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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

恋とは戦さのようなもの・55

「はっきりさせておきたいのでね」

義道会長は落ち着いた声で答えた。

「はあ?何をはっきりさせるんですか?俺が何をしたって言うんですか!」

「君を陥れようなどとは思ってはいない。我々は事実が知りたいだけだ」

「事実?俺はここでは何もしていない!」

隼人が、隣に座っていた信吾さんに小声で「ここでは、ってどういう事?」と、話し掛ける。信吾さんは蔵野に向かって雑に、「座れ」と言った。蔵野の態度があまりにも悪すぎて、相手にしたくもない、という感じだ。

 蔵野はテーブルをバンバンと叩きながら、「何が目的なんだよ!?」と大声で喚いた。

「これはあなただね?蔵野くん」

義道会長がモニターを指差した。目深に被った帽子からのぞく鼻、口元。間違いなく蔵野なのだが、蔵野は否定した。

「違う」

「そうか。稲村くん、彼は違うと言っているが」

「わかりました。では"違う"という事にしておきましょう」

稲村くんは蔵野の否定を無視した形で次の資料を確認し始めた。

「おい!稲村!何だ?その言い方は!違うと言ったら違うんだよ!」

蔵野は稲村くんにはやたらと強く出る。大学の後輩だからという事もあるが、学生時代の関係が影響しているのだ。だが、稲村くんもあの時の稲村くんではない。

「坂巻議員の後援会長は、こちらの写真を先生にお見せして紺野との関係を切るように進言なさいました」

「へえ!良かったじゃないか。このカメラマンが雑誌社にデータを持ち込めば、坂巻先生はお終いだからな」

「そうですね。ですが、後援会では先生の次期後継者と目されていた男性を推すと決められたようですから」

「何だと?」

「今頃、紺野麻友は坂巻先生に呼び出されているのではないですか?」

稲村くんの挑発的な言葉に蔵野が目を剥いた。

「なん、だと?もう一度言ってみろ、稲村」

「あなたより先に、週刊誌にリークした方がおられたようですよ」

「何だと?もう一度言ってみろ!」

蔵野はガッと立ち上がると、稲村くんの元へツカツカと歩み寄る。

「もう一度言ってみろ、稲村!」

「残念ながら、写真はすでに週刊誌に持ち込まれています」

稲村くんの胸倉を掴んだ蔵野は、稲村くんの身体を揺さぶった。

「クソーーッ!お前か!お前だろう!」

「止めないか!」

一番近くにいた秀人が止めに入ったが、蔵野は稲村くんを壁にドスンと押し付けた。秀人が2人の間に割って入り、蔵野を引き剥がそうとするが蔵野は稲村くんから手を放さない。

「止めろ!稲村くんを放しなさい!」

「お前がやったんだな!」

激高した蔵野は稲村くんを放そうとはしない。信吾さんが駆け寄って蔵野を背後から羽交い絞めにする。それでも蔵野は稲村くんに向っていく。稲村くんはジャケットの乱れを整えながら冷ややかな声で言った。

「私はどなたがそうなさったかなど、存じませんよ」

「稲村!」

「私は後援会の方からお聞きしました。ご自身でお尋ねになったらいかがですか?」

信吾さんと秀人に抑えられて、蔵野は身動きが取れなくなった。だが2人は気が抜けない。少しでも隙を見つければ、蔵野は猛獣さながらに唾を飛ばしながら稲村くんに食って掛かる。

「稲村!お前も、よーく覚えておけよ!容赦しないからな!」

「しかし、蔵野さん」

俺は見苦しい様の蔵野を見ながら立ち上がった。

「なんだ!お前も、お前も、お前も!俺をはめやがったなっ!」

半ば脱げ掛けたジャケット。2人に取り押さえられた状態の蔵野は、上半身だけ前のめりになって吼える。

「落ち着いてくださいませんか?誰かが週刊誌に坂巻先生と紺野さんの密会をリークしたからと言って、どうしてあなたがそう激高なさるのですか?あなたは後援会事務所に現れたカメラマンベストの男は自分ではない、とおっしゃったじゃありませんか?坂巻先生とは《カサブランカ》や《ひかみ》で懇意になさっておられるのかもしれないが、なぜあなたがそれ程お怒りになるのか、私には理解出来ませんね。先生とそれ程深いお付き合いがおありなのですか?」

「なっ・・・」

「私は、あなたがお怒りになる理由がわからない、と申し上げているのですよ」

「そ・・・っ」

蔵野は「チッ」と舌打ちし、俺を睨んだ。そして会議室にいる全ての人の耳に叩き込むかのような大声で言った。

「何もかもでっち上げだ!証拠もないのに嘘八百並べやがって!」

「証拠も何も。私がお尋ねしているのは、あなたがお怒りになる理由ですよ。あなたがご自身で週刊誌に売り込みに行くつもりだったとしたら、謝礼をもらい損ねたと怒るのもわかりますけれど。そうでなければ怒る必要はない。違いますか?」

「・・・俺じゃない」

それまでは狂犬さながらに秀人と信吾さんを振り回していたのだが、蔵野は自らの矛盾に気が付きやっと動きが大人しくなった。

「放せ!」

「あなたは私におっしゃいました。《サラダボックス・B》は良い店だ、と。全国展開も夢じゃない。ビッグチャンスだ、とね」

「だからなんだ!」

「あなたは『S-five』で影響力のある私と組んで、《サラダボックス・B》の出店を加速させたかった。違いますか?」

「ああ、そうだよ!だからなんだよ!儲け話が目の前に転がってんだよ!拾わないヤツがいるっていうのか!?あんたらだって儲かるんだ、文句はないだろうが!」

「あなたの意のままになる建設会社を探し、『K・Uカンパニー』のカフェと同じ手口で利益を貪るつもりだったんですね?それには、建設会社と手を組む必要がある。坂巻先生のお力が必要だった。違いますか?」

「バカな事言ってんじゃねえよ!」

「坂巻先生の弱味を握る為に紺野を先生に近付けた、違いますか?」

「はあ?あの先生の女好きは有名なんだよ!俺は関係ない!」

「先生と紺野との密会現場を写真に撮り証拠を握った、違いますか?簡単な事です。紺野とあなたが通じているのだから、いつどこで2人が会うのかわかっているんですからね」

「俺はやってない!知らない!不当だ!お前の勝手な想像だ!」

「『S-five』を第二の『K・Uカンパニー』にするつもりだったんですね」

蔵野が暴れるのを止めた。やっと冷静さが戻ってきたようだな。

「はあ?ふざけんな!放してくれ!」

そして、秀人と信吾さんの手を振り払う。ジャケットの乱れを直し、斜めになったネクタイを直した。

「あんたの言う事も一理あるな。だが、俺が坂巻先生の弱味を握りたかったとしても、だ。どうしてわざわざ後援会事務所に写真を持ち込むんだ?筋が通らない。俺は帰らせてもらう」

「お待ちください」

「まだ何かあるのか?弁護士を呼ぶ。これは義道会長、隼人社長及び創業者一族によるパワーハラスメントだ」

隼人が「ふん」と鼻を鳴らした。

「あなたは坂巻先生と紺野の密会写真を多数お持ちだ。あれだけではないでしょう?紺野のマンションに出入りする様子や《ひかみ》での親しげな2人。材料には事欠かないのでは?」

蔵野の顔色が変わった。

「紺野の部屋で盗撮された映像もあるようですね。しかも寝室だ」

「はん!趣味の悪い」

「坂巻先生は、以前から後援会会長から紺野と手を切るように忠告されています」

「知らん」

「紺野には、坂巻先生から別れ話があった」

「知らん」

「そこであなたが手を打った。後援会に直接、紺野との密会写真を持ち込んで先生にプレッシャーを掛けた。だが坂巻先生もバカじゃない。あなたと紺野の関係には気が付いておられたようですね」

森実部長が目を伏せた。

「知らん」

「別れる前に適当な建設会社を紹介して欲しいと頼んだが、先生に断られたましたね。そこであなたは、紺野と別れるのなら2人の関係を白日の元に曝す、と脅しましたね?」

「知らん!知らん!知らん!バカバカしい!帰る」

蔵野は出口に向かった。

「帰らせていただく!」

「蔵野部長。お帰りになる前に辞表の提出をお願いします」

寿氏が準備していた辞表を蔵野の目の前に差し出した。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

すみません、ダラダラと蔵野の言い訳が続いていますwww←反省中

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