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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

青い朝・20~『待つ夜ながらの有明の月』番外編

 あー、頭痛い。俺、いつ寝たんだっけ?

薄く目を開けると、ボンヤリと薄明かりが見えた。隣には輝也が寝ている。俺はそう確信して輝也に手を伸ばして、その身体を引き寄せた。

「テール」

「・・・」

人肌に安堵して、俺は目を瞑った。まだ朝じゃない。



「・・・あぁ・・・だるい」

目を覚ました俺は身体に乗ったダウンケットの感触を確認して、ここが自宅ではないと気が付いた。タバコの香りがしみ付いたダウンケットとシーツの感触には覚えがあるから、ここは怪しい場所ではない。

手を伸ばしてみるとシーツに人肌の温もりが残っている所がある。輝也だな。俺はさっき輝也を引き寄せて抱き締めたのだ。俺はシーツに這わせるようにして手を大きく動かし輝也を探した。

輝也が迎えに来てくれたのかな?でも、ここはマンションのベッドルームじゃない。ここはどこだ?

「あー、もう。ここ、どこ?」

喉に何かが引っ掛かったような感じだった。重い瞼を開くと、自分の部屋ではなく《SUZAKU》の事務所だとわかる。

「ああ、まだ店か」

自分がまだ《SUZAKU》にいて、大人しくベッドで寝ていた事に俺は安堵していた。だが、どうやってベッドに入ったかは記憶が確かではない。シルクのシーツの感触を全身で感じているわけだから、いつものように裸で寝ているのも確かだ。

事務所の出入り口の間接照明だけが点いている。カンタが俺が寝たのを確認して、あそこだけ点けたままにして帰ったに違いない。

だが輝也の返事はない。さっきのは夢だったのか・・・。

気が利くカンタよ。ついでに輝也に連絡してくれてれば最高だったんだけどな。

「ああ、もう・・・」

久し振りにやらかしたな。相当酔っ払ってても、フラフラしながらマンションに帰るんだけど。

輝也が起きて待っているかもしれないのに・・・。

「あっ」

そうか、ここに迎えに来ないって事は輝也は部屋で寝ているのだ。昨日もバタンキューだったからな。目が覚めて俺が帰宅していない事に気が付いたら迎えに来てくれるかも。

「はあ・・・っ」

服はベッドの下かな。

「も、いいや。胃がムズムズする・・・喉乾いた。テールーッ」

俺は自分の状況をボヤいた。ついでに輝也を呼んでみた。

すると足音がして誰かが近付いてくる。俺は輝也だと確信して、ベッドに引き摺り込もうと腕を大きく延ばして広げた。

「大丈夫ですか?」

は?輝也の声じゃない。

「えっ・・・誰?」

あるはずのない返事が返ってきて混乱した。あれ?ここは《SUZAKU》で、輝也がいる。いや、違う。

確かにベッドには人が寝ていた形跡があった。だってここ、温かいもんな。俺はさっき人肌の温もりが残っていた場所を探った。うん、確かにここは温かい。もう少し先は・・・うん、冷たい。

じゃあ、ここにいるのは誰だ?

カンタは残ってくれるほど親切ではない。ベニは「サービス残業は致しません」と言うと思う。鶴ちゃんか?彼はカンタよりも親切で優しいからな。

「鶴ちゃん?」

「水、持ってきますね」

この声、鶴ちゃんではない。でも、聞き覚えはある・・・?まさか・・・。

「小鳥居?」

喉が塞がったままで声が裏返った。

「はい。そうです」

えっ?どうしてここにいるわけ?ちょっと待てよ。

ほんの数時間前の記憶をかき集めたが、記憶はなかなか戻ってこない。優しいカンタくんは小鳥居には「帰れ」と言わなかったのか?

まだ状況が飲み込めない。

「カンタは?」

「帰りましたよ」

「ベニは?」

「帰りました」

「鶴ちゃん・・・がいるわけないか」

あの2人は鶴ちゃんに押し付けて帰りはしないよな。迷わずに輝也に電話するはずだ。

「ええ、帰りましたよ」

だったら、どうしてお前がここにいるわけ?

「お前、どうしてここにいるの?」

「橋本店長がここにいろとおっしゃったんで」

「言ったっけ!?」

いや、絶対に言ってない。小鳥居は嘘を吐いているんだ。

「嘘だろ」

「いいえ、おっしゃいましたよ。お前だけ残れ、と」

「俺、そんな事を言ったっけ?」

すっ呆けてみたが、カンタに聞けば真相はわかるはずだ。多分、言ったな。

「俺が笑わないから飲みながら練習させる、とおっしゃいましたよ」

「そうか・・・。ごめん、全く覚えてない」

小鳥居、嘘を吐いていないか?

こいつに笑顔の練習は必要ない。営業用スマイルに全力だからプライベートは笑わなくてもいいんだよ、もう。一体何を考えてそんな事を言ったんだよ、俺。

「どの辺りから覚えてないんですか?」

「華恵が来たのは記憶にある」

真っ赤なドレスを着た華恵はダルマみたいだった、という記憶がよみがえってきた。

「猛烈な勢いで『ダルマのバケモノは帰れ』とおっしゃいましたよ」

「猛烈な勢いで」って事は、その時にすでに相当酔っ払ってたって事だな。いつもならもう少し穏やかに言うし。

「そうか。それで、何でお前もカンタたちと一緒に帰らなかったんだ?笑顔の練習とかどうでもいいだろ?」

ああ・・・もうヤケクソだよ。

「橋本店長が飲もう、とおっしゃって」

小鳥居はテーブルの上を指差した。ビール瓶とワインの瓶とグラスが2つ。

俺は枕に顔を押し付けて頭を抱えた。酔っ払いの言う事をまともに受け取るなよ。カンタの事だから、「放って帰ろう」と言ったはずだ。

「・・・そういう時はね、小鳥居くん」

「はい」

「帰ってよし」

「ああ・・・。そういうシステムだったんですね。すみません」

今頃か。システムに気が付いた小鳥居の声は、ちょっとガッカリした感じだった。

「とりあえず水」

「はい」

小鳥居は落ち着いた様子で冷蔵庫まで行き、ミネラルウォーターを持ってきた。

「どうぞ」

「開けて」

「はい」

真面目なやつだ。律儀なやつだ。

小鳥居はピキッと音をさせてペットボトルの封を切って俺に寄越した。そしてソファーに置いてあった俺の服を手に取り、また戻ってきた。

俺はその動きを目の端で追いながら起き上がった。頭、ガンガンする。

「お前、ずっと起きていたのか?」

「いいえ。店長が隣に寝ろ、とおっしゃるんで横になりました。店長は裸で寝るんですね」

「ごめん」

あら。もしかして、小鳥居相手にストリップショーしちゃったか?

「いえ。どうぞ」

渡された服はパンツや靴下まで綺麗に畳んである。

「ありがと。お前、見たな?」

「見ました。綺麗な身体ですね」

それはとりあえず隠しましょう。シャツを広げて袖に腕を通した。

「パーソナルトレーナーなら良い人を紹介しますけど」

「ありがとうございます」

真面目くんだ。

「帰らないと」

「送りますよ」

「いや、いい。歩ける」

シャツを羽織ってペットボトルを傾けて飲んだ。傾け方が急だったからか、口の端から水がこぼれる。首筋を冷たい水が流れ落ちて、胸元やシーツを濡らした。

「冷たっ」

「タオル、どこにありますか?」

「ロッカールームの前の棚」

「はい」

色々と頭の整理が付かないが、俺はまだ酔っている。それだけは間違いない。

「どうぞ」

「ありがと」

胸元を拭き、シーツにこぼれた水を拭く。小鳥居は次の指示を待っているのか、俺の動きをジッと見ていた。

「小鳥居、帰っていいよ」

「はい」

「タクシー乗り場にうちが契約してるタクシーがいるから、それを使って。俺の名前を言えばいいから」

「はい。ありがとうございます。そうさせて頂きます」

「じゃ、バイバイ」

「おやすみなさい」

小鳥居の視線が離れて行く。回れ右でソファーに行き、自分の荷物を持った小鳥居が「失礼します」と頭を下げて出て行った。

ピッとロックが解除される音が聞こえ、ドアが閉まると同時にピッと音がしてロックが掛かった。まるで小鳥居のようじゃないか。今の小鳥居はどっちモードだったんだ?

「あー、もう。何時だよ」

壁の時計は4時20分を指している。

「帰るのメンドクサイ」

俺は水がこぼれた部分を避けて、もう一度横になった。頭もスッキリしないし、こういう時は寝るに限る。明日が本社に行く日じゃなくて良かったよ。

次に目が覚めたら帰ろう。そう思った俺は、もう一度目を瞑った。

*****

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2、3日前に書いた「オマケコーナー」が行方不明になりました。誰か知りませんか?←しっかりしろ

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