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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

菜虫化蝶・12~『Love me do』番外編

「神さまは不公平だよね」

廉慈さんの手は上へ上へと伸びていく。その指先が星へと届くと信じているかのように思いっきり背伸びして手を伸ばし、大きく手を開いた。

その姿はまるで、星を取ろうとしているかのようだ。

「俺みたいに生まれた時から将来を決められてる人間もいれば、自分の好きな生き方をする人間もいる。どう考えたって平等じゃない」

「不公平ですよね。僕もそう思います」

「子は親を選べない、って言うだろ?逆に言えばさ、親も子を選べないじゃないか」

「そうですね」

「俺は小さな頃から『蘭雅』の跡を継ぐんだ、と言われて育ったんだ。だから『継がない』という選択はなかったんだよな。うちの両親も俺みたいに家出してしまうような息子じゃなくてさ、従順な跡取り息子が欲しかったんだよ」

「そんな事はありませんよ」

そう答えて、僕は自分の両親こそそう思っているだろうと考えてた。

「そうかな?不良より優等生、バカより天才が良いに決まってんだろ?」

「それはそうですけど・・・」

そのとおりだと思う。廉慈さんは俯いた僕に「ごめん!」と謝った。

「謝らなくても・・・。でも、僕には廉慈さんが『蘭雅』の若を楽しんでいるように見えていましたよ」

着物姿で商店街を闊歩する「若」の姿は、いつも粋で格好良いのだ。

「俺が『継ぐ』と言ったら両親は喜んでくれたよ」

ご両親は心配なさっているだろうな。妹さんや親戚の人には会った事はないけれど、皆で集まって廉慈さんを捜しているのかもしれない。

「俺じゃなくても良かったんじゃないかな?」

「えっ?」

「弟でも妹でも良かったんじゃないかな?自分たちの血を引く者であれば誰だって良かったんじゃないのかな?」

「そんな事はないですよ」

「そうかなあ・・・」

廉慈さんはグッと突き上げた手で何かを掴んだ。

「俺、好きな人がいるんだよね」

「・・・別れた彼女、ですか?」

下の方から音が聞こえる。カンカンカンと階段を駆け上がる音。多分、家永さんだ。

「違う」

「別れた理由は、違う人を好きになったからですか?」

「そう」

「そうか・・・。その人って、廉慈さんのご両親が望まない人なんですか?」

「ああ」

「なんとかならないんですか?」

「ならないね」

「諦めるんですか?」

「ああ」

「どうして?」

「どうにもならないから」

廉慈さんは掴んだものを手放すように手を大きく広げた。

「でも」

「わからないかな?」

「わかるわけがないじゃないですか。廉慈さんが好きな人が誰かもわからないのに」

廉慈さんは視線を空から僕に向けた。スッキリした表情。廉慈さんの瞳はとても澄んでいた。

「そうか。わからない、か」

カンカンカンが大きくなる。その音に廉慈さんも気が付いたようだ。階段の方に目を向け、「はあっ」と大きな溜息を吐く。

「俺の目の前にいるじゃないか」

「・・・目の前?」

「そう。俺が好きになったのは航くん、君だよ」

「僕?」

「君だよ。俺はずっと見ていたんだよ、君を」

「・・・」


廉慈さんが好きな人が、僕?

思ってもみなかった告白を聞き、呆然としてしまう。

呆然としながらも、自分がとんでもない事をしてしまった事に気が付いた。彼を連れ戻そうと柄にもない事を考えたからだ。


「俺が君を好きになったのと、君と家永さんが出会ったのと、どっちが早かったのかな?俺が店の事とか考えずに君に声を掛けていたら、チャンスはあったかな?」

「わ、か」

「若じゃない。福富廉慈、だ」

「・・・」

廉慈さんは優しく微笑んだ。優しいけれど寂しい微笑だった。もしそこに高い柵がなかったら、僕は彼にしがみ付いていたかもしれない。あっという間に消えてしまうんじゃないかと思わせるような、そんな悲しそうな笑みだったから。

「廉慈、さん」

「俺を見てよ」

「それは・・・」

「そんな困った顔をするなよ」

困っている。僕は完全に混乱している。まるで自分が「人生の先輩」のような気分で、彼を見つけて説得しようなんて考えていたのだから。

「俺は君を困らせたいわけじゃない」

「そう、ですか」

「勿論だよ」

「でも・・・」

カンカンカンという靴音が近くなる。階段を駆け上がってくる家永さんの荒い息遣いまでもが、途切れ途切れに聞こえてくる。

「保護者が迎えに来たよ」

そう言って廉慈さんが非常階段の方を指差した。僕たちの予想通り、額に汗をにじませた家永さんが駆け上がってくるのが見えた。

「わた、るっ!」

金属製のドアがバンッと大きな音を立てて開いた。血相変えて階段を駆け上がってきた家永さんは、部屋で僕の帰りを待っていたのだろう。髪を洗って乾かしたままで、部屋着の黒いスウェットの上下だ。

慌ててやって来た家永さんを見て、廉慈さんは飄々とした様子で言った。

「早かったね、家永さん」

「なっ、何が、早かった、ね、だっ!みんな、心配してる、んだぞ!」

家永さんの声が夜空に響き渡った。ハアハアと息を継ぐ家永さんは、ツカツカと歩み寄って僕の腕を掴んだ。

「終電、乗れよ」

「ごめん」

僕の顔を見て安心したのか、家永さんはすぐに廉慈さんの方に向き直った。

「若。心配させるなよ」

「心配しなくてもいいのに」

「バカ、言うなっ!」

「あははっ」

廉慈さんは家永さんには興味がないかのように背を向け、柵に捉まった。

「早くお姫さまを連れて戻れば?」

「お前も一緒に帰るぞ」

「帰りませーん」

「いい加減にしないか!」

家永さんが僕から手を放して廉慈さんの腕を掴んで振り向かせた。

「何だよ?」

「何だよ、じゃないよ。商店街中が大騒ぎだぞ?」

「航くんから聞いたよ。だからなに?」

「おいっ!若!」

「はん」

「その態度は何だ?人が心配してやってんのに!」

「家永さん、そんな言い方」

「航は黙ってろ」

「心配して頂かなくても結構です。俺には俺の考えがありますから」

「若!」

「家永さん!」

僕は家永さんと廉慈さんの間に割って入った。

「航」

「廉慈さんには廉慈さんの考えがあるんだよ。ねっ?廉慈さん、気が済んだら戻るでしょう?」

「知ーらない」

廉慈さんは悲しい顔で微笑んでみせた。

*****

不定期更新中にもかかわらず、ご訪問ありがとうございます!

すみません。仕事のピークは過ぎたんですが、日高の気力は戻りませんwwwボチボチ更新してますので、ボチボチ遊びに来てくださいね~♪

なんて言ってるけどRentaで「5人の王」を借りてしまったイケナイ大人でした。スマホはいかんぞwww

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コメント
あああ、やっぱり・・・
日高様ぁ~~~きゅっきゅきゅっっ♪

若旦那、やっぱり航のことが好きだったのねぇ。
ひょっとしてそうなのかなと思ったけど、なんだか切ない。
航は家永さんとラブラブだし、どのみち後継ぎの立場だと男と恋愛するのはきついし。
家出したくなる気持ちもわかるってもんですよ。
しかも、よりによって航に見つかって諭されてるし。
踏んだり蹴ったりですね(^ ^;)

若旦那にも幸せが訪れる日は来るのか?
誰か良い人と出会えるといいな。
跡取りは別に若旦那の子供じゃなくても、兄弟姉妹の子でもいいわけだしね?

追伸:「5人の王」読んだんですね~どうでしたか?
私はどうもイマイチでした~(^ ^;)
2018/05/09(水) 02:38 | URL | にゃあ #-[ 編集]
Re: にゃあさま~いらっしゃいませ♪
にゃあさま~きゅうきゅきゅっ♪

> 若旦那、やっぱり航のことが好きだったのねぇ。
> ひょっとしてそうなのかなと思ったけど、なんだか切ない。

あははっ、そうなんですよ~。わかりました?

> 航は家永さんとラブラブだし、どのみち後継ぎの立場だと男と恋愛するのはきついし。
> 家出したくなる気持ちもわかるってもんですよ。
> しかも、よりによって航に見つかって諭されてるし。
> 踏んだり蹴ったりですね(^ ^;)

そうですよね。航くん的にはピンときてやって来たわけですが(笑)慣れない事をするもんじゃない。

> 若旦那にも幸せが訪れる日は来るのか?
> 誰か良い人と出会えるといいな。
> 跡取りは別に若旦那の子供じゃなくても、兄弟姉妹の子でもいいわけだしね?

しかし彼を取り巻く状況もそれが容易ではないわけですね。まあ、彼も色々あるようです。

> 追伸:「5人の王」読んだんですね~どうでしたか?
> 私はどうもイマイチでした~(^ ^;)

読みました~というか、ファンタジー大好きなので以前は本を読んだんですが途中でギブしたんですよね。一昨年くらいからマンガになってて、それを3巻まで読みました!本の方はタイムリープが始まったあたりから???でしたので。

最後まで納得出来なかったのがルリさんですかね(笑)セージは最後の最後までアホっ子貫くし。ちょっとは賢くなれや。幼い頃から虐げられていたわりには、すぐに人を信用してしまう所がイマイチ。(いやアホ過ぎる)妹愛MAXで突き進むのはいいんだけど「思い留まる」という言葉を進呈したい(笑)

しかーし!マンガを読んで青の王のドSっぷりにドはまりしました。(なぜだろう?)結局、小説の方ももう一回読んだんです。しかしマンガで読むと印象も違って読み易いですね。Rentaでマンガの4巻を待ちます!外伝の方が好きかも。

コメントありがとうございました!
2018/05/09(水) 07:25 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/05/09(水) 21:47 | | #[ 編集]
Re: 鍵コメ・Aさま~いらっしゃいませ♪
鍵コメ・Aさま~いらっしゃいませ♪

家永、早すぎましたか(笑)メッチャ頑張って階段を駆け上ってるんですが(笑)
若との秘密の時間も終わりですね~ふふふっ

航くんの二股はOKなんですか?家永が向こうから睨んでますよ?コワイ、コワイ!

Aさまが意外にも若を推しておられるのでビックリしてます。
まあ、その前に航くんが「うん」とは言わないような気がしますね。

急に寒くなって、コタツを放置しててラッキーって感じですよ。←日高、忙しくてコタツはまだ出しっ放しですwww

Aさまもご自愛くださいませね!お返事が遅くて申し訳ございませんでした!!コメントありがとうございました!
2018/05/10(木) 22:38 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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