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『夢見月夜曲』は日高千湖のオリジナルBL小説ブログです。

合縁奇縁・27

 橋本専務は美しい。長身で確かに男性なのだが、白い肌は透明感があって不思議な印象だ。肌の肌理の細かさと滑らかさに関していえば僕の知る限り彼が一番かもしれない。そういう面では男性離れしている。浮世離れしている、というのが正しいか。

元はモデルをしていたというだけあって、姿勢が良く歩く姿が美しい。彼が盛装してリズミカルに歩く姿は華やかで、近くにいると誰もが霞んでしまう。

そうかと思えば骨太な一面もあって、山下常務によれば彼はケンカが強いのだそうだ。店で暴れる客がいても、大概は彼が摘まみ出してしまうらしい。山下常務に橋本専務の武勇伝を聞いても実際に見た事はないから、ネコジャラシで遊んでいる彼とはとても一致しないのだ。

 山下常務は常に柔らかな空気を纏っておられて、営業用の笑顔は実に爽やかだ。

それに反して橋本専務は、夜の生活が長いからかビジネススーツを着ておられても艶やかだ。

時々冷たい目をしておられるし、ツンと気取った表情をしていることもある。かと思えば、朝からムンムンするような艶めかしい表情をしている。

僕にとっては一番不思議で、最も理解に苦しむ人だったのだが、最近は基本的に"大きな子ども"だと思うようにしている。それだと対応に間違いがないからだ。

 山下常務は話しかけ易いが、橋本専務は時として一切を排除してしまうくらい冷たい印象を人に与えかねない。

おそらく橋本専務にはそんな気などなく、急にどうして俺の相手をしてくれないの?的な目をして近寄ってきては甘えるから戸惑ってしまう。気紛れな橋本専務に振り回されてしまっているが、実は彼が一番扱い易いのかもしれない。落ち着いて見ていると、なんとなく彼の要求するものが見えてくるからだ。

山下常務の事が大好きで、「山下くん」という回数が多い時は構ってもらえなくて寂しい時だったり、「信吾さん」と言う回数が多い時は甘やかして欲しいとか、何か無理を通したい時。「テル」が多い時は幸せアピールしたい時だったり。基本的に寂しがり屋で甘えたい人なのだ。


「いらっしゃいませ」

橋本専務は酒を飲んでおられる。白い首筋がほんのりと染まって実に艶めかしい。

本社ではスーツだったが、今は光沢のある生地の黒いシャツにギャルソンエプロンというシンプルな服装だ。最近髪を切ったが、緩くパーマをかけて毛先を遊ばせたスタイルは彼の雰囲気にピッタリだ。

そんな橋本専務を見て、清家先生はポカンと口を開けた。

「こんばんは、橋本です。昨日は本を頂戴しまして、ありがとうございました」

スッとカウンター越しに差し出された橋本専務の手を、清家先生が握り返すまで一瞬の間があった。

「こんばんは、初めまして!清家宗隆です。先程はご馳走になりました」

「いいえ。うちの稲村がお世話になっておりますから」

「とんでもない!2日連続で彼を連れ出して、ご迷惑ではなかったでしょうか?」

清家先生が僕を見た。

はっきり言って迷惑ですけど・・・。橋本専務に目配せするが、ふっと笑ってウィンクが飛んできた。

「いいえ!全く。毎日連れ出してやってください。稲村くんは何て言うのかな。引っ込み思案、じゃなくて、うーんと・・・」

橋本専務は僕の目を見て、今度はニコッとした。

「律儀に朝から晩まで一生懸命に働いて、真っ直ぐに家に帰って一人寂しくカップ麺食べるのがルーティーンなんで、不健康なんですよ。先生が連れ出してやってください」

「えっ?カップ麺?ルーティン?」

先生が呆れたような顔で僕を見た。一人寂しくコンビニ弁当を食べているのは確かにですけど、違います!

「橋本専務!困ります!そのような嘘を広めないでください!」

こんな所が子どもなんだよ、この人。

「困るの?」

「困ります!カップ麺は身体によくありませんから、毎日食したりは致しません!食べない事もありませんが、たまに、です」

「そうなの?毎日食ってそうだぞ」

「毎日食べてはおりません!」

橋本専務はニカッと笑って手を合わせた。今夜はテンション高めだな。

「ごめーん!じゃあ、コンビニ弁当に訂正します」

・・・そこは当たった。

「当たりだな」

したり顔で僕に笑いかける橋本専務に付ける手綱はないのだろうか。

「まあ・・・そうですが」

「とにかく、だ。稲村くんは外に出た方がいい。君、あのマンションから引っ越せよ?もう少し遠い方がいいよ。歩いて通って健康的、とか思ってるだろう?本社から徒歩10分圏内だったよな?精神的には全く不健康ですから!」

「精神的には、とおっしゃられても・・・。引っ越す必要はないかと思われます。あのマンションに満足しておりますから」

「そう?どうせ歩くなら2駅くらいは歩けよ。絶対に君の為になるぞ?今なら引越し手当を特別に付けてやるから。俺の裁量で」

すると、隣にいたベニちゃんが橋本専務の脇腹を突きながら言った。

「店長、自分は全く歩かないクセによく言うな」

「はあ?ベニ、失礼な事を言うな。俺はマンションからここまで歩いて来ているじゃないか?」

ベニちゃんはここぞとばかりに暴露した。

「帰りはテル、迎えに来て~俺、酔っ払って歩けない~。おんぶ~って甘えて電話するんですよ」

橋本専務はベニちゃんの頬を思いっきり抓った。

「痛たたたっ。暴力店長、痛いぞ!」

「煩いぞ、ベニ。少し黙ってろ。稲村くん、明日、俺が物件見つけてやるから。2駅歩いて通勤決定だからな。いいか?ウォーキングシューズでも買ってこい」

「・・・はい」

「通勤手当に毎月シューズ代をプラスしてやるから」

本気だろうか?キョトンとしていると、ベニちゃんが僕の気持ちを代弁するかのように囃し立てた。

「勝手に言ってる~!社長に言いつけてやる」

「黙れ」

橋本専務のデコピンがベニちゃんのオデコにヒットした。ベニちゃんはあまりの痛さにその場に蹲る。

「いったーーーーいっ!ぜーーーったいに山下店長に報告するからな!覚えてろよ!」

「どーぞ!ご自由に~!不動産の方は俺の方が権限が強いんですーっ!ついでにここの店長はカンタだからな、俺を店長と呼ぶな」

「はーん!じゃあ、ヘルプの人!」

「・・・ムカつく」

橋本専務は普段は取っ付きにくい人なのに。酒が入って陽気なのか古巣に戻ってノビノビとしておられるのかわからないが、脱兎のごとくカウンターから逃げ出したベニちゃんを追い掛けていく。

「テンション高いね」

「ええ」

店の中で追いかけっこを始めた橋本専務とベニちゃんを見て、清家先生は笑っている。

「見た目とのギャップが激しいな」

「そうなんです。僕もここへは滅多に参りませんので、ここでの橋本専務のご様子は存じませんでした」

僕が答えると、清家先生は嬉しそうに笑って両手をグッと握る。

「やった!」

「えっ?」

「忘れてないか?罰ゲーム」

「あっ」

しまった。気を付けていたのに・・・。橋本専務のおかげですっかりいつもの調子でしゃべってしまった。

「あははっ」

「・・・しまった」

思わず眉間に皴が寄る。不意の騒動に紛れて"ゲーム"を忘れてしまっていた。ここまで頑張っていたのに・・・悔しさが顔に出てしまっている。

「いい感じ」

「す、ごめん」

「あははっ。稲村さん、修行が足りないね」

「まあ・・・その。橋本専務が」

「専務の所為にするのか?」

「いや、違う。その、橋本専務はいつもはもっと、その、何というか、その」

清家先生はしどろもどろな僕の釈明を笑って聞いておられる。自分でも何と言っていいかわからなくなる。

「わかった。専務には内緒にしてあげる」

「内緒?」

「そう。内緒。だから今夜は飲もう」

「車じゃないか」

「置いて帰る」

「わかった」

「良かった。何を飲む?」

嬉しそうにメニューを指さした清家先生の横顔を見ながら、僕は何とかして早く帰宅したいと考えている。

*****

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2020/02/26(水) 08:11 | | #[ 編集]
Re: 鍵コメ・Rさま~いらっしゃいませ♪
Rさま~いらっしゃいませ♪

圭ちゃん、大きな子供説(笑)おそらく大正解だと思います。
皆、各自で圭ちゃんの取説をもっているようですね。使いこなせていないのがベニちゃんかな?

お酒の力を借りて圭ちゃんの十分の一の緩さを手に入れられるでしょうか?

あゆちんを読み返してくださったんですね!ありがとうございます!!
S-fiveの方々と比べたらリーちゃんはまだまだ物足りないかな?でも全て許してしまえるリーちゃんは最強ですよ?

蕎麦屋で頑張るあゆちんの事も応援してやってくださいね!コメントありがとうございました!
2020/02/26(水) 23:01 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
拍手コメ・アザミさま~いらっしゃいませ♪
アザミさま~いらっしゃいませ♪

ベニちゃんはいつも圭ちゃんにバチンとやられておりますね。逃げ足も早いですけど(笑)

皆の幸せを祈ってくださってありがとうございます♪

拍手&コメントありがとうございました!
2020/02/26(水) 23:13 | URL | 日高千湖 #-[ 編集]
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