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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

菜虫化蝶・1~『Love me do』番外編

★すみません、ちょっと前の話しだと思って読んでくださいませね。



「ハ、ハッ、ハックション」

吉塚十月(カンナ)さんが大きなクシャミをした。数日前から、彼は鼻と口を大きなマスクで覆っている。店の中でも調理中はマスクを外さない。

「ハッ、ハクション」

吉塚さんが再びクシャミをした拍子に、炒めていたタマネギがフライパンの外に飛び出した。普段ならこんな事はないのに。

「大丈夫ですか、吉塚さん?」

「大丈夫じゃないよ。もう、悲惨だよ」

「それって、花粉の『飛散』と『悲惨』を掛けてるのか?」

「・・・」

家永さんが冗談ぽく聞いたが、吉塚さんは返事をしなかった。今の彼には冗談は通じないのだ。

そして吉塚さんは、フライパンから飛び出してしまったタマネギを忌々しそうに睨んだ。まるでしょうもない冗談を言った家永さんを睨むかのように・・・。

 今年、突然花粉症の症状が現れた吉塚さんは、それを受け止めきれずにいるのだ。だから病院にも行っていない。敦子さんが「お勧めですってよ」と言って教えてくれた市販の鼻水止めの薬を飲んでいるだけだ。

「俺、花粉症じゃないんで。今のクシャミは胡椒です」

えっ?胡椒を使ったかな?

「どこからどう見ても花粉症だよ、カンナちゃん」

和服姿の『蘭雅』の「若」が、気の毒そうに言ったが吉塚さんは首を横に振った。

「そうだよ。病院に行ったらどうだい?今日は早めに店を閉めていいからさ」

「・・・違います。風邪の引き始め」

若は大袈裟に仰け反って、「そっちの方がマズイだろ?移るし」と言ったが、吉塚さんは「もう大丈夫なんで」と相手にしない。ここで病院に行ったら「花粉症に負けた気がする」のだそうだ。

「往生際が悪いなあ、吉塚くん」

吉塚さんは口をきかなくなった。黙々と調理を続けている。フライパンからはふわりと醤油と生姜の香りがした。僕は話しを変えようと、若に話し掛けた。

「若にはアレルギーはないんですか?」

「俺?女アレルギー」

「女は、俺も」と吉塚さんが会話に加わり、「あははっ」とマスク越しに乾いた笑い声を響かせる。


 商店街の中でも老舗中の老舗の呉服屋『蘭雅』の「若」こと、福富廉慈(ふくとみれんじ)はそれを聞き、手を叩きながら豪快に笑った。

「あははっ。俺も航くんみたいに素直で美人の恋人が欲しいよ。でも、もう女はいらない。男がいいや!」

「ダメですよ!若には跡取りが必要なんですから、可愛い彼女を見つけて結婚してください」


 若と吉塚さんは同じ歳だ。

吉塚さんは『ひいらぎ』で働き始める前は《エクート》で働いていたのだが、結婚を約束していた女性にカフェの開業資金を持ち逃げされた過去がある。しかも開業資金に、と借金したのがまだ全額返済には至っていない。

 若はつい最近まで付き合っていた恋人の裏切りに気付き、別れたばかりだ。

「早く跡取りを」とご両親にせがまれて、彼女にプロポーズしようとしていた若。でも若は、偶然彼女が他の男と腕を組んで歩いているのを見てしまったのだそうだ。

それが原因で別れてしまったんだけど、若はサバサバしていて「彼女は商店街のおかみさんをやれるタイプじゃなかったから好都合だ」と言ってたっけ。それは強がりだったのかな?


「えーっ、嫌だな。俺、どうせなら航くんがいいな」

「俺も」

なぜか吉塚さんまで同意した。

「綺麗だし」

「うんうん」

「初々しいし」

「うんうん」

「はにかんだ顔とか、クるんだよな」

「うんうん、わかる」

調子に乗った2人の会話に、我慢出来ずに家永さんが割り込んだ。

「コラーッ!2人とも航を見るんじゃない!航、すぐにギャラリーの方に移動してくれ。ここにいたらこいつらの穢れた眼差しに晒されてしまう!」

それを聞いた吉塚さんが、ボソッと呟いた。

「いいじゃないですか。俺たち、航くんに癒やしを求めてるだけですって」

「癒しだなんて!止めてくださいよ!」

「ほらほら!可愛ーいっ!俺、マジで航くん希望!」と、若が手を上げた。どう考えても冗談なのに、家永さんは若の上げた腕を掴んで下ろさせる。

「航にちょっかい出すんだったら、若も出入り禁止だからな?吉塚くんも辞めてもらっていいんだぞ」

「へーっ、良いんですか?」

吉塚さんも強気だ。チャチャッと炒め物をしながら、家永さんを睨む。

「家永さん!何を言ってるんですか!冗談ですからね!吉塚さん、辞めないでくださいよ。若も、ちゃんと食べに来てください!」

「あははっ。慌てちゃって!可愛いなあ、航くんは。家永さんが羨ましいよ。金を持ち逃げしたりしない誠実な恋人が俺も欲しいな」

「俺も。航くんなら着物も似合いそうだし。どう?うちで働かないか?ここの倍出してもいいぞ?」

「引き抜き反対!」

恋人に逃げられてもう3年になるのに、吉塚さんはまだ引き摺っている。家永さんは「引き摺っているのは借金だけだ」と言うけれど、吉塚さんは深い所でキズ付いていて、なかなか修復出来ずにいるのだ。

時々預金通帳を見て溜息を吐く吉塚さんが立ち直るには、まずは借金が終わらないと無理だと思う。返済日が来るたびに彼女を思い出すんだから。

「はい、お待たせしました!豚の生姜焼き定食」

「お~っ!待ってました!」

若は嬉しそうに箸を手に取った。生姜と醤油の香りがふわりと香って、美味しそうだ。

「若」

「何でしょうか?」

「ここ、カフェなんですけど?」

「だから?」

「ハンバーグとかオムライスとか、メニューにある物を注文してくださいませんか?」

家永さんが真面目な顔で言った。

「飽きた」

「・・・飽きた?」

「はい。美味いんだよ、ここの生姜焼き」

「それ、元々は俺らのまかないだったんですが?」

「いいじゃないか。美味いもんは美味いんだよ」

若の前には、普段僕たちがまかない用に使うご飯茶碗に白ご飯を、スープカップに味噌汁がよそってあるのが置かれた。それを見た家永さんは、吉塚さんに向かって「どうしてあの茶碗を使わせるんだよ?」と聞いた。

「お客さま用のご飯茶碗はないですから」

お客さまにお出しするように、丸い皿にご飯をよそえば良いんだけど。

「これじゃ、まるで若がうちのスタッフみたいじゃないか?」

「おっ!いいね、それ。雇って、家永さん」

「嫌だ」

「いいじゃないか?俺、営業は得意だぞ。それからパソコンとか!チラシとか作れるぞ。どうだ?即戦力って事で!」

楽しそうに家永さんをからかう若。家永さんと若は気が合うのだ。

「和服も飽きたし!俺もそのお揃いのエプロンしたいなあ~!」

「若はさっさと食って店に帰れ。大体、うちのランチの時間は終わってるんだぞ?」

若にわざと腕時計を見せて、今が午後3時を過ぎている事を確認させている家永さん。大人気ない。

「俺、朝から営業に出ててさ。航くん、悪いね。時間外で」

若は全く「悪い」とは思っていない。

「いいえ!いつも来てくださってありがとうございます」

「そうですよ。材料余ってたんで」

吉塚さんも迷惑とは思っていない。勿論、僕も。

「弁当でも買って来て自分の店で食えよ?」

「そう堅い事を言うなって!ちゃーんと愛しの航くんに、お土産を持って来たじゃないか?」

「シュークリームを頂きましたから!」

「それはどうも・・・ってさ、『愛しの』は余計だからな」

「それよりも家永さん」

「はい?」

「ギャラリーの方に戻ってくださいよ」

「航?」

「展示作品の入れ替え中だから、家永さんがいないと困ると思うんですけど?」

「・・・はい」

家永さんは若と吉塚さんを睨みながら立ち上がった。

 『ギャラリーひいらぎ』は、春と秋には作家さんにお願いして作品を全面的に入れ替える。今日がその日で、ギャラリーには作家さんが何人も集まっていた。

家永さんは『ひいらぎ』のランチの時間が終わる頃にまかないを食べに戻ってきた。そして彼の休憩時間が終わる頃、若が来て家永さんは座りなおしたのだった。

ギャラリーのインテリアも『ひいらぎ』も春仕様に模様替えだ。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

ここにもいたね「若」www

すみません。日高ボンヤリしているので、一つの話に集中出来なくなってます。色々書き溜めてる物をマゼマゼしてUPしております。読み難いですよね。ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!

   日高千湖

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コメント
No title
お、なんか久しぶりの家永&航カプですね!
幸せそうでほのぼのします~
若と吉塚さん、この二人の恋の行方が気になりますね。
くっついちゃうのかな?
それとも・・・

春は恋の季節だけど花粉症の季節でもあるんですよねぇ・・・
恋とは見事に無縁な私ですが、花粉には好かれて困ってますΣ(´Д`;)
2018/03/25(日) 00:52 | URL | にゃあ #-[ 編集]
Re: にゃあさま~いらっしゃいませ♪
にゃあさま~いらっしゃいませ♪

> お、なんか久しぶりの家永&航カプですね!

そうなんです~航くんなんです。

> 幸せそうでほのぼのします~
> 若と吉塚さん、この二人の恋の行方が気になりますね。
> くっついちゃうのかな?
> それとも・・・

えええっ!2人もそちらへ(笑)
どうなるでしょうね?ふふふっ

> 春は恋の季節だけど花粉症の季節でもあるんですよねぇ・・・
> 恋とは見事に無縁な私ですが、花粉には好かれて困ってますΣ(´Д`;)

花粉症デビューの吉塚くん。そしてここの「若」は『ひいらぎ』は毎日お花見状態でーす(笑)
日高は今年は花粉にはあまり関係ないというか、ズーーーッとアレルギー中なので(笑)薬を続けて飲んでいたからでしょうね。杉にはご縁がなかったような気がします。ある意味ラッキー?

しか~し!集中力がない(笑)一つの話を集中して推敲してUPというのがキツイんですよね。飽き性だからかしら?それで推敲が上がったものからUPしております。ゴチャゴチャしてて読み難いですよねwww

こんな感じですが、よろしくお付き合いくださいませ。コメントありがとうございました!
2018/03/25(日) 10:24 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/03/25(日) 20:43 | | #[ 編集]
Re: 鍵コメ・Aさま~いらっしゃいませ♪
鍵コメ・Aさま~いらっしゃいませ♪お喜び頂けて嬉しいです♪

すみません、色々書きたくなる病に罹っているのでこうなってますwww集中力がなくてですね。

頑張って更新しますんで、よろしくお願い致します。ちょっとストライキしたい気分の日高ですので(笑)ボチボチUPとなりますが、応援してやってくださいね!

コメントありがとうございました!
2018/03/25(日) 23:07 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/03/25(日) 23:46 | | #[ 編集]
Re: 鍵コメ・Lさま~はじめまして♪
鍵コメ・Lさま~いらっしゃいませ♪

いつも応援してくださってありがとうございます!初コメ、ありがとうございます!

「待つ夜ながらの有明の月」から読み始めてくださったんですね!ありがとうございます♪ テルも成長しまして、働き者で助かっております。
おおっ、全話読破してくださったんですね!すごい~~~!日高も時々読み返すんですが、誤字や誤打が多くてwwwお恥ずかしい次第です。見つけたらすぐに直すんですが毎回∑(゚□゚;)ガーン(。□。;)ガーン(;゚□゚)ガーン!! です。

うちの子たちを愛して頂いて本当にありがとうございます!

日高も人間ですので、リアル~な世界に生きているわけです(笑)まあ色々ありまして、いつブログを辞めてもおかしくないのですよ~。ですから、そういう事もあるよ?という事ですよね!

拙いお話しですが、「楽しみにしている」とおっしゃって下さる方がいらっしゃるうちは何とか頑張ろうと思っておりますので、応援してやってくださいね♪よろしくお願いいたします!

ビギさんでしたか~♪沼へようこそ~(笑)日高は田舎住みですので細々と応援しております次第です。

またお気軽に遊びに来てくださいね~コメントありがとうございました!
2018/03/26(月) 07:15 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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