『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

しっかりしてよ、花岡くん。2

 今日のプレオープンを手伝いに来てくれるのは、輝也と山下店長、三木店長と佐井寺店長だ。明日は黒川店長と《有明の月》の小鳥居店長、圭介さんも来てくれる。

 今日は『S-five』と《インカローズ》の上顧客リストの中から、更に厳選したVIPの皆さんだ。まあ、簡単に言えばお金持ちさんだね。招待した方々だからちゃんとしないと、「今後の《インカローズ》の売り上げに大きく響く」と信吾社長に脅された。

「はあぁぁぁ・・・っ」

「まあちゃん、大丈夫か?」

「だ、大丈夫だよ!」

本当は心臓がバクバクして口から飛び出そうだ。僕の緊張を解そうと、輝也は温かいココアを作ってくれた。

「どうぞ」

「ありがとう」

目の前のココアにはホイップクリームがたくさん乗ってて、ふわふわしてる。でも、ココアは山下店長のが一番なんだよね。

 僕は白いホイップクリームをふーっと少しだけ避けて、ココアを飲んだ。

「あははっ、お髭さん」

「うん」

口の周りに付いたクリームを舌でペロッと舐めた。

「まあちゃん、頑張れよ」

輝也は自分の方が先に店長になったからって、完全に上から目線だ。

「うん、わかってる」

「応援してるからな?」

「うん」

ちゃんとわかってるんだよ。輝也は偉ぶってるんじゃないってこと。

「薫も仕事が終わったら顔を出してくれるってさ」

「うん」

隣に座った輝也が肩を抱き、そっと撫でてくれる。そこからじんわりと輝也の想いとか、薫の想いとかが、僕の中に流れ込んでくる。

「俺も《325》を引き継いだ時、河崎店長に行かないでーっ!と縋りつきたかったよ。頑張らないといけないと思うんだけど、重圧もあってさ。俺を推してくれた河崎店長の顔に泥を塗るような結果だけは避けたかったし」

「うん」

輝也もそんな事を考えていたのか。知らなかったな。何でもないように笑顔でいた輝也。堂々としていたから気が付かなかったけど、本当は輝也もビビッてたんだね。

「その時ね、河崎店長が、自分が育てた店を任せられないような男を推薦はしない。大丈夫だ、って言ってくれたんだ」

「うん」

「嬉しかった。自信がなくてヘロヘロの時に、お前にしか任せる事は出来ないんだぞ、ってね」

「うん。僕もそう思う。輝也は頑張ってたもん」

「えっ、あ、うん、ありがとう。嬉しいよ」

「でもね、今は心臓がバクバクしてて、普通じゃないんだ。もし口から僕の心臓が出てきたら、とりあえず突っ込んでおいてね?」

輝也はちょっと呆れたような顔で頷いた。

「ああ、うん。わかった。突っ込めばいいんだね?」

「冗談だよ」

「俺だって冗談だよ」

「もし本当に出てきたら、救急車呼んでよ?」

「わかってるよ、それくらい」

「うん・・・。ああっ。僕、頭が割れそう。こんな事ならヒロオミさんの言うとおりにしておけば良かった」

僕は頭を抱えた。髪をバリバリと掻き毟りたい気分だよ。それやったらセットし直しになっちゃうからやらないけどさ。

「高田店長?」

「うん。一昨日、急に不安になってやっぱりキリヤさんと交代しようかな?って言ったら、そうしろ、そうしろって」

「ああ・・・反対運動、頑張ってたからね」

輝也は遠い目をした。

 ヒロオミさんは最後の最後まで、僕の《インカローズ》店長就任に反対した。

ずーーーっと、「決裁印は押さない」と言って山下店長を困らせたんだよね。三木店長が「こうなると圭介くんよりも厄介だな」と、暗い顔をしてたっけ。

でも山下店長は、ヒロオミさんの反対運動は全く無視する形で、話しを前にガンガン進めた。山下店長は「ヒロの印鑑はなくても大丈夫だよ。後で押せばいいんだから」、と言って三木店長をギョッとさせた。

《白夜》に何度もやって来て、ヒロオミさんの目の前で《インカローズ》の改装予定図を広げたり、予算がどうのって話しをするから、とうとう2人はケンカになった。ヒロオミさんは山下店長が来ると無視してどこかに行っちゃうし、山下店長は「ここの店長は土師くんに替わったのかい?」と嫌味を言うし。

僕はハラハラしながら2人のケンカの行方を見ていたのだ。

まあ、ヒロオミさんの"大好きなアキ"が最後には勝つのはわかってたんだけど。今回はいつもの『アキが言うなら仕方がない』、を引き出すのにとても、とても、時間が掛かった。

ヒロオミさんは、僕が他のオトコとベタベタしたり、手を握られたりするのを見たくないんだって。要するにヤキモチだね。店が違うから見えないし。見ても見なかった事にすればいいし、そういうのを想像しなけりゃ良いじゃん?

「はあっ・・・どうしよう。僕、毎月売り上げが悪くて、社長と山下店長に怒鳴られるかも!」

「怒鳴りはしないさ」

「じゃあ、毎月売り上げ目標に届かなかったら、僕はどうなるの!」

「キリヤさんと交代だな」

「じゃあ・・・最初から・・・その、交代というわけには・・・」

「何を言ってるんだよ!山下店長がまあちゃんになら任せられると推薦してくれたんだぞ」

「うん」

「それに今日がプレオープンなんだからな?もう案内状も出してるし、あと1時間で開店だぞ?お客さまもお見えになるんだぞ?バカな事を言うなよ」

呆れたように言って、輝也は「はああっ」と溜息を吐きソファーにダランとなった。そんなに脱力しなくても・・・余計に泣きたくなっちゃうじゃないか・・・。

「泣くなよ?」

「うん」

「大丈夫。しっかりしろよ」

「うん・・・でも!」

「何だよ?」

「ヒロオミさん、来てくれない」

「《白夜》にいるんだろ?」

「知らない」

「俺が行って連れてこようか?」

「いい」

「まあちゃん、大丈夫だよ。印鑑、押してくれたじゃないか」

「うん」

念願の《インカローズ》の店長になれて、嬉しいはずなのに涙がこぼれてきた。

大好きだったママに「私の男を盗ったな!」と怒鳴られてアパートを追い出された時。ママが死んで一緒に住んでいた男が、僕を《スプリング》に置いて行った時。男が作った借金を返済し終えた後、優しくしてくれた男に騙されてまた《スプリング》に舞い戻った時。

《スプリング》に連れて来られた薫が毎日泣いていた事。輝也が連れて来られた日の事。

それから、それから、信吾さんと三木店長と圭介さんが《スプリング》にやって来た日の事。そうだ、信吾さんに10万円もらってタクシーで《白夜》に行ったんだ。

あの頃、薫と輝也には借金が残っていたけれど、僕はすでに返済済みだった。でも行く所がなくて、アパートも借りられない状態で。《スプリング》にいればお金も稼げるし、貯金も出来ると思って僕は春日井社長に頼んで茶屋に住まわせてもらっていたのだ。

《インカローズ》に面接に行って、ヒロオミさんとお寿司を食べた。

他に頼れる人もいなくて、何より薫や輝也ともう会えないかもしれないと思うと悲しくて、悲しくて・・・。最高に美味しいお寿司だったのに涙が止まらなくなったんだ。

「・・・お寿司」

「食べるのか?」

「違う・・・」

そうじゃなくて。

「僕、店長になれて、嬉しい。今度、お寿司をみんなにご馳走するね」

上手く言えないけれど、今、僕がこうして《インカローズ》の店長になれて真っ当な生活をしていられるのは、信吾さんやヒロオミさんや、圭介さん、三木店長、それから、それから、みんなのおかげだって事。

忘れていた。

「うん、楽しみにしてる」

ヒロオミさんにも、信吾社長にも、山下店長にも、三木店長にも。圭介さんと章太郎さんと黒川店長と、ええっと・・・とにかくみんなにだ。

「泣くなよ。目が腫れるぞ」

「うん」

僕だけで世界は回っていないのだ。

僕の傍にヒロオミさんがいて。信吾さんがいて、『S-five』があって、輝也がいて、薫がいて。圭介さんがいて、章太郎さんがいる。

 僕は勢い良く立ち上がった。

「僕、ちゃんと立派な店長になるからね!輝也、協力してよ?」

「当然だろ?」

「うん。ヒロオミさんが認めてくれるような立派な店長さんになって、頑張ったねって言ってもらうから!」

「うん。とにかく頑張ろう!今日と明日はマジで大切な日だからな?」

「うん!ありがと!」

今朝、部屋を出る僕にヒロオミさんは、ベッドから「いってらっしゃい」と言っただけだった。
 
*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

5話くらいですので、サクッと終わりますね♪ヒロオミさんはどうしちゃったんでしょうねえ?

1、眠かったから。2、ただの飲み過ぎですよ、奥さん。3、大好きなアキに負けて悔しかったからww

    日高千湖

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コメント
まーちゃーーーーん
大丈夫だよー
まーちゃんは立派な店長さんになれる!!
みんなをびっくりさせちゃうぐらい
売り上げをあげちゃおー
書類はまあ、ヒロオミさんにお任せで(^_^;)

まーちゃん大好きです♪みんなの癒し♪♪

それにしても、まーちゃんを不安にさせるなんて
しっかりしてよ、ヒロオミさん!!
2018/06/26(火) 07:59 | URL | かりん #-[ 編集]
Re: かりんさま~いらっしゃいませ♪
かりんさま~いらっしゃいませ♪

まあちゃんに熱烈応援ありがとうございます!

> 大丈夫だよー
> まーちゃんは立派な店長さんになれる!!
> みんなをびっくりさせちゃうぐらい
> 売り上げをあげちゃおー
> 書類はまあ、ヒロオミさんにお任せで(^_^;)

ええっ?書類?ヒロオミさんは現在ストライキ中なんですけど!

今日のところは輝也にでもやらせるか(笑)by三木店長

> まーちゃん大好きです♪みんなの癒し♪♪

ありがとうございます。彼の言いそうな事を考えながら書いてるんですが、日高も楽しませてもらってます。

> それにしても、まーちゃんを不安にさせるなんて
> しっかりしてよ、ヒロオミさん!!

あれ?タイトルはそっちの方が良かったですよね?あれれ・・・今更替えられないし!ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!!
箸休めもあと3話ですから、よろしくお付き合いくださいませね♪コメントありがとうございました!
2018/06/26(火) 09:10 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
拍手鍵コメ・Rさま~いらっしゃいませ♪
拍手鍵コメ・Rさま~いらっしゃいませ♪

Rさま、お久し振りです~お元気でしたか?読んでくださってて嬉しいです~♪

まあちゃんはまあ、相変わらずです。ヒロオミさんに関しては次話で色々まあちゃんが言っておりますのでお待ちを!!

今夜は圭介をUPの予定です、すみませんっ!!

拍手&コメントありがとうございました!
2018/06/26(火) 22:28 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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