『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

青い朝・25~『待つ夜ながらの有明の月』番外編

 久し振りに《SUZAKU》に顔を出した清川薫は、大変お怒りだった。

薫は自分の事に関してはグッと我慢してしまうが、輝也に関して不満があると目を吊り上げて抗議してくる。こんなに怒った薫を見るのも久し振りだ。


 俺だって電話で謝りたかったんだよ。ただ、今朝から忙しかったんだ。チャンスがなかっただけなんだ。薫、そんな顔をして睨むなよ。

「泣きたい気分になる前に、どうして電話しなかったんですか?」

「まあ、そうだけど」

ああ、薫にはわかってるんだよな。全てが言い訳だという事を。

俺自身は今朝の出来事に危機感もなく、そのうちハグしてキスして「はい、お終い!」と考えている事に薫は気が付いているのだ。

電話しなかったのも、輝也から電話があるだろうと思っていたからだ。俺の中を見切っているかのような薫の視線に耐え切れずに、俺は薫の目を避けるように頭をソファーの背に乗せた。

「俺、コーヒー、入れてきます」

俺が「コーヒーを飲むか」と聞いただけでコーヒーが出てこなかったからか、薫は立ち上がってコーヒーメーカーの所に移動した。俺はソファーに背を預けて、違和感を感じ始めた胃を擦る。

精神的なものかな?それとも本格的に病気かな?

きっと輝也欠乏症だ。

「今朝、目が覚めて圭介さんが戻ってきていないのに気が付いて迎えに行ったそうです。それで、小鳥居さんが《SUZAKU》の事務所から出て行ったのを見たんだって」

「ああ、聞いた」

「輝也、前にここで圭介さんがオトコ連れ込んだのを見てるから、それを思い出してショックだったみたい」

「昔の話しじゃないか?」

それって、何年前の話しだよ?輝也と出会ってすぐの事じゃないか?あの頃は俺も荒れてたんだよ、薫。

「その時、ベッドから足が見えて、その足が妙に色っぽかったんだって」

「はあっ・・・昔の事じゃん」

その色っぽい足の持ち主が誰だったかも覚えておりませんよ、俺は。

「だから!そういうの記憶から抜けないんですよ!」

ガシャンと音がした。反省の色がないと思ったのか、薫は自分の分だけコーヒーを注いで戻ってきた。

「俺のは?」

「ご自分でどうぞ」

「お前、相変わらずキツイよな」

「圭介さんは相変わらずユルユルですよね?」

「・・・はあっ。ユルユルって・・・。悪かったな、ユルユルで」

すると薫はキッと俺を睨んで言った。

「下ネタに変換しないように」

「いや、しないって!っていうか、お前が言い出したし!俺、お前がそう言うまで思い付きもしなかったんだからな?」

「・・・」

薫の手元のコーヒーカップから、フワリと香ばしい香りがした。

「なあ」

「何ですか?」

「テルは俺が浮気したと思ってんのか?」

「違うと思うけど、ショックの方が大きいって」

「してないからな?」

「どうだろ?」

「薫」

薫はカップをテーブルに置くと、俺の方に身体を向けた。

「俺は浮気はしてないと思います。もしそういう行為があったとしたら、圭介さんは必死になって『ごめん』を連発してると思うし、今頃ここにはいないと思うんですよね。箱根まで行って山下店長に怒鳴られてると思う」

「ああ、当たり」

「でもここにいて、電話がないとか言って落ち込んでるわけで」

「薫ちゃん」

ああ、泣いて縋りたいくらいだ。俺は大きく腕を広げて薫をハグしようとした。

「寄らないで。俺にハグはしなくて結構」

薫は空振りに終わった俺の腕をそっと掴んで下ろした。

「電話したらどうですか?」

「出てくれるかな?」

「高校生じゃあるまいし」

「輝也には常にフレッシュなんだよ、俺の心は」

「倦怠期かと思った」

「章ちゃんじゃないから」

「章太郎さんも、その、フレッシュです」

薫の頬が赤くなった。

「可愛い」

「可愛いは言わなくて結構です」

「あははっ」

照れ臭かったのか、薫はバッグの中から箱を取り出した。

「何だよ、それ」

「青汁」

「青汁?」

「ええ。これ、毎日飲んでるんですよ。圭介さんにも飲ませようと思って」

「えーっ!」

「さっきから胃を擦ってるから、食べてないのかなと思って」

「で、青汁?」

「はい。日本一苦い青汁」

笑顔で青汁の箱を開けた薫は、持参した豆乳と青汁をシェイクし始めた。


「なあ、これは罰ゲームか?」

「違いますよ。俺も章太郎さんも、毎日飲んでます。薬だと思って、どうぞ」

薫がニヤニヤしている。素面の説教は簡潔でいいが、罰ゲームが待っているとは思わなかった。

「不味いって言ったじゃないか?」

「不味いとか言ってないですよ。苦いだけ」

「苦いのか」

「大丈夫ですよ、慣れれば。さっさと飲んでくださいよ。店の方も忙しくなりますよ」

慣れる前に飲み干してしまうと思うんだけど。

「・・・はーい」

カレーがいつまでも胃に残った感じがして、夜は何も食べられそうになかった。夜は青汁で済ませるか。

「どうぞ。豆乳と混ぜてるから大丈夫です」

「うん」

グラスの中から青汁特有の香りがした。薫を見たが、飲まないと終わらないと顔に書いてある。

「大丈夫ですってば!さっさと飲んで仕事しましょう」

「おう」

抹茶ラテ的な色。

「蜂蜜とか入れない?」

「入れません」

「そうか」

「早く」

「わかった」

これは抹茶ラテだ。俺は薫の目を見ながら、「これは抹茶ラテだ」と繰り返しながら青汁を飲んだ。最初は無理だと思ったが、豆乳の甘さで誤魔化されている気がする。

「大丈夫だったでしょう?罰ゲームなんかじゃなかったでしょ?」

「おう」

俺の息、絶対に青汁臭いぞ。ただでさえシクシクとおかしな感じだった胃もビックリだよ。

「電話、圭介さんからしてくださいね」

「うん、わかった」

「ちゃんと『ごめん』って言うんですよ?」

「はい」

もう、完全にナメられてるな。俺。

「残りはあげますから。コーヒーの代わりに飲んでくださいね」と言って、薫は青汁の箱を俺に渡した。不味くはないが美味くもない。飲むか飲まないかわからない物を渡されて困ったが、ここは薫の笑顔に乗っかるしかない。

「ありがと」

「じゃあ、俺は帰ります」

「車で送ろうか?」

「いえ、結構です。そのまま箱根に行っちゃったら大事なんで」

「あははっ」

「あながち外れてないでしょう?」

「あははっ」

何となく考えを読まれていて面白くなかったが、薫ちゃんなので仕方がない。

「気を付けて帰れよ」

「はい」

薫を裏から送り出して、ホッと一息吐いた。電話で済むのにわざわざやって来るあたりが薫ちゃんだな。

 
 薫が帰ってすぐに輝也に電話しようと思ったが、店を覗くとちらりほらりと客が入っているのがわかった。鶴ちゃんが勤務するようになってからフードメニューが増え、常連客の中には食事を目当てに来る人もいる。そして女性客が増えた。鶴ちゃんが女性好みのメニューを考案してくれるからだ。

「薫ちゃんは帰ったんですか?」

「ああ。早く帰さないと保護者が面倒だからな」

「ああ、上ね」

カンタは天井を指差し、口煩い章太郎の顔を思い浮かべたのだろう。何度か頷いて、「はい、はい」と笑った。

「久し振りだし、一杯くらい飲んで帰ればいいのに」

「カンタ。今日の薫に飲ませるのか?」

「ああ・・・そうでしたね。彼、説教魔でしたね」

「俺の胃が荒れるだろ?」

「そうでした。あははっ」

噂しているのが聞こえたのか、キイッとドアが開き、帰ったはずの薫が再び店に入ってきた。

「薫、帰ったんじゃなかったのか?」

「こんばんは」

薫の背後から顔を出したのは、問題児・小鳥居だった。

*****

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