『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

青い朝・16~『待つ夜ながらの有明の月』番外編

 黒川嘉美は仕事終わりにもかかわらず、颯爽と《SUZAKU》に現れた。

黒いスーツにシルバーのチェックのネクタイ。仕事中はオールバックにした髪の一筋さえも崩さないのだが、今は仕事終わりだからか前髪が微妙に崩れているのが色気を醸している。

黒川は不思議な男だ。いつもクールで冷ややかな笑みを浮かべているかと思えば、妙に人間臭くなったり。彼が慌てる姿を見た事がないが、見たくもない気もする。

常に斜め上を見て、斜め上に進んでいる感じがするのは俺だけではないはずだ。


「圭ちゃん、お疲れさまです」

黒川にしては機嫌が良い。カウンターの一番端の席に座ると、すぐにタバコを取り出して口に咥えた。俺はチェイサーと灰皿を黒川の前に置き、ライターを手に取った。

「お疲れ」

黒川はライターごと俺の手を握り引き寄せると、俺の目を見ながら火を点けた。

「俺、禁煙中なんだけど」

「冗談だと思ってました」

「ベニ、黒川の前に扇風機を置け」

「あははっ。吸えなくなるよ」

「煙は上に向かって吐けよ」

「メンドクサ」

黒川は見せびらかすように火の点いたタバコを俺の前に突き出した。白い煙がスウッと換気扇の方へと昇っていく。

「ホーント、大人気ないな。お前」

「で?ご用件は?」

「いきなりそれ?いつものでいいのか?」

「ええ。俺も一応忙しいんで。面倒臭そうな話しなら、チャッチャとお願いします」

薄笑いを浮かべた黒川は俺の用件がわかっているんじゃないか、と思う。勘だけは恐ろしくいい男だから。

「忙しくても俺が呼べば来てくれるんだ?」

「勿論ですよ。圭ちゃんの事は大好きですから」

「嘉美ちゃん、大好きだ」

「圭ちゃん、人間が丸くなりましたよね」

「そう?元々、丸いけど?」

するとベニちゃんが横からチャチャを入れた。

「店長は丸くなり過ぎてコロコロ転がって、あっという間に消えるのが得意ですが、何か?」

「ベニ、煩い」

ツルツルの頬っぺたをギュッと抓り、ベニちゃんを脇に除けた。

「痛ーいっ!暴力反対!」

「サボリとどっちが良い?」

「どっちも嫌だ」

「働け、青少年。ボックス席で手が上がってるぞ」

「ふんっ」

ベニちゃんは抓られた頬を擦りながらホールに出て行った。


「全く。いつまで経ってもガキなんだよな」

「可愛いからいいじゃないですか?」

黒川の目線がベニちゃんに付いていく。

「あのさ。可愛いで通用するのはあと2、3年だぞ?」

「圭ちゃんが甘やかすからでしょう?」

「俺かよ?」

「ええ」

するとカンタが横から、「俺もそう思います」と言った。カンタは黒川のブランデーを準備して前に置いた。

「圭介さんは過保護ですからね。テルにしろベニちゃんにしろ。俺だけですよ、構ってくれないの」

『過保譲』は認める。

「カンタも構って欲しいのか?」

「勿論ですよ。まあ、俺に昇進の話なんか来ませんけどね」

黒川は、わざと落ち込んだ表情を作ってみせたカンタに追い討ちを掛けた。

「カンタ、知ってるか?お前の昇進の話しが出ると、毎回圭ちゃんが全力で阻止してるんだぞ」

「マジか?」

カンタは大袈裟に驚いて俺を睨む。カウンターの客は、「圭ちゃんらしいな」とか「パワハラだ」と一斉に俺を批難した。

「おい、黒川。笑えない冗談は言うな。みんなが本当だと思うだろうが」

「あははっ」

「ベニに関しては仕方がない。俺が甘やかしてるからな。そのうちどこかに異動するだろうから、その時には大いに反省してもらうさ。山下くん辺りにタップリとしごかれればいいんだよ」

「あははっ。ベニちゃんもお気の毒に。ところで用件は?」

黒川は遠慮する事もなく、煙を吹き出した。禁煙中の俺はその煙を近くにあった新聞でバタバタと扇ぐ。

「黒川、減給処分にするぞ」

「どうぞ」

黒川は涼しい顔をして煙を吐き出し、ニヤニヤしながら俺を見る。

「ホント、お前は山下くんの言う事しか聞かないんだから」

黒川は目を上げて、クスッと笑った。

黒川は昔から山下くんのシンパだ。社長よりも山下くんを優先するから、信吾さんも面倒な事は全て山下くん経由で伝える事にしている。

「山下店長に言われても禁煙だけはしませんよ」

「いや、わからん」

「無駄ですって。山下店長にも何度か禁煙しろと言われましたけど、無視してますから」

「あーっ、わかった!禁煙する自信がないんだろう?」

「その気になったらすぐにでも止められますよ。そう思わないだけです」

「じゃあ、やってみろよ?」

「嫌です」

「可愛くないな、お前」

「禁煙キャンペーンやってもすぐに失敗する圭ちゃんよりはマシだ」

ああ言えばこう言う黒川を睨んで、俺はヤツを手で追い払うような仕草をした。

「もう、お前は帰れ」

「帰っても良いんですか?」

天邪鬼と話しをするには飲まないとやってられない。グラスを準備して氷を入れブランデーを注ぐと、ピキピキと氷にひびが入る音がした。

「帰るな」

「今夜は圭ちゃんの奢りね」

「ああ」

黒川は「いただきます」とグラスを掲げた。右手にはタバコ、左手にはロックグラスが様になる男はそうそういない。

「で、話しは?」

「小鳥居だよ、小鳥居」

「小鳥居、ねえ」

珍しく黒川が首を捻った。

「嘉美ちゃん、どうやってあいつに合わせてやってたんだ?」

黒川はブランデーグラスをカランと鳴らした。

「どうやって?俺はいつものとおりですよ。部下が変わったからといっていちいちそいつに合わせてやる程、暇人じゃない。俺に合わせられないヤツは要らないんで。山下店長に言って即、異動ですよ」

確かにね。黒川は自分のペースを崩しはしない。もしかして小鳥居"が"合わせてやっていたのか。

「あいつ、変だろ?」

「うーん、ムッツリスケベ」

「仕事は出来るんだが、常に無表情だし」

「笑わないし、無駄口も叩かない。でも仕事は捗りますよ」

黒川は笑いながら相槌を打った。

「客に見せる表情とスタッフルームでの表情のギャップが半端ないし」

「あー、わかる」

「だが文句は言えない。仕事が出来るから」

「ははっ」

「俺は引継ぎだけだったからいいんだけどさ、《有明の月》のスタッフは困ってるんだよな」

「でしょうね」

「そこの所、どうだったの?」

「どうって?」

「だからさ、副店長としてのスタッフからの評判は?」

「評判?悪くはないですよ。あいつ、人見知りなんですよね。そのうちしゃべるようになると思いますけど?」

「人見知り?確かに笑うのが苦手だ、とは言っていたな」

「笑うのが苦手なんじゃなくて、人との距離感がわからないんじゃないですかね?」

「距離感?」

「そう。構わないのが一番だよ」

「ふうん・・・。俺、懐かれたんですけど?」

「懐かれた?」

「ええ。水羊羹を買ってきたり、草むしりに付き合ったり。『お綺麗ですね』とか」

あまり表情を変えない黒川が、珍しく目を丸くした。

*****

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ゴールデンウィークも終わりますなあ~日高は半分仕事でしたwww午後から休みという中途半端な感じです。再来週のキスマイのライブを生甲斐に頑張りますっ♪

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