仕上げて、思いっ切り背伸びをする。

この課題の為に要した時間は約10時間。図書館で資料を集め、更に教授に資料を聞き出して書き上げた。上々の出来に大満足だ。さあ、晩飯までは時間もあるし、一休みするか・・・。

少しばかり眠くなり、ほんの少しのつもりで横になる。ブランケットを首まで引き上げて、一眠りだ。


 ベッドに入ってどれくらいの時間が経ったのか・・・?身体が異様に重い。

なんだこれ?金縛りか?

いや、違う。俺の鼻に届いたのは大貴の香りだ。そっと目を開くと、大貴が俺の腹の上にちょこんと乗っかってるじゃないか!

「何してるんだよ!?大貴!」

「行くぞ!」

「はあ?」

「急げ!」

意味がわからんなあ・・・大貴の重装備。

「なに?その格好・・・」

大貴の服装はダウンジャケットに毛糸の帽子で耳まで隠して、首にはマフラー、手袋まで・・・?

「どこに行くんだよ?」

「キャロリング」

「はあ?」

「今日からだろ?寺田病院の隣の教会のキャロリング!行くぞ!」

はあ・・・っ。その役目は弟の達彦に譲りましたけど?


 父が経営する寺田病院の隣には、小さな教会がある。その教会では、毎年この時期になると、週末に近所の子どもたちを集めて俄か作りの聖歌隊を編成して賛美歌を歌って周辺の家や店などを回るのだ。

毎年の事だから、周辺住民や店の経営者たちも心得ていて、お菓子や玩具、多少の金銭を準備して待っていてくれる。去年までは「彰彦がみんなを連れて行きなさい」、という親父の至上命令を受け、俺が彼らを先導するリーダー役を務めていた。

それには当然、お菓子目当ての大貴や大貴の兄・和貴さんも高校の時までは参加していた。


「え~~~っ!今年からリーダーは達彦がやるから、俺は行かないんだよ」

「行くの!」

「寒いよ?」

「厚着してきたから大丈夫!」


なるほど・・・。今日はダウンジャケットの下に、何か温かい物を着てるようだ。

「お前、月曜日に提出する課題は終わったのか?」

「まだ!彰彦、手伝って」

当たり前のように言う大貴に呆れた。

「自力でどうぞ」

「だって・・・!キャロリングに行かなきゃ・・・クリスマスが来ない気がするじゃないか?」

そんな、捨て猫みたいな顔してもダメだ。課題が優先だ!

「行こうよ!彰彦~お願い!」


弱いんだよなあ・・・その「お願い!」に。

仕方なく大貴を横にどかせて立ち上がった。全く。大貴は合鍵の使い方を間違ってるだろ?

着替える俺の後ろから付いて歩き、「課題はもう終わったのか?」、「この格好で寒くないかな?」、「課題ちゃんと、手伝ってよ?」と、煩く言う大貴。

俺はカルガモの親になった気分だ。


だが、可愛い。

このまま服を引っ剥がしてベッドに放り込みたい・・・。


「彰彦、早くっ!」

ああ、それ、ベッドで言ってくれ。

「さっさとしろよ!ついでに、今、エッチな事考えてただろう!?絶対にイヤだからな!今日、服を脱がせたら、絶交じゃないぞ!別れる!」

勘だけは日増しに良くなってやがる・・・まあ、いいか、帰ってからゆっくりと。


 そんなこんなで教会のキャロリングに出掛けた俺たちは、弟の達彦と俄か聖歌隊を率いる佐藤さんに大歓迎され、去年まで俺の役目だった音叉を再び持たされてしまった。

ここから約2時間、町内を回りながら賛美歌を歌う。

 まずは親父の病院の大ホールだ。ここには入院患者さんたちが聞きに来るから、お菓子や小銭が大量に振舞われる。

手に持ったロウソクに火を点けて、キーーーンという音叉の音に各々の音を合わせて合唱が始まるが、毎年恒例だったからこれを止められないという、大貴の気持ちもわからないでもない・・・。

大貴は賛美歌106番が好きで、これを何度も「歌おう!」というのだが、こればかりだと子どもたちが飽きてくるから却下。


荒野の果てに 夕日は落ちて

妙なる調べ 天より響く

グローーーーリア インエクセルシス デオ

グローーーーリア インエクセルシス デオ


サビの部分になると綺麗な高音で「グローーーーリア イン エクセルシス デオ」と歌い上げる大貴。

子どもが多いから音程が狂いがちだけど、これくらい綺麗に主旋律を歌ってくれると周りの子どもたちが付いて来られるから助かる。

あとは、俺が低音部を入れればバッチリ上手く聞こえるのだ。

「助かるわあ、二人が歌ってくれると」と、責任者の佐藤さんに褒められて内心嬉しいのだが、「大貴がどうしても来たいと言うので」と仕方なく来たことをアピールしてやる。

辺りは暗くなり、ゆらゆらと揺れるロウソクの火に照らされた大貴の頬がほんのりと赤くて、可愛さ倍増だ。


 と、まあこんな感じで寺田病院から俺の家、付近に住む病院関係者の家や、小学校の校長先生やら町内会長のじいさんとか交番。最後に駅前で歌い、ようやく教会に辿り着く。

約2時間で終了し、今度は貰ったお菓子をみんなで分け合う。

お金は教会への寄付、玩具は養護施設に寄付する事になっている。小さい子から順にお菓子を配って達彦は先に帰ってしまった。当然、「大人」の俺と大貴の分のお菓子はないのだが・・・後ろから大貴が「はい」と、袋をくれた。

「なんだ?」

「お菓子、彰彦の分。分ける時に彰彦の分も取っておいたんだ」

ニコニコと笑う大貴。

俺は思わずギュッと抱き締めて「好きだよ」と囁いた。ジタバタと逃れようとする大貴をすぐに解放して「ありがとう!」とお礼を言うと、ニンマリと笑う。こんな、可愛げのあるところが、大好きだ。

ちょうどそこへ、聖歌隊の隊長・佐藤さんが通りかかった。抱き合う俺たちを見て、ギョッとしたのがわかった。大貴は俺の脛をガンッと蹴ると、佐藤さんを呼び止めた。

「痛ってえ・・・」

痛みを耐えながら蹲る俺を押し退けて、大貴は佐藤さんに駆け寄った。

「佐藤さ~~~ん!聞きたい事があるんですけど!106番の『グローリア インエクセルシス デオ』って、どういう意味なんですか?」

「ああ、それはね。『いと高き所に、栄光が、神にあるように』って意味のラテン語よ。神を褒め称える言葉よ」

「ふうん。ラテン語かあ!グローリアはわかるけど、英語じゃないしイタリア語っぽいけどわかんなくて、そういう事なんだ!でもこれで長年の疑問も解決したし!キャロリングも心置きなく卒業出来ます!」

「そんな事言わずに、来週も来てよ。大ちゃん!来年もね」

「どうしようかなあ?なっ?彰彦!」

「・・・」


そうか、大貴は疑問解決の為に俺を・・・そうか!

ニコニコと笑いながら俺の手から「彰彦の分」と言ったはずのお菓子の袋を取り上げて、キャンディを自分の口に放り込んだ。

仕方ないか・・・。こんなに可愛いヤツ、俺は他に知らないのだ。

井上にそう言ったら「あばたもエクボだな」と言われた。あばただろうが、エクボだろうが、俺は大貴のことが大好きなんだ。


「彰彦、帰ろう?寒い!早く車のエンジン掛けてきて!暖房入れて!」

「イれて」はベッドの上で言ってくれ。

「はい、はい!」

「『はい』は1回だ!」


ああ、可愛い。

飽きずに繰り返すその言葉も、思いっきり我が儘言っちゃうところも。「課題教えて!」と甘えて擦り寄り、終わると用なしとばかりに「寄るな!」とか言っちゃうところも・・・全部、大好きだよ大貴。

教会の入り口に建てられたマリア像と天使に見送られながら教会を後にした。


神の祝福も、天使の祝福も、俺の分は全部大貴にありますように!


*****

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なんのおちもない、エロもない!(彰彦、珍しいぞ!?)

帰り着くまで持つのか?!彰彦!!(途中下車の目算高し)
《荒野の果てに》~さしもしらじな燃ゆる思いを番外編←こちらは大貴くんの謎解明に至るまでのお話。

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