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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

チョコレート大作戦を完遂せよ。

最強ミッション・チョコレート大作戦を回避せよ。の【後編】後書きで、後日談がありますと書いておりましたが、それです。後日談ではないか(笑)




「あっ」

「どうしたの?」

まあちゃんの口がポカンと開いている。テーブルの上には散乱したココアパウダー。出来上がったトリュフにココアパウダーをまぶしていて手元が狂ったようだ。

「ココアパウダー、こぼしちゃった」

「いいよ。大丈夫、多目に買ってきてるから」

全ての材料は、必要な量の3倍を準備してある。まあちゃんが何かを作ると言い出したら、それが原則だ。

「そう?良かった!さすがは僕の弟だね!気が利くね、薫」

「そう?あははっ」

いえいえ、長年一緒にいたらこれくらいは普通ですって。

 今年もバレンタインデーが近付いてきた。

まあちゃんはいつもギリギリになって「チョコレートを手作りするから一緒にやろうよ」と言い出す。今年もそうだろうと思っていたら、今年は例年よりもちょっとだけ動きが早かった。

 電話が掛かってきたのは2月8日の夜。

『ねえ、ねえ!たまには輝也も圭介さんが作ったチョコを食べたいと思うんだけど?』

まあちゃん、それは余計なお世話だよ。

「そう?圭介さんは甘い物は苦手だよ?」

だから輝也は毎年、一粒で3,000円もする高級チョコレートにシャンパンや服、花を添えて贈っているようだ。

『違うよ?圭介さんが作って、食べるのは輝也だよ?』

「まあ、そうだけど。あの人が作るとは思えないんだけど」

『そんな事ないって!ああ見えて、輝也に捨てられまいと必死なんだから!』

「えっ?それって誰発信?」

『ふふふっ』

いや、笑って誤魔化さないでよ。

『そんな崖っぷちの圭介さんに、この手作り派の僕がトリュフの作り方を教えてあげようと思って!』

なんだ?なんだ?その"良い事考えた!"的な上から発言は。

まあ、いいか。圭介さんがこの話に乗ってくるとは思えないしな。どうせ断られるんだし、誘いの電話をするだけでもまあちゃんは納得するか。

「わかった。いつ、どこでやるの?」

『薫んちで11日』

「11日は良いけど、うちはダメだよ」

『えっ?どうして!?』

「まあ、色々」

まあちゃんがキッチンを荒らすので、章太郎さんが嫌がるのだ。

まあちゃんの性格と不器用さは、正直言って治しようがない。本人は全くの無自覚だし。それをとやかく言ってもどうしようもないのだが、章太郎さんは真っ直ぐな性格だからどうにも色々と気になるようだ。

まあちゃんを嫌っているわけではないから遊びに来てくれるのは構わないんだが、キッチンを使うのはダメだ。

『そう?じゃあ・・・どこ?』

"どこ"と言われても・・・。

「まあちゃんの所」

『ダメだよ!ヒロオミさんには内緒なんだから!』

「ああ、そう」

"どこ"と言われてもなあ・・・。

「輝也の所は?」

『ダメ、ダメ!圭介さんがチョコを手作りするのは輝也に内緒でしょ?』

「ああ、そういうわけ」

まあちゃんが考えているメンバーには、すでに圭介さんが入っているわけだ。しかもレギュラーで。

「じゃあ、どうするの?」

『社長の家とか?』

「ああ、怜二くんも誘ったの?」

『うん、今から』

「そう。じゃあ、先に連絡してみてよ」

怜二くんがチョコレートを手作りするのは社長も知っているので、社長宅で問題はない。

『うん!』

 だが生憎と怜二くんは11日は仕事だった。大貴くんも誘うというので連絡したが、彼は試験前で忙しいと断られた。彼はちゃっかりしてるから、『多目に作って俺にも分けてくれ』だって。

電話の翌日、俺は材料の買い出しに走り、まあちゃんはチョコレートを入れる容器とラッピング用品を買いに行った。

そして11日。車で迎えに行った俺の後ろに座ったまあちゃんはしっかりとシートベルトを締めて言った。

「安全運転でお願いします!」

「はーい」

「今日のメンバーは僕と薫と圭介さんだよ」

「圭介さんは来てくれるの?」

「わかんない。でも招待状を渡したよ」

「そう」

「土師副店長、ちゃんと渡してくれたかな?」

えっ?そこも人任せなの?

まあちゃんは顎に人差し指を当てて頭を捻った。そのポーズ、俺がやりたいよ。

「えっ?自分で渡せば良かったのに」

「だってさ、たまたま山下店長が《白夜》に来るって聞いたんだもん」

って事は、招待状は土師副店長と山下店長を経由して圭介さんに届くわけね。確実と言えば確実だな。

「それで場所はどこに決まったの?」

「《インカローズ》。ヒロオミさんが使っていいって!」

ヒロオミさんには内緒じゃなかったのか?

「そうか」

「薫、圭介さんは仕事だから18時に来るんだ。それまでに僕の分は完成させてないと!」

まあちゃんは「レッツゴー」と威勢良く右手を上げた。


 午後18時になっても圭介さんは現れなかった。

「どうして来ないのかな?」

「忙しいんじゃないの?それよりまあちゃん、早く丸めて」

「ああ、うん」

溶かしたチョコレートをラップで丸める手順はいつもと同じ。だが、まあちゃんはおしゃべりに気を取られて手が止まる。今回は大貴くんに頼まれた分も作っているから、手を止めないで欲しいんだけど。

「まあちゃん、圭介さんが着くまでにまあちゃんと大貴くんの分を作らないといけないんだよ」

「うん、わかってる」

まあちゃんは真剣な表情になりチョコレートを丸めていく。しばらく、うん、しばらくは30秒くらいだ。黙っていたまあちゃんが話しかけてきた。

「本当に来てくれるかな?」

「招待状にはなんて書いたの?」

「ここに18時集合」

「それだけ?」

「うん、それだけ」

「それじゃ、何の為にここに集まるのかわかんないよ?」

わかるはずがない。圭介さんは警戒しているのだ。

「そうかな?」

「そうだよ」

「そうか・・・でもさ!勘が良い人ならわかるんじゃないかな?」

「ああバレンタインデーが近いから、って事?」

「うん!」

いやいや、わかりませんよ。圭介さん、お気の毒に。招待状をいつ渡されたか知らないけど、おっかなびっくりだろうな。俺に電話があるかもな。

「うーん。とにかく圭介さんが着く前にここを綺麗にしておかないと。急ごうよ」

「はーい!」

まあちゃんのおしゃべりは止まらない。

先週、また鍋を買ったらしい。

「ヒロオミさんがね、またニャンコのチャリティー行きだな、なんて言うんだよ?」

「へえ」

正解です、高田店長。

「酷いと思わない?僕の財産だよ?」

「じゃあリサイクルショップ」

「・・・ねえ、知ってる?リサイクルショップって買い取りした金額の3倍から5倍の値段で売るらしいよ?」

「そりゃそうさ。リサイクルショップも商売だし。儲けが出ないと困るじゃないか」

「まあ、そうなんだけど!ズルいよね?」

「ズルくはない。それが商売だから」

「・・・売りたくない」

「じゃあオークションだね」

「・・・薫。僕の財産だからね」

「ああ、そうだったね。そんな事より早く作らないと。圭介さんが来てくれたら、まあちゃんが教えるんでしょう?」

「そうだったね!頑張るよ」

まあ、こんな感じの繰り返し。

まあちゃんは圭介さんが来てくれると固く信じている。電話した方が良いかな?「お願いだから来てください」と頼みこむか?考えながら作業をしていると、まあちゃんは待ちきれずに何度も裏口に行き外を見ている。

可哀相だから電話するか。

「出来た!」

「うん。これで全部だね」

形が悪い物や大きさが極端に違う物を外し、まあちゃんは出来の良い物を選んだ。俺が大貴くんの分を取り分けている間に、まあちゃんは「外を見てくる!」と言ってまた裏口へと行った。

「わーい!わーい!薫~!圭介さんだよ!」

ホッとした。何も知らされずにここへ来て、しまったって顔をしている圭介さんには気の毒だけど、ここまで来たなら付き合ってください。


「なあ、どうして俺にトリュフの作り方を教えようとか思い付いたわけ?」

モップで床を拭いていた圭介さんが呟いた。俺は調理器具を洗いながら小声で答えた。

「圭介さん、そこのところは適当に」

輝也に捨てられまいと必死だ、とか俺は言えない。

「薫。俺もさ、暇じゃないんだよね」

「いや、わかってますけど」

洗い終えた物をダスターで拭いていたまあちゃんが口を尖らせる。

「僕だって暇じゃないんだからね!?店長さんなんだから!しかも今日は休みなんだよ?」

まあちゃん、君がここに決めたんだよね?それに休みは《インカローズ》だけだろ?自分が休日出勤しているかのように言うのは止めようよ。

その言い方にムッとしたのか、圭介さんは勇猛果敢にも言い返し始めた。

「俺はな!」

「知ってる!口では忙しいって言ってるけど、本当は暇なんでしょ?毎日のように輝也の店に行って邪魔してるらしいじゃない?」

「邪魔はしていないぞ!手伝ってるんです!」

圭介さんは猛然と言い返した。まあちゃんの言った事は、半分は当たっていたようだ。

「そうかな?山下店長が《白夜》でぼやいていたらしいよ?圭介さんが《BlauGarten》のスタッフが足りないと言うから調べたけど、そんな事なかったって。圭介さんは輝也と一緒に働きたいだけでしょ?ちゃんと本社で仕事しなよ?山下店長に迷惑を掛けないようにね」

痛い所を突かれた圭介さんは、モップを放り出して「とにかく、俺は帰る!」と出て行こうとした。

「えーっ!トリュフをあげるから、掃除しようよ!」

「嫌だ!」

「まあちゃん!圭介さんは手伝ってくれてるんだからね?今、山下店長がここへ来たらどうするの?」

まあちゃんは青くなった。

「そうだった!早く片付けないと!圭介さん、ちゃんとやってよ?」

「ムカつくな、その言い方!」

口ではそう言いながら、圭介さんは最後まで手伝ってくれた。本当にいい人だ。

 掃除が終わって、まあちゃんがしつこく「あーん、して?」と言うので圭介さんは渋々口を開けた。

「美味しいでしょ?」

「俺はシャンパンが飲みたい。出してくれ、まあちゃん」

「ダメだよ!僕の持ち出しになっちゃう!お給料が減っちゃう!」

「・・・ケチ」

「僕はケチです」

しれっとシャンパンを拒否したまあちゃんの貯金額を思い出し、俺は苦笑いするしかなかった。

こうして、今年も自称・手作り派のまあちゃんのチョコレート大作戦は終わった。この後、本当に山下店長が《インカローズ》をチェックしに来たのは言うまでもない。

*****

ご訪問ありがとうございます!ごゆっくりお過ごしくださいませ!

薫ちゃん目線の裏話的な?

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コメント
いいねぇ~まあちゃん♪
日高様~~~きゅっきゅきゅううっ♪

まあちゃん、いつもマイペースで、でもちゃっかりしてていいキャラだわ。
実はすごく苦労人なのに、そう思わせない人。
魂が純真なんだろうね。

薫は頭がいいからか色々考えすぎちゃってちょっと損かも(^^;)
気を遣うタイプなのね。
今回はまあちゃんの御守り役?
圭介さんも混じって、しっちゃかめっちゃかだけど面白い♪
みんな楽しそうで何よりです(*>ш<*)
2020/02/15(土) 02:18 | URL | にゃあ #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2020/02/15(土) 08:56 | | #[ 編集]
Re: にゃあさま~いらっしゃいませ♪
にゃあさま~~~きゅうきゅきゅっ♪

すみません、お返事が遅れてしまいました!!申し訳ございませんでした!!

> まあちゃん、いつもマイペースで、でもちゃっかりしてていいキャラだわ。
> 実はすごく苦労人なのに、そう思わせない人。
> 魂が純真なんだろうね。

まあちゃんは苦労してるわりにはケセラセラですね(笑)マイペースで人に合わせようとか一切考えないからノンストレス(笑)
天然天使ちゃんですけど周囲には迷惑かも・・・。

> 薫は頭がいいからか色々考えすぎちゃってちょっと損かも(^^;)
> 気を遣うタイプなのね。

薫はそういう役回りだと自覚しているようで、毒舌で対応しております。

> 今回はまあちゃんの御守り役?
> 圭介さんも混じって、しっちゃかめっちゃかだけど面白い♪
> みんな楽しそうで何よりです(*>ш<*)

まあちゃんのお守り役の薫と圭介のもうなんなの?"やおい"で誤魔化すなよ?って感じでお許しくださいませ!

コメントありがとうございました!
2020/02/16(日) 09:27 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
Re: 鍵コメ・Rさま~いらっしゃいませ♪
鍵コメ・Rさま~いらっしゃいませ♪

お返事が遅くなり申し訳ございませんでした!!すみません、バタバタしておりましてwww

まあちゃんの弟は優秀ですね~薫はフォロー役に徹してくれますし(笑)信ちゃんには三木くん。まあちゃんには薫、ですね!

今年はちょっと取り掛かりが早くてまあちゃんも学習したね!と褒めて頂けましてありがとうございます。さすがに早めに言わないと、薫も社会人だし…と考えたのかしら?

圭ちゃんも何だかんだと言いながらもお手伝いしてくれて、まあちゃんも後で反省してるんじゃないかと思います。

圭ちゃんはシャンパンで口直しどころか、山下くんに「ごめんなさーい」とゴロニャンして忙しかったようです。まあ山下くんも本気でお怒りではないので、明日から真面目に働くように!と軽く説教されたかな?

バレンタイン企画を全く考えていなかったのでドタバタでしたが、お楽しみ頂けて良かったです。コメントありがとうございました!
2020/02/16(日) 09:35 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
拍手鍵コメ・aさま~いらっしゃいませ♪
aさま~いらっしゃいませ♪

すみません、バタバタしてましてお返事が遅くなりました!!週末はどうもリズムが悪いですwww

風邪は治る前が大事ですからね!ちゃんと治してくださいね~!息子ちゃんはしっかりと治らないままに出勤してるのでズルズルと長引いてます。お気をつけて!!

文章は本当に難しいですねwww日高なんか田舎のオバハンなので特に難しいですwww色々と・・・。

感性は大切ですよね!日頃から、思い付いたものはメモしたりスマホにメモしたりしてますよ。コメントも思い付きでサラサラ書いちゃってくださいね!

まあちゃんはこのままですから、周囲が気を配るしかない(笑)酷く人を傷つける事はないので、嫌われないのかな?彼は。

薫も圭ちゃんもまあちゃんの事は大好きなので、ちゃんとお付き合いしてくれてます。

aさまもご自愛くださいませね!日高もインフルとかコロナとか頑張って対策します!!

拍手&コメントありがとうございました!
2020/02/16(日) 09:43 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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