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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

青い朝・14~『待つ夜ながらの有明の月』番外編

 《有明の月》の店長として最後の日を迎えた。

俺が《SUZAKU》以外の店を担当したのは、ここが初めてだったので思い入れもある。ここは輝也と初めて一緒に仕事をした店でもあった。

勿論、輝也は《SUZAKU》を手伝ってくれていたから「初めて」ではないかもしれないが、オープンスタッフとして一緒に店を創り上げた「仲間」としての輝也は初めてだったのだ。

《有明の月》が自分の手元から離れてしまうのが悲しい、というわけでもないが前日飲み過ぎてしまった俺。出勤時間になってもボーッとしたままで、輝也を迎えに来た伊織くんに同乗させてもらって店に到着した。

別に自棄酒というわけではなかったが、皆から「自棄になっている」と言われて腹立たしかったわけだ。断じて自棄酒ではなかったのだが。


「大丈夫なの?圭介さん」

「全然、大丈夫」

「顔、青白いよ?酒臭いし」

「仕方がないだろう?心配するな」

車を降りると輝也が追い掛けてきて、事務所の鍵を開けてくれた。

「大丈夫?」

「遅れるぞ。早く行けよ」

「じゃあ、帰りはタクシーを使いなよ?」

言われなくても帰りはタクシーです。

「そんなに心配なら、迎えに来てよ」

「無理です」

「即答しなくてもいいじゃないか?」

「俺、今夜は遅くなるんで」

「三木くんに言っておいて。俺の輝也を働かせ過ぎじゃないか、って」

「またぁ!それよりも、今日で最後なんだから頑張ってくださいね」

「はい、はい」

「圭介さん、『はい』は1回だよ?」

ドアの前でそんな遣り取りをしていると、中からドアが開いた。小鳥居だ。

「うわっ!ビックリした」

「小鳥居、おはよう」

今日も無表情だ。小鳥居には是非、輝也の天然の輝くような笑顔を見習って欲しいものだ。

「小鳥居さん、おはようございます」

「おはようございます」

「早いじゃないか?」

「橋本店長もお早いですね」

いや、いつもの時間だし。

「・・・まあ」

もう引き継ぐ事もないし、今日は俺は来なくても良かったんじゃないだろうか、と卑屈になりながら「一応、今日まで俺が店長だし」と言った。まるで負け惜しみだな。

輝也はそれを聞き、懸命にフォローする。

「圭介さんは二日酔いなんです。ご機嫌ナナメなんですよ」

機嫌が悪いだけで今のは嫌味ではないのだ、とわざわざ説明してやらなくてもいいのに。

「余計な事は言わなくてもいいんだよ」

どうせ酒臭いから、飲み過ぎたのはすぐにバレるって。

「確かに顔が青白いですね」

「まあね。元々色白なの」

輝也は笑いながら、「圭介さんって、グアムでもサイパンでも、全身真っ黒の服を着て日傘まで差してるんですよ」と言った。そんなに気を遣わなくてもいいんだよ。

「へえ。それでよく草むしりとかやりますね」

「それは、痛って・・・」

俺は隣にいた輝也の脇腹を、肘で打ち黙らせた。「草むしりはいつもサボってやらないんですよ」、なんて言ったら俺の面子が丸潰れだろうが。

「日焼け止めを塗って、帽子とタオルで日除けしてやってるんだよ」

「そうなんですね」

「圭介さんは、陽に当たり過ぎると肌が真っ赤になって水ぶくれが出来ちゃうんですよ」

「そうですか。橋本店長の手首は血管が透けて見えますからね」

「そうなんですよ」

なぜか自慢げな輝也。

「でも日焼けするのが嫌なのに、どうしてグアムに行くんですか?」

輝也の喜ぶ顔が見たいからだよ。

「テル、遅れるぞ」

「あっ!伊織さんを待たせてるんだった!じゃあ、よろしくお願いします!」

「はい。お任せください」

いや、任せられても・・・。

「ごめんね!圭介さん。じゃ、俺は行くよ」

「気を付けてな」

「ありがとう」

いっぱしにスーツで出勤するようになった輝也は、笑顔で車に戻った。頼もしくなった輝也が車に乗ったのを確認してから、俺は事務所のドアを閉めた。

「仲がいいですね」

「まあ、一応」

「輝也くんとは歳が離れているんですね」

「まあね」

「彼、モテるでしょう?」

「小鳥居」

「はい」

「今日はよくしゃべるな」

「そうですね」

小鳥居は笑顔だった。

「かなり人間らしくなってきたじゃないか?」

「元々人間ですが」

「アンドロイドかと思ってた」

「プッ」

「お前、優秀だからさ、もう引き継ぐ事はないんだよね。ただ」

「はい」

「お前が無表情だと、周りが気を遣うだろ?まあ、俺も機嫌が悪いと気を遣わせてるんだろうけどさ。みんな慣れてきたらお前の仏頂面も平常運転だと気付くと思う。だが、顔を営業用と事務所用で使い分けんのやめろ」

「・・・はい」

事務所でも無表情だから、アルバイトの学生の中には「小鳥居には話し掛けにくい」と言う者もいる。

「笑うの難しい?」

「はい」

「無理して笑えとは言わないけど、フォローしてくれる部下は持てよ」

「・・・はい」

「厨房に行ってくる」

「はい」

小鳥居は目を伏せて頭を下げた。

小鳥居が笑うのが苦手なら、そういうのが得意な補佐を置けばいい。サボリ店長には働き者のしーちゃんがいたように、仏頂面の店長には笑顔の副店長、だね。


 ランチタイムが終わり、最後のお客さまを送り出してからスタッフに挨拶をした。小鳥居に裏の合鍵を渡して、ロッカーの中の私物を取り出す。

礼装用の黒いスーツにパーティー用のスーツ。シャツが数枚。靴。コートに、夏用のシャツとアンダーシャツの替えとか、昼寝用のブランケット。帽子に日傘、UVカット加工の上着とか。

俺はどれだけの物をここに詰め込んでいたんだ?自分でも、どうしてここに入れたのか理由を忘れてしまっているような物もある。レインコート、新しいノートが2冊。文庫本。

テンちゃんのアフリカ土産のお面はいらないからゴミ箱へ。ニューヨークで買ってきてくれた古いレコードは《SUZAKU》の壁に飾るつもりだった。忘れていた。

「あっ、このネクタイ。ここに落ちてたんだ」

結構、カオスなロッカーだ。輝也が《325》に異動してから、ここは無法地帯だな。

「小鳥居」

「はい」

「ダンボール箱はないか?」

「探してきます」

「ごめん」

チビ軍曹・しーちゃんにガミガミ言われながらも放置してしまったからな。とりあえずここを空にしてしまわないと、山下くんに叱られる。

 俺はロッカーに詰め込んでいた荷物を全て出し、小鳥居が見つけてくれたダンボール箱に適当に詰め終えた。

小鳥居はチビ軍曹が乗り移ったかのように雑巾を準備し、ロッカーの中を丁寧に拭いてくれた。しーちゃんとの違いは、黙ってやってくれる点。仕上げに新しいタオルでロッカーを拭き上げてくれた小鳥居の印象は、最初と比べるとかなり変わった。

「ありがとう」

「いいえ。帰りはタクシーですか?」

「ああ、そうだけど」

「俺が送りましょうか?」

「えっ?ああ、うん。車なのか?」

いや、別にタクシーでいいんですけど。

「はい。いつもは電車なんですが、帰りに寄る所がありまして」

小鳥居は俺が纏めたダンボール箱を持つと、さっさと事務所から出て行こうとする。

「あ、待て!明日取りに来るから!」

今日持って帰らなければならないような大事な物があるわけではないのだ。なくても何とでもなるんだから。三木くんか山下くんに頼んでおけば、そのうち持って来てくれるのだ。

「俺も休憩時間なんで。お送りしますよ。どうぞ、ご遠慮なく。俺も橋本店長とお話ししたいので」

いや、ご遠慮しますって!

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

圭ちゃん、ご乗車くださーい♪小鳥居に振り回される、圭ちゃんも新鮮だわ。ちょっとわけがわからない人同士の絡みって、不毛でしょうか?

   日高千湖

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コメント
No title
日高様~~~きゅうきゅううっ(≧∀≦)

小鳥居君、なんかミステリアスな人ですね。
何を考えているのかつかみにくい。
急に圭介さんに心開いたような感じだけど、何があったのかしら。
圭介さんと輝君のこと、知ってるはずなのに?
ムムム・・・何を話したいんでしょうね。

黒川氏も謎に満ちた人だけど、また彼とは違うタイプですね。
色んな人がいるから面白いわけだけど。
まあちゃんとか(笑)
まあちゃんの店長さんもなかなか想像できなくて面白いわ(≧∀≦)

花粉、今日も絶好調でした。
早くこの時期が過ぎ去ってほしいです~
2018/03/31(土) 01:12 | URL | にゃあ #-[ 編集]
Re: にゃあさま~いらっしゃいませ♪
にゃあさま~きゅうっきゅきゅっ♪

いらっしゃいませ~♪
小鳥居くんは不思議ちゃんですね。
つかみにくい人同士が絡んでますから、ますますわかり難い(笑)

> 急に圭介さんに心開いたような感じだけど、何があったのかしら。

懐かれてしまった圭介。戸惑いの方が大きいですwwwどーして俺に懐くの?

> 圭介さんと輝君のこと、知ってるはずなのに?
> ムムム・・・何を話したいんでしょうね。

お天気とか?

> 黒川氏も謎に満ちた人だけど、また彼とは違うタイプですね。
> 色んな人がいるから面白いわけだけど。
> まあちゃんとか(笑)
> まあちゃんの店長さんもなかなか想像できなくて面白いわ(≧∀≦)

黒川も微妙な人ですが、小鳥居は更にわからないかもwwwまあちゃんが店長さん。歩合制にするとガンガン働くかと思われます(笑)

> 花粉、今日も絶好調でした。
> 早くこの時期が過ぎ去ってほしいです~

花粉は目に見えるわけではないけど、見えるような気がしますねwww外に出るといきなりクシュンですよ。
昨日は風が強くて、強く吹くたびに近くの桜の木から花びらが一斉に散っていました。綺麗でしたよ。満開はまだのようですが風の所為で散り方が激しいです。

花粉の時期が早く過ぎ去って欲しいですね。お大事に!!コメントありがとうございました!
2018/03/31(土) 07:19 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/04/04(水) 07:39 | | #[ 編集]
Re: 鍵コメ・M-さま~いらっしゃいませ♪
鍵コメ・M-さま、いらっしゃいませ♪

すみません、ご心配をお掛けしました。家で色々ありまして、なかなか浮上出来ませんでした。気分がドロドロしているのにハッピーなお話は書けませんので。

修正していてもイラッとしてしまうんで、お休みしました。やはり、気分が乗らないとですね。

漸く気持ちも落ち着いてきましたので、ボチボチやっていこうかと思います。今後ともよろしくお願い致します!

やめる時はちゃんとすべて完結してからやめますので(笑)

お優しいお言葉ありがとうございました!コメントありがとうございました!
2018/04/04(水) 15:12 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
拍手鍵コメ・Rさま~いらっしゃいませ♪
拍手鍵コメ・Rさま、いらっしゃいませ♪

読み返してくださってありがとうございます!

章太郎のイメージはなかなか良くなりませんね(笑)彼は真っ直ぐなので、薫の為ならエンヤコラなのです。

他は目に入ってません。とりあえず、目先の(薫の)事をなんとかしたらOK、てへっ。という感じ。

悪いヤツではないので(笑)むしろ一直線な子ですから、放置でお願いします。

テルが泣くたびに泣いていては、身が持ちませんよ~!しかし、あの頃のテルは本当に可哀相な子ですよね。←おい

圭介は扱いに慣れていないと大変そうです。テル、ちゃんとコントロールしてよね。

お休みばかりですみませんでした。ボチボチ頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。

拍手&コメントありがとうございました!

2018/04/04(水) 15:28 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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