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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

華恵の夢は夜開く・4~コーヒータイムは百薬の長【後編】

「こんにちは~っ!」

張り切って《花信風》の事務所のインターフォンを鳴らすと、顔を引き攣らせながら西谷ちゃんが鍵を開けてくれた。西谷ちゃんは鍵を開けた瞬間、ピューッと後ろに吹っ飛んで行ったの。

まるで出会いがしらにゾンビに遭遇した人みたいじゃないの。失礼ね。

「は、華恵ちゃん、い、いらっしゃい」

貼り付けたような笑顔で挨拶する西谷ちゃんは、はるか彼方後方。それだけ離れてりゃ、ゾンビでも遠慮するわよ。


 アキにお許しをもらって、私はダンボール箱を抱えて《花信風》に行ったの。

《花信風》は木々に囲まれた一軒家を改築して造られた店。店全体がしっとりとした品のある店なの。アキが言うように、顧客リストには政治家や政財界の大物、芸能人や文化人も多いのよね。

ショッキングピンクのジャージでは「出入り禁止」と言われたから、ヴァイオレットのジャケットにしたわ。西谷ちゃんにあげようと思って、ポケットには飴ちゃんをたくさん。それなのに西谷ちゃんは、私には近寄ろうとはしないの。

私を人攫いのように思ってるわね、この子。

「何よ~?そんなにビビらなくてもいいじゃない?」

「す、すみません。ど、どうぞ」

西谷ちゃんは私には決して後ろを取られないように、ジワジワと移動している。しかもご丁寧に両手で前を覆ってるし!お子ちゃまのクセに無駄な知恵が付いちゃって。

「今日はピンクのジャージではないんですね?」

「そうなのよ。ピンクのジャージはアキに禁止にされちゃったの」

「そうですか。でもそのジャケットもかなり派手ですけど・・・」

「なによ?ピンクジャージじゃないからいいの!」

「は、はいっ!華恵ちゃん、今日のジャケットもお似合いです!」

「そう?ありがとう!」

可愛い西谷ちゃんをハグしようと一歩前に出ると、西谷ちゃんは三歩下がる。

「逃げないでよ」

「いいえ!佐井さんから、華恵ちゃんの半径1メートル以内には近付かないように、と言われていますから」

「佐井ちゃんもケチね」

「佐井さんはケチじゃないです!」

あら、ムキになって可愛らしいこと!

「あら~『可愛い子にはハグしてキス』は『S-five』では常識でしょ?社訓よ?知らないの?」

「知ってます。でも、そう言われた時は、華恵ちゃんは『S-five』の社員じゃないと言え、と言われてますから!」

西谷ちゃんは胸を張った。

全く!佐井ちゃんったら!佐井ちゃんは、可愛い西谷ちゃんに注意事項を教えてから出掛けたようね。

でもここで強く出て、佐井ちゃんにまでヘソを曲げられてここも出入り禁止になったら、華恵の素敵なコーヒータイムがっ!

ここは我慢よ、華恵。可愛らしい雛鳥のお尻を狙っちゃダメッ!

私はウズウズしている手に、そう言い聞かせたの。


「冷蔵庫はここです」

「ありがと~っ!重かったわ!」

ダンボール箱を置いて冷蔵庫を開けると、中にはプリンとショートケーキ。細い竹筒に入った水羊羹にコーヒーゼリー、柑橘系のゼリーまであるわ。

「あら?これはなあに?美味しそうじゃないの!」

「そ、それはその・・・三木店長と佐井さんが、僕のおやつに買って来てくれるので・・・。浜嶋料理長が作ってくださったり、その、華恵ちゃんも食べて良いですよ」

「本当!?嬉しい~!」

「どうぞ!」

西谷ちゃんはニコニコしながら私が缶コーヒーを冷蔵庫に並べているのを見ているの。おやつを分けてくれるなんて、優しい良い子だわ。

彼が上京して来てもう何年経つかしら?今一つ、田舎臭さが抜けない所が可愛いわよね。

「へえ!これが噂の華恵ちゃんシールか」

西谷ちゃんはそーっと後ろから近付いて、缶コーヒーを手に取り眺めている。

「そうよ。西谷ちゃんも飲んでいいわよ」

「僕は結構です。佐井さんから絶対に飲むな、って言われてますから!」

「チッ」

西谷ちゃんは、舌打ちした華恵のことを目を丸くして見た。

「あら、ごめんなさい。お下品だったわ。ここではお上品に、だったわね」

「はい。よろしくお願いします。あの、僕は庭に水を撒いてきますから!」

「そう?頑張って」

「はいっ」

西谷ちゃんは楽しそうに庭に出て行ったの。


 裏庭には陶器製の椅子とテーブルが置いてあって、ここに店が出来た時にはまだ馴染んでなかったビオトープもすっかり自然な感じで。いいわあ~、和むわ。

あら~美味しそうな西谷ちゃんのお尻ちゃん。

西谷ちゃんは楽しそうにホースを延ばして、水撒きを始めた。ホースの先から水がシャワーのように出てきて、陽の光が当たると綺麗な虹が出来上がる。西谷ちゃんはそれを見て、まあ楽しそうに笑いながら庭木に水を撒くの。

「あら~、虹が綺麗だわ」

庭の早咲きの桜は濃いピンク色の花を咲かせている。庭の隅には黄色い菜の花がゆらゆら揺れて・・・。春だわ。

「春ねえ・・・可愛いお尻ちゃん。ムラムラしちゃうわ」

西谷ちゃんの無邪気な様子を見ていたら、華恵のアンテナちゃんがムクムクと・・・。

「ああ、いけないわっ!佐井ちゃんに見つかったら、華恵の憩いの場がなくなっちゃう」

気分を落ち着かせようと、華恵は缶コーヒーを開けたの。

「冷たい」

よーく考えたら、冷たいのよ。

そうよ!《325》はテルちゃんが気が利くから「華恵ちゃん、温かいコーヒーをどうぞ」と言って淹れたてのコーヒーを出してくれていたし、嘉美ちゃんも冬はスタッフの残りを飲ませてくれていたわ。

「西谷ちゃん、まだ冷たいコーヒーの季節じゃないのよ」

若いからかしら?気が利かないわね。

しかも西谷ちゃんは、この寒空に楽しそうに水を撒いているのよ。

「全く。お子ちゃまなんだから!」

しばらくすると水撒きに飽きたのか、西谷ちゃんがホースを片付けて事務所に戻ってきた。

「はあっ、楽しかった!」

やっぱり楽しいのね。まだまだ子どもだわ。

「お疲れさま」

「いいえっ!」

「西谷ちゃん、寒くなかったの?」

「えっ?全然、寒くないです」

「本当かしら?ホッペが赤いわよ?」

「そうですか?」

西谷ちゃんが頬を気にしたのか、顔に手をやってパチパチと叩いている。その姿の可愛らしい事!なんて無防備なの?

ちょっとだけなら、いいかしら?可愛い桃尻ちゃんをピラ~ッと触るだけ・・・。

「西谷ちゃん、温めてあげましょうか?」

「へっ?」

華恵はゆっくりと立ち上がって、ラグビー選手も顔負けな勢いで西谷ちゃんにタックルしたの。

「わっ、わーーーっ!」

「いただきっ!」

細い身体がグワンと後ろに傾き、倒れそうになる西谷ちゃんをしっかりと抱き止めて、可愛いお尻ちゃんをグワッと掴む。キャ~~~ッ、ムニュムニュだわ!桃ちゃんよっ!

「ギャーーーッ!」

「どうせ叫ぶんならもう少し色っぽく叫びなさいよ。相変わらず色気がないわね!」

桃みたいにプリッとした弾力のあるお尻ちゃん。うん、揉み心地も悪くないわ。

「や、やめ、て~っ!誰か助けて~!佐井さーーーんっ」

「無駄よ。観念して華恵お姉さんにお尻ちゃんを揉ませなさいっ!」

「ギャーッ」

西谷ちゃんをホールドしたまま壁に追い込んで、可愛いお尻ちゃんをタップリ堪能しようと思ったの。これくらいならOKでしょ?これ以上のオイタはしないんだから!

西谷ちゃんがギャーギャー言ってる間に、華恵は音速で立派になった下半身のアンテナちゃんをグイグイ擦り付けたの。

うわ~ん、可愛いっ!

「だずげでーーーっ」

油断したわ。折角の小鳥ちゃんだったのに、鍵を掛けなかった華恵のミスよ。ガシャッと音がして事務所のドアが開き、「こんにちは」とアキが顔を出したの。

しまった。

「た、助けてくださーいっ!山下店長!」

「華恵!」

地獄の底から響くようなアキの怒声。怒ってるわ・・・。

「ごめんなさいっ!これは出来心で」

「放せ」

「は、はいっ!すみませんっ!何もしてないから!」

涙目になった西谷ちゃんを、アキは自分の背中で隠したの。

「してただろう!?」

「してないわよ!華恵のアンテナちゃんがチョッピリ反応したからグリグリしただけ」

華恵はすでにションボリになったアンテナ付きの腰を、クイッと前に突き出して見せたの。それを見たアキは、鬼のような顔で怒鳴ったわ。

「この強姦魔!」

「違うわよ!酷いわ!強姦魔だなんてっ!華恵はただグリグリするのが好きなだけで・・・」

「華恵っ!」

「はいっ!」

「出て行け」

うわっ・・・こういう時のアキは本気で怒ってるのよ。

「だって・・・外は寒いから・・・」

「知るか。俺の顔に泥を塗りやがって・・・わかってるのか?」

ますます怒らせちゃった・・・。

「はいっ!わかっております!」

「何をやっていた?」

「すみません!西谷ちゃんのお尻ちゃんが可愛らしかったので、どれくらい色っぽく、美味しく、成長したか確認中でした!」

「余計なお世話だよ!」

アキは持っていたアタッシュケースを振り上げた。

「いや~ん!ぶたないでっ!出来心なんです!もうしません!」

「いいか?万引き犯もスリも痴漢も、捕まったらみーんなそう言うんだよ!」

「華恵を万引き犯と一緒にしないでぇ~!」

「出て行けっ!」

物凄い剣幕で、アキに追い出されちゃった。

窓の外からそーーーっとトントンしてみたけど、アキは無視して中には入れてくれなかったの。風邪引いちゃう、クシュン。

 
「アキ!」

「まだいたの?」

アキの手には華恵の缶コーヒーが入ってたダンボール箱が。

「ごめんなさいっ!」

「あのさ」

「わかってるの!本当に出来心なの!華恵の手が言う事を聞かなかったのよ!ごめんなさいっ!」

アキは重いダンボール箱を、押し付けるようにして華恵に持たせたの。

「ここではお上品にしろと言ったよね?何だよ?そのヴァイオレットのジャケット!派手過ぎるだろうが!」

「へっ?そこ?」

「違う!純粋な西谷くんにあんな事をしてはいけません。俺は三木くんみたいに甘くないからな?」

「わかってるわよ~!でもね、美味しそうな桃ちゃんだったの!」

「華恵。ここで下品な行動は困るんだが?」

ヤバイ。マジで怒ってる。アキッ、ごめんなさいっ!

「ごめんなさい・・・ここも出禁かしら?」

「当たり前だろ」

「・・・」

「来い」

「はいっ」

「華恵の手が悪いのっ!ごめんなさいっ!」

「信じた俺がバカだった」

「アキッ!」

「寄るなっ!」

「ごめんなさい」

「うちの全スタッフの半径2メートル以内に接近禁止だからな?」

プリプリしながら歩き出したアキのスラッとした足にムラムラしながら付いて行くと、アキは《はるか》のあるマンションの裏手へと進んでいくの。

《はるか》の裏口の鍵を開けて、「入れ」と一言。

「ここで監禁されるのかしら!?」

「・・・マジで閉じ込めるぞ、お前。黙って入れ」

「ごめんなさいっ!冗談よ、冗談!」

「年末に閉店したんだが、掃除するんだ。手伝え」

「はあ?」

「ここでコーヒー飲んでいいから」

「えっ?」

「冷蔵庫はいらないな?」

「はい」

「ここで我慢しろ」

「アキ」

「何だよ?礼はいいぞ」

「違うの」

「何だよ?ハッキリと言え」

「イケメンは?」

「・・・そんなもん付いてくるかっ!」

「そうよね・・・そうよね。贅沢よね」

アキは眉間に皺を寄せて睨むの。そりゃ、もう、鬼も逃げ出すくらい怖い顔で。

「しばらくはここで我慢しろ。タダで貸してやるから」

ここなら自分のマンションで飲むわ・・・。

「ありがとう」

鍵を渡されて仕方なく受け取ったけど、ここで飲んでも楽しくないわよ。

「はあっ・・・」

「ここも2、3日に一度は内見希望者がいるから、俺が掃除に来てるんだよ。明日からはお前のコーヒータイムに来てやるから」

「アキッ!」

ハグしようとしたけれど、さすがはアキ。長ーい足が華恵に向かって伸びてきたわ。アキの足は見事に華恵の腹に命中。

「ギャッ」

腹を押さえて蹲った華恵に、アキは冷たい声で言い放ったの。

「いいか?半径2メートルを忘れるな」

「・・・はいっ」

華恵は涙目になりながら、素直にお返事。

でも、今日から毎日アキの顔を見ながらここでコーヒータイム♪それもちょっと素敵。


 まあ、良かったのか悪かったのか。私は元は《銀香》だった店で出勤前にコーヒーを飲ませてもらってるんだけど・・・。

アキは厳しいの。排水溝の掃除や業務用換気扇の掃除、シンクや配水管の掃除まで、ありとあらゆる掃除を華恵に手伝わせるのよ。

時々、油断したアキのお尻をピラ~ッと撫でて箒で打たれることもあるけれど、それはそれなりに楽しいじゃない?

「今日の掃除、終わり」

「あ~っ!今日も大変だったわね!ねえ!もうないわよね?掃除する所は?」

「あるさ。ここには熟年離婚された酒井さんが住んでたんだぞ?あの人さ、奥さんに逃げられてここに住んでただろ?掃除もろくに出来ない人なのにさ。よく飲食業やろうと思ったよね。風呂場とか凄い事になってるんだよ。明日からはトイレと風呂だ」

「・・・ねえ、アキ。『滝山クリーン』に頼んだらどうかしら?プロならこれくらいは一日でチョチョイのチョイよ?系列会社だから安くしてくれるんじゃ・・・」

「華恵ちゃん」

「はい」

「経費節減。これくらいなら俺らでやれるでしょ?」

「はい」

「ここでコーヒーを飲めるんだから、文句はないよね?」

「はい、ありません」

そうね。アキにも会えるし。ここは我慢するしかないわ!

 こうして私とアキはここに通い続けて、お掃除を続けたの。頑張ったわ。筋肉痛との闘いよ。

えっ?入居者が決まったかって?ええ、勿論よ!華恵の奮闘のおかげでね。でもね、華恵はまたコーヒータイム難民になってしまったの。

どこかにいないかしら?掃除が出来るオカマにコーヒータイムを提供してくれる素敵なイケメン。随時募集中です。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ♪

久々の華恵ちゃんでした~♪かなり前に書いていたのですが、ずーーーっと過去記事になってましたwww漸く陽の目を見ました作品です。お読み頂きありがとうございました!

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