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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

さやさやと流るるが如く・14






 俺は生ビールを"彼"はハイボールを注文し、弓川が勧めた温玉のせサラダとマグロの頬肉の炙りを注文して、今日のメインのラクレットチーズを待った。

「なっ?多国籍料理ではないだろう?」

「うん、普通の居酒屋だね」

"彼"は興味深そうに店内を見回した。

壁にはサーフボードが立て掛けてあったり、大きなゴジラのフィギュアの首に『トイレ⇒』と案内板が掛かっていたり。

カウンター席の上部の壁には、客の土産の観光地の名前が入った三角形のペナントが貼られていて、どこの国の物かわからない人形や魔除けのような物がゴタゴタと置いてある。隅っこには今でも使えるという古いピンクの公衆電話に派手な番傘。星条旗が掲げてあるかと思えば黄色いチャイナドレスがハンガーに掛けてあったりする。

弓川が何を主張したいのか全くわからないのだが、どうしたわけか全てが調和してしまっているのが不思議でたまらない。個室のテーブルにもドラ○もんの貯金箱が置いてあったり、壁には昔の蚊取り線香の看板が飾ってある。

「ゴチャゴチャしてるけど、味は信頼出来るから」

「うん。美味しいよ」

"彼"は店の味に納得したのか、何度も頷きながら弓川のオリジナルドレッシングを「美味しい」と褒めた。

 注文したラクレットチーズが運ばれてきた。

スキレット鍋に茹でたジャガイモ、ブロッコリー、ソーセージなどが乗っている。そこへ半月形の大きなラクレットチーズがお出ましだ。

以前、ここの常連の女の子が「映える、映える」と騒ぎながら写真を撮っていたのは覚えているが、俺が注文したことはなかったのだ。

「わあっ」

子どものような歓声を上げて"彼"は、チーズがとろけて食材の上に落ちるのを撮影している。無邪気な表情に頬が緩む。弓川は俺にチーズを持たせ、ちゃっかりと"彼"と一緒に写真に収まった。

 図々しい弓川は、「うちの店の会員になりませんか?」と誘った。

「おい、図々しいぞ」

俺は止めたが、"彼"は「はーい」と手を上げた。

「なりまーす!」

「やった!」と喜ぶ弓川のスマホのQRコードを読み取らせれば、会員登録終了だ。あっさりと連絡先をゲットしてしまった弓川を睨むが、俺の意など弓川は汲みはしない。

「誕生日を登録してくれたら誕生月は何度でも使える割引クーポンを配信します。それから毎月1日にはその月一回だけ使える30%割引クーポンを配信しますので。他には会員限定で参加出来る花見とか、クリスマスパーティーとか楽しい行事がたくさんありますよ」

説明しながら弓川は、俺を見てニヤニヤしている。何となく、理不尽なんだが・・・。

「花見!もうすぐだね」

「カナタくんも会員だから、おいでよ」

「行きます、行きます!」

えっ?花見?「カナタ」くん?"彼"の名前は「カナタ」なのか?

「潮干狩りとか日帰りバス旅行もあるよ。この先に神社があるの、知ってる?夏祭りの日は屋台を出してるんだけど、会員はビール半額」

「へえ!楽しみだな」

弓川は俺を指差して言った。

「こいつは誘わなくてもいいからさ、カナタくんだけおいでよ」

「はい」

「はい」とか言っちゃうの?

「ちょっと待て!潮干狩りにバス旅行?俺は一度も誘われた事がないんだけど?」

「お前は寂しい独り身だから誘わない。雰囲気悪くなるし」

「はあ?どういう事よ?」

「参加していいのは、2人ともうちの常連さんのカップルだけ~!」

「彼は?」

"彼"を見ると、弓川は胸を張り"彼"の肩を抱いた。

「俺と~!」

離れろ、弓川!

「ブスの嫁はどうした!?」

「誰の嫁がブスじゃ!」

「お前の嫁じゃ!どこからどう見てもブスだろうが」

「いいか?それ、菜那美が聞いたらキレるからな?菜那美がキレたら、永瀬なんか川に放り込まれてサヨウナラだからな?」

「ブース、ブース」

「菜那美~っ!」

弓川が叫ぶと、奥の方から野太い声が聞こえてきた。

「はーい!呼んだ?」

「おーっ、来た来た!可愛い嫁よ!」

ドスドスと足音が聞こえる。

「おい、ここに菜那美を呼ぶなよ。彼が驚くじゃないか」

「いいじゃないか?カナタくんはここの常連になるんだから。菜那美にも慣れてもらわないと!菜那美!こっち、おいでよ」

「はーい!」

声は野太いが、可愛らしく甘えた声で返事があった。

「ビックリしないでよ、水内くん。凄いの来るから」

「えっ?」

チアリーダーの格好をした菜那美がキャピキャピしながらこちらへ来る。"彼"は目を丸くしたが、すぐに笑顔になった。

「ななみさん?」

「そう、これが菜那美」

菜那美はツインテールにした髪をピュンピュンさせながら「こんばんは~!」と俺たちのテーブルにきた。チアリーダーの衣装が可哀相なくらい縮んで見える。

「コラッ!人の嫁を"これ"呼ばわりすんな」

「初めまして~!菜那美です!あら~!永瀬ちゃんじゃないの?どこで攫ってきたのよ、こんな美人」

菜那美は青いアイシャドーを塗りたくった瞼に紫色のマスカラで盛った睫毛をバサバサさせながら言った。"彼"の天然物の睫毛とは大違いだ。

「攫ってません。それより菜那美、化粧を盛り過ぎて瞼が落ちそうだぞ」

「いいじゃない!綺麗でしょう?」

バチンと音がしそうなウィンクが飛んできた。

「菜那美、永瀬がお前の事をブスって言ったぞ。ブスって!」

「ブス、ブス言うんじゃねえ!」

菜那美は弓川の後頭部をバシンッと叩いた。

「痛ってえ。どうして俺を叩くんだよ!ブスって言ったのは永瀬だからな!」

「永瀬ちゃんはイケメンですもの!叩かないわよ。あんたはへちゃむくれだから、叩いたって平気だけどさ」

「だよな?菜那美はドMだからな。俺に弄られたいんだよな?」

「そうなの!だーい好き、永瀬ちゃん」

猛烈な投げキッスが飛んできて、俺はそれを叩き落とす。

「いやん。受け取ってよ」

「もうあっちに行ってくれ、暑苦しいから。ほら、店に行かなくてもいいのか?」

「今から出るところよん」

菜那美は超ミニスカートを穿いた尻をプリプリさせながら、俺を押して隙間を作り強引に隣に座った。そして"彼"の顔を真正面からまじまじと見て、「はあっ」と溜息を吐く。

「本当に綺麗な顔してるわね」

「・・・どうも」

オカマの菜那美に見つめられて、恥ずかしそうに顔を伏せる仕草が何とも品があっていい。

「見るな」

「いいじゃない、見てるだけなんだから」

「穢れる」

「穢れません!ねえ、どこで攫ってきたのよ?」

「駅です」

"彼"は顔を上げて微笑みながら答えた。

「駅!?まあ、仕事帰りにナンパ?」

「あははっ。そんな感じです」

「違うだろ!」

「お盛んね、永瀬ちゃんったら!」

「はい、どうも。菜那美の店は駅前にある《世界の果て》っていうオカマバーだよ。知ってる?」

「知らない。でも、楽しそうだね」

「行かない方がいい。目が爛れる」

「そんな事はないわよ。美しい夜の蝶がたーくさんいますからね。目の保養に来てちょうだい」

「はい」

「ダメ、ダメ!目が腐れるぞ」

「そうかな?楽しそうじゃない?」

「おいでよ!待ってるから!」

右、左、右、左、と忙しくウィンクしたと思ったら、投げキッスをバンバン投げる菜那美。"彼"は俺の真似をして、それを全て叩き落した。

「いやん、受け取ってよん」

「菜那美が目の保養をしたいんだろうが」

「当たり!後で絶対にいらっしゃいよ?待ってるから!」

「はーい」と、調子よく手を上げた"彼"は本当に楽しそうだ。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

投票所のコメントが毎日楽しみです♪皆さん、あの手この手で(笑)皆さんの熱い思いの籠もったコメントを読むと、どれも書きたくなりますね!楽しいお話のヒントを読むと、お応え出来るように頑張りたいと思うんですけど・・・。まあ、物理的に無理なんですが、まあ、なんとか頑張りたいと思います。

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コメント
ななみ~ww
日高様~~~きゅうきゅうううぅぅぅ・・・

暑くて何もやる気が出ないわたくぴですぅ・・・
ななみちゃん、誰かを彷彿とさせるんですけど(笑)
気のせいかしら(^▽^;)

毎日こまめに投票しております。
私の耀ちゃん、結構がんばっていて嬉しい。
若い人たちに負けるなっww
念を送っております(^_-)-☆

それにしてもまた台風来てますね。
どうか気を付けてくださいね。
2019/08/13(火) 00:05 | URL | にゃあ #-[ 編集]
Re: にゃあさま~いらっしゃいませ♪
にゃあさま~~~きゅうきゅきゅっ♪

> 暑くて何もやる気が出ないわたくぴですぅ・・・
> ななみちゃん、誰かを彷彿とさせるんですけど(笑)
> 気のせいかしら(^▽^;)

暑いですねwww毎日35度越えているので、30度だと「今日は涼しいね」という声が聞こえてくるのが不思議です(笑)

菜那美さんも華恵ちゃんのお友だちかしら(笑)

> 毎日こまめに投票しております。

ありがとうございます。耀元さんもさり気なく票を集めていますね。10位以内に食い込んでますが、結構動きがあるので頑張ってくださいね!

> それにしてもまた台風来てますね。
> どうか気を付けてくださいね。

ありがとうございます!とにかく大きいので、どこまで影響があるのかわかりませんね。にゃあさまもご自愛くださいませね!コメントありがとうございました!
2019/08/13(火) 23:41 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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