『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

青い朝・33~『待つ夜ながらの有明の月』番外編

 その夜は、病院の狭いベッドに2人で寝た。

特別室だから他の病室に比べればベッドは広いしちゃんとしているが、それでも男2人で寝るには狭かった。だが俺らは抱き合って寝るから、特に文句はない。


 病院の朝は早い。早朝6時過ぎには廊下を歩く音や看護師たちの声、入院患者たちの声が聞こえてくる。輝也は5時過ぎには目を覚まし、ベッドから出てしまった。

「もう起きるのか?」

「病院とか慣れないから、眠れないし」

「まだいいじゃないか?横になってろよ」

俺が手を伸ばすと、輝也は1メートルくらい後ろに飛び退いた。猫かよ。

「ダメ!看護師さんが来ちゃうよ」

「はあっ・・・。福原先生は厳しいですね」

「圭介さんが緩いだけだよ」

昨夜の事で輝也は少々お怒りのようだ。

「そうかな?」

「もう」

輝也は昨日の「先生ごっこ」の残骸をビニール袋に入れた。それでも気が済まなかったのか、自分のカバンの中からもう一枚袋を出してそれに入れ、厳重に自分のカバンの中に入れた。

「飲んじゃダメだ、ってあれ程言ったのに」

「水分はとってもいい、って言われた」

「あれは飲み物じゃないでしょう!」

「でも飲むでしょう!」

輝也は呆れたように俺を見た。

「違う!飲んでも構いません、と言われたのは水だよ!」

そんなに大きな声を出したら、本当に看護師さんが来るぞ。

「たんぱく質」

「もう・・・俺、知らないからね?」

「胃カメラ入れたら、テルの元気なおたまじゃくしたちが胃の中で泳いでるのが見られるかもな!」

「アホなこと言わないでよっ!」

さすがの輝也もアホらしいと思ったのか、本当に深刻に考えているのかわからないが頭を抱えた。そして「もうっ!」と言いながら髪を掻き毟る。

「冗談だよ」

「・・・うん。ごめん」

「今からマンションに戻るのか?」

「着替えないと」

「検査が終わってから一緒に戻ろうよ?」

「でも」

「仕事は?」

「三木店長は休んでも良いって言ってくれたけど、行くよ」

「休んでも良いって言われたんなら」

輝也は俺をキッと睨んだ。固く決心したのか、自分に言い聞かせるかのように大きな声で言った。

「行く!」

いや、大声を出したら看護師さんが来るって。

「あっそ」

「圭介さんの検査が終わって結果を聞いたら出勤するから」

「ふうん。休めばいいのに」

「休めるわけがないじゃないか!?」

部屋に戻ったら、朝飯代わりに輝也をひん剥いてベッドに連れて行こうと思っていたのに。

「山下くんが乗り移ったみたいだ」

「乗り移って欲しいよ!もう!俺は何て事をしてしまったんだ!」

輝也はまた思い出したのか、「わーーっ」と言いながら頭を抱えた。

終わった事を悔いても、仕方がない。

自分だってノリノリで俺の頭を固定して腰を動かしたじゃないか。その結果の、だ。仕方がないさ。輝也も俺を欲していたのだ。本来ならば、自宅のベッドの上でヤってたのをちょっと端折って軽く出しただけだろ?

それにここでコトに及んだわけではない。ただ、輝也のモノがちょっと窮屈そうだったから萎ませただけ。

「後悔しても遅いし」

「でも、胃カメラ!本当に胃の中で動いてたらどうしよう!」

胃の中で精子が動いてるわけがないだろうが。「冗談だ」って言ったのに、真に受けてどうする。

「大丈夫だって。俺、胃酸過多だし。もう酸で溶けてるさ」

「そういう問題?」

「ああ。そういう問題だ」

無責任な発言にガッカリした表情の輝也は、「はあっ」と溜息を吐き遠い目をした。

「ねえ、胃カメラの予約はキャンセルして、明日また来ようよ!?」

「何を今頃になって焦ってるんだよ?大丈夫だよ。あれから何も口にしてないし。それに予約をキャンセルしたら山下くんが飛んでくるからな?理由を聞かれたらテルが説明するのか?2日振りだったんで盛り上がって、俺は若いからメチャ溜まってて、ちょっと圭介さんに処理してもらったんですけど、うっかり口の中に出しちゃって。おたまじゃくしが胃の中で泳いでるのは見たくないからキャンセルしました、って?」

「わーーーっ!うわーーーっ!」

自己嫌悪か、輝也。輝也はわーわー言いながら顔を覆った。

「無理~!どうしよう!」

まだガキだよな。これくらいの事で動揺すんなよ。黙ってりゃわかるもんか。

「じゃ、水でも飲んで薄めておく?」

「・・・その方が、いい、かな?」

薄くなるかな?

「じゃあ、飲もう」

検査の2時間前から水も控えて、とは言われたがそれ以前は特に制限がなかったから飲んでも大丈夫。輝也の気が済むなら何でも飲んでやるさ。

「外、晴れてるのか?」

「えっ?カーテン開けようか?」

「うん」

カーテンの隙間から朝日がこぼれている。僅かな光で、今日の天気が晴れだとわかる。輝也がカーテンを開けると、白々とした朝日と青く澄んだ空があった。

「朝日が昇るね」

「眩しいな。ここ、東向きなんだな」

ビルとビルの間から姿を見せ始めた朝日は、直視出来ないくらい眩しかった。輝也の姿が霞む程の眩しさに圧倒されながら、俺は新鮮な朝の光を全身に浴びた。


 胃カメラの前にしては「ちょっと待てよ」と思える量の水を輝也に渡され、仕方なくそれを全部飲んだ。

絶食なので朝食は出ない。麻酔をしてからの胃カメラなので、眠っている間に検査は終わってしまう。検査室に入る前に手を振ったが、輝也の顔は引き攣ったままだ。

「頑張ってね」

「はーい!行ってきま~す」

検査室に入る俺を見送る輝也の顔は暗かった。


 目が覚めたのは、特別室のベッドの上だった。

「・・・ん」

「目が覚めた?」

「ん・・・だいじょ、ぶ」

「ちょっと、まってね」

「ま、て」

「気分が悪いの?」

「ちが、キス」

「もう!元気だから大丈夫だね!」

輝也は笑いながら、俺の頬にチュッと音を立ててキスをした。素早く離れていこうとするのを捉まえようと手を伸ばしたが、麻酔の所為か寝起きの所為か、俺の手は空振りだ。

輝也は素早く俺から逃れてナースコールを押した。輝也を見ると、してやったり、という顔で俺を見る。『はーい』と天井から声が聞こえ、「目が覚めました」と輝也が言った。

『すぐに行きます』という返事があり、輝也はゆっくりとベッドから離れていく。そんなに警戒しなくても、今はそんな元気はないよ。

 すぐに看護師がやって来て、脈を診たり、胸の音を聞いたり。

「気分はいかがですか?」

「大丈夫です」

「眩暈とか、吐き気とかありませんか?」

「ありません」

「先生から説明がありますから、少々お待ちくださいね」

「はい」

看護師は、「ありがとうございました!」と微笑む輝也を見て頬を染めた。

 片岡先生の診察室に移動し、胃カメラの映像を観ながら詳しい説明を聞いた。

「こことここに胃潰瘍の跡があったが、他に異常はない。胃酸過多は前からだったな?薬を出しておくからな。退院してもいいぞ」

「退院、って。大袈裟だよ」

片岡先生はニヤニヤしながら言った。

「実は病棟の看護師たちが、お前を"退院させるな"と言うんだが。何ならこのまま人間ドッグでもどうだ?一週間くらいいてもらっても構わないぞ?」

「はあ?」

「お前が入院してると、ツバメくんや三木くん、山下くんたちが見舞いに来るじゃないか」

「ああ、それで」

片岡先生の背後に控えていた看護師が、バツが悪かったのかスッとカーテンの向こうに消えた。

「無理」

「そうか。残念だな。特別室が埋まらないから困ったな」

「この強欲医者め」

「あははっ。帰ってもいいぞ」

「言われなくても帰りますぅ」

俺はさっさと立ち上がって出て行こうとしたが、輝也は「ありがとうございました。すみません、あんな態度で」と片岡先生に謝っていた。

*****

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すみません。重病じゃなかったっすwww病人もどき圭介が楽しかったので何話か伸びました。すでに「番外編」じゃないレベルなので、タイトルの「番外編」を取りたい日高なのでしたwww

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