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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

さよなら三角、また来て四角・32

「リキ」

しょぼくれた様子で2人を見上げた男は、情けない声で久木原を呼んだ。

「ヒロム」

「リキ」

南出の車に寄り掛かってしゃがみ込んでいた男は岩本尋武だった。しょぼくれた顔でこちらを見た岩本には先日のような威勢の良さはなく、うち捨てられた子犬のような様子でこちらを見ている。

岩本が気弱な様子を見せる事は珍しく、久木原は何か大変な事に巻き込まれでもしたのかと心配そうに「どうした?」と聞いた。だが、隣にいた南出が久木原の袖を引っ張った。

それだけでも、自分の甘さが岩本に犯罪を犯させたのだ、と久木原に思い出させるには十分だった。

「どうしてここにいるんだよ?お前に払う給料なんかないぞ?」

久木原はこれまでで一番冷たい声で岩本を切り捨てようとした。

「行く所なんかないっ」

甘えるような、縋るような瞳で久木原を見上げた岩本の表情からは、先日の悪態吐きながら出て行った面影はない。

「彼氏、いるだろ?」

「彼氏じゃないっ」

"彼氏"と聞き、岩本の顔が歪んだ。今にも泣きそうな顔で、「彼氏じゃない」と繰り返して膝に顔を埋める。

「好きな人が出来た、って言って出て行ったのはお前だろう?」

岩本は大きな声で「彼氏じゃねえよ!」と叫んだ。マンションとマンションの間を、岩本の声がこだまする。

「煩いぞ」

「だって!」

「ここは公共の場ですから。時間を考えろ。煩くすんな」

岩本がなぜここに座り込んでいたのかわかった気がした。岩本は顔を上げて久木原を見た。それは久木原が一番見たくない顔だった。

くしゃりと歪んだ口元。困りきった瞳。

その顔を見ればわかる。これから一番聞きたくない台詞を聞かされるのだ。それを思うと気分は鬱々と曇りだす。岩本は上目遣いに久木原を見上げて手を差し出した。

「なあ、リキ。もう一度やり直さないか?俺、ちゃんと働くから!」

それを聞いた南出が、久木原を押し退けて前に出た。

「リキ、さっさと中に入れ」

「だが」

「お前、バカじゃないのか?こいつは泥棒なんだぞ?こいつの話を聞いてやる価値もないんだぞ?」

南出が前に出ると岩本は急に強気になった。

「南出、お前こそ失せろ」

「黙れ。リキにはすでに俺という存在があると知りながら、バカみたいに復縁話をしにきたお前の話を聞いてやっただけでもありがたいと思えよ?」

南出は久木原をドアの方へと押しやった。

「南出とは話してない。俺はリキと」

「話す必要はない。おまえの勝手でリキがどれだけ困ったかわかってんのか?」

「わかってるさ!俺がレジの金を持ち出したから・・・その・・・」

「"盗んだ"だろう?」

「盗んだ」と強調されて岩本は怯んだ。息を飲んで南出を睨み返したが、先程の勢いが萎んでしまった。苦し紛れに口から出たのは反論でもない。

「南出は黙れ」

「黙るのはお前の方だ。帰れ」

岩本は忌々しそうに南出を睨み付けると立ち上がった。そして南出の車の窓をガンッと力一杯叩く。久木原は、南出との仲の良さを勘繰って南出の車を蹴って傷を付けたことを思い出した。

「止めろ!ヒロム!」

だが南出はそれを止めるでもなく冷静に見ていた。

「叩くのは窓だけにしろよ。お前が叩いたくらいじゃ割れないから、叩きたければいくらでも叩け」

「はんっ」

岩本はこちらを見ながらわざと足を上げた。

「窓ならいくらでも叩けよ。だが、防犯カメラは回ってるからな?それくらいはお前も知っているだろう?今度、お前が俺の車のボディに傷を付けたら、すぐに警察に電話してやるから覚えておけ」

それを聞いた岩本は車のボディを蹴ろうと振り上げた足をじわりと降ろし、かわりに腕を振り上げて窓ガラスを叩いた。その様子を見た南出は馬鹿にしたように言った。

「幼稚なヤツ」

「誰が幼稚だっ!」

「お前だよ。ガキは電車のあるうちに家に帰りな」

南出はポケットから鍵を出しパスワードを入力した。その間も岩本は、南出に向かって「バーカ、バーカ」と繰り返す。ドアを開けて久木原を押し込むと、南出は「帰れ。あと3分で警察を呼ぶからな」と冷たく岩本に言い放った。

「待てよ!リキ!話だけでも」

ガシャンとドアが閉まり、必死な形相で「リキ!」と久木原を呼ぶ岩本は見えなくなった。


「何だよ?まだ未練があるのか?」

南出はドアの向こうで「リキ!開けて!」と叫ぶのを指差しながら聞いた。

「未練?」

「あるのか?」

「未練、ったってさ・・・。3ヶ月前まで一緒に住んでいたんだ。そりゃ、酷い目に遭ったけど・・・」

それなりの想いもある。いつか戻ってくるんじゃないかと期待しないわけでもなかった。

「じゃあ、俺が出て行く。2人でとことん話せばいい」

南出は怒ったように久木原を押して、部屋に入って行った。自分の荷物が入ったキャビネットからスーツやシャツを乱暴に掴んだ南出は、黙って荷物を纏めている。

ドアの向こうからは岩本の声が聞こえる。

「南出」

「未練があるのなら話した方がいい。岩本くんとよりを戻すのなら好きにしろ。ただし、俺は、お前には今後一切関わらないから」

南出は、自分と岩本のどちらを選ぶのかと尋ねているのだ。

「何を言ってるんだよ?俺は」

「選べよ」

南出は持っていた荷物を乱暴に久木原に押し付けるようにして渡した。久木原は渡されたそれをソファーの背に掛けた。

「選べ?」

「そう」

「選ぶも何も」

南出は悲しそうに笑った。

「お前は気付かなかったかもしれないけど、俺はな、大学の頃からお前の事が好きだった」

「はあ?」

学生の時から「友人」だと思っていた南出の告白に、久木原はキョトンとした。だが、南出は真っ直ぐに久木原を見つめていた。"まさか"が頭の中をグルグルと回り始め、久木原にはまともな返事が出来なかった。南出はそれを予期していたのか、自嘲気味に溜息を吐く。

「はあっ・・・ほらな」

「えっ?えっ?」

「全く」

自分の告白をまともに受け止める事すら出来ない久木原に、南出は呆れたのか自分のこめかみの辺りを叩いた。

「言わなきゃ良かった」

「どういう・・・?」

「何度も言わせんなよ。俺はお前が好きなんだよ。お前には大学の時から常にオトコいたし。俺の事は同じ性癖を持つ友人、としか思っていなかっただろう?」

「・・・ああ、まあ」

「お前が岩本くんと別れたと聞いて、俺も考えたんだよ。お互いにいい歳だし、そろそろいいかなと思ったんだよ。俺も踏ん切りを付けたいんだ。お前が俺の事は"友人"としてしか考えられないって言うのなら、仕方がないよ。お前が岩本くんとよりを戻すならそれでいい。俺は諦める。俺にはそうする覚悟がある」

「諦める?」

「ああ」

「・・・」

「どうやらお前は、俺を"大学時代からの友人"としてしか見ていないようだからな」

南出の告白は唐突で、久木原の頭は混乱するばかりだった。外からは岩本の呼ぶ声が聞こえ、目の前の南出は答えを待っていた。

*****

すみません、我が家のWi-Fi環境が良くなくて調子がいい時と悪い時がありますwww昨夜も予約投稿しようとしたら記事が飛んでしまい、今朝は復旧しております。何だろう?というわけで、午後1時に予約投稿しておきます。申し訳ございません。

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2019/05/30(木) 14:25 | | #[ 編集]
あらら~
クッキー、やっぱり鈍いのね。
南出君の気持ちにまったく気づいてなかったんだ。

それにしても岩本はどうしようもない。
こういうろくでなしは甘い顔見せたらまた同じことを繰り返す。
ここでスッパリ切らないといつまでもたかられて終わりですよ。
まあ、南出君のことはただの友達としか思えないのかもしれないけど。
それとは別問題として、岩本は切った方がいいですね~

って、おばちゃんのお節介でした(^^;)
2019/05/30(木) 18:50 | URL | にゃあ #-[ 編集]
Re: 鍵コメ・Hさま~いらっしゃいませ♪
Hさま~すみません!!レスが遅くなりました!!

昨日は記事が消えるという災難に見舞われまして、もうグッタリですwwwお返事が遅くなり、大変申し訳ございませんでした!!

岩本くんでした!!すみません。
可哀相と思っちゃう、クッキー。優し過ぎるんでしょうね。その優しさが仇となってるんですけどね。

さて、今夜は大きく動きますよ。お待ちくださいね!!鈍感にも程があるクッキーですが、世の中の男どもの大半はこんなもんではないんかい?と日高は思っております(笑)

察しの良過ぎる三木店長の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい!!と思っているのは圭ちゃんでしょうか?(笑)コメントありがとうございました!
2019/05/31(金) 16:46 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
Re: にゃあさま~いらっしゃいませ♪
にゃあさま~いらっしゃいませ♪

すみません、記事が飛びましたwwwショックのあまりにレスを書く気力もなく、寝てしまいました。スミマセンでした!!我が家のwi-fiが二階にあるのが原因なのか、最近1階のリビングでは安定してなくてですねwwwちょいちょいネットに繋がらなくなってて困っておりましたが、とうとう保存する時にやらかしてしまいました。

レスが遅れてしまって申し訳ございませんでした!!

> クッキー、やっぱり鈍いのね。
> 南出君の気持ちにまったく気づいてなかったんだ。

そうなんです。鈍すぎるというか、南出くんもおくびにも出さなかったんでしょうね。

> それにしても岩本はどうしようもない。

そうなんです。ダメ男くんなんです。そこが可愛い、とか思っちゃお終いです!!ここでスッパリと切れるか?クッキー!!という所で告白されていよいよアタフタしております、クッキー。

> って、おばちゃんのお節介でした(^^;)

いえいえ!世の中の男たち半分はこんなんばっかでしょう、きっと!本当に気の利いた男は10人中1、2人ですよ。ほぼほぼクッキー状態と思って間違いないですよ(笑)

こんなクッキーですが、最後までお付き合いくださいませね。コメントありがとうございました!
2019/05/31(金) 16:54 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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