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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

青い朝・7~『待つ夜ながらの有明の月』番外編

 手を繋いで寝たが、目が覚めると輝也は俺の脇の所に入り込むようにして寝ていた。輝也の腕は胸の所で小さく折り畳まれ、足を曲げて丸くなっている。

元からそうなのか、《スプリング》に居た時に付いた癖なのかわからないが、輝也は寝る時は真っ直ぐでも気が付くと丸くなって寝ている。本人は無意識にやっているのだが、胎児のように横向きに丸まって寝るのは自己防衛本能の表れだという。

輝也の心のキズは、癒えているようで癒えてはいないのだ。母親が見つかり、箱根でお世話になった浜嶋さんと出会って再婚したが、俺にはそれが余計に輝也のキズを抉ったように思える。

一見「大人」の輝也は、母親の再婚を快く許し「おめでとう」を言った。

思春期真っ盛りの高校生を襲った不幸な出来事は、息つく間もなく輝也をどん底へと落としたのだ。その張本人は実の母だ。それを「はい、そうですか」と赦してやれる程、輝也は大人ではなかったのだ。

だが、彼は赦した。

母親の再婚にも反対はしなかった。その代わりに、自分と俺との関係には「口を出すな」と宣言したのだ。それがあったから、母親を表面上「赦す」と言ったのかもしれない。

 厳しい言葉で母親を罵倒し殴るくらいの事はするのではないか、と思ったのは俺の方だ。母親に「男娼をしていた事は内緒にする」と決めたから、輝也は再婚を「良かったね」と言ったのだ。

庇護者を失った輝也が、不本意ながらも《スプリング》で働いていたのは自分を守る為に他ならない。逃げていた母親が見つかった時、輝也にとって母親はすでに庇護者ではなくなっていた。

だから赦せたのか。


 最近ストレートにした輝也の髪を、起こさぬようにそっと撫でた俺は、図体だけは一人前に大きくなってしまった輝也の幼い心を抱き締めてやりたかった。

いつも一生懸命で、人一倍努力を重ねる輝也に寄せる周囲の期待も大きい。

それをひしひしと感じて輝也は必要以上に頑張ってしまう。それには、あの時助けてもらった「恩返し」の意味もあるのかもしれない。

口には出さないが、見ず知らずの彼らを見捨てなかった俺たちへの感謝を、彼は忘れてはいない。

「もう、十分だぞ」

「・・・んっ」

輝也は髪に触れていた手に気が付いたのか、頭に手を伸ばした。俺がその体温の高い手を握ると、輝也はふと顔を上げて薄目を開けた。

「あ、さ?」

「まだ」

「うん」

輝也はまた目を瞑った。この愛しい者の未来を更に輝かせてあげたい。そして俺も、共に輝く。


 輝也のスマホのアラームが、ピピピッと規則的な音を立てる。

午前6時30分。輝也の手が枕元に伸び、アラームを止めた。

「あーっ」

スマホを見た輝也が枕に顔を埋めた。足をモゾモゾと動かしながら、俺の体温を求めるかのように手を伸ばす。

「まだ寝てろよ」

「うん・・・あと30分寝たい」

「寝ろ」

髪を撫でると、輝也は俺の手に自分の手を添えた。

「・・・でも」

「俺が起こしてやるから」

そう言うと、輝也はまた目を瞑った。

「うん」

目を瞑った輝也はすぐに寝息をたて始める。それを確認してから、俺はベッドからそっと離れた。

 そっとベッドルームのドアを閉め、リビングに移動しエアコンのスイッチを入れた。カーテンを開け、窓を開けると冷たい風が吹き込んできて、薄着の俺の身体を一気に朝モードにしてくれた。

「うわっ・・・寒っ」

ソファーに放ってあったジャージの上着を慌てて着て、空を見る。

「青い」

輝也がここに引っ越してきた頃は、マンションのベランダからはもう少し遠くまで見渡せたのにな。『滝山産業』が新たにマンションを3棟建て、近くの運動公園の緑は一部しか見えなくなった。

マンションとマンションの間から朝日の天辺が見えるが、その上の空は青かった。綺麗な空色ではなく、濃くて紺に近いほの暗く青い朝の空。

「頑張ろ」

窓を閉めて、俺は洗濯機を回した。


 午前7時に輝也を起こすと、俺が洗濯した事を驚いていた。まだ干していませんが。

「俺だって洗濯ぐらいはしますけど?」

「まあ、そうだけど・・・熱でもあるの?」

「ない」

「そう」

そしてキッチンで鍋を見て「ええーーーっ!」と声を上げた。驚いて振り向き、俺を見て再び鍋に目を移す。

「どうしたの?」

「どうもしない」

「そう」

「はい」

ご飯はタイマーで午前7時半には炊き上がる。それを確認した輝也は、なぜか頷いた。

「じゃあ・・・卵焼き、作ろうか?」

「ああ、うん。甘いのやだ」

「うん、わかってる」

頭をポリポリと掻きながら首を捻る輝也。

「あの」

「なんだ?」

「もしかしてだけど・・・俺が異動になるからやってるの?」

「そういうわけではない」

「じゃ、どういうわけ?」

「何となく、気が向いたから」

そう、気が向いたからだ。どうせ毎日は続かない。約束はしないけれど、俺がやれる事はやる。ただそれだけだ。

「そう、なんだ」

「ああ。気にするな」

「はーい」

「じゃ、俺は電話するから」

「えっ?誰に?」

「山下くん」

「ああ・・・うん。少し早いんじゃないの?」

「大丈夫。彼、おじいちゃんだから朝は早いんだ」

「同じ歳でしょ?」

俺は聞こえないフリをした。ダイニングテーブルの上に置いてあったスマホを手に取り、山下くんの番号を呼び出す。輝也は不思議そうな顔で、ジッとこちらを見ていた。

 2コールで山下くんは電話に出た。

「あっ、山下くん?おはよう」

『おはよう、圭介くん。早いね』

山下くんの声はいつも爽やかだ。

「まだ寝てたの?」

『まさか。起きてますよ』

「そう。ちょっと話しがあったんだ」

『へえ、俺もだよ』

「じゃあ、山下くんからどうぞ」

『圭介くんが掛けてきたんだから、圭介くんからどうぞ』

「今日、《有明の月》に来てくれる?決済印、押しておくから」

『そう?良かった。ありがとう』

「で、山下くんの用件は?」

『うん。俺は会ってから話すよ』

「なんかズルーイ」

『あははっ。じゃあ、後でね』

プツッと通話は一方的に切られてしまった。

「切れた」

「何がズルイの?」

「・・・俺だけに用件を言わせて自分は言わないんだ。ズルイ」

「ふうん」

卵を焼く匂いがする。出汁が効いた渦巻き状の黄色い卵焼きを口に入れた時の感触を思い出しながら、俺はキッチンに立つ輝也の背中に飛びついた。

*****

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コメント
圭介さん、気持ち切り替えたかな?
日高様~~~きゅうきゅううっっ♪

輝也君、なんだかんだ言ってまだ若いし、トラウマもあるよね。
だけど圭介さんという良き伴侶を得た。
我がままで子供っぽい圭介さんだけど、輝也君を甘やかしてくれるし、
その辺は頼りになる大人ですもんね(* '-^) ⌒☆

この二人はもう、盤石な感じですね~
輝也の将来のために、圭介さんも独占欲は少し押さえてくれれば(笑)
滝山産業がどんどん成長してもう仲良しグループではいられない。
その過渡期なんですよね。
がんばれ~~~みんな!!

私はや~っと確定申告も終わり、ホッと一息です。
だけど花粉がひどくて・・・(´Д`;)/ヽァ・・・
まだまだ三寒四温が続くので、日高様もご自愛くださいませ~
2018/03/10(土) 00:58 | URL | にゃあ #-[ 編集]
Re: にゃあさま~いらっしゃいませ♪
にゃあさま~~~きゅうきゅううっっ♪

すみません、朝から胃が痛くてwwwお返事が遅くなりました。すみませんっ!

> 輝也君、なんだかんだ言ってまだ若いし、トラウマもあるよね。
> だけど圭介さんという良き伴侶を得た。
> 我がままで子供っぽい圭介さんだけど、輝也君を甘やかしてくれるし、
> その辺は頼りになる大人ですもんね(* '-^) ⌒☆

トラウマは残りますよね。幸せな生活の中でも、無意識はありますからね。テル、テル言って甘えているようで、実はそれが輝也の安定剤だったりして。

> この二人はもう、盤石な感じですね~

そうなんですよね~日高の中では完結してるんですけどね(笑)

> 輝也の将来のために、圭介さんも独占欲は少し押さえてくれれば(笑)
> 滝山産業がどんどん成長してもう仲良しグループではいられない。
> その過渡期なんですよね。
> がんばれ~~~みんな!!

会社も大きくなって、このまま仲良しグループでやってもいられないんでしょうね。
過渡期ですね!

> 私はや~っと確定申告も終わり、ホッと一息です。
> だけど花粉がひどくて・・・(´Д`;)/ヽァ・・・
> まだまだ三寒四温が続くので、日高様もご自愛くださいませ~

お疲れさまです~!日高も来月から忙しいので、ストック貯めようと頑張っております!にゃあさまも花粉症に負けずに、頑張ってくださいね!お互いに身体には気を配りつつ、ですね。コメントありがとうございました!
2018/03/10(土) 23:41 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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