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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

さやさやと流るるが如く・16






 3人でスパークリングワインを1本空け、調子に乗った弓川が「今夜は俺の奢りだ」というので、「店が潰れないように通う」という条件で今夜の飲み代はタダになった。

「永瀬がいなくても1人でも来られるだろう?」

「はい」

「じゃあ、晩飯食いにきてよ。会員だからさ」

「では、お言葉に甘えて」

というわけで、今夜は彼のおかげで飲み代が浮いた。今は2人で線路に沿って駅に向かって歩いている。叶多はバッグから宇宙人を取り出して、脇に抱えていた。足元が覚束ないという所まで飲んではいないが、十分に酔っているようだ。

「欧介さんはどこに住んでいるの?」

「俺はこっち」

駅から徒歩数分。右に曲がって2、3分の所に俺が済むマンションが建っている。

「ここ右に曲がって真っ直ぐ行くと、茶色いマンションが見えるだろう」

「ああ、うん」

叶多は俺が指差す方向を伸び上がって見ている。

「あのマンションから左に曲がって、突き当りのマンションだ」

「ここからは見えないね」

「そうだな」

「駅まで歩いて5分くらい?」

「大体それくらい。君は?」

「僕は向こうだ」

彼は線路の反対側を指差した。

「送ろうか?」

「大丈夫。ねえ」

「ん?」

「コーヒー、飲みたいんだけど」

それは俺の部屋に寄って行きたい、という事だよな。

「自販機、そこにあるぞ」

角の自販機を指差して反応を見る。

「熱いの、飲みたい」

「うちはインスタントしかないぞ」

「うん。うちもインスタントしかないよ」

叶多は自販機を無視して右に曲がった。俺を置いてさっさと歩き出す。《世界の果て》に行くんじゃなかったのかな。

「菜那美の店には行かなくてもいいのか?」

「今夜はそういう気分じゃなくなった」

「そうか」

確かにね。叶多が立ち止まり、振り返った。街灯の明かりに照らし出された叶多は、影が多くて5分前の叶多よりも大人びて見えた。

「ねえ、ビールある?」

「ビールならあるよ。結婚式の引き出物のワインもあるぞ」

「それ、飲もうよ」

「コーヒーは飲まないのか?」

叶多はまた前を向いて歩き出したが、すぐに立ち止まると俺に宇宙人を向けた。

「コーヒーは朝だよ」

後ろからギューッと抱き締めたくなった。


「散らかってないね」

「まあ、一応はね」

1DKの部屋は一人で住むには十分な広さがある。常に掃除を欠かさずにピカピカというわけではないが、テーブルにゴミを放置したりはしないし、キッチンのシンクに洗い物を溜めたりはしない。

脱いだジャージがソファーの背に掛けてあるのはご愛嬌ってやつだ。

「広いね、ここ。僕の部屋は1Kだから狭くて」

アイランドキッチンの奥にソファーとテレビを置いて、奥の部屋には収納があり家具はベッドだけ。叶多はバッグと宇宙人を持ったままで部屋を見て回り、ソファーの下にバッグを置くと自分の隣に宇宙人を座らせた。

「気に入ってるんだね。宇宙人」

叶多は宇宙人を自分の顔の前に持ってきて声を変えた。

「火星から来ました」

「ようこそ、火星人。はい、グラス。ワインは赤だけどいいか?」

叶多はまた宇宙人を座らせた。缶ビールも2本、テーブルに置く。

「ありがとう」

俺は叶多にグラスを渡して宇宙人の隣に座った。

「どっちがいい?」

「うーん。ワイン」

「どうぞ」

俺は彼のグラスにワインを注ぎ、自分のグラスにも注いだ。

「テレビ、大きいね。50インチ?」

「安かったからね」

「映画、観たいね」

「観たいのあったら借りておいでよ」

「いいの?」

「ああ」

俺たちの真ん中の宇宙人が防護壁なのか。これがあると、なんとなく彼に手を伸ばしづらいな。

「怖いのだよ」

「怖いのか?苦手だな」

「僕は好き」

「じゃあ、借りてこいよ。俺は目を瞑ってるから」

「ふふっ」

叶多は微笑みながらワインを飲んだ。グラスの半分程が彼の喉を通っていった。

「あっ、もしかしてジェットコースターとかも平気?」

「平気。大好き」

「お化け屋敷とか?」

「好き。叫ぶけどね」

「叫ぶんだ?」

「うん。ストレス発散」

「一緒には行けないな」

「嫌いなの?」

「大嫌い」

「もしかして観覧車しか乗れないとか?」

「そう、そう!それ!」

「じゃあ、観覧車に乗ろうよ」

「楽しくないとか言うだろ?」

「言わない。欧介さんといると、楽しいから」

可愛い事を言うじゃないか。手を伸ばして触れたくなる。だがその気持ちを抑えて、俺は宇宙人の頭に触れた。

「俺はお化け屋敷にもジェットコースターにも付き合わないからな?」

「うん。大丈夫」

「じゃあ、行こうか?」

「うん。明日?」

「明日か?」

「明後日でもいいよ」

「休みだからな」

「うん」

宇宙人の上に乗っていた俺の手に叶多の手が重なった。

*****

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