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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

青い朝・24~『待つ夜ながらの有明の月』番外編

 輝也から連絡がない。マジで怒ってんのか。胃がギューッとなって、握っていたスマホが急に重くなる。

「はあっ」

スマホをテーブルに投げ出して、俺は頭を抱えた。電話するタイミングを考えていたら、タイミングがわからなくなってしまったのだ。

今すぐに電話して素直に「誤解だからな」と言えばいいだけなんだが、すでに遅いような気もする。もしかして目覚ましが鳴った瞬間が、そのタイミングだったんじゃないか?

あっ、待てよ。俺が裸だったから怒ってるのか?それとも小鳥居と一緒にいたから怒ってんのか?それとも、どっちもか?

「店長」

「何だよ?」

「邪魔」

「ベニちゃん、店長に向かって邪魔って、いくらなんでも酷くないか?」

薄情なベニちゃんは、モップで俺の足を退かそうと押してくる。俺がこんない落ち込んでるのに!

「もうっ・・・邪魔ですってば!」

「です、を付けただけじゃないか?」

「敬語だし」

仕方がないから足を上げると、「邪魔です、邪魔です」と言いながら俺の足元にモップを掛けたベニちゃんは、呆れたように両手を腰にあてた。

「さっさと電話したらいいじゃないですか?」

「こうなったのも元はと言えば、お前とカンタが面白がって小鳥居を置いて帰るからだろうが!」

「俺とカンタさんの所為ですか?」

「そうだよ」

「あははっ、テルに嫌われて別れちゃえ!へへへーっ、だっ!」

モヤッとした俺は、ベニちゃんをとっ捉まえてお尻ペンペンしてやろうとしたが、ベニちゃんは素早く後ろに飛び退いて俺の手が届かない所まで逃げた。

「チッ。小鳥居も困るだろうが」

「ぜーんぜん困ってなかったですよ。無表情で、わかりました。任せてください」

ベニちゃんは無表情になって小鳥居の真似をした。

「似てない」

「そうかな?似てると思うけど?」

「クオリティが低過ぎる。大体、お前は何でも雑なんだよ」

「勉強してきまーす」

ベニちゃんはニコニコしながら敬礼してみせた。

「暇人」

「どーせ暇人ですよーだ!」

ベニちゃんは「ふんっ」と怒って、モップを振り回しながら行ってしまった。恋人の木下拓海くんとは休みの日が合わないから欲求不満なのだ。

「はあっ。可愛くない」

「圭介さん」

今度はカンタが店から顔だけ出した。

「おう。なんだ?カンタ」

「もうすぐ店を開けますよ。いい加減にその湿っぽい顔は修正してくださいよ」

「湿っぽいか?」

俺はいつもと変わらないと思っていた顔に手を当ててみた。

「ええ、梅雨前線が停滞して5日連続で雨に降られて洗濯物が乾かない、どうしようと困っている主婦の顔です」

何だよ、その例え。細か過ぎるんだよ。ベニちゃんとカンタ、足して2で割りたいよ。

「・・・はーい」

俺は軽く顔を叩き、気持ちを入れ替えた。客はスタッフの気持ちを敏感に感じ取って、それが売り上げに大きく響くのだ。


 午後6時にオープンしたが、客はすぐには入らなかった。

退屈すると輝也の事を思い出してしまうからいっその事、今、電話しようか・・・。そう思ってスマホを取りに事務所に戻ろうとした時だ。

「いらっしゃいませ!」

入り口に目をやると、入って来たのは清川薫だった。

 薫は「こんばんは」とベニちゃんに笑顔で挨拶している。そしてカウンターにいる俺を見つけると、キッと睨んだ。

怖いぞ、薫ちゃん。

「薫ちゃん、いらっしゃい」

「こんばんは、圭介さん。ちょっといいですか?まだお客さんもいないし。閑古鳥鳴いてますね」

軽ーくぶっ込んできた薫がわざわざここへやって来た理由を考えなければならないほど、俺もバカじゃない。

「ああ。暇だから奥に行こうか?」

「はい」

仕事帰りの薫はスーツを着ている。黒いスーツは薫の清冽な顔立ちを目立たせてしまうが、彼はいつものようにひっそりと気配を消していた。

カウンターで話してもいいけど、薫に酒を飲ませるとますます厄介な事になるからな。危険回避だ。

「仕事、どう?」

「ええ、まあ」

学生時代とは違って、理不尽な事にも「イエス」と言わなければならないからな。薫の表情が僅かに曇った。学生時代は『S-five』が経営する店でアルバイトをしていたが、薫が失敗しても誰も文句は言えなかっただろう。っていうか、薫は失敗するのかな。

バイトの面接すら受けた事がないはずだ。社会の荒波には少々揉まれた方がいいに決まってる。

「コーヒー、飲む」

「はい。ありがとうございます」

大人しくソファーに座った薫は、肩に掛けていた大きなトートバッグを下ろした。バッグが重かったのか、右の肩を上げたり下げたりしている。

「若いのに、お前でも肩凝るの?」

「凝ったというか、重かったんで」

「ああ、そう。仕事、大変そうだね。章太郎がさっさと独立して欲しい、って言ってたぞ」

「それ、毎日言うんで」

「あははっ。信吾さんも怜二くんに毎日言ってるみたいだよ」

聞き飽きた、と言わんばかりの薫は、俺をジッと見つめている。

「まあ、怜二くんは本来なら働かなくてもいいような環境なんで」

「そりゃそうだ」

薫の視線は俺に張り付いたかのように離れない。相当にお怒りだな、これは。

「何か、用?」

用件はわかってますけど、一応聞きます。

「用、って程の事もないんですけど。輝也が落ち込んでたんで」

「電話してきたの?」

「昼休みに」

はあ?

「俺にはなかったぞ」

少々ムッとして言うと、途端に薫は噛み付いてきた。

「当然でしょう?」

「当然か?」

「はい」

薫はムスッとしてソファーに背を預けた。どっしりと構えて、俺を逃がさずに説教するつもりだな。ああ、怖い。怖い。酒だけは絶対に飲ませないぞ。


「どうして裸だったんですか?」

「いつもだし」

「それ、癖だから、とかでは済まされませんからね?」

「仕方がないだろう?俺、記憶飛ばしてるんだ」

「飛ばさないでください」

「すみません」

「いつもテル、テル煩いくせに、昨日に限ってどうして?」

「・・・さあ?」

俺の方が聞きたいよ。

酔ったら必ず「テルは?」「電話して」とか言うのに。

「今日から禁酒でお願いします」

「禁酒はちょっと難しいね」

仕事柄、無理だ。

「禁煙も出来ない、禁酒も出来ない」

「そう言うなよ」

「俺、言いましたよね?輝也を泣かせないでくださいって」

わざわざ文句を言いに来た気持ちもわかる。だが、今回ばかりは記憶が飛んでしまってわからないのだ。俺を睨む薫を睨み返し、開き直って薫の隣に座った。

「俺の方が泣きたい気分だよ」

今朝から反省のついでに一本も吸っていなかったタバコに手を伸ばした。すると薫は俺の手を掴んでそれを止めた。

「全然反省してませんよね?」

「してます」

薫は怖い顔をして俺を睨んでいる。そんなに睨むな、薫。俺も胃の調子が悪いんだよ。

*****

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