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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

さよなら三角、また来て四角・38

 午後3時。ウィンドウの向こうにショッキングピンクが見えた。ジャージ姿の華恵が、恨めしそうにこちらを見ている。

「華恵ちゃん」

山下から出禁を言い渡された華恵は、悔しそうにこちらを見ていた。

 店内には若い女性が一人と買い物帰りの主婦が一人。彼女たちが店内にいるから華恵は中に入れないでいるのだ。視線に気付いた久木原と目が合うと、華恵はその場でピョンピョンと飛び跳ねはじめた。

「余計に目立つよ、華恵ちゃん」

両手を大きく上げてジャンプする華恵は、ピンク色の蛙が飛び跳ねているように見える。


「華恵ちゃん」

「リキくーん」

情けない声で久木原を見るが、ここで中に招き入れるわけにはいかない。久木原がドアを開けたのでベルがチャリンと鳴り、女性客がこちらを見ていた。

久木原は縋るような瞳で自分を見る華恵に、「裏に回ってください」と小声で言った。

「いいのっ!?」

「大声を出さないで。開けますから」

「ありがとう!」

華恵は両手をパタパタと動かし、スキップしながらマンションの裏手に回った。

 裏のドアを開けると、華恵が飛び付いてくる。

「うわっ」

ドンと体当たりされて後退りしてしまったのを華恵が支えた。

「何よ?大袈裟に言わないでちょうだい。華恵が、まるで怪力の持ち主のようじゃないの?」

「えっ?」

華恵は不満そうに腕を組んで久木原を睨んだ。

「ふんっ」

店にいる女性たちに気を遣ったのか、山下の顔を思い出したのか、華恵は廊下の真ん中辺りで立ち止まった。

「私はどこでコーヒーを飲めばいいのかしら?」

顎に手をやり首を傾げたがお世辞にも可愛いとは言い難いが、華恵はニコリとしてみせた。

「そうですね・・・とりあえず、ここ?」

「はあ?せめてリキくんの香りが染み付いたベッドとか~?」

華恵はクネクネしながら、久木原のプライベートルームを指差した。

「や」

"山下"と言おうとしたが、華恵はすぐに察知して両手で止めた。

「ごめんなさい。ここで結構です」

山下には怖い目にでも合わせられたのだろうか。

「すみません。カウンターに椅子があるんで、あそこなら目立たないので。どうですか?」

「いいの?」

華恵の目がキラリと煌いた。

「ええ。ただし、他のお客さまが店にいらっしゃる時は大人しくしてくださいね?」

「失礼ね!」

「声、大きいです」

「ふんっ」

華恵は鼻息荒く久木原が示した椅子に座ったが、さすがに床をドタドタと踏み鳴らすようなことはなかった。

 カウンターの一番奥の目立たない場所に置いている椅子は、久木原が休憩中に使っている。ここなら客からは華恵の頭くらいしか見えない。ケバケバしい化粧を施した顔を正面に向けなければ大丈夫だろう。

「すみません、こんな所で」

華恵は鼻に皺を寄せて「いいわよ!我慢してやるわ!」、と言ったが小声だ。ここで騒いで山下に報告されるのだけは避けたいらしい。

 客がいなくなると華恵は大きく背伸びをした。

「はあっ・・・。背中、痛くなっちゃう」

華恵は大きな手で肩をバンバン叩いた。

「アキに湿布でも買わせようかしら?」

「大丈夫ですか?」

「私の背骨が曲がったらあんたの所為だからね!?」

「あははっ、すみません」

「まあ、いいわよ」

華恵は急にワクワクした顔になった。

「ところで昨日、南出ちゃんが大変だったらしいじゃないの?」

ゴシップ記事で盛り上がる主婦の顔だ。

「ええ、まあ」

「檜山さんはいつもああなのよ。でも信ちゃんと三木くんと圭介さんには頭が上がらないから」

「そうらしいですね」

華恵はますます楽しそうな笑みを浮かべた。

「で?」

「で?」

「リキくんと南出ちゃんとの関係は進んだかしら?」

華恵は両手を胸に当てて微笑んだ。

「・・・進んだとか、そんな事は」

久木原が慌てて否定すると、華恵に腕を捉まれた。

「あら?この華恵姉さんに内緒に出来るとでも思ってんの?」

「内緒?はははっ」

「はははっ」と乾いた笑いをしたが、華恵は勘だけはやたらと鋭い。そう思うと、南出のキスを思い出してしまう。

「白状しなさいよ?」

「何もありませんって!」

「そうかしら?キッスくらいはしちゃったかしら?キャッ」

"キッス"には反応してしまった。久木原の頬がピクリとしたのを華恵は見逃さない。

「あら、やだ。中学生じゃあるまいし!キッスくらいでピクピクすんじゃないわよ」

「してませんよ」

「そうかしら?まさか"セックス"しちゃったとか!?」

華恵は「セックス」を大声で言い、ニヤニヤしている。

「しませんよ!南出は友だちなんですから!」

『友だち』と言って、胸の奥がチクリとした。南出は「友だち」以上の関係を望んでいたのだった。今の会話を南出が聞けば、嫌な思いをしたに違いない。

「あら!やだわ!この子ったら慌てちゃって!初心なのね、意外と。うふふっ。お姉さんが教えたげましょうか?」

盛大なウィンクが飛んできて、ニヤニヤしながら華恵は腕捲りをした。

「華恵ちゃん、ここで下品な話しはNGじゃないんですか?や」

「わかったわよ!アキは厳しいの。黙っててよ?」

急に大人しくなった華恵は口元に指を当てて「シーッ」とした。

「わかりました。俺も頑張って働いて、華恵ちゃんに借金を返さなければなりませんから。ご協力ください」

「・・・喜んでいいのか、悪いのか。わかんないじゃないの」

「ははっ」

「毎日午後3時は、私の憩いの一時だったのよ。リキくんみたいなイケメンとおしゃべりしながら美味しいコーヒーを飲んで、さあ、今から頑張ろう!ってね」

そう言いながらも華恵は嬉しそうだった。

*****

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以下、どうでもいいオマケコーナーです。《ビストロ・325》の猪俣としーちゃんの会話です。

【業務日誌】

「猪俣さん」

「何ですか?店長」

「最近、圭介さんが真面目過ぎて、気持ちが悪いと思いませんか?」

「そうか?」

「はい。っていうか、それが普通なんですけどね」

「あははっ。しーちゃん、辛辣」

「そうですか?僕、長いこと圭介さんと仕事をしていますけど、こんなに真面目に働いてる圭介さんを見るの、初めてですよ」

「そうだな。言われてみればそうかもね」

「でしょう?病院にでも連れて行った方がいいかな?」

「病院か?何科だよ?」

「うーん。僕にもわからないけど。毎日、熱でもあるんじゃないのかな、なんて、心配になっちゃうんですよね」

「仕事が楽しいと思っている形跡はないんだよな。どっちかというと」

「どっちかというと?」

「ヤケクソ」

「ヤケクソですか?」

「一刻も早く仕事を終えて、愛しのテルに会いたいとか?」

「・・・そうかもしれない」

「頑張れば頑張るほど、山下店長から仕事を回されてるんじゃないの?」

「それ、いいですね。これまでサボってた分、ガンガン働いてもらわないと!」

山下店長、しーちゃんはかなりストレスが溜まっていたようですよ。

猪俣雄平

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2019/06/07(金) 07:44 | | #[ 編集]
Re: 鍵コメ・Hさま~いらっしゃいませ♪
鍵コメ・Hさま~いらっしゃいませ♪

そうですよね!ピンクのガマ蛙ですね。ピンクなので誰も餌にはしませんよ(笑)お腹を壊しそうなので!

隅っこでも華恵ちゃんなら目立っちゃいますよね。きっと思いっきり小さくなっているんでしょうね。そういう所も可愛い人です。華恵ちゃんLOVE。

コメントありがとうございました!
2019/06/07(金) 22:35 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
拍手鍵コメ・Sさま~いらっしゃいませ♪
わーーーっ!!Sさま!!

お久し振りです!!お元気でしたか?もう読んでくださってないんだな~と勝手に思っておりました!!

ご心配をお掛けしておりますが、日高さん地方は昨日の夜から台風並みの強風でした。雨の量は思ったより少なくて助かりました。中国地方が大変なようですね。被害がなければいいのですが。

お久し振りのお声をありがとうございます!!またお気軽にお立ち寄りくださいませね!

拍手&コメントありがとうございました!
2019/06/07(金) 22:49 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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