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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

青い朝・19~『待つ夜ながらの有明の月』番外編

 山下くんがくれた胃薬を飲んでから《SUZAKU》へと移動した。サッパリとした飲み口の胃薬で、モヤモヤとしていたものがスッキリした。

親子丼と蒸しパンは美味かったが食べ過ぎた。ああ、それにコーヒーの飲みすぎだな。胃薬のおかげか、ストンと胃が軽くなったような気がして急に腹が減った。

途中でパンを買い、ベニちゃんとしーちゃんには甘そうなカスタードクリームと林檎のコンポートが入ったデニッシュとメロンパンをお土産にした。自分とカンタたち、《325》のスタッフには牛すじカレーパンとハムとチーズのパン、それとフレッシュトマトが入ったハムのサンドウィッチだ。

「おはよう」

「店長、おはようございます」

嗅覚の優れたベニちゃんが、俺が持っている袋を目掛けて走ってくる。俺ではなく袋を見ている所をみると、ベニちゃんも小腹が減っているようだ。

「はい、これ。お土産のパンだよ」

「わあ!店長、熱でもあるの?お土産なんか買って来て」

ベニちゃんは箒を横に置くと、すぐに袋を開けて中を見ようとしている。甘そうなパンを見て、さっそく袋の中に手を入れようとした。

「ベニちゃん、ありがとうが先でしょ?」

「そうだった。ありがとうございます」

「それと、掃除が終わってから食え。これは《325》に持っててってくれる?甘そうなのはしーちゃんに。あとは適当に分けてくれって言って」

「はーい!」

ベニちゃんは袋を持って《325》へと駆けていく。俺はベニちゃんが放置した箒を持って、店の方を覗いた。

「カンタと鶴ちゃんも食べなよ」

仕込みを始めていた2人は「はーい」と返事をして作業を続けていた。切りのいい所までやってしまうつもりだ。俺は《325》におつかいに行って戻らないベニちゃんの代わりに、事務所の掃き掃除を続けた。


 掃除が一段落してコーヒーが出来上がった頃、カンタと鶴ちゃんが手を拭きながら事務所に入ってきた。

「店を開ける前に食べなよ」

「ありがとうございます」

俺はコーヒーに牛乳を入れて飲みながらカレーパンを食べたが、どうも胃の調子が良くない。胸の辺りを擦っていると、カンタが心配そうに聞いた。

「圭介さん、どうかしたんですか?コーヒーに牛乳入れるとか」

「さっきから胃がもたれてさ。本社でコーヒーばっか飲んでたからかな?山下くんの親子丼食って、蒸しパン食ったら胃もたれ」

カンタと鶴ちゃんは顔を見合わせて呆れている。

「胃もたれなのにどうしてカレーパンなんか食うんですか?」

「食いたくなったんだよ。これを買った時は腹が減ってたんだ」

山下くんのお勧めのカレーパンを食いたかったんだよ。牛すじを一晩煮込んで作ったカレーは香辛料が効いていて食欲をそそる。だが今日の俺の胃袋には似つかわしくないようだ。俺は諦めて半分食べかけのカレーパンを袋に入れた。

「後で食べよう」

「普通、胃もたれの人が油で揚げたパンなんか食いますかね?」

「しかもカレーパンだし」

鶴ちゃんが気の毒そうに言った。

「その時はカレーパンの気分だったんだよ。美味いだろ?山下くんが教えてくれたパン屋さんだからな」

「パンはもちろん美味いですよ。ご馳走さまです」

気を遣ってくれる優しい鶴ちゃんがハムサンドに手を伸ばした。

「店長もサンドウィッチを召し上がったらいかがですか?」

「いや、もういいや。それ、最初に言って」

「あははっ」

「胃に優しいジャガイモのポタージュでも作りましょうか?材料がありますから」

「ありがと、鶴ちゃん」

鶴ちゃんは優しいがカンタは辛辣だ。俺と長年一緒にいるからか、最近特に口が悪くなった。

「無理しない方が良いですよ。もう歳だし」

「煩い、カンタ」

「本当の事なんで」

「あーもう」

俺は胃を擦りながら、救急箱の中から胃薬を取り出した。それを見ていた鶴ちゃんが近寄って来て、俺から救急箱を取り上げた。

「店長、本社で薬を飲んできたんでしょう?続けて飲むのはよくないですよ。もう少し時間をあけましょうよ」

「わかった」

鶴ちゃんが救急箱を閉めた。胃薬を諦めざるを得なくなった俺の次の行動が、カンタにはわかっていたようだ。

「今日は禁酒禁煙ですね。体調不良だから」

「・・・カンタって、山下くんに似てきたね」

「多少は」

「・・・俺、外の風にあたってくるわ」

「はーい」

ふらりと駅前広場に出て、『S-five』ビルの隅の方の出っ張りに座って薄暗くなっていく空を見上げた。いつもよりも強く吹き付けてくる風が心地よくて、胃の不快感を緩和してくれる。

温かいジャガイモのスープでも飲めばスッキリするかな。それとも炭酸飲料の方がいいかな。ポケットに手を突っ込むと小銭が手に当たった。

「炭酸水、買おう」

シュワシュワの炭酸水を飲んだら、胃がサッパリするに違いない。


 開店と同時に客が入り始めて、大忙しというわけではないがずっとバタバタしている。俺の胃は炭酸水で洗い流されたかのようにスッキリした。だがスッキリ感はその時だけで、すぐにモヤモヤが戻ってきた。

時々胃を擦りながら、カウンターに座った常連客を相手に話しをしていたから、カウンター内ですれ違う時などにカンタが「大丈夫ですか?」と心配して声を掛けてくれる。

「一杯付き合ってよ、圭ちゃん」

「今夜はカンタ先生に禁止されてるんですよ」と、シェイカーを振っているカンタを親指で差した。

「どうしてだい?」

「店長は胃の調子が悪いんです。俺が頂きますよ」

「そんなに悪いのか?圭ちゃん」

俺はカンタを睨んだ。客に心配させるような事を言うんじゃない。

「一杯くらい平気ですよ。頂きます」

カンタが怖い顔をして睨むので「一杯だけだよ。付き合わないと悪いだろう」と納得させて、カンタと2人一杯ずつご馳走になった。まあ、これが間違いの元だったんだけどね。

 
「圭介さん、胃は?」

休憩に行こうとする俺に、カンタが聞いてきた。何度も聞いてくるから、かなり心配してくれているのだ。

「ああ、もう大丈夫」

「本当ですか?」

「おう」

カンタはこんなに心配性だったかな?

「なに?俺、顔色悪いの?」

「いいえ。圭介さんって、ちょっとどこか痛いと『テルを呼べ』とか、『テルがいないからよくならない』とか煩く言うんで、いつも仮病じゃないかと思うんですけど、こんなの初めてだったんで」

カンタ、一言二言多いぞ。

「いや、痛くないって。モヤモヤだから」

「同じですよ。もう酒は飲んじゃダメですよ。タバコも」

「OK。休憩行きます。薬、飲んでいい?」

「酒を飲んでるからダメでしょう」

「・・・それ、早く言えよ」

事務所に入って胃を擦りながらソファーにゴロンと横になった。

「あーっ、胃だけ取りたい」

原因は酒の飲み過ぎというわけでもないな。例の会議に行かなかった一件以来はセーブしてたし。親子丼は量が多かったわけではない。いつもと同じだ。

蒸しパンか?シンプルな蒸しパンは甘さ控え目で、サツマイモもホクホクだったし・・・。胃に悪そうな物は食べてないんだけどな。酒は一杯しか飲んでいないし、昼に薬を飲んでから6時間以上経っているわけだし。

「飲もう」

不快なまま店に立つのは精神衛生上良くない。俺は飲みかけの炭酸水で胃薬を飲んだ。

 休憩が終わり、ベニちゃんと交代した。胃薬と炭酸水のダブルでスッキリした俺は、カンタが止めたにもかかわらずビールを開けた。

「やっぱり、炭酸が一番効くね」

「圭介さん、ビールは止めましょうよ」

「大丈夫だって」

「知りませんからね」

「はーい」

「いらっしゃいませ」

ベニちゃんの声で顔を上げると、スーツ姿の小鳥居が見えた。

「小鳥居だ」

「懐かれてますね、圭介さん」

「懐かれてますねえ。どうしてでしょうねえ?今日は差し入れに胃薬でも持ってきたかな?」

「あははっ、それはないでしょう。今の圭介さんに胃薬が必要だとわかってるなら、完全にストーカーですよ」

「ははっ」

真っ直ぐにこちらへ来る小鳥居は、確かに微笑んでいる。思ったんだけど、あれはプライベート小鳥居のMAXの笑顔だ。

「こんばんは」

「お疲れさま、小鳥居」

「また来てしまいました」

「こっちは大歓迎だよ。ただし、うちは忙しくなったらカウンターに入らせるからな」

「えっ?そういうシステムなんですか?」

「当たり前。黒川は自主的にカウンターに入るぞ」

だからあいつは、自分が機嫌が良い時にしかここには来ないんだよ。

「わかりました」

この俺が、忙しい時に従業員をノンビリと座らせておくかよ。

 カンタが冗談めかして「差し入れは?」と聞くと、小鳥居は「それもシステムですか?」と真顔で聞いた。

「カンタ、からかうな」

「すみません。冗談です」

「ああ、良かった。今日は何もないんですよね。橋本店長の好みがわからなかったんで」

「あっそ。じゃ、何か奢って」

「いいですよ」

「圭介さん」

カンタが睨んだが、ビールを一本飲み終えた頃には胃の不快感もわからなくなっていた。

*****

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6月ですよwww日高家の庭には紫陽花が12本あるんですが、その中の名前もわからないピンクちゃんが元気に咲いています。花が咲き過ぎてるので、午後3時になったら一斉にションボリしてしまう(笑)

梅雨入りしたわりには雨が少ないので、朝夕の水撒きに20分掛かります。頑張るwww

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